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よくあるご質問

※掲載している事案ごとの考え⽅があらゆる事案についてそのまま適合するものとは限りません。
個別具体的な問題解決に当たっての参考資料としてご活⽤下さい。

通則

名称

  • (1)組合の類似名称について
    事業協同組合の設立において、県の認可になったあとにおいても、下記のとおり中協法第6条第3項において準用する商法第19条から第21条までの類似名称に抵触するため、登記できず支障をきたしているので何分の指導を賜りたい。
    (1)既設組合  静岡漆器工業協同組合
        申請分  静岡県漆器工業協同組合
    (2)既設組合  静岡写真材料商協同組合
        申請分  静岡カメラ商協同組合

         参考  静岡県精麦工業協同組合
             静岡県精麦協同組合
             静岡県茶商工業協同組合
             静岡茶商工業協同組合
    ご質問の「静岡漆器工業協同組合」と「静岡県漆器工業協同組合」が、中協法第6条第3項において準用する商法第19条から第21条まで(商号)の規定に抵触するか否かについては、法務省より類似名称である旨示されているので了知されたい。
    同一市町村内に同一若しくは類似の名称を有し、かつ、概ね同様の事業を行う組合が併存することは、第三者との取引上、相手方に不測の損害と不便を及ぼすおそれが極めて多いと判断されるものであるから、「静岡県漆器工業協同組合」の名称を変更させる必要があると考えられる。
    また、「静岡県写真材料商協同組合」と「静岡カメラ商協同組合」については、上述の趣旨から類似名称にならないと解され、法務省においても同様の見解を示しているので了知されたい。
  • (2)地区を表わしていない組合名称の是非
    〇〇工業協同組合より、その名称を「日本〇〇工業協同組合」と改めたい旨定款変更認可申請の相談があったが、この組合は東京都をその地区としており、前記のごとく「〇〇組合」を「日本〇〇組合」と改める点に関しては、組合の実態を現わす上において不適当と考えられる。
    しかし、この認可申請に当たっては格別の法的根拠もないようなので、それに対するご見解をお示し願いたい。
    設問については、中協法上は、これを禁止する根拠はないが、組合指導の面からすれば、貴見のごとく、東京都の区域を地区とする組合が全国を地区とする組合であると一般通念上誤認されるような名称を使用すること自体、好ましいことではなく、また同様の組合が他にも設立されていると考えられるので、これとの均衡を考慮し、でき得れば組合の実態にふさわしい名称を使用するようにするのが適当と考える。

組合員・組合員資格

  • (1)小規模事業者の判断について
    今般、設立途上の事業協同組合の設立同意書の中に、中協法第7条に規定する小規模事業者の範囲を超えた事業者が含まれているが、どのように対処したらよいか?
    中協法に基づく事業協同組合の組合員となることのできる者は、小規模の事業者であるが、その規模の基準は、中協法第7条に規定されているように、資本の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業者については1億円)を超えない法人たる事業者、又は常時使用する従業員の数が300人(小売業を主たる事業とする事業者については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については100人)を超えない事業者となっている。
    しかしながら、この基準を超える事業者であっても、実質的に小規模事業者であると認められれば組合員になれることになっている。したがって、設立途上の設立同意者については、その事業者の従業員数、資本の額又は出資の総額並びに資本力及び市場支配力等諸般の実情を勘案して発起人が小規模事業者と判断した場合には、いったん組合員たる地位を与え、組合成立後に公正取引委員会に届け出ることとなる。
    この場合に公正取引委員会から実質的に小規模事業者でないと最終的に認定されるまでは、その組合員又は組合に対して特別の措置がとられることはないのである。
  • (2)支店の組合員資格について
    小売業を営む者で組合の地区内に支店があって、当該支店は従業員50人以下である。
    地区外の本店は従業員50人以上で、しかも資本金が1,000万円を超えている場合、この支店は組合員資格に疑義があるか?
    疑義があるとすれば公正取引委員会に届け出る必要があるか?
    また、その場合の手続方法は?
    組合員資格に関する使用従業員数の数は、本支店合わせたものとされているから、ご質問の場合明らかに50人を超え、しかも資本金が1,000万円を超えているので、公取委への届出が必要である。
    ただし、組合員たる資格は従業員数、資本の額又は出資の総額が絶対的要件でなくその事業者の資本力、市場支配力、組合の内容等諸般の実情を勘案して判断すべきである。
    なお、当面その判定は組合自体が行うことになる。
    なお、公取委への届出の様式及び内容については、「中小企業等協同組合法第7条第3項の規定による届出に関する規則」(昭和39年2月7日公正取引委員会規則第1号)に具体的に定められている。
  • (3)公正取引委員会への届出について
    中協法第7条第1項第1号に規定する中小企業者の規模を超え、数カ所に支店をもつ業者が、各支店所在地に存在する組合に加入する場合、公正取引委員会への届出は、本店所在地の組合のみでよいか?
    中協法第7条第3項の届出義務は、組合に対して課せられたものであって、組合員が他の組合に重複加入している場合でもそれぞれ加入している組合に届出義務がある。
  • (4)農業者の組合員資格及び事業所の定義について
    管内の群を一円とした農業者で、乳牛飼育及び養鶏を行う者が、飼料の共同購入、生産品の共同販売等を主な共同事業として、組合を設立する旨の認可申請があったが、定款に次の疑義があるので回示願いたい。
    (定款)
    第8条 本組合の組合員たる資格を有する者は左の各号の要件を備える小規模の事業者とする。
    1 畜産を行う事業者であること。
    2 組合の地区内に事業場を有すること。
    (1)1号(畜産を行う事業者であること)についてであるが、加入申込者100名は全員農家でそれぞれ乳牛1、2頭を所有し、乳牛の販売をしているもの、又は養鶏を行い卵を販売しているもの等であるが、加入資格定款記載は畜産を行う事業者としてあり、これを認めて差し支えないか。
    (2)2号(組合の地区内に事業場を有すること)については、組合員になろうとする者全員が組合を通じて牛乳及び鶏卵の共同販売を行おうとするものであるが、事業場とはこれら養畜者(組合員になろうとする者)の畜舎等を事業場として認めて差し支えないか。
    (1)農家であっても、その者が畜産又は養鶏の事業を行うものであるときは、畜産又は養鶏の事業者として事業協同組合を組織することは差し支えない。なお、畜産には養鶏を含まないと解されるので説例の「畜産を行う事業者」は「畜産又は養鶏を行う事業者」とするのが適当である。
    (2)畜舎等を事業場と解しても差し支えない。
  • (5)保育所経営者の組合員資格について
    児童福祉法に基づき設置された児童福祉施設たる保育所の経営者は、中協法第8条の規定による事業者と見做良いと考えるがどうか。
    設問については、貴見のとおり保育所設置の許可を受けた者は、中協法第8条第1項に規定する「その他の事業を行う」者であると解する。
  • (6)発明考案を行う者の組合設立の可否
    次のような発明考案を行う者による事業協同組合設立は可能か。
    「事故の発明考案を自己又は他人に実施せしめて代償を得て生計の資に充当したる実績を有し、更に現在所有する発明考案を実施せんとする行為を継続し、又は新たな発明考案の行為を継続している者」
    中協法第8条の小規模事業者というためには、少なくとも自己の名をもって事業を行うこと及び事業を反覆継承して行っていることが必要である。ご質問の資格を有する者が事業であるといい得るには、自己の発明考案を反覆して自ら実施し、又は他人に実施させており、かつ、その際自己の名において取引する者であればよいものと考えられる。例えば、発明考案を趣味として行う者、企業内の研究者等はこれに該当しないものと考える。したがって、ご質問の資格事業の定め方については、「これを生計の資に充当したる実績を有する」ことは不要であるが、また、単純に「新たなる発明考案の行為を継続する者」では不十分と考えられ、例えば以下のような定め方とすべきと考える。
    「自己の発明考案を自主実施又は他人に実施せしめるなどの事業行為により代償を得た実績を有し、かつ、現に所有する発明考案を実施しようとする行為を継続している者であって、新たな発明考案の行為を継続している者」
  • (7)営業免許を受けていない者を含む組合設立等について
    1. 本県において急便業の協同組合設立認可申請があるが、急便業は、他人の委託を受けて小口物品の買入れを行い、かつ、買入れた物品の運送を行い、又は他人の委託を受けて小口物品の運送を業としており、中協法に定める事業者と認められるかどうか。
    2. 組合員になろうとする者のなかには、自動車を有し、道路運送法上の免許を受けないで運送を行っている者もいるが、これを組合員とすることは道路運送法との関連からみて問題はないか。また、これら無免許者を除外して認可することは、中協法上可能か。
    1. 定款で組合員資格を「他人の委託を受けて小口物品の買入れを行い、かつ、買入れた物品の運送を業とするもの」と定めた場合、道路運送法の免許を受けていると否とを問わず、定款規定に該当する者は当該事業協同組合に加入資格を有する。
    2. ただ、無免許者が組合に加入し、当該無免許運送事業に関し共同施設事業を利用すると結果的に組合が法令違反事業に関する共同施設を行うことになり好ましくないので、極力関係機関と連絡をとり組合の事業について違法状態が発生しないよう必要な措置をとることが好ましい。
  • (8)公益法人の信用協同組合への加入について
    1. 地方自治体が出損して設立された民法第34条に基づく公益法人で、県(市)の総合開発推進のため必要な土地の確保等を行う財団法人〇〇県(市)開発公社は、法解釈上信用協同組合の組合員資格があるか。
    2. 組合員資格があるとすれば、出資金3億円、従業員300人を超えれば、公正取引委員会に届け出る必要があるか。
    1. 信用協同組合の組合員資格を有する者は、中協法第8条第4項の規定に基づき、組合の地区内で商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う小規模の事業者、地区内に住所、居住を有する者、及び地区内の勤労者で定款で定める者である。
    ここにおいて「・・・の事業を行う事業者」とは、個人、法人を問わず継続、反覆して事業を行っている者を指し、必ずしも営利を目的として事業を営んでいることを要件としていないものと解されるので、財団法人〇〇県(市)開発公社もこの限りにおいて、組合員資格を有する者と考えられる。
    2. また、当該法人が法7条第1項第1号の(イ)又は(ロ)の規模(出資の額3億円、従業員数300人)を超えた場合には、同条第3項の規定に基づき、当然に公正取引委員会に届け出なければならないものと考える。
  • (9)事業協同組合への消費生活協同組合の加入について
    消費生活協同組合の構成員のための必要物資の購入等を行うものであるから「事業者」であり、事業協同組合への加入は組合員たる資格事業を満たせば加入できると思うが、生活協同組合のように国民生活の安定と生活文化の向上とを目的としている団体が中小企業者の経営の合理化・近代化を目的とする事業協同組合に加入することは、相互の趣旨から不適当と思われるがその取扱いを如何にすべきか。
    事業協同組合の組合員たる資格を有する者は、組合の地区内において事業を行う小規模事業者又は事業協同小組合で定款で定めるもの(中協法第8条第1項)となっており、生活協同組合も一個の事業者であるので、事業協同組合の組合員たる資格を有することは貴見のとおりである。
    したがって、生活協同組合の目的が国民生活の安定等を図ることにあり、その目的を達成するため組合全体の事業の円滑化等を期待して事業協同組合に加入することは極めて異例とは考えるが、あり得ることで、両組合の目的に照らし如何なる場合も不適当であるとすることはできない。もちろん多くの場合生活協同組合の加入により、当該事業協同組合の組合員の利益が阻害されることが予想され、この場合、加入を拒否することは正当であると考えられる。
  • (10)協同組合連合会への他の法律に基づく協同組合の加入について
    協同組合連合会に加入することができることとなっている中協法以外の法律に基づく協同組合にはどのようなものがあるのか。
    協同組合連合会の会員たる資格を有する者については、中協法第8条第5項で、連合会の地区と全く同一であるか又はその区域内の一部のみを地区として、①中協法に基づいて設立された組合(企業組合を除く)及び連合会並びに②他の法律に基づいて設立された協同組合とされ、定款に組合の種類を具体的に規定しておくことが必要である。
    つまり、①は事業協同組合、事業協同小組合、火災共済協同組合、信用協同組合、協同組合連合会を指し、②はその名称中に「協同組合」という文字を使用すると否とを問わず、およそ中小規模の事業者等構成員の相互扶助を目的とし、協同組合精神に基づき設立された組合及び連合会を指すもので、塩業組合、森林組合、消費生活協同組合、農業協同組合及びそれらの連合会がある。
    一方、中団法に基づく協業組合、商工組合や、酒税の保全及び酒類組合等に関する法律に基づく酒造組合、酒販組合等は、協同組合と本質的に性格を異にしており、協同組合ではないから会員資格に含めることはできない。
    また、商店街振興組合についても、中小規模の事業者のみが加入できることとなっていないので、加入資格はないものと解される。
    なお、水産業協同組合法に基づく漁業生産組合及び森林組合法に基づく森林生産組合は、企業組合とほとんど同様の性格を有する組合であり、企業組合については会社等と同様にそれ自体が一個の企業体であり、事業協同組合のように事業者の結合体ではないことから連合会への直接加入を認めるべきではないと解する。
    2 中協法に基づく協同組合連合会には、その行う事業の種類により、次の3つの種類に区分される。
    (1)火災共済協同組合連合会、再共済事業を行うために火災共済協同組合で組織する連合体であり、中協法第26条の2の規定により、火災共済協同組合以外の前掲各種組合には会員資格を与えることができない。また、この連合会は全国を通じて1つしか設立できない。
    (2)信用協同組合連合会、連合会自体の事業として信用事業のみを行う連合会である。法律解釈上では信用協同組合で組織する連合会という意味ではないので、信用協同組合以外の組合も、連合会の定款の加入資格として規定されていれば加入することができる。
    (3)(1)及び(2)以外の協同組合連合会 連合会の事業として再共済事業、信用事業以外の一般の経済事業又は非経済事業あるいはその両事業を行う連合会であり、事業協同組合で組織する連合会という意味ではないので、連合会の定款の会員資格として規定されていれば、事業協同組合以外の前掲各種組合も加入することができる。
    なお、上記2の(2)及び(3)の連合会の加入資格で「前掲各種組合」とは、1で説明した中協法の趣旨に沿わない組合まで含める意味ではないので念のため申し添える。


  • (11)組合加入資格と独占禁止法の関係について
    私どもの組合は、一般機械器具製造業者で組織する事業協同組合ですが、最近、当組合の地区内に本社を置く資本金1億5千万円、従業員350人の中堅機械メーカーA社が、当組合に加入の申し込みを行ってきました。
    当組合としては、組織強化のためA社を受け入れたいのですが、このように法律上の中小企業者の範囲を超える事業者であっても、組合に加入できるのでしょうか。
    この問題は、(1)事業協同組合の組合員資格と、(2)独禁法との関係、の2つの問題に分けて考える必要があります。
    (1)まず、事業協同組合(以下、「組合」という。)の組合員資格は、中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)第8条で「小規模の事業者」であることが定められており、いわゆる大企業は組合には加入できないことになっています。これは、組合が中小企業者のための組織制度として設けられているからにほかなりません。
     この小規模事業者の基準は、組合法第7条第1項第1号に定められており、製造業の場合は、資本金が1億円以下であるか、常時使用する従業員数が300人以下であることがその要件となっています。
     したがって、A社の場合はこの基準を超える事業者ということになりますが、ただ、小規模事業者であるか否かの判断は、この基準のみによって行われるものではなく、これを超える事業者であっても、その事業者の競争力、市場支配力、地域経済の実情等、諸般の実態を検討したうえで実質的にみて小規模の事業者と認められる場合は組合員となる資格を有することになります。
     そして、この実質的小規模事業者であるか否かの判断は、加入の申し込みがあった際に組合自身が行うことになります。
    (2)貴組合の判断によってA社が実質的小規模事業者と認定され、組合への加入が認められたとしますと、次に独占禁止法(以下、「独禁法」という。)との関係がでてきます。
     まず組合は、小規模事業者の基準を超える事業者が組合に加入している場合には、その事実が発生した日から30日以内に公正取引委員会に届け出ることが義務づけられています。
     独禁法は第24条によって、事業協同組合等については小規模事業者の団体として、同法を適用しないこととしています。
     つまり、組合はその小規模事業者団体性をもって独禁法の適用除外団体とされているところから、小規模事業者の基準を超える事業者が組合に加入しているときは、公正取引委員会はその事業者が実質的にみて小規模事業者でないと認めた場合には、独禁法の適用除外が解除され、その組合に同法が適用されることになります。
     先に述べた公正取引委員会への届出は、同委員会がこの認定を行うについてその事実を知るために義務づけられているものです。ただし、公正取引委員会のこの認定は、届出がなされた時に行われるのではなく、組合の共同行為に問題が生じたときに行われているようです。
     なお、認定により独禁法の適用を受けても組合は存続します。また、公正取引委員会は、この認定権の行使のほかに、組合法第107条により、常時使用する従業員数が100人を超える事業者が実質的に小規模事業者でないと認めるときは、その者を組合から脱退させることができることになっています(排除権)。
     この認定権と排除権の関係については、公正取引委員会は、認定権を行使して組合そのものに独禁法を適用するか、あるいはこの排除権を行使して大企業を排除するか、いずれか一方の措置を選択することができるものと解されています。
  • (12)商工会議所加入を組合員資格要件とすることについて
    商工会議所の会員であることを組合員の加入資格とすることは適当か?                                   
    事業協同組合は、組合員の経済的地位の向上をはかるための組織として、組合員が共同して経済事業を行うものであり、したがって組合員の資格の決め方は経済的要件に限るのが適当で、「会議所の会員であること」と規定することは、経済的な見地からみて必要性が認められず、いわゆる資格事業という概念に該当しないと思われるので、適当でないと考える。
  • (13)社団法人会員であることを組合員資格要件とすることについて
    (財)不動産流通近代化センターの発足により、全国的に不動産業者の組織化が図られているが、(社)宅地建物取引業協会〇〇支部で、〇〇地区不動産協同組合の設立諸準備を進めているところであるが、定款の組合員資格に「社団法人〇〇宅地建物取引業協会の会員であること」と規定することはさしつかえないか?
    社団法人との協調の内容、組合の設立趣旨・事業内容等が判然としないので判断しかねる点はあるが、一般的には、次のような理由からご照会の事項は適当でないものと考える。
    (1)組合員の加入資格は、経済的条件に限るべきであるが、本件では、経済的にどのような必要性があるかあいまいである。
    (2)この場合、社団法人会員であることをもって、企業規模等の一定水準にある者を確保するという趣旨も考えられるが、これは、同水準にある非会員企業の加入を制限することとなる。なお、企業規模等による区別は、組合の趣旨から、特別の理由がある場合を除き、適当でないところである。
    (3)また、社団法人会員であることをもって、協調性・事業近代化への積極性等を判断する材料とする意図も考えられるが、かかる抽象的な事項を組合員資格として定款に規定することは適当でないところである。
    (4)組合が他の団体の意向等に左右されるため、組合の独立性・自主性が失われるおそれがある。すなわち、加入脱退、事業実施等が他の団体の意向に左右され、組織、事業運営両面が不安定となり、意見決定等における自主性がそこなわれるおそれがある。
  • (14)下請業者の集団化における組合員資格の決め方
    組合員資格は取引の分野(特定会社の下請業者、特約店)によって定めてもよいとされているが、集団化の場合は、組合員資格を取引関係によって規定すると、親企業との取引関係がなくなった場合に資格喪失により組合員でない者が団地内に施設を設置していることになり、好ましくない事態が生ずることとなる。したがって、下請業者の集団化の場合は取引関係によって組合員資格を定めることは適当でないと思われるが、その是非を回答されたい。
    下請業者の集団化組合の場合は、ご意見のとおり、組合員資格を親企業との取引関係によって規定することは、集団化の特殊性を考慮すれば十分検討の要があるものと考える。
    しかしながら、親企業の共通する下請業者がそのことに着目して組織化することは、それなりに意義のあることであり、集団化の場合も同様のことがいえる。
    また、制度的には、その意図をもった組合設立の場合に、組合員資格を特定親企業と取引きするものと規定しないと加入自由の原則によって、当該親企業と取引関係のない者の加入を拒めないことになり、ひいては意図した組織化の方向が阻害されることとなる事態も考えられる。
    したがって、下請業者の集団化の場合にはこのような組合員資格の定め方には十分検討の要があるが、取引分野によって組合員資格の定め方も差支えないというのが通説でもあり、参加者のなかに将来当該親企業との取引関係がなくなることが明らかに予見される等のことがない限り、このような組合員資格をもって組合設立を行いたいとするものに対して、これを不適当と断定することはできないものと考える。
  • (15)火災共済協同組合への商工会の加入について
    火災共済協同組合の組合員資格は、中協法第8条第3項及びこれに基づく中協法施行規則第1条により「地区内において、農業、林業及び水産業以外の事業を行うすべての小規模の事業者」と規定されていることから、下記の理由により、商工会は火災共済協同組合に加入できると解してよいか。商工会の主たる事業は、地区内の商工業の経営及び技術に関する相談に応じ、又は指導する事業、商工業に関する情報資料の収集提供の事業、商工業に関する講習会等を開催する事業、商工業に関する施設を設置して維持・運用する事業等であり、これらを継続反覆して行っているものとして事業者と考えられる。さらに、商工会は、従業員規模から見て明らかに小規模の事業者であると判断される。
    1. 商工会は地区内の商工業に関する相談に応じ、又は指導を行う事業等を継続反覆して行う事業者であって、中協法第8条第3項に規定する事業者に該当するものと判断される。
    2. また、火災共済協同組合の行う共済事業は、地区内の中小企業が火災等による財産の損失を相互に扶助し合うことを目的としており、地区内の中小商工業者を主たる構成員とする商工会が火災共済協同組合に加入することは、火災共済事業の拡大発展に資するものであり、組合の健全な運営を図る必要性からみても積極的意義を有するものと考えられる。
    3. したがって、「地区内において農業、林業及び水産業以外の事業を行う全ての小規模の事業者」を組合員資格とする火災共済協同組合に商工会が加入することが出来るものと解する。
  • (16)賛助会員制度について
    平成3年、中小企業庁の通達により、組合に賛助会員制度を設けることが認められたと聞きました。           
    私どもの事業協同組合でも、賛助会員制の導入を検討しておりますが、次の点についてご教示下さい。   
    (1)賛助会員の資格に制限はあるのでしょうか。                                                                               
    (2)賛助会員の組合事業利用は、員内利用扱いとなるのでしょうか。                  
                  
    平成3年6月に、事業協同組合等の模範定款例の一部改正(平成3年6月12日付3企庁第1362号、中小企業庁指導部長通達)が行われ、賛助会員制に関する規定が定款例に次のように位置づけられました。
    第7章 賛助会員
    (賛助会員)
    第50条 本組合は、本組合の趣旨に賛同し、本組合の事業の円滑な実施に協力しようとする者を賛助会員とすることができる。ただし、賛助会員は、本組合において、法に定める組合員には該当しないものとする。
    2 賛助会員について必要な事項は、規約で定める。
    この賛助会員制が定款例に位置づけられた趣旨は、組合が賛助会員制を活用して外部関係者を組織化することにより、その協力と理解を得るなど、最近特に重要性が高まっている組合と組合外部との交流・連携を促進しようというものです。
    したがって、単なる資金集めのためにこの制度を活用することはできません。
    (1)賛助会員の資格は、定款例には、「本組合の趣旨に賛同し、本組合の事業の円滑な実施に協力しようとする者」となっており、このほかに特に資格についての制限はありません。
     賛助会員の資格は、組合の実情に応じて定めることができますが、外部関係者を組織化することにより、その協力・理解関係の一層の増進に資するという賛助会員制の主旨に留意し、その範囲を逸脱しないようにすることが肝要です。
     また、賛助会員は法に定める組合員には該当しないので、注意が必要です。
    (2)賛助会員は組合員ではないので、定款に定める組合事業を利用する場合は、員外利用に該当することになります。
     組合が賛助会員に対して行う利便の供与等の事業活動としては、例えば、
      ① 組合が作成または発行する資料等情報の提供、
      ② 組合または組合員との情報交換のための懇談会等の開催、
      ③ 賛助会員に対する指導・教育、
      ④ その他賛助会員制の設置目的を達成するために必要な事業等が考えられますが、これらの事業活動は、
     あくまで賛助会員制の主旨を逸脱しない範囲で行うことができるものです。
     また、組合が賛助会員に対して行うこのような事業活動は、直接の利用者が賛助会員であっても、その利用の態様が組合員の利用と競合する(組合員の利用に支障を与える)ものではなく、むしろ組合員への奉仕という組合本来の目的の達成のために必要な事業として行うのですから、この場合の賛助会員の利用は、員外利用には該当しないと解されています(平成3年6月12日付3企庁第1325号、中小企業庁指導部長通達「中小企業等協同組合法及び中小企業団体の組織に関する法律の運用について」において、員外利用の概念が明示されているので、参照されたい。)
     最後に、定款例では、賛助会員についての必要な事項を規約で定めることとしていますので、賛助会員制を導入する場合は、規約を設け、制度の内容を明確にしておくことが必要です(全国中央会作成の「規約例」を参照されたい。)。

その他

  • (1)組合の政治的中立の解釈について
    中協法第5条第3項において規定する「組合は、特定の政党のために利用してはならない」とは、政治活動を一切禁止しているものと解釈すべきか否か?
    中協法第5条は、中協法に基づいて設立される組合が備えていなければならない基準と運営上守るべき原則を規定したものであり、第1項で基準を、第2項及び第3項で原則を示している。
    設問の中協法第5条第3項「組合は、特定の政党のために利用してはならない」の規定は、通称政治的中立の原則と称されるもので、中小企業者等が共同して事業を行う組織である組合は、経済団体という基本的性格を逸脱して政治団体化し、特定の政党の党利党略に利用されることは、組合の本来の目的からみて当然のこととして禁止している訳である。
    しかし、本規定は、組合の外部勢力により、あるいは組合内部の少数者によって、組合が政治目的のために悪用されることを防止する趣旨であり、したがって、総会等で特定候補者の支持を決議し、その者への投票を組合員に強制すること等を禁じているものと解されるので、組合の健全な発達を図るための例えば国会等への建議、陳情等までも禁止する意味をもつものではない。
  • (2)組合役職員の政治活動について
    「組合は、特定の政党のために利用してはならない」という規制(中協法第5条第3項)以外に、中協法には特に規定していない。
    したがって、その趣旨に反しない限り、組合の役職員は、公民として有する政治活動は規制されないと解され、また、公職の候補者となることについても、道義上理事会の同意を求めるなり、就業規則の定めるところにしたがい最高責任者の許可を得た範囲で行うことについても同様禁止事項に該当しないものと解されるが、見解を承りたい。
    中協法第5条第3項の趣旨は、組合の外部勢力により、あるいは内部の少数者によって組合が政治目的のため利用されることを防止することにある。
    具体的な内容としては、「組合の名において」特定の公職選挙の候補者(組合の役職員が候補者である場合を含む)を推せんしたり、あるいは総会等において特定の候補者の推せんや特定政党の支持を決議することなどが該当すると解する。
    したがって、組合の役職員が、本条の趣旨に反することなく、個人の立場で政治活動を行い又は、公職選挙に立候補することは何ら差支えなく、憲法上認められた国民の権利として当然のことと考える。
  • (3)組合が会社・財団等に対して行う出資・出捐の可否について
    最近の組合員ニーズの多様化・高度化等に伴い、組合は従来より一層広範でかつ多面的な事業展開を要請されている。このような中で、組合が組合員のニーズに対応しようとする場合、組合単独で行うよりも他の組織と連携して行った方が効率的であるもの、又は連携しないと実現し得ないもの等もあり、組合が出資・出捐という方法・手段により、連携する組織に関与し、これとの緊密な関係を保ちつつ、組合の事業を円滑に推進し、組合員のニーズの実現を図っていくことが必要になっている。
    組合が会社・財団等に対して行う次のような出資・出捐については、組合はその目的の範囲内の行為として、これを行うことができると解してよいか。
    1.組合員全体の経済的地位の向上のために、その事業を補完・支援しその発展に資する事業を行う会社・財団等の対する出資等
    例えば、
      ① 小売業を営むものからなる組合がその組合員の入店する店舗の維持・発展のために行う共同出資会社への出資
      ② 商店街の街づくり会社、業界の技術研究開発会社等第三セクターへの出資・出捐
    2.組合の共同事業を円滑に推進するために連携が必要な会社等に対する出資等
     例えば、
      ① 組合の取引先会社への出資
      ② 組合の共同事業を補完する事業を実施する会社(共販会社、卸会社、共同計算センターなど)への出資
    事業協同組合、事業協同小組合、同連合会、商工組合及び同連合会(以下「組合」という。)の行う出資等が、組合自身の営利を目的とする行為とならず、組合員全体の経済的地位の向上に役立つものであり、かつ、それが例えば総会の議決を経るなど組合員の総意を反映した形で行われるものである場合には、組合の目的の範囲内の行為としてこれを行い得るものと解する。
  • (4)企業組合の従事分量配当に対する課税について
    中協法第9条においては、「組合の所得のうち、組合事業の利用分量に応じて組合が配当した剰余金の額に相当する金額については、その組合には、租税を課さない」と規定されているが、企業組合が中協法第59条第3項の規定により「組合員が企業組合の事業に従事した程度に応じて」配当した剰余金の額、いわゆる従事分量配当した剰余金の額に相当する金額に対しても、中協法第9条の規定が適用され、租税は課されないこととなるか。
    企業組合の行う従事分量配当に対しては、中協法第9条の規定は適用されず、したがって租税が課されることとなる。
    ただし、事業協同組合、信用協同組合及び協同組合連合会の収入は、その組合員又は会員に賦課した経費、あるいは事業を利用させることによって徴収した手数料等が主たる財源である。そこでこれらの組合が事業年度末において剰余金を生じたとすれば、その原因は経費、手数料等を余分に徴収したということになる。
    組合は、その事業を行うことによって組合員の直接の奉仕をしなければならない(第5条第2項)法人であるから、かかる性格の剰余金は、本来組合員に属すべきであるので、これを利用分量に応じて配当することは、手数料の割戻しになり、利潤の分配ではない(経費の場合については、仮受金処理等別途の経理方法があるので、ここでは説明を省略する。)したがって中協法第9条で租税を課さない旨を規定し、これに対応して法人税第61条(各事業年度の所得の金額の計算)には、利用分量配当相当額を損金に算入する旨が規定されている。
    しかしながら、企業組合にあっては、組合員は企業組合の事業に従事することを原則としており、組合事業は組合員を相手方として取引をするものではない。したがって企業組合の所得は、第三者を相手方とする純粋の事業活動によって生ずるものであるから、従事分量配当は手数料等の割戻しではなく、利潤の分配としての性格を持っているので、中協法第9条の趣旨とは全然別個のものである。
  • (5)組合の株式取得の是非について
    事業協同組合は組合員たる株式会社の株式を取得することができるか?                                
    組合が組合事業の遂行に益する関連機関の株式を所有すること及び余裕金を管理する一方法として安全有利な株式を所有することは可能である。
    ただし、利殖事業として株式を所有することは、組合の事業目的を逸脱することになる。
  • (6)組合員が1人となった組合の存続について
    中小企業等協同組合の組合員が1人となった場合は、中協法第62条に規定する解散事由には該当しないが、同法の目的(第1条)及びその目的達成のための組織並びに運営に関する諸規定の趣旨から当然に解散になるものと解するがどうか?
    中小企業等協同組合は、組合員数がいわゆる法定数を下回ることになっても、当然には解散しない。
    なぜならば発起人の数(中協法第24条)、役員の定数の最低限度(同第35条)、持口数の最高限度(同第10条第3項本文)の面からみれば、組合員数は一見4人(連合会にあっては2組合)以上なければならないようであるが、これは組合の存続要件ではなく、設立要件であって、欠員の場合も十分に予想しているからである。
    問題となるのは設例の場合のように組合員数が1人となった場合であるが、現行法上においては、この場合にも組合は解散しないものと解する他はない。
    因に商法第94条第4号で「社員ガ1人ト為リタルコト」を法定解散事由と定めているが、中協法においては、これを準用していないからである。
    しかしながら、組合員が1人となった場合は組合は人的結合性は完全に失なわれ、法の目的に反する結果となるので立法論としてはこれを法定解散事由に加えるようにすることも考えるが、現行法上は中協法第106条によって措置すべきであろう。

事業

  • (1)定款記載事業を実施しない場合の処理について
    定款に、
    第7条 本組合は第1条の目的を達成するため次の事業を行う。
    1 組合員の取扱品の共同購買、共同保管及び共同配送
    2 組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む)及び組合員のためにするその借入
    3 〇〇金庫、✕✕銀行その他組合員の取引金融機関に対する組合員の債務の保証
    第41条 総会においては、法又はこの定款で定めるもののほか、次の事項を議決する。
    1 借入金額の最高限度
    2 一組合員に対する貸付け(手形の割引を含む)又は一組合員のためにする債務保証の金額の最高限度
    と規定している協同組合が、
    1. 定款第7条第2号及び第3号の事業は当分の間実施しないこととして総会に対し定款第41条第2号の決議の審議を求めず、総会に出席した組合員もこれに関する決議を要求しなかったために、総会がこれに関する一切の決議をせずに終了したときには、理事は職務過怠の責を負うべきか?
    2. 定款に記載してある事業を一定期間実施しないときは、必ず総会にはかり定款の一部を改正して、その該当事項は削除しなければならないか?
    1. ある事業年度において組合が行おうとする事業については、事業計画書及び収支予算書に記載され、総会の議決を経なければならないことになっている(中協法第51条第1項第3号)ので、この議決を経ていない事業は、定款に記載されていても、当該事業年度においては、実施しないことになる。
    したがって、設問の事業資金の借入及び貸付事業については、その組合が当該事業年度においてこれを実施しないため、事業計画書及び収支予算書に記載されていないのであれば、借入金額の最高限度、一組合員に対する貸付金額の最高限度等に関する議決を行わなかったとしても、理事の任務過怠であるとして指摘する程の問題ではないと解する。
    2. その事業の実施が、翌事業年度ないし近い将来において再開される見込がある場合には、特に定款を改正して、当該条項を削除する必要はない。
  • (2)組合事業の利用強制について
    製氷業者において、組合員の製氷をすべて組合を通して販売する目的をもって事業協同組合設立の動きがあるが、これら事業につき次の点をお尋ねする。
    1. 組合規約で「組合員の製氷はすべて組合を通じて販売しなければならない」旨の直販禁止を行うことは、独禁法上からも差し支えないか。
    2. 上記の規約に罰則を付する場合とそうでない場合とでは、法的に効果は異なるか。
    3. 販売価格は、組合自体が定める価格であるので、「価格協定事業」に該当しないと考えるがどうか。
    1. 協同組合の事業の利用を組合員に強制することは、その行為の内容が独禁法第24条但し書に該当するもの、すなわち、「不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引上げることとなる場合」でない限り差支えないと解する。
    したがって、ご質問のように組合規約に組合員の製品の直売禁止を規定することは、独禁法第24条の要件を充たしている限り差支えない。
    なお、組合事業の利用を強制することは、組合員の自由を不当に拘束する危険があること、また、農協法第19条において組合が組合員と組合事業の一部の専属利用契約を締結する場合は、契約の締結は組合員の任意としていることから、農協法第19条を類推して組合は組合員が自由意思により専属利用契約を締結した場合のほか組合事業の利用強制はできないとする有力な説があるので、慎重に行う必要がある。
    例えば、組合規約により行う場合でも、組合員全員一致による議決を行う等の配慮が必要であろう。
    2. 組合事業の利用強制が適法と解される以上、当然罰則を付けることは、差支えない。
    3. 貴見のとおりである。
  • (3)共同受注と一括下請負の禁止について
    事業協同組合が建設工事等を共同受注しようとする場合、建設業法第22条「一括下請負の禁止」の規定が適用されているが、同条第3項の但し書きの規定により発注者の承諾を得た場合に限り共同受注が同条本文の適用の除外となることとなっている。
    しかし、同条の主旨は一括下請負により工事施工の責任が不明確となること、あるいは商業ブローカー的不良建設業者の出現等を排除するために規定されたものであることからすると、建設業関係の事業協同組合は建設業法の許可基準の要件を満たし、組合にしかるべき有資格者が設置されているとして建設業の許可を受けており、組合の管理、監督のもとで工事施工する場合、責任の所在は明らかである。
    また、協同組合の特殊性を考慮すればブローカーを排除するための規定には該当しないものと考えられる。
    したがって、事業協同組合の共同受注は、建設業法第22条「一括下請負の禁止」の条項に該当しないものと思われるが、これに関してご見解をお示し頂きたい。
    また、測量関係組合が共同受注する場合の測量法第56条の2「一括下請負の禁」条項に関しても建設業法と同様に解釈してよろしいか併せてご見解をお示し頂きたい。
    1 建設工事について建設業における組合の共同受注については、建設省計画局建設業課と協議したところ、
     次のとおり解釈される。
    (1)建設業法第22条で一括下請負をいかなる方法をもってするかを問わず原則禁止している趣旨は、
      ①発注者の保護②中間搾取の排除である。
      (注)① 一括下請負は実際上の工事施工の責任の所在を不明確にし、ひいては工事の適正な施工を妨げるおそれがある。
         ② 中間搾取を容認すれば、工事の質の低下、商業ブローカー的 不良建設業者の輩出のおそれがある。
    (2)組合の場合、通常中間搾取のおそれはないとしても、受注した案件を単に組合員に配分するだけでは、発注者側として具体的にどのような者が工事を行い、技術的な管理を行うのか不明であるため、上記1.①の観点から一括下請負に該当するといわざるを得ない。
    (3)しかしながら、組合はもともと建設業法に基づき、しかるべき資格を有する技術者がいること等について審査のうえ、建設業の許可を受けているはずであり、組合として受注した案件について組合として責任ある管理、監督のもとに施行する場合には一括下請け負いには該当しないと考えられる。
    (4)したがって、組合としては、(1)組合として責任ある管理、監督のもとに施行するか(この場合には、一括下請負には該当しないと考えられる。)、(2)しからざる場合においては、一括下請負に該当するため、書面により発注者の承諾を得て施行するか(建設業法第22条第3項参照)いずれかによることが必要である。
    2 測量業について測量業における組合の共同受注についても、同省測量業課と協議した結果、測量法に基づき登録を受けた組合が責任ある管理、監督のもとに施行する共同受注については、建設業の解釈と同様に「一括下請負」には該当しないものと考えられる。
    3 以上のとおり、いずれの場合にせよ発注者としては、当該組合の具体的内容、信頼性等について不明な場合、「一括下請負禁止」をもち出していることも考えられ、上記1の4.を踏まえつつ、各組合において発注者と協議されたい。
  • (4)公平奉仕の原則の適用について
    一部の組合員のみに利用される組合事業を実施することは、いわゆる公平奉仕の原則に反するか。                           
    従来、以下のような場合には、いわゆる公平奉仕の原則(中協法第5条第2項、中団法第7条第2項)に反しないものとされてきたが、さらに、個々の組合事業それぞれにおいて、全ての組合員に対して奉仕することまでを求める趣旨ではなく、組合が全ての組合員を対象とした共同事業を適切に実施している場合においては、組合が一部の組合員を対象とした他の共同事業を行っても、その他の組合員を対象にした共同事業が別途行われる計画、仕組みとなっている場合には、公平奉仕の原則に反しないこととされている。
     ① 組合事業が現実に一部の組合員についてのみ利用されるのであっても、組合事業の利用の機会が公平に与えられるようになっている場合
     ② 組合事業の利用の機会が過渡的に一部の組合員についてのみ与えられているにすぎないとしても、将来的に他の組合員にも利用の機会が与えられる計画、仕組みとなっている場合
     ③ 組合員の事業が有機的に連携している組合において、資材購入や研究開発等の組合事業が一部の組合員についてのみ利用される場合においても、その効果が組合員事業の連携等を通じ究極的に他の組合員にも及ぶことが明らかである場合
  • (5)チケット事業に対する割賦販売法適用について
    組合の行うチケット事業は、割賦販売法の適用をうけるか?                                                           
    事業協同組合のチケット事業については、割賦販売法の全部は適用されないが、一部が適用されている。
    但し、適用条文は日常業務にそれほど関係はないので、その影響は極めて僅かなものとなっている。
    即ち組合のチケット事業は、同法第31条の登録をうけなければならない同法第2条第5項の割賦購入あっせんに該当するが、同法第31条但し書の規定により登録が免除されている。
    用される条文は、同法第30条(証票の譲受け等の禁止)及び第43条(報告の徴収)である。
  • (6)共通クレジットカードの発行について
    本会は、チケット発行事業を行う協同組合を会員とする協同組合連合会であるが、このたび単位組合のチケット会員の交流、伝票・帳簿の統一、代金回収のあっせん等を行うことを目的に共通クレジット発行事業を計画しているが、これは連合会の事業として可能か。
    また、割賦販売法上の割賦購入あっせんに該当するものかどうか。
    事業協同組合の行ういわゆるチケット発行事業は、組合員である小売業者の販売業務を、組合が、顧客の信用調査、割賦販売を証する証票の発行、代金の回収等の割賦販売あっせんを行うことにより補完するものである。すなわち、当該事業は、中協法第9条の2第1項第1号に規定する「生産、販売、購買、保管、運送、検査その他組合員の事業に関する共同施設」の事業に該当する。
    また、事業協同組合によって組織される協同組合連合会は、会員である事業協同組合の共通事業等について補完、援助等の共同事業を行うことにより、会員組合の事業活動をより効果あるものとするところにその目的がある。
    貴会が推進中の全国共通クレジット制度は、全国共通クレジットカードの発行、伝票、帳簿の統一、代金回収のあっせん等を行うことにより、会員組合のチケット発行事業の統一、拡大、運営の充実等を可能とし、ひいては組合員である小売業者の経営の向上に寄与し、上記の協同組合連合会の事業について規定する中協法第9条の9第1項第4号の事業に該当するものと考える。
    なお、本共通クレジット制度は、会員組合にとって、当該組合の組合員以外の組合員(他の会員組合の組合員)が当該組合と契約した顧客と取引することにより他の会員組合の組合員に当該組合の事業を利用させるかたちとなる場合があり、中協法第9条の2第3項において制限している員外利用に該当するのではないかという疑問が想定される。しかし、本共通クレジット制度は、連合会と各会員組合との取り決めに基づき、連合会を媒体として各会員組合がそれぞれクレジットカードの利用契約を結んだ顧客を互いにその組合員にあっせんし合うというシステムをとっている。すなわち、会員組合が連合会の行うこのようなシステムを持つ全国共通クレジット制度に参加し、それを利用することが会員組合の事業となるものであって、他の会員組合と契約した顧客に対し別の会員組合の組合員が本共通クレジットカードを利用させることは、その組合員にとって他の会員組合の事業を利用したことにならず、その組合員の所属する組合の事業を利用したことになるものと考える。つまりこの面から本制度をとらえるならば員外利用に該当することにはならない。
    したがって、貴会が推進中の全国共通クレジット制度は、中協法に照らし記下院並びに貴会会員組合の事業として差し支えない。
    次に、協同組合の行うチケット発行事業は、割賦販売法によっても拘束され、同法第2条第3項の割賦購入あっせんとして取り扱われているが、本制度になっても単に代金回収について連合会又は他の会員組合に委託する場合のあることにとどまり、依然として割賦購入あっせんに該当するものと考えられ、割賦販売法上の扱いは従来に変更ないものと考える。
  • (7)組合が行う旅行あっせん事業について
    本組合はチケット発行事業を主とする組合であるが、このたび、従来組合員の福利厚生、チケット会員に対するサービスの還元として行っていた旅行を本格的に行うこととし、旅行あっせん業の登録を受け、組合員及びチケット会員に対する旅行あっせん事業を行うこととした。この場合に事業についての定款変更が必要か。また、チケット会員に対する旅行あっせんは員外利用に該当するかご照会する。
    1 貴組合の行おうとする旅行あっせん事業は、①組合員である商店の行う顧客招待旅行の共同化、
     ②組合員である商店の行う従業員に対する慰安旅行等の共同化、③組合員の福利厚生のための旅行あっせん、④チケット発行事業のチケット会員に対するサービスとしての旅行あっせん等の内容をもっている。
    2 一方、貴組合の定款において、上記1における①~④の事業に関連のある規定としては、「組合員の福利厚生に関する事業」及び「チケット発行事業及びこれに関連する事業」のみであり、①、②に該当する規定がないように見受けられる。
      したがって、ご照会の旅行あっせん事業が1の①②の内容をもつものであるとすれば、①②に該当する定款規定が必要であり、定款変更の必要があるものと考える。
    3 チケット会員に対する旅行あっせんについては、前記1の①~③の事業からみた場合は員外利用に該当するが、④の「チケット会員に対するサービス」という観点からは員外利用に該当しないものと考える。
      なお、この場合は、当該事業は旅行あっせん事業ではなく、あくまでチケット発行事業の中に包含されることになるので申し添える。
  • (8)組合が行う税務相談等と税理士法との関係について
    事業協同組合において行う組合員の税の申告、申請書類等の作成の事務代行は、税理士法に違反するとの抗議をうけたが、はたして税理士法違反か?
    協同組合の行う事業でも、その事業に関し他の法律の定めがあれば、特に適用除外がない限りこれに従わなければならない。
    税の申告等の税務官公署に提出する書類の作成業務として行われる税務相談等は税理士の独占業務であり、税理士以外の者がこれを行うことは税理士法違反となる。ただし、組合員多数のために行う税務講習会、経理指導に付随し、たまたま行う税務相談等はその対象にはならない。
    また、日常の記帳、決算の指導代行を行うことも差支えない。
  • (9)金融事業について
    中協法による協同組合(以下「組合」という。)が、「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む。)」の事業を行うために、必要な資金を組合が増資する名目で一定の額(1口1万円)に達するまで日掛又は月掛の方法により預り金として受入れ(受入勘定科目「増資引当預り金」預り期間1年、支払金利は定期積金方式に準ずる)て調達すること、又は組合員から借受証券により借入れて(支払金利についての約定はしていないが年6%を予定している)調達することは組合員よりの消費貸借と理解されるので、中協法第9条の2第1項第2号に規定している「及び組合員のためにするその借入」に違反するものではないと解してよいか?
    組合が、「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む)」の事業を行うために必要な資金を、増資の名目で受入れ出資金として貸付けることは貸付金が回収不可能となった場合等において増資をするために預り入れている組合員に不測の迷惑を及ぼすおそれがあり、ひいては増資の目的を達成し得ないこととなるので適当でない。
    しかし、単に増資するまで経理を区分して日掛又は月掛の方法により組合が受け入れることは差支えないが、これに対し組合員に金利を支払うことは預金の受入れとなると解する。
    法第9条の2第1項第2号の規定の趣旨は、組合員に対する事業資金の貸付事業と組合員に貸付けるための事業資金の借入れを認めているのであり、組合がその行う共同加工施設の設置等の共同事業のために資金を借り入れる場合は本号に規定する資金の借入れには該当せず、その附帯事業として当然認容されるものであり、本号はあくまでも組合員の事業資金の貸付のために必要な資金の借入事業を認めているのである。
    また、その借入先を特定しているものではなく、その必要な資金を銀行その他の金融機関に限らず、組合員からも借入れることによって実質的に預金の受入れになることまでも認められるものではない。
  • (10)貸付期間及び延滞期間の計算方法について
    私どもの組合で、金融事業を行っているが、このたび貸付を受けた組合員が期間内に償還金を支払うことができなく、そのため理事会において貸付期間の延長を決めた。
    それにより延長した日数により延滞利息を徴収することになったが、期間計算の方法について疑義が出たので原則的な期間計算の方法をご教示願いたい。
    お尋ねのように、契約期間が何月何日に終るのか、末日が何日になるのかが問題になることがたまたまあるが、この期間計算の方法は当事者間で自由に契約できるものである。
    この特約がない場合、一般的な計算の仕方に関して通則として民法上に規定があるのでこれによることになるので、これを簡単に説明すると、
    (1)時を以て定める場合
     この場合には、期間は即時から起算し(民法第193条)、所定の期間の終った時点を以て終了する。例えば、「午前9時から3時間」と定めたときは、この3時間の期間は午前零時に終る。
    (2)日、週、月、年を以て定める場合
     この場合には、日の端数を加えない。即ち期間の初日は算入しないので翌日から起算する。そして末日の終了を以て期間は満了する。例えば7月10日の朝に「今日から6日間」といえばその日の端数は計算に入れないで16日午後12時に満了する。
     但しこの場合、「明後12日から6日間」というように、その日がまるまる数えられるときは12日午前0時に起算することになるから、12日一杯が第1日として計算に入り、7月17日の終了を以て満了となる。
     月又は年で期間を定めるときは、月の大小や年の平閨を無視して暦に従って計算し最後の月又は年において起算日に応答する日を求め、その前が末日となる。
     即ち前例によると7月10日に「向う5カ月間」といえば、7月11日が起算日で、最終の月である12月に応答日を求め(12月11日)満期日はその前日12月10日となる。
     なお、最後の月に応答日がないときは、最後の月末日を満期とする。また期間の末日が大祭日、日曜日その他の休日に当りその日に取引をしない慣習があるときは、その翌日が満期日となる。
    大体以上のとおりであるから、これにより貸付期間及び延滞期間を計算するとよいと思われる。
  • (11)組合員等からの資金受入れについて
    金融事業の資金調達のため、組合員等より、3ヶ月、6ヶ月等に期間を限定し満期に利息を支払う契約で借入れている組合があるが、これは、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第2条に違反する行為であると考えられるがどうなのか?
    組合が「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む。)及び組合員のためにするその借入」の事業を行うために、その必要な資金を銀行その他の金融機関に限らず、組合員からも借入れることは差支えないが、その借入れが預金貯金又は定期積金と同様の性格を有するものであるかぎり「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」に違反するものと考えられる。
    また、一定の期間を定め、その中途又は満期日に一定の金額を給付することを目的として掛金を受入れることは、相互銀行法に違反するものと考えられるのみならず中協法の事業協同組合の範囲を逸脱するものと考えられる。
  • (12)異業種組合の共同事業について
    異業種で組織化し、主として教育情報提供事業と資金の貸付事業を行うことを計画しているものがあるが、このような組合でも設立が可能か?
    異業種組合は、異業種中小企業が協同してその相乗効果を発揮しようとするものであり、実施する事業も、共同製品開発、共同技術開発、教育及び情報の提供等のいわゆるソフトな事業が中心となることが見込まれるし、また組合員が共通に利用し得る事業として資金の貸付が活用されることが見込まれる。
    このことから、異業種組合の組合事業については、個々の組合の実情に応じた組合事業が行われるよう特に配慮する必要があり、例えば、教育及び情報の提供事業が中心的組合事業である場合であっても、これが効果的に実施されることが見込まれるときは設立を不認可とすることは適当でないとしている(58. 8.27中小企業庁指導部長通達)。
    また、従来は、資金の貸付事業を行うに当ってはできるだけ「他の共同事業」と併せ行うのが適当であるとし、共同経済事業を行うことの指導が行われていたところであるが、上記通達により、「他の共同事業」には「教育及び情報の提供事業」等のソフトな事業が含まれると解されている。
    以上のことから、設問の場合の組合の設立は可能であるが、これらの事業は、組合が主体的かつ積極的に取り組まなければ円滑な実施が困難となり、組合自体が休眠化する可能性及び公平性を欠く可能性も有しているので、設立後の運営の充実強化に務めることが必要である。
  • (13)異業種組合における共同事業の利用について
    異業種の中小企業による組合設立の動きがあるが、異業種であることから、組合の事業によっては一部の組合員のみが利用する場合があり得る。
    このような場合には中協法第5条第2項の直接奉仕の原則に反しはしないか?
    異なった事業を行う中小企業者が、それぞれの有する異質の技能、技術等を出し合い相乗効果により新しい成果を生み出すために組織化を行おうとするものが出てきている。
    これらの組合は、異なる種類の事業を行う者の集まりであることから、組合事業の種類、内容によっては一部の組合員のみが利用することがあり得る。
    しかし、次のような場合には、中協法第5条第2項の直接奉仕の原則に反しないものと解されている(58. 8.27中小企庁指導部長通達)。
     ① 組合事業が現実に一部の組合員についてのみ利用されるのであっても、組合事業の利用の機会が公平に与えられるようになっている組合
     ② 組合事業の利用の機会が過渡的に一部の組合員についてのみ与えられているにすぎないとしても、将来的に他の組合員にも利用の機会が与えられる計画、仕組みとなっている場合
     ③ 組合員の事業が有機的に連携している組合において、資材購入や研究開発等の組合事業が一部の組合員についてのみ利用される場合においても、その効果が組合員事業の連携等を通じ究極的に他の組合員にも及ぶことが明らかである場合
  • (14)異業種組合の行う事業について
    従業員の福利厚生のため、市内の業種の異なる事業者7社が集まって事業協同組合を設立し、社宅を共同で建設したいと考えています。金融事業も実施する予定です。この他にも事業を行いたいのですが、異業種であるため全組合員が共通に利用できる事業がなかなか見つかりません。一部の組合員のみが利用する事業を行うことは「直接奉仕の原則」に反するということですが、異業種の組合でも事業は常に全組合員が共通に利用できるものでなければならないのでしょうか。
    事業協同組合は原則として、特定の組合員の利益のみを目的として事業を行うことはできません。しかし、異業種の組合の場合、事業の種類・内容によっては一部の組合員のみが利用することがありえます。
    次のような場合は、事業の利用が一部の組合員のみでも「直接奉仕の原則」に反しないとされていますので、実施事業を検討されてはいかがでしょうか。
     ① 組合事業が現実に一部の組合員についてのみ利用されるのであっても、組合事業の利用の機会が公平に与えられるようになっている場合
     ② 組合事業の利用の機会が過渡的に一部の組合員についてのみ与えられているにすぎないとしても、将来的に他の組合員にも利用の機会が与えられる計画、仕組みとなっている場合
     ③ 組合員の事業が有機的に連携している組合において、資材購入や研究開発等の組合事業が一部の組合員についてのみ利用される場合においても、その効果が組合員事業の連携等を通じ究極的に他の組合員にも及ぶことが明らかである場合(58企庁第1194号、中小企業庁指導部長通達)
  • (15)借入金額等の最高限度の解釈について
    定款例第41条第1号及び第2号の借入金額等の「最高限度」とは、次のいずれに解釈するのが正しいか?                                                             
    (1)年度間の借入累計額
    (2)借入残高の最高額
    最高限度を、ある期間中における増減の変化を通じての最高状態と解釈し、貴見(2)が正当と解する。                
            
  • (16)組合員の取引の相手方の債務保証について
    組合員が銀行に対して、その営業上の取引の相手方の債務を保証する場合、組合は、事業として、その債務を再保証することができるか?
    組合員の銀行に対し行う債務保証が、その営業上の取引の相手方の債務であり、かつ、その取引に直接関係する債務の保証であれば、組合がそれを再保証することは、当該銀行が定款に定められた金融機関である限り、事業として行えるものと解する。
  • (17)員外利用の制限の内容について
    次のような場合、組合の共同事業や施設を組合員以外の者が利用することとなるが、員外利用に該当するか。
    1 組合が組合員のために共同受発注・配送・決済等の事業をコンピュータ・オンラインシステムを利用して行う場合において、組合員の取引先等が当該システムを利用すること。
    2 商店街等商業集積を形成する組合が、顧客吸引力の増大のために、例えば、アーケード、駐車場、物品預かり所、休憩所、公園、公衆便所、コミュニティホール、展示場、研修室、カルチャー教室等の一般公衆の利便を図るための施設を設置してこれをその利用に供すること。
    員外者が組合事業に関与する場合であっても、組合員のための員外者からの物品購入事業における場合のように、その関与が組合員の利用と競合せず、むしろ組合員への奉仕という組合の本来の目的の達成に必要であるときには、員外利用に該当しないと考えられる。
    なお、組合事業は営利を目的として運営されることのないよう留意されたい。
    1 組合が組合員の事業を外部との取引又はその仲立ちを行う場合における、取引の相方等の当該組合事業への関与であり、員外利用に該当しない。
    2 組合が、組合員の事業を支援するために行う、組合員の取引先、顧客等に対する施設、サービス等の提供であり、員外利用に該当しない。
  • (18)組合事業の範囲について
    次のような行為は、組合の行為として行うことができるか。                                        
    例1 林道の除雪作業を組合事業として実施している林業の組合が、村からの依頼で道路の除雪作業を実施
    例2 商店街組合が構築している商店情報ネットワークを、当該地域在住老人等の緊急・救急通報システムとして活用
    労働奉仕、祭事、寄付等の行為は、組合が一つの社会的存在として当然行い得る行為であると解され、説例のような場合はこれに該当すると考えられる。
    なお、以下の事例については、原則として組合事業の範囲内であると考えられる。
    1.組合員の事業と何らかの関連性を有する場合
     ① 従来、自動車部品の共同仕入を行っていた自動車整備業の組合が、新規に販売のための車両の共同仕入を実施する。
     ② 従来、寝具乾燥の共同受注を行っていた寝具衛生加工業の組合が、新規に入浴サービスを実施する。
     ③ 採石業の組合が、採石によりできる池を利用して養殖を実施する。
     ④ 従来、呉服の共同仕入を行っていた呉服小売業の組合が、新規に毛皮、コート及び宝石の共同仕入を実施する。
     ⑤ 従来、文具の共同仕入を行っていた文具小売業の組合が、新規に名刺の共同印刷を実施する。
     ⑥ 理容業の組合が、美容業で行うデザインパーマや新サービスの提供をめざしてアンテナショップを設置する。
    2.社会的存在である法人として当然行い得る行為
     ① 林業及び木製品製造業の組合が、村から道路の除雪作業を受託する。
     ② 商店街組合が、町からゴミ収集車3両を無償で賃借し、町内のゴミ収集及び焼却場までの運搬業務を受託する。
     ③ 地域異業種組合が、市から公園の清掃管理及び自販機の設置・管理を受託する。
     ④ 組合が地域おこしのための祭事等を実施する。
    また、以下の事例については、組合事業の範囲を逸脱するおそれがあると考えられる。
     ① 製造業の組合が、新たに土地を購入して駐車場を設営する。
     ② 製造業の組合が、組合事業の停滞を打破するため、観光ホテル等レジャー施設を設営する。
     ③ 商店街組合が、自己の地域と無関係の遠方のゴミ収集事業を実施する。
     ④ 卸団地組合が敷地内にビルを建設し、賃貸マンションを経営する。
  • (19)員外利用について
    1 次のような場合は、員外利用に該当するか。
     例1 組合員の取り扱う物品の共同販売事業を実施する組合が、組合員の取り扱っていない物品を員外者から仕入れ、組合で販売する(例えば、弁当の共同販売を実施する組合が、日本茶、みそ汁等を仕入れ、販売する)。
     例2 中古自動車販売業者で組織する組合等で行う競売(オークション)事業に員外者が参加し、組合員に販売又は、組合員から購入する。
    2 組合が他の組合と共同して事業を行う次のような場合は、員外利用に該当するか。
     例1 複数の商店街組合が、共同して連合大売り出しを実施する。
     例2 複数の商店街組合が、共同商品券を発行する。
    1 員外利用は、組合事業の一部を組合員の利用と競合する態様で員外者に利用させる場合に発生する概念であり、員外者が組合事業に関与していても、組合が購入する物品の仕入れ先、組合が販売する物品の販売先など組合員の利用と本来的に競合しない態様での関与であれば、員外利用の概念が生じないと考えられ、説例のような場合はこれに該当すると考えられる。
    2 組合が他の組合と共同して事業を行う場合については、当該共同事業が各組合の組合事業として適切な内容の共同事業であれば、各組合員にとって当該共同事業の利用は自己の組合事業を利用しているにすぎず、員外利用の概念が生じないと考えられ、説例のような場合はこれに該当すると考えられる。
    なお、以下の事例については、原則として員外利用規制に違反しないと考えられる。
    1 組合員の利用と競合しない態様での非組合員の関与
     ① 共同販売事業を実施する組合が、品揃えの充実のために非組合員の生産物品も販売する。
     ② 新幹線の駅に共同売店を出店しているが、品揃えのために員外者の取り扱い物品も販売する。
     ③ 地域の商工業者、サービス業者等により構成されている組合が、情報ネットワークを提供し、このネットワークに非組合員の情報もインプットする。
     ④ 中古自動車販売業の組合で行うオークション事業に、非組合員(有資格中小企業者、大企業、他の同業種組合の組合員等)が参加し、組合員に販売する。
    2 組合等の共同事業
     ① 複数の商店街組合が連合大売り出しを実施する。
     ② 近隣の組合が共同して会館を設置する。
     ③ 複数の玩具の小売店組合が連携し、玩具の共同購入を実施する。
     ④ 複数の商店街組合が、共同して共通商品券を発行する。
     ⑤ 複数の商店街組合が連携し、それぞれが発行する商品券の相互利用を認める。
     ⑥ 複数のクレジットカードの組合が連携し、相互にカードの取扱いを認める。
    また、以下の事例については、員外利用規制に違反するおそれがあると考えられる。
     ① クレジットカード事業を実施している組合が、非出資者の利用を員内利用として計算する。
     ② 共同店舗事業を実施している組合が、大企業に店舗の大半を賃貸する。
     ③ 建築資材の共同購買事業において、組合員の必要量を大幅に超えて大量に購入し、非組合員に販売する。
     ④ 仕出し弁当事業を実施している組合が、非組合員からも積極的に注文を受けて弁当を供給する。
     ⑤ 組合員従業者宿舎に空き家が大幅に生じたため、一般者に対し賃貸する。
  • (20)商店街組合が商店街の空店舗を活用した事業を行うことについて
    商店街組合が行う空き店舗事業(商店街組合が空き店舗を活用して顧客向けに行う個店の経営事業、商店街組合が空き店舗を取得して個店の経営を行う事業者に利用させる事業)は、いわゆる直接奉仕の原則に反しないか。
    商店街組合(商店街協同組合又は商店街振興組合及びこれらの連合会)が行う空き店舗事業(商店街組合が、商店街に生じた個店の廃業に伴う空き店舗を活用して、商店街の顧客向けの個店経営の事業や、空き店舗を取得してこれを個店の経営を行う事業者に利用させる事業)については、「①商店街全体としての店揃え、品揃えを維持し、商店街全体の集客力を維持することにより、組合員の円滑な事業活動に実施に寄与する事業であること」という条件を満たしていれば、その事業は、組合員に直接の奉仕をすることを目的とする事業であり、組合員の事業に関する共同施設に含まれると解される。
    なお、空き店舗事業を行う際に、商店街内に商店街組合が行う空き店舗事業と競合する事業を営む事業者がある場合には、商店街組合は、その事業者に不当に不利益を被らせることのないよう十分な配慮が必要であるとされている。
  • (21)組合員の新たな事業分野への進出支援事業について
    自動車部品、同附属品製造業を資格事業とする組合の組合員が、親企業の海外進出に伴う国内生産の減少を補うため、廃棄物処理やリサイクルなどの環境・生活関連分野へ進出を計画している。
    組合員の資格事業に関連しない事業分野への進出の円滑化のため、組合が新商品、新技術の研究開発事業や需要開拓事業を行うことができるか。
    中協法第9条の2第1項に第5号として、「組合員の新たな事業分野への進出の円滑化を図るための新商品若しくは新技術の研究開発又は需要の開拓に関する施設」が追加され(平成9年)、事業協同組合の事業として一般的に規定された。これにより、事業協同組合は、組合員の進出しようとする事業分野と資格事業の関連性にかかわらず、組合員の新事業分野進出を一般的に支援することが可能となり、従来のような組合員の進出する事業分野に関する制限はなくなっており、質問の事業の実施は可能である。
    なお、「新商品若しくは新技術」とは、組合員にとっての新商品、新技術を意味するものであり、必ずしも一般的に見て新規性を有するものである必要はなく、また、「研究開発」とは、試験研究のみを意味するものではなく、その成果を商品化する等により、実際に企業が事業に利用できる状態にすることまでを含んでおり、さらに、「需要の開拓に関する施設」とは、マーケティング、試験販売、広告販売等を幅広く含んでいる。
  • (22)員外利用の特例について
    組合員37人で設立された卸商業団地の組合において、流通の合理化等の影響で、9組合員が倒産、脱退したため、組合は経営難に陥っている。
    組合では、遊休化している元組合員施設及び共同施設(共同荷捌所、共同駐車場、食堂、多目的ホール等)を員外利用に供し、その賃貸料、利用料収入をもって、組合の経営再建を図ることを希望している。
    この場合、通常の員外利用比率の100分の20を超えることはできないか。
    中協法第9条の2の3(組合員以外の者の事業の利用の特例)が新設され(平成9年)、次の条件を満たせば、行政庁の認可を得て100分の200を超えない範囲内で、組合事業を員外者に利用させることが可能となったため、説例の場合は100分の200までの範囲内で員外者に組合事業を利用させることができる。
     ① 組合所有施設を用いて行っている事業であること
     ② 組合員の脱退その他のやむを得ない事由により、当該事業の組合員の利用が減少していること
     ③ 当該事業の運営に著しい支障が生じていること
     ④ 当該事業の運営の適正化を図るため、組合員以外の者に、中協法第9条の2第3項ただし書の限度を超えて当該事業を利用させることが必要かつ適切であること
     ⑤ 当該事業の運営の適正化のために必要な期間に限られること
  • (23)員外利用について定款に規定すべきか
    協同組合では、員外者に組合の事業を一定の要件のもとに利用させることができるが、定款に員外利用についての定めをしておくべきか。
    員外利用について、中協法第9条の2第3項の規定は、定款に規定することを必要としていない。即ち条文中に「定款に定めるところにより」の規定をおいていない。したがって、定款に当該規定を設定しなくとも利用させることは可能である。また、必ずしも禁止規定を定款に置かなくとも利用させないこともできる。このことは、員外利用の可否は「組合員の利用に、支障がない場合」にのみ限られているものであって、利用させるかどうかは、組合内部の契約であり、かつ員外者が組合の施設を利用することは、当然の「権利」として認められている性格のものでないこと等からも理解できるであろう。
    なお、員外利用の可否を規定することが、後日の紛糾を避ける意味を持つならば定款に規定する措置も必要かと思料される。
  • (24)旅館組合のホテル経営について
    旅館業者が共同事業として他県においてホテルを経営する目的で現在事業協同組合の設立を計画中であるが、協同組合の目的である組合員の事業の経営とは直接関係なく組合自体のために収益事業を行うものと思われ、共同事業の範囲を逸脱するものと考えられるかどうか。
    本来、組合の行う共同施設は、あくまでも組合員の事業の経営の合理化を図ることを目的とするものであり、設問の場合のように組合員の事業の経営とはなんら関係なく組合自体のために収益事業を行うことは、組合の行う共同事業の範囲を逸脱するものである。また組合がホテルを経営して一般の旅客を対象に営業することは、員外利用制限にも抵触することとなるので、不適当である。
  • (25)食肉小売業者の組合の行う食肉生産事業について
    私どもの事業協同組合は、食肉小売業を組合員資格としており、これまで食肉の共同購買を中心に事業を行ってまいりました。
    この度理事会で、組合員の取り扱う食肉を差別化し付加価値を高めるため、高級和牛肉の生産を組合で行い、組合員に供給したらどうかという話がありました。
    組合は、組合員の事業と関係のない事業を行うことはできないとされています。私どものような小売業者の組合が、食肉の生産事業を実施することはできるのでしょうか。
    和牛肉の生産は畜産農業であり、組合員資格である食肉小売業とは関係がないようにも思われるのですが。
    事業協同組合が行える事業は「組合員の事業に関する」事業のみであることはご質問のとおりですが、その意味は、組合は組合員の資格事業と同じ業種に属する事業あるいは近接の事業しか行いえないということではありません。
    組合に禁止されているのは、資格事業について組合員が全く利用することのできない事業、あるいは利用が可能であっても実際には利用することのない事業を、組合が独自の立場で第三者のみを相手方として行うことです。
    事業協同組合が、一般に、生産事業を実施できることは、組合法第9条の2第1項に明定されております。
    従って、商業者の組合でも、上述の意味で組合員の事業に関する事業であるかぎり、生産事業を実施できることは明白です。
    和牛肉は、貴組合の組合員の取扱品であり、組合で行うその生産は正に「組合員の事業に関する」事業であるといえます。
    また、消費者ニーズの多様化、高級化に対応した組合員の取扱品の差別化を図るため、これからの組合事業として積極的に取り組むべき事業だと考えます。
  • (26)販売業者の組合が行う委託販売について
    小売販売業者で組織する協同組合であるが、組合員の取扱う商品を組合員から委託を受けて組合事業として販売することは差支えないか?
    協同組合が事業の一つとして組合員の委託により、その取扱品の販売をすることは可能であると解するが、これも特殊の場合(例えば、一組合員で扱うには数量、金額が大きすぎる場合、取引相手が組合員の通常の取引先ではない場合、売れ残り品を出張販売する場合等)に限られるべきと思料する。
    というのは通常組合自体がこれを行うときは、組合の目的とする組合員の利益を図ることと相反すると思われるからである。
    なお、組合員の委託による販売であれば、員外利用にはならない。
  • (27)卸売企業組合の組合員が行う小売業について
    従来卸売及び小売業を行っていた企業組合が、その経営難打開のため従来設置していた数カ所の営業所をすべて廃止して各組合員にそれぞれ小売業を行わせ、企業組合においては卸売業のみを行い、組合員及び第三者に卸売をしようと計画しているが次のとおりの疑点があるのでご回答頂きたい。
    なお、組合員はその家族を小売業に従事させ、3分の2以上の組合員は組合の事業に従事しようとするものである。
    1.上記組合員が行う小売業は「企業組合の行う事業の部類」に属するか。
    2.企業組合に対する法の本質的考え方、あるいは名義は企業組合であっても実質は員外利用の制限を免れようとする事業協同組合の脱法組織とみなして、かかる組織の企業組合は認められないと解すべきか。
    3.この種の形態の企業組合も認められるか、認められるとすればその理由。
    設問に示されている組織形態ないし事業内容の企業組合を設立することは一般的に考えられることであって、これが中協法上適法性又は妥当性を欠くものとはいい得ない。例えてみれば、小売業者が共同で卸売会社を設立するときのものであって、これを企業組合としようとするときには、中協法に定められた運営を行うべき点が会社とは異なり、また設立に際してその経営的基礎を検討されることとなる。
    なお、その組合員が自ら行う小売業は、企業組合が卸売業を行うものであれば企業組合の行う事業の部類に属する取引に該当しないものと解する。
  • (28)組合員の廃材を原料とする肥料の生産・販売について
    木材の木皮の処理についての試験研究の結果、木皮を肥料として活用することが可能となり、これを実用化するために事業協同組合を設立する動きがある。
    この組合は、製材業者等木皮の出る業者を組合員とし、この木皮を収集、加工処理して肥料にし、これを農協、林業者、肥料商等に出荷しようとするものである。
    この場合組合事業が、組合員資格事業と全く異にする製品を製造販売することとなるが、次の点について回答頂きたい。
    1 出荷(販売)について、すべて組合員のところへ戻し、組合員が個々に販売するものであれば問題ないが、すべて組合員以外であることの良否
    2 組合員以外への出荷(販売)について通常ある副産物の処理程度であればよいと思うが、今回のように出荷の全てが組合員以外であり、かつ収入の約100%(収入見込みは千万円単位)に当たるという事業の良否
    1 ご照会の場合で行われる「木皮を加工して肥料とする事業」は「組合員の事業から生ずる木皮の共同処理」としてとらえるべきものであり、木皮の共同処理の方法として、木皮を肥料化することは、組合の共同処理事業として木皮を焼却あるいは単に廃棄することと何ら変わりないものと考える。
    2 また、同事業における組合員の利用関係は木皮を共同で処理するという点にあるのであるから、共同処理の結果生産される肥料を組合員以外の者に販売しても、員外利用の問題は生じない。したがって、同組合が生産する肥料を全て組合員外に販売することは、何ら差し支えないものと考える。
    3 なお同事業については定款上次のように記載するのが適当と考える。
      「組合員の事業から生ずる木皮による肥料の共同生産並びに販売」
  • (29)電気工事業協同組合の建設業法に基づく許可について
    組合事業の一つとして内外線工事の共同受注を行おうとするときは、建設業法第3条第1項ただし書きに該当する場合を除き、同条の許可を受けなければならないが、同法第7条により許可を受けるには一定の資格を有するものの存在が要件となっており、組合の場合は役員及び職員が上記の資格を有すれば、その者が非常勤であっても許可を受けられると思われるが、この解釈でよろしいか?
    協同組合が組合事業の一つとして内外線工事の共同受注を行おうとするときは、建設業法第3条に基づく許可を必要とし、その組合の役員及び組合の使用人のうちそれぞれ1人が同法第7条(一般建設業)(特定建設業においては第15条)に規定する許可の要件を備えなければならない。
    この場合の役員及び使用人の勤務の態様は、運用上常勤であることを要する。
  • (30)高度化資金等の譲渡担保に係る火災共済契約について
    国、地方公共団体又は中小企業基盤整備機構(中小機構)の高度化資金等の助成(融資)を受けて機械等の動産を取得した場合には、その助成の条件として当該物件を譲渡担保として差し出すこととなっているが、この譲渡担保物件は、火災共済協同組合の火災共済契約の目的たり得るか伺いたい。
    1.高度化資金等の資金助成を受けて機械等を取得した場合には、中小機構等への当該助成にかかる資金の返済を担保するため、その資金助成の条件として譲渡担保契約を締結することが義務づけられている。
    2.しかしこの契約は、中小機構等が単に当該助成にかかる債務の履行を確保するための手段として行うものであって、その物件を占有し、使用するのは当該助成を受けた中小企業者である。
    3.さらに当該物件が火災により被害を受けても、中小機構等への資金返済義務が消滅するわけではなく、中小企業者が直接的に火災の危険を負担するものである。
    4.したがって、当該物件は、中協法第9条の7の2第1項第1号の「財産」に該当するものと考えられ、本件のような場合に火災共済契約の目的物とすることは差し支えないものと考える。
  • (31)損害保険代理業務の実施
    事業協同組合の事業として損害保険の代理業務を実施したいが、可能かどうか?                          
    事業協同組合の事業として損害保険の代理業務は可能かどうかについては、中協法上では実施することに問題はないが、損害保険協会では、事業協同組合への損害保険代理店委託に関する方針として、一般代理店を圧迫するおそれがある等の理由から、代理店委託を自粛することとしているため、実施することは困難であると解される。
  • (32)団体協約締結事業を主目的とする組合設立について
    卸売業者の協同組合の設立が計画されているが、設立の目的が共同経済事業は名ばかりで小売商に対する団体協約を主たる目的としている。このような目的をもった組合の設立は適当か?
    協同組合は経済事業を行うのが最も望ましいのであるが、業種によっては設立後直ちに着手し得ない事情もあるので、金融事業、福利厚生事業、又は教育情報事業或いは団体協約締結事業を当面の事業として行う場合があり、これは適法といえる。

組合員

出資・出資金

  • (1)員外者の出資について
    中協法には員外者が出資してはいけないという禁止規定はないが絶対にいけないものか?その根拠を何処に求めるべきか?       
    組合員は一口以上の出資を有しなければならないということは、中協法第10条に規定するところであり、その出資額を限度として責任を負うものであることも同条第4項に規定するところである。
    さらに協同組合とは組合員が相互扶助の精神に基づき協同して事業を行うため組織されたものであるから、これらを総合して考えるならば、組合は組合員のためのものであり、員外者が出資するということはあり得ない。
    なお、員外者の組合事業の利用については、中協法では准組合員制度を認めていないので、中協法第9条の2第3項の員外利用制限が適用される。
  • (2)組合の債務に対する組合員の責任について
    1.組合の借入金、買掛金等の対外債務に対する組合員の負うべき責任の限度については中協法第10条の出資金を限度とする有限責任は絶対的なものであるか?
     例えば、総会において、各自の出資金以上の金額を負担すべきことを決議した場合、あるいは、組合員の或特定の者を指名して負担せしめることを決議した場合等、この決議は有効であるか?
    2.上記に関して貸付金、売掛金等の未回収のため、借入金等の返済不能を生じた場合、責任は誰が負い債権の追及は何処まで及ぶか?
    3.赤字累積による清算の場合はどうか?
    1.組合がその事業の遂行上、第三者と取引をし、借入金、買掛金等の債務を負い、かつ、その弁済が不能となった場合において、組合員が負うべき責任は、その出資額を限度とし、総会その他の決議をもってしても、これを超える責任を負わせることはできないものと解する(中協法第10条第4項)。
     なお、組合が借り入れた資金を組合員に貸付けた場合、組合が共同購買した物品を組合員に販売した場合等において生じた組合と組合員間の債権債務関係については、出資とは関係なく、組合に対して債務を負っている組合員は、弁済の責に任じなければならない。
     また、組合の第三者に対する債務について全部又は一部の組合員が組合のために連帯して保証をしている場合(いわゆる連帯保証)に、その保証をした組合員は、個人的に無限に責任を負うことになる。
    2.従って、設問のごとく、組合員に対して出資額以上の責任を負わせること、組合の債務につき、特定の組合員を指名して弁済の責に任じさせること等を総会において決議し、決議なる故をもって負担させることは、法令違反であるから無効である。
    3.組合財産をもって債務を完済するに足りない場合において、解散をし、又は破産の宣告を受けたときも、組合員の責任は、上述の組合と同様である。なお、本件の如き事例も、総会の決議である旨をもって組合員に限度額以上の出資金を強制することはできないが、自主的意思によって負担しようとすることを阻止するものではない。
  • (3)総会における増資決議の効力について
    組合の自己資本充実を図るため、今後5年間配当金を出資金に振り当てるべく積立てることを総会において決議した。
    この決議は、以後においても効力を有し、本件については以後の各年度には総会の決議を要せず、以後5年間の配当金は自動的に組合の積立金となるものと考えてよろしいか?
    ご照会の総会の決議は今後一定期間の組合の方針あるいは計画を議決した程度にとどまると思われ、その範囲において全組合員を拘束するものと考えられる。
    しかし、実際の出資金充当のための積立てに当っては各組合員は必ずしもこれに拘束されるというものではない。
    すなわち、組合員の責任は、その出資額を限度とするものであり(中協法第10条第4項)、増資の引受けについても、たとえ総会の決議をもってしても組合員を強制することはできないからである。
    したがって、以後の処置としては、各年度に組合員の承諾を得る必要はないが、当初において各組合員別に承諾を得ることが必要である。
  • (4)組合出資の差押えについて
    債権者である「組合員A」の申請により、裁判所より、組合に対して、債務者たる「組合員B」の組合出資金について「債権差押え並びに転付命令」が発せられた。この事態に際し次の点をご教示願いたい。
    1.組合員の持分と組合員資格はどうなるか?
    2.差押えた持分又は出資証券が競売される事態に当該組合員が脱退若しくは譲渡を認めない場合。
    3.前項において、当該組合員が譲渡を認めた場合、組合がそれを承認しないとき。
    1.債務者Bの組合員資格は喪失するものでなく、ただ組合よりの配当金取得ができなくなるだけであり、組合員Bの持分が変わるものではない。したがって、組合員Bが脱退し、持分払戻しのできる事態にならない限り転付命令が発せられることには疑問がある。
    2.組合員が脱退又は譲渡を認めない限り、債権者たる組合員AはBの出資あるいは持分を取得又は承継することはできない。なお、ご質問の競売については、組合の出資証券は有価証券でなく、単に出資したことを証する書面であるから、当然競売ということはありえない。
    3.中協法第17条によって、持分の譲渡は組合が承認しない限りできないので、たとえ組合員が譲渡を承認したとしても譲渡は行い得ないことになる。
  • (5)出資証券の質入、担保について
    事業協同組合の出資証券は、組合の承認があれば金融機関等に担保或いは質入れができるか?                 
    組合出資証券の質入れを禁止する法律規定は何もないので、質入れは可能であるが、出資証券は自由に譲渡できず、それ自体換金価値を有する有価証券ではないので、質権の対象物たり得る価値は殆んど有していない。従って組合としては、これに承諾を与えないことを原則とすべきと考える。
  • (6)出資証券紛失の際の取扱について
    協同組合の組合員が、その出資証券を紛失した場合、組合及び組合員はどのような手続きをしたらよいか?           
    出資証券は、市場性を有する証券ではないから、一般の有価証券と同様に取扱う必要はなく、例えば預金通帳、領収書等の紛失の場合の取扱いと同様組合員より紛失届を提出させ、それにより組合は新たに証券を再交付するだけで差支えない。したがって、公示催告の手続きは要しない。
  • (7)分割払込制をとる場合の出資証券について
    全額一時払込制の場合の出資証券のひながたについては種々公にされたものがあるが、分割払込制の場合のひながたがないので、その必要記載事項とともに、ひながたを示して頂きたい。
    組合の出資証券は、株券のような有価証券でなく単に出資をしたことを証する書面であるから、領収書等をもってこれに代えてもよいのであるが、事実を明確にするため出資証券を発行することが望ましいとされている。したがって、出資証券の様式、券面の記載事項等については、特に定められた制約はないので、出資を証明するものであればどのようなものでもよいのであるが、券面には少なくとも、発行年月日、発行番号、組合員の氏名、口数、払込金額、払込年月日、払込を証する認印、組合名、理事長名・印を掲載することが必要と考える。
    このひながたとして次のものを例示するので、ご参考の上適宜作成して頂ければよい。
  • (8)行方不明組合員の出資金整理について
    組合員Aは、昭和〇〇年1月30日に組合に加入し、平成✕✕年12月30日まで組合を利用していたが、その後行方不明となった。組合としては、Aの出資を整理し実質上の組合員の出資のみとしたいが、どのような処理が適当か?
    なお、Aの組合に対する負債はない。
    出資を整理するには、当該組合員が組合を脱退することが前提となり、ご照会の場合の行方不明組合員については資格喪失による脱退か、または除名による強制脱退が考えられる。
    具体的事情が不明で判断し兼ねる点があるが、もし行方不明と同時に事業を廃止しているのであれば、資格喪失として処理することが可能と解する。
    この場合、組合員たる資格が喪失したことを理事会において確認した旨を議事録にとどめると同時に、内容証明郵便をもって持分払戻請求権の発生した旨の通知を行うことが適当と考える。
    除名は総会の決議を要しこの場合除名しようとする組合員に対する通知、弁明の機会の賦与等の手続が必要であるが、組合員に対する通知は組合員の届出住所にすれば足り、この通知は通常到達すべきであったときに到達したものとみなされるから一応通知はなされたものと解される。
    弁明の機会の賦与については、その組合員が総会に出席せず弁明を行わない場合は、その組合員は弁明の権利を放棄したものとみなされ、除名決議の効力を妨げるものではないと解される。
    なお、除名が確定した場合は、資格喪失の場合と同様の通知をするのが適当である。
    以上の手続きにより、当該組合員に持分払戻請求権が発生するが、その請求権は2年間で時効により消滅するので、時効まで未払持分として処理し、時効成立をまってこれを雑収入又は債務免除益に振替えるのが適当と考える。
  • (9)設立後の現物出資の受け入れについて
    当組合は、規模の利益を実現するために2年前に設立された事業協同組合です。組合事業としては大型機械を導入し、組合員の取り扱うA製品の共同加工を行っています。
    組合員の取扱量が年々増加し、機械設備の増設を検討していたところ、同業のB社から自社の所有する加工機械一式を現物出資することにより、加入したい旨の申し出がありました。B社の所有する加工機械は業界内でも最新鋭の機械であり、組合としては、B社の所有する設備を受け入れるメリットは充分あり、同社の申し出を承諾したいと考えています。
    当組合は、設立の段階で各組合員からの現物出資を認めておりましたが、設立後においても現物出資ができるのでしょうか。
    現物出資については、中小企業等協同組合法第29条第3項に次のように規定されています。
    「現物出資者は、第1回の払込の期日に、出資の目的たる財産の全部を給付しなければならない。」
    本項は、組合員の立場からみた出資の第1回であるとかんがえられますので、設立後、新たに組合員が加入する場合であっても、現物出資は可能であると考えます。
    ただし、設立後において現物出資を受け入れる場合は、仮に貴組合のように定款に現物出資が可能である旨の規定がある場合であっても、「氏名、出資財産名、価格、与える出資口数」の記載(中小企業等協同組合法第33条第3項)の追加が必要であり、これは定款の変更に該当しますので総会における定款変更の議決と行政庁の定款変更の認可が必要となると考えます。
    したがって、B社の加入申込みは、通常の加入の承諾と異なり、理事会の承諾に加え、事実上、総会での議決が必要となることになります。
  • (10)組合員の出資口数に係る限度の特例について
    私どもの事業協同組合は、現在、事業拡張のための増資を計画していますが、組合員の大半が小規模な事業者であるため負担能力の問題があり、今回は理事長企業をはじめ一部の有力な組合員の割当比率を高目に設定しています。
    ところが、この割当て案でいきますと、増資後の理事長企業の出資比率が全体の30%を占めることとなり、25%の法定限度を超えてしまいます。昭和59年の中小企業等協同組合法(以下「組合法」という。)の改正で、組合員の出資口数に係る限度の特例が設けられたと聞きましたが、今回のような場合でもこの特例の適用が受けられるのでしょうか。
    組合法は、組合員の平等を実質的なものとし、組合の民主性を確保するため、1組合員の出資口数を、事業協同組合にあっては、原則として出資総口数の25%以内に制限しています。
    これは、少数の者に出資が偏ると、実際の組合運営が多額出資者の意図する方向に傾き、議決権及び選挙権の平等が事実上崩される恐れがあるからです。
    ただし、この出資口数の制限については、ご指摘のとおり、昭和59年の組合法の改正により特例が設けられています。
    この特例は、組合財産の維持の見地から、特定の場合に限って、組合員は例外として出資総口数の35%まで持つことが認められるというもので、この特例が認められるのは、次の4つの場合に限られています。
    1.組合員が自由脱退しようとする場合で、他の組合員がその持分の全部又は一部を譲り受ける場合
    2.法人たる組合員同志が新設合併した結果、新たに成立した法人が消滅した組合員の出資口数の全部
     又は一部に相当する分の出資を合併後1年以内に引き受けて、新たに組合員として加入してくる場合
    3.法人である組合員が法人である組合員を吸収合併した結果、存続する組合員が消滅した組合員の出資口数の全部又は一部に相当する分の出資を合併後1年以内に引き受ける場合
    4.合併以外の事由により法定脱退した組合員の出資口数の全部又は一部に相当する分の出資を、他の組合員がその組合員の脱退後1年以内に引き受ける場合
    要するに、出資口数の限度に係る特例の適用は、組合員の脱退や合併といったやむを得ない事情により減少した組合財産を補う場合に限られており、したがって貴組合のような増資のケースには、この特例の適用は認められておりません。
    これは、組合財産の維持・充実という観点からは、負担能力のある組合員に応分の出資を引き受けてもらうことが望ましいものの、特例の範囲をあまり広く認めると、組合員の平等性の実質的な維持が難しくなることが懸念されるからにほかなりません。
  • (11)出資1口の金額の増額手続き
    私どもの組合では、組合の行う共同事業の拡大のため出資1口の金額を引き上げたいと思っております。これについての手続きについてお教え下さい。
    出資1口の金額は、定款の絶対的記載事項ですから、その金額を変更するには、定款変更の手続きを必要とすることは言うまでもありません。
    まず第1に、各組合員が追出資義務を伴うことになる出資1口の金額の変更を行う場合は、組合員の責任は組合に対する出資額を限度とする(中小企業等協同組合法第10条第5項)ことから、組合員全員の同意がなければ有効に定款変更できないものと解されます。
    次に、出資1口の金額を増加する方法として併合による方法(以前の5口分を1口にまとめる方法など)があります。
    併合による方法の場合、組合員の出資口数に端数が生じないときは、総会の特別議決で出資口数の併合の方法による旨を定めて定款を変更することができます。
    しかし、出資口数を併合したときに出資口数に端数が生じる組合員があるときは、端数の出資口数をもっている組合員に追出資を強制することになりますから、出資1口の金額の変更についてその組合員の同意を得なければならないと解されます。
    以上の方法によって、出資1口の金額を変更した場合は、次いで定款変更について行政庁の認可を受けることが必要です。
    認可を受けたときから効力が生じます。また、定款変更の認可の告知があった日から、主たる事務所の所在地においては2週間以内に、従たる事務所の所在地においては3週間以内にその旨の変更登記を行って下さい。
  • (12)出資1口の金額の増資分を納入しない組合員の権利
    私どもの組合では、先般の総会で全組合員出席のもと組合定款中の「出資1口の金額は、1万円とする。」とあるのを、「出資1口の金額は、10万円とする。」と満場一致で変更の決議を致しました。
    また、組合定款上全額一時払込み制をとっているため、増額分の払込みの期日についても決議しました。しかし、払込みの期限後未だ増額分を納入しない組合員がおります。その組合員は、組合員としての権利を行使できるのでしょうか。
    また、組合としてその組合員にはどのように対処すべきですか。
    組合定款を変更して出資1口の金額を増額するにあたって増額分の追出資が必要となった組合員は、増額分の出資払込み義務を負うことになります。
    また、組合定款には全額一時払込みと規定してあることから、払込み期間内に増額分を払い込まない組合員は、組合に対しての履行遅滞になりますが、組合員たる地位を失うものではないと解されます。
    したがって、未払込みの者も組合員としての権利(議決権、選挙権、共同事業利用権及びその他の組合員権)を行使することは何等妨げられないと解されます。
    増資分未払込みの者に対する措置としては、組合に対する出資払込み義務を怠った組合員ということで除名(中小企業等協同組合法第19条第2項2)する方法があります。
    この方法は、総会における特別議決によらなければなりません。
    しかも組合は、事前に除名しようとする者に対して除名理由及び総会において弁明すべき旨の通知をすることを要します。
    もうひとつの措置として、組合との契約上の自治的規制として、定款に定めれば過怠金、延滞金等をその組合員に課することができます。組合としては、既存組合員の地位を喪失しないような方法をとることが望ましいと考えます。

加入・加入金

  • (1)事業協同組合への加入の自由と加入拒否の「正当な理由」
    事業協同組合が、加入申込者に対して、正当な理由がある場合には加入拒否ができると聞きましたが、どのような場合に「正当な理由」として加入を拒否することができるのですか。
    事業協同組合(以下「組合」という。)への加入の自由は、協同組合法の基本原則の1つです。
    組合員は任意に加入し、また脱退できることが組合の重要な要件であり、組合員たる資格を有する者が組合に加入しようとするときは、組合は正当な理由がないのに、その加入を拒み、またはその加入につき現在の組合員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならないこととされています(中小企業等協同組合法第14条)。
    法は、組合が、相互扶助の精神を基調とする人的結合体であることから、加入の自由の原則をとっていますが、また、相互扶助の精神に基づき協同して事業を行う事業体であることから、組合の運営を考えて「正当な理由」のある限り加入を拒否することを許しています。
    この「正当な理由」とは、組合への加入資格がある者に対して一般的に保証されている加入の自由が、具体的な特定人に対して保障されないことになっても、組合法の趣旨から、あるいは社会通念上からも、不当ではないと認められる理由をいうものですから、組合が「正当な理由」に該当するかどうかを判断する際には、この点に十分留意することが必要です。
    組合が加入を拒否できる「正当な理由」は、その原因が「加入の申込みをする側にある場合」と、「受け入れる組合の側にある場合」とがあります。
    前者については、例えば、
     ・加入申込者の規模が大きく、これを加入させれば組合の民主的運営が阻害され、あるい は独占禁止法の適用を受けることとなる恐れがあるような場合
     ・除名された者が、除名直後、またはその除名理由となった原因事実が解消していないのに、加入の申込みをした場合
     ・加入申込前に員外者として組合の活動を妨害していたような者である場合
     ・その者の日頃の行動からして、加入をすれば組合の内部秩序がかき乱され、組合の事業活動に支障をきたす恐れが十分に予想される場合
     ・加入により、組合の信用が著しく低下する恐れがある場合
     ・組合員の情報、技術等のソフトな経営資源を活用する事業を行う際に、その経営資源や事業の成果等に係る機密の保持が必要とされる場合において、例えば、契約・誓約の締結、提出などの方法により機密の保持を加入条件とし、これに従わないものの加入を拒む場合(ただし、条件はすべての組合員に公平に適用されることが必要)
     ・組合の定款に定められている出資の引受け、経費、加入金の負担等が履行できないことが明らかな者である場合等が考えられます。
    また、後者については、例えば、
     ・組合の共同施設の稼働能力が現在の組合員数における利用量に比して不足がちである  等、新規組合員の増加により組合事業の円滑な運営が不可能となるような場合
     ・総会の会日の相当の期間前から総会の終了するまでの間加入を拒む場合
    等が考えられます。
    以上が、「正当な理由」と認められる場合の例示ですが、前者の②④⑥及び後者の②は、平成3年の中小企業庁における組合制度の見直しにより、農業協同組合等他の協同組合制度の解釈を参考に、新たに「正当な理由」に該当するものとして認められたものです。
  • (2)加入金の性格と定款記載について
    当組合の定款には、脱退者の持分の払戻しについては、「組合員の本組合に対する出資額を限度とする」旨の規定をしている。定款参考例によれば、このように規定している組合では加入者からの加入金を徴収する旨の規定は削除することとされている。加入金は定款の定めがなければ徴収できないということであるので、このことにより、当組合では、加入金は徴収できないと考えられる。
    加入の際の事務手数料的なものを徴収することはできないのか。この場合、定款に「加入金」ではなく、「加入事務手数料」を徴収できる旨の規定を置くことはできるか。
    中協法では、組合が定款で定めた場合には加入金を徴収することを認めている(第15条、第33条)が、この加入金の意味については、特に規定していない。しかし、その趣旨から広義に解釈すれば、持分調整金と加入事務手数料を意味するものと考えられる。
    持分調整金とは、持分の算定方法について、改算式算定方法(組合の正味財産の価額を出資総口数で除して、出資1口当たりの持分額を算定する方法。したがって組合員の持分は均一となる)を採っている場合において、組合財産の増加によって出資1口当たりの持分額が出資1口金額を超えている場合に、その超過した部分に当たる差額を新規加入者より徴収し、新規加入者と既存組合員との持分についての公平を保とうとするものである。
    このように、持分調整金は、改算式の持分算定方法を採用する組合において徴収することになるが、たとえ改算式を採っている組合でも、貴組合のように、定款の規定により脱退者の持分の払戻しが「出資額を限度」として行われる組合にあっては、常に払戻額が出資額を上回ることはなく、新旧組合員の持分の調整を行う必要が生じないので、持分調整金としての加入金を取ることはできないとされている。定款参考例でいう「加入金」は、この持分調整金を意味していると解されるので、このような組合にあっては加入金の項を削除するよう指導されている。
    次に、加入事務手数料についてであるが、これは組合に加入する際に要する事務的費用、例えば出資証券や組合員証の発行費用などであるが、これを加入者に負担させるために徴収するものをいう。この加入事務手数料は、広く加入金の一種と考えられるが、これはあくまで実費の範囲を超えないものであり、その性質上それほど多額なものとなり得ないものである。このような実質的なものの徴収は、加入金の規定によらなくても組合として徴収し得るものである。
    しかし、このことは、加入事務手数料を徴収できる旨の定款記載を禁じるものでなく、例えば徴収の根拠を明らかにしておく等の必要がある場合には、この旨を掲載しても差し支えないと考えられる。
    (注)持分の算定方法には、前記の改算式算定方法のほかに、加算式算定方法がある。
       (「65 持分の算定方法について」参照)
  • (3)組合員の加入の是非について
    私は仕出し屋を営む者で、同業者で構成している事業協同組合にも加入しております。
    今月の組合報を見ていましたら、私の店の近所に昨年出店したばかりのA商事が、組合への加入を承諾された旨を知りました。
    私のところはA商事とはいわば商売敵で、最新の調理機器を備えたA商事のために、昨年の売上はかなり減っております。また今後、A商事の加入のためにこれまでの組合の共同受注の割当ても減ることになるのではないかと危惧しております。
    組合がこのような利害関係にある私に何の相談もなくA商事の加入を承諾したことは甚だ遺憾であり、組合の今回の決定の白紙撤回を求めたいのですが、可能でしょうか。
    お話によりますと所属されている組合では組合員の加入については理事会で意志決定されておるように推察されます。
    中小企業等協同組合法では第54条において総会について商法第252条(決議の不存在確認・無効確認の訴え)を準用しており、総会決議の効力を争うことができることとされていますが、理事会についての同様の準用規定がありません。
    しかし組合員の加入のように、組合の意志決定が常に総会の議決によらなければならないというものでなく、その権限が理事会に委ねられている場合には、商法第252条を類推適用し、理事会の決議の無効確認を求めることは可能であると思われます。
    さて組合法第14条では、組合は正当な理由がないのに組合員たる資格を有する者からする加入申込みを拒んではならない旨を規定しています。
    つまり資格を有する者に対してはその者が希望をすれば組合に加入して組合の事業の恩恵を受けることができるということです。
    ここでの加入申込みを拒否しうる正当な理由とは、
     ・加入申込者の規模が大きく、これを加入させれば組合の民主的運営が阻害され、あるいは私的独占禁止の適用を受けるおそれがある場合
     ・除名された組合員がただちに加入申込みをしてきた場合
     ・加入申込み前に員外者として組合の活動を妨害していた場合
     ・その加入により組合の信用が著しく低下するおそれがある場合
     ・共同施設の稼働能力が現在の組合員のみでも不足がちである等、組合員の増加により組合事業の円滑な運営が不可能となる場合
    等に限られると解されています。
    したがって、本事例の場合、単に受注配分が減るというだけでは、加入申込みを拒否し得る正当な理由とは言い難いと考えます。
  • (4)法定脱退した組合員の持分譲受加入の是非
    組合員Aは、平成○年12月2日組合員資格喪失により法定脱退したが、その未払持分を譲受けることによりBの加入を、翌年の3月15日の理事会で承諾した。
    このような資格喪失者の未払持分で譲受加入ができるか?
    脱退した組合員の持分は、脱退と同時に持分のもつ身分権的なものが喪失しており、持分払戻請求権という債権として残っているだけである。
    したがって、既に法定脱退した者の組合員としての権利義務を承継することとなる譲受加入ということはあり得ず、当該譲受人の加入は新規加入の手続によらなければならない。
  • (5)脱退組合員の再加入について
    事業年度末(3月31日)に自由脱退した組合員が翌4月1日に新規加入を申し出た場合に、理事会でこれを拒否することができるか?
    加入も脱退の場合と同様、自由であることは協同組合の基本的原則であって、設例の場合も正当な理由がないかぎり、これを拒否することはできない。
  • (6)個人組合員の会社移行の場合の取扱いについて
    組合員であるA商店(個人企業)では、現在、A商店を株式会社組織に変更する手続きを進めているところですが、手続きが完了した時、組合は、A商店から、定款の規定に基づき、「名称」の変更届を出してもらうとともに組合員名簿を変更しようと考えています。この処理方法でよろしいでしょうか。
    「名称の変更」という点に着眼するならば、この手続きのみでよいように思われますが、この手続きには、大きな見落しがあります。
    つまり、定款で組合員に名称等の変更が生じた場合、届出義務を求めていますが、これは、個人企業の場合は、個人企業としての性格を有しながら、商号等の企業名を変更する場合です。
    ご照会の場合は、「個人企業」であるA商店が、「株式会社法人」であるA商店に変更されるようですが、これは、個人企業であるA商店の脱退(A商店は代表者の事業の廃止に伴い法定脱退(中小企業等協同組合法第19条第1項第1号))とA商店株式会社という法人の新規加入という2つの行為を含んでいます。
    したがって、原則的には、個人企業A商店には、事業の廃止に伴い持分払戻し請求権が生じ、組合は、この請求に応じ、脱退の手続きをとることが必要となります。
    また、法人であるA商店株式会社を組合に加入させるには、A商店株式会社からの加入の申し出が必要であり、この申し出に対する組合の承諾が得られた後、A商店株式会社は組合に対して、出資金の払込みを行うこととなります。
    しかし、個人企業であるA商店と法人であるA商店株式会社が、実態的にみて、併存するようであるならば、組合員であるA商店は、組合の承諾を得た後、法人であるA商店株式会社に持分を譲渡し、脱退することが可能です。
    この場合には、譲り受けた法人は、当然に組合員となり、出資金の払込みは、必要としません。
  • (7)相続加入申出時に業法上の事業者としての地位を承継するまでに至っていない相続人の取扱いについて
    7月20日、組合員が死亡し、8月13日、相続人の1人が他の相続人の同意書を添えて、組合へ相続による加入申込書を提出した。
    一方、砂利採取法による砂利採取業承継届書については、8月20日頃県の担当係に相談し、9月2日、県へ届書を提出、9月29日付で県より受理通知書が発行された。
    同組合理事長は、相続による加入申込みは、中協法第16条第1項中、組合員たる資格を有するものが定款で定める期間(定款では30日以内)に申出をしたときは組合員になったものとみなされるのであり、本件の場合、同組合としては、その相続人は県に対して砂利採取業承継届書を提出しておらず、かつ、知事からの同届出書の受理通知書も受けていないので、組合員たる資格を有する者に該当しないとして、相続による加入申込を認めていない。
    この件については、同組合の理事会で加入を認めない旨議決がなされた。
    中協法第16条は、特に死亡した組合員の相続人が組合員としての地位を獲得するについて、その手続きに関する例外措置を規定したものである。
    すなわち、相続の場合には、組合の承諾、出資の払込みといった通常の加入の手続を踏むことなく、相続人の一人で、組合員たる資格を有する者が、定款記載の期間内に、組合に加入の申出をするだけで組合員となれるものとして、加入の特例を認めている。
    「組合員たる資格を有する者」とは、第14条におけるように、組合定款の組合員資格規定に該当する事業者をいうが、第16条の相続加入の場合は、加入の特例を認めた同条の主旨から、「死亡した組合員の事業を継承した相続人」について、広く「組合員たる資格を有する者」と解すべきである。
    思うに、加入の申出の際に業法上の事業者としての地位を承継するまでに至っていないような場合であっても、近い将来その地位を承継することが見込まれ、かつ、その地位の承継さえ行われるならば事業を実施できる状態にあるというような場合があり得るからであり、このような場合においては、当該相続人を「組合員たる資格を有する者」と解するのが妥当であると考える。
    また、「加入の申出」とは、死亡した組合員の事業を承継した相続人が、その組合員の属した組合の組合員となることを欲し、組合員たるべきことの意思表示を行うことであり、その申出の方法は、組合員たるべきことを欲する意図がわかるようなものであれば有効であると解される。
    以上のことから、死亡した組合員の事業を承継した相続人は、届出時までに業法上の事業者としての地位を承継していなくても、組合員たることを欲する何らかの意思表示を定款記載の期間内に組合に対して行っていれば、第16条の相続加入の要件を満たしているものと思料する。
    なお、一般に事業者が組合に加入しなければ採取数量の割当が得られず、事実上その営業活動が制限されるような場合においては、組合が正当な理由なく加入を拒否することは、独禁法上も問題となるので十分留意する必要がある。

持分

  • (1)持分の算定方法について
    中小企業庁の模範定款例に、加算式持分算定方法の規定が追加されましたが、従来の改算式持分算定方法との違いについてご教示下さい。
    持分の算定方法は、法に何らの規定がないので、定款で自由に定めてよいわけですが、一般にその方法として改算式(又は均等式)算定方法と加算式(又は差等式)算定方法があります。
    改算式算定方法は、組合の正味財産(時価)の価額を出資総口数で除することにより出資1口当たりの持分額を算定し、それに各組合員それぞれの出資口数を乗じて各組合員の有する持分額を算定する方法です。
    この方法によるときは、出資1口当たりの持分額が均等となるので、計算、事務処理が簡便ですが、原始加入者および増口分の出資の払込みに際しては、持分調整金を徴収する必要が生じます。
    現在殆どの組合がこの方法を採用しています。加算式算定方法は、各組合員について、事業年度ごとに、組合の正味財産(時価)に属する出資金、準備金、積立金その他の財産について、各組合員の出資口数、事業の利用分量(企業組合にあっては従事分量)を標準として算定加算(損失が生じた場合はそのてん補額を控除)することによって、各組合員の有する持分額を算定する方法です。
    この方法によるときは、各組合員の持分は、加入の時期、組合事業の利用分量等により不均一となるので、計算・事務処理が繁雑となります(持分計算を明らかにするための持分計算表と、各組合員別に持分額を示す持分台帳が必要となります。ただし、最近は電算機の普及により機械処理が可能となっています。)が、持分調整の問題を生じないし、また、組合員の組合に対する権利義務の表示について忠実であると言えます。
    このように、この2つの方法にはそれぞれ特徴があり、組合の実情に応じて適宜選択する必要があります。このため、模範定款例に、平成3年6月12日の改正により、従来の改算式算定方法に加えて、これまで明確に示されていなかった加算式算定方法の規定が次のとおり追加されています。
    【定款例】
    第23条 組合員の持分は、次の基準により算定する。
     一 出資金については、各組合員の出資額により算定する。
     二 資本準備金については、各組合員の出資額により事業年度末ごとに算定加算する。
     三 法定利益準備金、特別積立金及びその他の積立金については、各組合員が本組合の
      事業を利用した分量に応じて、事業年度末ごとに算定加算する。
     四 繰越利益又は繰越損失については、各組合員の出資額により算定する。
     五 土地等の評価損益については、各組合員の出資額により事業年度末ごとに算定し加算又は減算する。
    2 準備金又は積立金により損失のてん補をしたときは、その損失をてん補した科目の金額において有する各組合員の持分の割合に応じてそのてん補分を算定し、その持分を減算する。第53条第2項ただし書の規定又は総会の決議により、特別積立金又はその他の積立金を損失のてん補以外の支出に充てた場合も同様である。
    3 本組合の財産が、出資額より減少したときの持分は、各組合員の出資額により算定する。
    4 持分の算定に当っては、何円未満のは数は切り捨てるものとする。
  • (2)改算式から加算式への持分算定方法の変更について
    当組合では、これまで改算式持分算定方法を採用していたが、このたび加算式持分算定方法に変更したいと考えている。その場合、どのような点に留意すべきかご教示願いたい。
    加算式持分算定方法を採用する場合の留意点について説明する。
    (1)加算式持分算定方法の採用の意義
     加算式持分算定方法は、従来から改算式持分算定方法を採用している資産保有組合において、①土地等の含み資産又は内部留保が大きいため、持分調整金としての加入金の額が増大し、その結果新規加入が阻害されるような場合、あるいは、②組合への加入年数(組合員歴)や事業利用による貢献を持分に反映させようとする場合に適する持分算定方法であることに、まず留意する必要がある。
     したがって、加算式持分算定方法は、持分の払戻し方法が、全額払戻し又は多額の一部払戻し方法(帳簿価額以上の額を限度とする払戻し方法)である場合に意味があり、少額の一部払戻し方法(例えば、出資額限度方式や出資額以上であるが帳簿価額に満たない額を限度とする払戻し方法)である場合には、採用の意味は少ないと考えられる。
     また、持分の払戻し方法が一部払戻しの組合で、加算式持分算定方法を採用する場合には、定款に規定される、持分の算定の内容と持分の一部払戻しの内容とは当然異なることになる(持分計算額よりも一部払戻し額の方が少ない)ので、持分の払戻しの際、組合員に誤解をされないよう注意を要する。
    (2)加算式持分算定方法の採用の手続
     まず、既存組合の加算式持分算定方法の採用の決定は、通常の定款変更の議決方法(特別議決)で足りるものと解される。改算式から加算式に持分算定方法を変更する組合においては、加算式方法採用時の既存組合員の持分は、各持分構成資産について各組合員の出資額により算定することとなる。
    (3)組合財産の評価
     組合財産のうち、帳簿価額と時価が異なる資産については、時価(一括譲渡価額)評価する必要がある。その評価方法は、①対象となる資産ごとに明確に定めておくこと、②客観性があり、かつ、計算が容易であることが必要である。
     組合財産の評価に大きく影響する土地の評価方法は、様々な方法が考えられるが、一般に妥当と思われる方法としては次のものがあげられる。
       ア.固定資産税評価額倍率方式
         通常の固定資産税評価額を時価の〇〇%程度とみて、固定資産税評価額を
         〇〇%で除して時価に評価還元する方法
       イ.相続税評価額倍率方式
         通常の相続税評価額を時価の〇〇%程度とみて、相続税評価額を〇〇%で
         除して時価に評価還元する方法
       ウ.不動産鑑定士による評価方法
         不動産鑑定士にその評価を依頼する方法。この場合は、1人の鑑定士のみ
         による評価では不十分であり、通常5人の鑑定士に依頼し、これらの評価
         額のうち最高値と最低値を切り捨て、中3値の平均値をとる方法が適当で
         ある。
         なお、含み資産の評価方法については、規約又は総会の議決によって定め
         ておくことが必要である。
  • (3)持分払い戻し方法変更のための定款変更の議決方法について
    持分全額払戻制をとる組合が、出資限度の払戻方法に定款変更する場合は、組合員にあっては既得権の放棄を意味するので、総会における定款変更決議とは別に組合員全員の同意が必要ではないか?
    持分払戻方法に関する定款変更については、中協法第53条による特別議決をもって足り、特に組合員全員の同意は要しないものと解する。
    すなわち、中協法第53条において定款変更は特別議決によること、また持分払戻しに関して同法第20条に「・・・定款の定めるところにより・・・全部又は一部の払戻しを請求・・・」と規定するだけであり、中協法上組合員全員の同意を要する規定がないので、これが法律上明文の規定がないことを根拠として、通常の定款変更の手続きで足るものと解する。
    なお、持分については、既得権たる財産権と解する見解のほか、脱退等により現実化する潜在的な期待権とする見解もあるので、本件については、総組合員の同意を得ることは好ましいことではあるが、現行法上は法53条の特別議決をもって足りるとする見解は中小企業庁においても採用しているものである。
  • (4)国税滞納処分による組合員の持分差押えについて
    国税徴収法(昭和34年法律第147号)によれば、税務署長は企業組合等の組合員の国税滞納に対してその持分を差押え、その持分を再度換価に付しても、なお買受人がないとき等の場合は組合等に対して、その持分の一部の払戻しを請求することができる(同法第74条)とある。しかし同条には、事業協同組合については特に規定していないが、事業協同組合にも同条の規定が及ぶものかどうか?
    また、仮に上記の請求が正当であるとした場合に、当該組合の持分払戻方法が出資限度のときは、差押え請求であっても、出資限度として払戻請求に応ずればよいか?
    国税徴収法第74条は、企業組合に限らず中協法に基づく他の協同組合にも適用されると解する。本条は、その適用者について「中小企業等協同組合法に基づく企業組合、信用金庫、その他の法人で組合員、会員その他の持分を有する構成員が任意に(脱退につき予告その他一定の手続きを要する場合には、これをした後、任意に)脱退することができるもの」と規定しているが、そのなかで、「その他の法人で組合員、会員その他の持分を有する構成員が任意に脱退することができるもの」の中に、企業組合以外の協同組合も当然含まれると解する。
    また、払戻請求の限度については、定款に出資額を限度として持分を払戻す旨の規定があれば、本条による持分の払戻請求についても、出資額を限度として払戻請求に応ずればよいと解する。なぜならば、当該組合員が組合において現に有する権利以上のものを本条によって請求することはできないからである。
  • (5)持分の譲渡について(1)
    中協法第17条第1項によれば、組合員は、その持分の譲渡について組合の承諾を得なければならないこととなっているが、組合は、その承諾を総会で決定しなければならないか?あるいは理事会でよいか?
    また、同条第2項においては、持分の譲受人が組合員でないときは加入の例によらなければならないこととなっているが、加入の例によるとは、どの範囲を意味するのか?
    持分譲渡の承諾は、業務の執行に属すると考えられるので、加入の承諾の場合と同様(事業協同組合模範定款例第9条第2項)理事会で決定すれば足りるものと解する。
    「加入の例による」とは、加入の場合に準じて取り扱うということであるから、譲受人は組合員たる資格を有する者であって、かつ、その持分を譲り受けると同時に組合に加入する意思を有していなければならないことになる。
    また、組合の側においては、その譲渡の承諾に当たっては、正当な理由がなければこれを拒否し、又は承諾に際して不当に困難な条件を付してはならない。
  • (6)持分の譲渡について(2)
    1.他人の持分の全部又は一部を譲り受けて組合に加入しようとする者からも加入金を取る定めをしても良いか。
    2.中協法第17条第3項の「持分の譲受人は、その持分について、譲渡人の権利義務を承継する」とあるが、この場合の権利義務の承継とは具体的にどの様なことを言うのか?また質問1との解釈上の関連性について説明されたい。
    3.加入に関し、定款に「他人の持分の全部又は一部を承継した場合はこの限りでない」と規定したとき、この後に「この場合の全部又は一部とは5口以上をいう」と但し書きしてもよいか?
    1.加入金は持分調整金としての性格を有するものであるので、持分譲受加入の場合には徴収できないと考えられる。なぜならば、持分譲受加入の場合には、出資の払込手続を必要としないので、定款に定めた出資一口金額とこれに応ずる持分額との調整を行う必要が生じない(すでにこの点を考慮して持分の譲渡価格が当事者間で決定されたものと考えられる。)
    2.組合員の持分とは、組合員がその資格に基づいて組合に対し請求し又は支払うべき計算上の金額とこれを含めた組合員として有する権利義務を包括的に指す、組合員たる地位ともいうべきものの二義があると解され、本条、第15条、第16条、第61条にいう持分は後者を意味し、第20条、第22条は前者を意味している。
     したがって、法律上の持分が、いずれの意義に用いられているかは、個別的に判定すべきである。このような観点から本条における持分を組合員たる地位の譲渡と解するかぎり議決権、選挙権、出資義務、定款服従義務等、組合員として当然有する権利義務も承継されるとともに持分払戻請求権又は出資払込義務も承継されるのである。1.との関連について、持分の譲受加入の場合には原始加入の場合と異なり、出資払込及び持分調整金の問題が生じないのは、本条の持分を前述のとおり解すれば、持分の譲渡は組合員の入替を意味する場合もあるから、その譲受に伴う代金(払込済出資金と持分調整金との合計額)の授受は当事者間で行われ、組合と譲受人とのあいだには関係を生じないからである。
    3.貴組合の定款において、貴組合への出資口数を最低5口以上とし、また、現組合員のすべてが5口以上の出資を有しており、かつ5口未満の口数が生じた場合の処置が明確であれば差し支えないと解する。つまり、上記の場合以外においては新規加入者と譲受加入者との均衡を失するとともに脱退の自由を制限するおそれがあると思料されるからである。
  • (7)持分譲渡禁止と定款規定抹消手続について
    定款で持分の譲渡を禁止している組合があるが、これは組合員の加入の自由の原則に反し、中協法に違反していると思うがどうか?
    また、それが違反であるとすれば、その定款の違反条項を抹消すべきであるが、それは行政庁の職権によるべきか?それとも定款変更の手続きによるべきか?
    定款で持分の譲渡を禁止することは、中協法(第15条、第17条第2項)において認めているところの譲受加入を否定し、また、組合員の財産権に法律が認める以上の制限を付する(持分の譲渡には組合の承諾を要する=第17条第1項)ことになるので違法と解する。
    違法である定款の条項を抹消する場合においても、定款変更の手続によらなければならない。
  • (8)脱退者に対する持分の分割払戻しについて
    多額の借入金、出資金等によって固定資産を取得している工場団地協同組合等において、組合員が脱退した場合、脱退者の持分を全額一時に払い戻すことは組合の資金繰りがつかず組合運営に支障をきたすことが考えられる。
    そこで、定款変更するに当たり次の点について、ご教示願いたい。
     ・持分の払い戻しを年賦払いとすることの定款変更の適否について
     ・適当である場合の年賦払いの期間はどの程度が適当であるか?
     ・定款変更案として次のような定め方は適当であるか?
    事業協同組合定款例第14条に相当する規定に次の1項を加える。
    【案の1】
    2 前項の払い戻しの期限は、脱退した事業年度の決算確定後〇年以内の年賦払いとするものとする。ただし、年賦払いによる利息は支払わないものとする。
    【案の2】
    2 前項の払い戻しは、年賦払いとし、その期限は、総会の定めによるものとする。ただし、年賦払いによる利息は支払わないものとする。

    持分の払い戻しの取扱いについては、昭和46年1月6日付45企庁第2,048号及び昭和46年4月8日付46企庁第534号で通知したとおり、持分を一時に全額支払うことが組合の事業運営に重大な支障を来す場合においては定款で定めれば、その一部に限り(例えば出資額を限度として)払い戻すことができる。
    持ち分の全額払い戻しの場合も同様の理由から定款上分割払いを規定することは可能と考える。
    しかし、分割払いによって不当に脱退が制限されるべきではなく、1回の払戻金額、賦払期間が合理的に定められる必要がある。
    この場合、どの程度までの分割払いが合理的かは具体的事情に即して判断されるべきものと考えるが、中協法上出資払込みにつき分割払いの際、第1回の払込金額は、出資1口の金額の4分の1以上としていること(第29条第2項)から第1回払戻額が出資額の4分の1以上であれば合理的といい得るものと考える。
    ただし、分割払いにより脱退を不当に制限しないという趣旨から3年賦払いの場合、一般的水準の金利を支払うことが適当と考える。
    なお、払戻の方法(1回の払戻額、賦払い期間等)は中協法第20条第1項の趣旨から具体的には定款で定めるべきものと考える。
  • (9)脱退組合員の持分債権の保全処分について
    組合員Bの倒産によりその債権者Aより組合宛に債務者であるBの持分を支払停止命令(裁判所より)してきた。そのため、組合は、当年末決算において持分算出をしたが、支払を中止し、現在組合にて保管しているが、その処置を如何にすべきか、次の点をご指導頂きたい。
    債務者Bの持分払戻請求権は、仮差押えのため、中協法第21条(時効)には該当しないものと思われるがどうか?
    仮に組合が、この差押え該当部分を組合外に処分するためにはどのような手続きが必要か?
    組合に対してなされた保全処分(仮差押)は法定手続に従い有効に執行(処分決定の送達)がなされたものであるから、この場合、組合は供託等による持分払戻金の組合外への処分の道はない。
    したがって、債権者AがBとの間の本訴を提起して、転付命令又は取立命令を得て直接請求してくるか、また債務者Bが仮差押を取消して組合に請求してくるのを待つよりほか、他に方法はないと考える。
    なぜなら、組合は持分払戻金を保管することにつき何等の不利益を受けるものではなく当該仮差押におよんだAB間の訴訟上の当事者たる資格を有しているからである。
    債権者Aが仮差押したことが、民法にいう時効中断事由に該当するかどうかについては、学説、判例に争いがあり、判例は債務者Bの有する第三債務者(組合)に対する債権をその債権者Aが差押えても、その債権(持分払戻請求権)の消滅時効の進行はそれによって中断しないものとしており、したがって、この場合には仮差押のあるなしに拘らず2年で時効が完成することになる。
    学説は判例の立場に反対で、この場合の差押も債権消滅時効の中断事由になるとするのが一般で、この場合は、請求権は時効にかかわらず、依然存在することになる。
  • (10)法定脱退者の持分払戻請求権の時効進行時期について
    中小企業等協同組合法第21条には、脱退者の持分払戻請求権は脱退の時から2年間行使されない場合は時効となる旨の規定がありますが、組合員の解散・死亡等による、いわゆる法定脱退の場合は、その事由が発生した時から時効が進行するものと考えてよろしいでしょうか。
    解散等による法定脱退の場合は、その事由が発生した時にその組合員は、当然に脱退することになります。したがって、持分払戻請求権もこの脱退事由の発生時(脱退時)に発生します。
    しかしながら、持分の価額は、事業年度末における組合の財産によって算定することとなっています(中小企業等協同組合法第20条第2項)ので、持分払戻請求権は、この持分が算定された後に行使されることとなります。
    つまり、法定脱退の場合も自由脱退の場合と同様に事業年度末までは、これを行使することができないこととなっています。
    このようなことから、法定脱退者の持分払戻請求権の時効も自由脱退者と同様に事業年度末から進行するものと考えます。
  • (11)持分払戻方法を変更した場合の新定款の効力について
    脱退者に対する持分を全額払い戻す旨の定款規定を出資額限度に改めるための臨時総会が適法に開催され、決議が有効に成立し、当該事業年度にこの変更申請が認可された場合において、次の者に対する持分の払い戻しに関する定款の適用については、各々次のように解釈するが適当か?
    1.臨時総会で反対を唱え、容れられなかったため脱退を予告した組合員
    (解釈)
    自由脱退の場合は、脱退を予告した組合員といえども事業年度の終了日までは、組合員たる地位を失っていないし、組合に対する権利義務も他の組合員と同様に有しているのであるから、年度途中で変更のあった場合でも、変更後の定款によって持分の払戻しを行うこととなる。
    2.死亡等による法定脱退者
    (解釈)
    死亡等による法定脱退の場合は、組合員の意思にかかわらず法定された事由に該当するにいたったとき法律上の効果としてただちに脱退せざるを得ず、組合員たる地位及び権利を失うのであるから、持分の払戻しはその脱退の時点において効力を有していた定款に準拠すべきであると解する。
    1、2とも貴見のとおりである。                                              
  • (12)出資額限度持分払戻し規定の意味
    私はこのたび所属している組合を脱退することとなりました。
    私の所属する組合の持分払戻しに関する規定はいわゆる出資額限度の払戻しとなっていますが、いろいろ調べた結果、ここでいう「出資額限度」とは、払戻しの「下限」を出資額と定めたものであり、出資額以上の払戻しを受けることも可能のように思われますが、この解釈で間違いないでしょうか。
    組合の脱退者に対する持分の払戻しに関して中小企業等協同組合法では、第20条第1項において、「組合員は、脱退したときは、定款の定めるところによりその持分の全部又は一部の払戻しを請求することができる。」と定められています。
    貴見の解釈は、昭和46年1月6日付け45企庁第2084号中小企業庁指導部長通達を類推されたものと思われますので、以下に本通達の要旨を示します。
     一 持分の払戻しの際の組合財産は時価による。
     二 この場合において、組合の実態にかんがみ、定款で持分の一部の払戻しを定める
      ことができる。なお、払戻しの額の下限は出資額とし、定款において、それを上廻
      る額を適宜定めることは差支えない。
    この通達の主旨は、組合が持分の一部の払戻しを定める場合、最低でも個々の組合員が拠出した出資額は払戻されるべきであるとの考え方から、出資額を下廻って払戻す規定を設けることは許されないということを述べています。
    つまり、組合員は出資額までは持分を保障されているという意味です(除名による場合、組合財産が出資総額より減少した場合はこの限りでない。)。ところで、貴組合の定款規定は出資額限度払戻しの規定とのことですが、この規定は、組合員の権利として払戻してもらうべき持分として、出資額が最低保障されているものです。
    しかし、出資額限度は、持分の一部について払戻す方法の一つですから、出資額以上払戻すことができるという意味のものではありません。
  • (13)加算式持分算定方法と改算式持分算定方法との違いについて
    定款参考例の加算式持分算定方法と改算式持分算定方法との違いについてご教示願いたい。                               
    持分の算定方法は、法に何らの規定がないので、定款で自由に定めてよいわけであるが、一般にその方法として改算式(又は均等式)算定方法と加算式(又は差等式)算定方法がある。
    改算式算定方法は、組合の正味財産(時価)の価額を出資総口数で除することにより出資1口当たりの持分額を算定し、それに各組合員それぞれの出資口数を乗じて各組合員の有する持分額を算定する方法である。
    この方法によるときは、出資1口当たりの持分額が均等となるので、計算、事務処理が簡便であるが、原始加入者及び増口分の出資の払込みに際しては、持分調整金を徴収する必要が生じる。
    加算式算定方法は、各組合員について、事業年度ごとに、組合正味財産(時価)に属する出資金、準備金、積立金その他の財産について、各組合員の出資口数、事業の利用分量(企業組合にあっては従事分量)を標準として算定加算(損失が生じた場合はそのてん補額を控除)することによって、各組合員の有する持分額を算定する方法である。
    この方法によるときは、各組合員の持分は、加入の時期、組合事業の利用分量等により不均一となるので、計算・事務処理が煩雑となるが、持分調整の問題を生じないし、また、組合員の組合に対する権利義務の表示について忠実であると言える。
    このように、この2つの方法にはそれぞれ特徴があり、組合の実績に応じて適宜選択する必要がある。
  • (14)加算式持分算定方法への変更について
    私ども事業協同組合では、これまで改算式持分算定方法を採用していましたが、このたび加算式持分算定方法に変更したいと考えております。その場合、どのような点に留意すべきかご教示下さい。
    1.加算式持分算定方法の採用の意義
     加算式持分算定方法は、従来から改算式持分算定方法を採用している資産保有組合において、①土地等の含み資産または内部留保が大きいため、持分調整金としての加入金の額が増大し、その結果新規加入が阻害されるような場合、あるいは、②組合への加入年数(組合員歴)や事業利用による貢献を持分に反映させようとする場合に適する持分算定方法であることに、まず留意する必要があります。
     したがって、加算式持分算定方法は、持分の払戻し方法が、全額払戻しまたは多額の一部払戻し方法(帳簿価格以上の額を限度とする払戻し方法)である場合に意味があり、少額の一部払戻し方法(例えば、出資額限度方式や、出資額以上であるが帳簿価格に満たない額を限度とする払戻し方法)である場合には、採用の意味は少ないと考えられます。
     また、持分の払戻し方法が一部払戻しの場合で、加算式持分算定方法を採用する場合には、定款に規定される、持分の算定の内容と持分の一部払戻しの内容とは当然異なることになります(持分計算額よりも一部払戻し額の方が少ない)ので、持分の払戻しの際、組合員に誤解をされないよう注意を要します。
    2.加算式持分算定方法の採用の手続
     まず、既存組合の加算式持分算定方法の採用の決定は、通常の定款変更の議決方法(特別議決)で足りるものと解されます。
     改算式から加算式に持分算定方法を変更する組合においては、加算式方法採用時の既存組合員の持分は、各持分構成資産について各組合員の出資額により算定することとなります。
    3.組合財産の評価
     組合財産のうち、帳簿価額と時価が異なる資産については、時価(一括譲渡価額)評価する必要があります。その評価方法は、①対象となる資産ごとに明確に定めておくこと、②客観性があり、かつ、計算が容易であることが必要です。
     組合財産の評価に大きく影響する土地の評価方法は、様々な方法が考えられますが、一般に妥当と思われる方法としては次のものがあげられます。
     (1)固定資産税評価額倍率方式
        通常の固定資産評価額を時価の〇〇%程度とみて、固定資産税評価額を〇〇%で除して時価に評価還元する方法。
     (2)相続税評価額倍率方式
        通常の相続税評価額を時価の〇〇%程度とみて、相続税評価額を○○%で除して時価に評価還元する方法。
     (3)不動産鑑定士による評価方式
        不動産鑑定士にその評価を依頼する方法。この場合は、1人の鑑定士のみによる評価では不十分であり、通常5人の鑑定士に依頼し、これらの評価額のうち最高値と最低値を切捨て、中三値の平均値をとる方法が適当です。なお、含み資産の評価方法については、規約かまたは総会の議決によって定めておくことが必要です。

脱退

  • (1)脱退者に対する延滞金の徴収について
    法定脱退者が組合に対する経費又は斡旋原料代等を滞納しているとき、仮に本年4月に法定脱退した者に本事業年度末たる〇年3月末に持分算定の上、払戻すことになるが、この場合4月以降滞納金の払込がない場合年度末までの延滞金(定款及び総会議決をもって徴収するよう規定されている)をも加算して、払戻持分より差引して支障ないと解せられるが、それでよろしいか?
    脱退した者に対し、債権を有する組合が脱退者に支払う持分と、その債権を相殺する場合、脱退以降持分支払までの期間に対し、定款に定める延滞金を課することはできないものと思われる。
    定款は組合員でなくなった脱退者に対しては効力を及ぼさないので、脱退者から定款の規定によって徴収することができないものと考えられるからである。
    ただし、脱退者より持分の確定するその事業年度末までは、脱退者の債務不履行に対し、民法の法定利率(年5%)による利息を課することができる。
  • (2)脱退を申し出た組合員の取扱等について(1)
    中協法第18条により組合を脱退することができるが、その予告期限、脱退の時期等は中協法により90日前までに予告し、事業年度の終了日に脱退できるようになっている。したがって、それまでは組合員の地位を失ってないから、その組合員も他の組合員と同様に議決権の行使、経費を負担する等の権利、義務を有するが、脱退者の申出の点についての効力と其の取扱い方について、
    (1)①A組合員 5月10日に脱退の申出をした場合
       ②B組合員 7月 2日に脱退の申出をした場合
       ③C組合員12月30日に脱退の申出をした場合
    (2)脱退申出の組合員が其の後の組合運営についての権利義務を主張し行使できるか否か。
    (3)脱退者は其の申出日以降組合賦課金の納入をせず期末迄見送ることになるが、その間の取扱い方について。
    (4)脱退した組合員に対し期末に精算等の上、出資金の払戻をするが未納賦課金を其の際、持分払戻する場合相殺して差支えないか。法第22条からして相殺することも妨げないと解されているか。
    設例の組合事業年度終了日が3月31日であれば、(1)の①~③は、いずれも90日の予告期間を満足させているので、脱退の申告があった日の属する事業年度末までは、組合員たる地位を失わないから、脱退の申出をしない組合員となんら差別してはならない。
    したがって、(2)についても事業年度末までの期間内は組合員としての権利義務を負わなければならないし、また(3)にいうごとく、賦課金を納入しないならば組合員としての義務を怠ることになり、除名、過怠金の徴収等の制裁も定款の定めにしたがって可能となるわけである。
    (4)については、脱退した組合員が組合に対して未納賦課金その他の債務を負っている場合は、組合は中協法第22条の規定による持分の払戻停止によって対抗でき、あるいは民法第505条の規定により払い戻すべき持分とその債務とを相殺することもできる。(68-71)
  • (3)脱退を申し出た組合員の取扱等について(2)
    1.中協法第18条に、組合を脱退するには「事業年度末90日前迄に予告し、年度末に脱退できる」とあるが、例えばある組合で為された決議が一部の業態の組合員に著しく不利で営業不能となる為、仮に9月1日に脱退を通告しても、翌年3月末日迄は脱退できないか、又その決議に拘束されるか?
    2.組合員が転廃業して組合を脱退したが、1ヶ月又は2ヶ月後再び元の事業を始めた場合、前に加入していた組合の拘束を受けるか?
    1.中協法第18条に自由脱退の予告期間及び事業年度末でなければ脱退できない旨を規定した趣旨は、その年度の事業計画遂行上、組合の財産的基礎を不安定にさせないためであるから、設例のような場合、即ち9月1日に脱退を予告しても翌年3月末日迄は脱退できない。従ってその間、除名されない限りは依然組合員であるから決議にも拘束されるし、組合員としての権利を有し、義務を負わなければならない。
    2.組合員が転廃業すれば、組合員資格を失い、法定脱退することになるので、組合員資格としての事業を再開しても、直ちに組合員となるわけではないから、その組合の拘束を受けることはない。
  • (4)脱退予告者の権利について
    1.自由脱退予告者は、持分が計算される期末までの期間は組合員であり、持分権があると解釈してよろしいか?
    2.1.の組合員は、その持分を確定する決算総会(通常総会、通常5月に開催される)に出席して、組合員権を行使することはできないと解釈してよろしいか?
    3.脱退予告者が総代である場合、期末までの期間に総代の任期満了による改選があったときは、その組合員は総代の選挙権並びに被選挙権があるか否か?
    1.組合員は、中協法第18条の規定により、脱退することができるが、この場合、予告を必要とし、かつ、脱退の効果は事業年度末でなければ発生しない。したがって、組合員は予告後も年度末に至るまでの間は依然として組合員たる地位を失うものではなく、それまでの間は、組合員としての一切の権利を有し、かつ義務を負うものである。
    2.脱退の効果は、事業年度末において発生し、それ以後は、組合員たる地位を失うものであるから、組合員として事業年度終了後の総会に出席することはできない。
    3.脱退届を提出している組合員が総代であっても、事業年度末に至るまでは組合員たる地位を失うものではないから、総代の選挙権及び被選挙権を有する。
  • (5)脱退予告をした組合員への経費の賦課と配当について
    ある組合員から、事業年度の途中で文書により脱退したい旨の通知がありました。その後、その組合員は組合の共同事業を利用しなくなったのですが、本年度の残りの経費(賦課金)の請求をしてもよいのでしょうか。
    また今年度は、かなりの利益計上が予想される状況にありますが、来年度の通常総会において、配当する旨の決議がなされた場合は、その組合員にも配当できるのでしょうか。
    組合員は、その年度の90日前までに予告することにより、組合を脱退することができますが、脱退の時期は事業年度末とされています(中小企業等協同組合法第18条)。このように脱退の時期を事業年度末に限定したのは、脱退による持分の払戻しにより組合事業計画が遂行できなくなることを防止する等の主旨からですが、いずれにしても、廃業等による組合員資格の喪失(法定脱退)でない限り、事業年度末までは他の組合員と同様に組合員としての権利・義務を有しているわけですから、仮に共同事業を利用しなかったとしても、年度中に賦課される経費を免れることはできません。
    したがって、組合は残りの経費を請求すべきです。
    請求しても、なお組合員が経費を支払わなかった場合は、組合は脱退に際しての持分の払戻しを、経費の支払いが完了するまで停止することができる(中小企業等協同組合法第22条)ほか、更に民法第505条の規定により、払戻すべき持分と未収の経費を相殺することも可能です。
    また、事業年度末に脱退した組合員に対する配当については、その源泉である剰余金は、その組合員の脱退した日が属する事業年度において生じたものですので配当することは可能であると考えます。
  • (6)脱退予告取消しの効力について
    4月~3月を事業年度とする組合において、9月末までに脱退予告の書面を提出した組合員が、10月1日以降翌年3月31日までの間に脱退予告の取消しを届け出た場合に、脱退予告の取消しができるものと解すべきか?
    脱退が組合員の自由意志によって行い得ることは、協同組合の根本的原則である。しかしながら、随時脱退を認めれば、組合の事業計画及び資金計画が常に不安定となり、組合の事業を妨げ、又は組合の債権者の利益を害することになるので、脱退には予告を必要としているものであるが、予告後、その取消しを行っても予告が上述の趣旨により必要とされていることを考えれば、とくに弊害を生ずるものとは考えられないので取消しはできると解する。
  • (7)脱退届の撤回について
    私どもの組合の事業年度は3月までですが、年が改まってから脱退届の撤回の申し出をしてきた組合員がおります。定款では事業年度の末日の90日前までに脱退の予告をする旨定めていますがどのように取り扱えばよいでしょうか。
    中小企業等協同組合法第18条第1項では、脱退に関して事前予告制度を規定していますが、その趣旨は無制限に随時脱退を認めると組合はその都度持分の払戻しを余儀なくされることになって当該年度の事業計画の遂行に支障をきたし、ひいては取引の相手方の保護に欠けることにもなるなどの点を配慮し、脱退しうる時期を画一的に事業年度の終わりに制限し、かつ一定の予告期間をおくことを定めたものです。
    また一旦脱退届が出されたときは、事業年度の終わりにおいて改めて脱退の意思表示を要することなく当然に脱退の効力を生じる性質の意思表示と考えられます。
    そのため事業年度の終わりが到来し脱退の効力が確定的に生じた以後では撤回する余地はありませんが、それ以前の段階では当事者間に何ら権利変動が生ぜず、その撤回を許したからといって組合もしくは第三者に格別の不利益を及ぼすことにはならないので、撤回が信義に反すると認められるような特段の事情がない限り原則として撤回できるものと思われます。
  • (8)中途脱退者に対する利用分量配当について
    本組合の事業年度は、9月から8月までである。本組合において、本年2月に法定脱退した者が7月に再び加入してきたが、利用分量配当は、脱退前の部分についてはこれをする必要がないと思うがどうか?
    事業協同組合の剰余金の配当は、法第59条第2項の規定により利用分量配当の配当基準となる組合事業の利用分量の算定は、この配当が手数料、使用料等の過徴額の割戻し的な性格をもつものであるから、各組合員が当該事業年度内において納付した手数料、使用料等の額、又は共同事業の利用数量によって行われるのが適当であり、単に当該事業年度の組合員期間等で利用分量を算定することは適当でないと考える。したがって、設問の9月から2月までの利用数量等を利用分量配当の算定基準から除外することは不適当であると考える。
  • (9)解散する組合における脱退届出者の取扱について
    本組合には、11月下旬に脱退を予告した組合員がいるが、その後開催した臨時総会で1月31日に解散することを決議した。この場合において次の点につき疑義があるのでご教示願いたい。
    1.本組合の事業年度は4月1日~翌年3月31日であるが、会計年度はどのように設定されるのか(1月31日か3月31日か)?
    2.脱退届出者は、その後になされた協同組合の解散の決議に何らかの影響を受けるのか?
    3.脱退が有効である場合における当該脱退者の負担すべき組合の清算費用はどこまでか(例えば当該年度の決算の時か清算結了の時か)?
    1.脱退の時期について
     組合が解散をした場合、事業年度は一応解散時において終了し、解散時より通常の事業年度末までが別の一事業年度となることが、法人税法上定められており、解散した組合は清算の範囲においてのみ存続することとなるので解散時の1月31日を事業年度(会計年度)末とするのが妥当であろう。
    2.脱退予告の効力について
     協同組合は脱退の自由を原則としており予告は当然に有効であるので、事業年度末である解散時に脱退することになる。
    3.脱退者の負担すべき清算費用
     解散時に脱退した場合でも清算に入るため、持分の確定は清算結了を待たねばならない。清算費用も公益費用として組合員に配分すべき財産から控除されるため、脱退者と残留組合員とで費用負担に差異はない。

除名

  • (1)除名要件について
    法定脱退となる除名の要件について次の点を回答されたい。
    1.定款例第13条第1号に規定する「長期間にわたって組合の事業を利用しない組合員」は、なぜ除名しなければならないか?
    2.1.の場合の「長期間」とは、何ヵ月以上か?例えば利用については1年以上とか経費支払を1年以上怠るとか(1年以内では対象とするには過酷とも思われ、反面、経費支払を1年以上怠っては組合の年度事業計画の遂行に支障がある)。
    1.組合は、組合員が協同して事業を行うべきであって、長期間にわたって組合の事業を利用しないような場合は、組合制度の主旨に反し、また、同志的結合の意志を欠いたものと認められ、組合員たる地位を与えておく理由がないからである。何ヵ月以上が長期間であるかは、個々の場合に則して具体的に判断する他はない。組合事業に対する不熱心さが明らかである程度に長期間であることを要すわけで、実状に応じ判断すべきである。
    2.除名理由における「長期間にわたって組合の事業を利用しない組合員」の長期間とは、社会通念上許される範囲の長期間で、貴組合及び組合員自体が判断し決定すべきものであって、一般的に何ヵ月、何年とは定められない。
  • (2)組合の申し合わせをやぶった組合員の除名について
    小売業者の組合において、同じ商店街にある大資本経営のスーパーマーケットへの対抗上同スーパーに入らないことの申し合わせを行った場合、同スーパーに入った故をもって、同組合定款の除名規定「組合の事業を妨げ、又は妨げようとしたとき」に該当するものとして除名するのは適当か?
    なお、除名された組合員は営業ができなくなる事情にあるので、憲法上の営業の自由とも関係があると思われるが。また、定款にスーパーに入った場合は除名する旨規定することは適当か?
    組合員が組合から除名されることによって、営業を続けることが不可能となる場合、その除名は、独禁法第2条に規定する不公正な取引方法等に該当し、同法第8条第1項第3号から第5号違反となると解される。
    また、組合員がスーパーマーケットに入った場合、除名する旨を規約又は定款に定めることは差支えない。しかし、その結果、除名された組合員が、市場条例等の関係から、事実上営業を続けることが不可能となるなど、営業活動に著しく不利益を与えるような場合は、規約又は定款はその部分について無効となる。
    なお、本件と類似事件の審決例として、〇〇海産物仲買人協同組合の加入拒否の例がある。この事件は、スーパーマーケットを経営する事業者に対して、組合がその者の組合への加入を拒否したため、その事業者が商品購入が不可能となり営業ができないという事例であるがこれに対しては、独禁法第8条第1項3号及び5号違反の審決が下されている。

その他

  • (1)組合員の責任の限度について
    中協法第10条第4項によれば、「組合員の責任はその出資を限度とする」とあり、また法第20条第3項によれば「組合の財産をもってその債務を完済するに足りないときは、組合は定款の定めるところにより、脱退した組合員に対し、その負担に帰すべき損失額の払込を請求することができる」とある。
    この条文のうちその負担に以降の部分は「未払出資金があればこれを請求し得る」という解釈と「その負担に帰すべき」という言句により、前述の解釈を拡大して「組合員の責任は出資額を限度とする」という第10条第4項の規定を無視する解釈が成り立つことも考えられるがどうか?
    また一例として出資金50万円、諸積立金20万円の組合が共販事業の失敗により欠損金100万円を生じた。積立金をとりくずし残額80万円を組合員が特別賦課金をもって補てんする決議を行ったが、一部組合員は出資金をもってそれに充当させ、脱退することを申し入れた。
    この場合組合の財産をもって債務を完済し得ない30万円について脱退組合員に請求できないか?
    なおこの欠損金は数年にわたり、累積され既に先の総会に経て承認を受けているものであり、その再建をはかるため特別賦課金の徴収を決議されたものである。
    中協法第20条第3項にいう「その負担に帰すべき損失額の払込云々・・・」の条項は脱退者の持分の払戻に関し規定されたものであって、法第10条第4項の規定により、組合員は明らかに有限責任であるから、当然、「組合の未払込出資金があり、かつ欠損を生じている場合においては、未払込出資金額を限度としてその負担に帰すべき損失金額の払込を請求することが出来る」と解すべきである。
    勿論、定款に損失額払込の規定を設けない場合には、請求権がないことは法の規定からして明白である。
    よって貴見第2の解釈の如く「その負担に帰すべき云々・・・」のみを抽出してこの語句を拡張解釈することは妥当でないと解する。
    なお、本規定は、無限責任の場合の規定であって、有限責任の場合の規定ではないとの見解もあるが、一応これは立法論として別に論ぜられるべき問題であると思う。
    例題の場合の、総会で議決された組合の欠損金補てんについては、当該組合員が、特別賦課金をもってこれに当てることを承認したものでなければこれを請求することはできないものと解する。
    すなわち、法はその第10条第4項において「組合員の責任はその出資額を限度とする」と定めているので、出資額を上回る経費の分担とか、損失金の負担とか法第10条第4項との関係を検討してみると、まず、法は「出資額」を限度とするものである旨を規定しているのであるから、組合員が組合に対して負う財産上の出捐義務は、その額において有限であり、組合員がその額を超えて、財産上の出捐義務を負担することがないことは明らかである。
    また、その限度である出資額というのは組合員が出資を引受けた額、即ち加入する際に引受けた額のままであることもあろうし、加入後に他の組合員の持分を譲り受けることもあるだろうが、要するに組合員がみずからの意思で引き受けた出資の額と解するのが相当であろうと思う。
    総会の決議又は定款の変更によって出資1口の金額の増加とか、出資額を上回る経費又は損失金について任意に賦課せしめることが出来るとすれば、法律上は、際限なく組合員の負担を加重させることが可能となり、組合員の責任には何ら「限度」が存在しないこととなって、法が第10条第4項に定めた「その額をもって組合員の財産上の出捐義務の限度である」旨の規定は無意味なものとならざるを得ない。
    法第10条第4項の存在を無意味なものとして否定しない以上、同条項は総会の決議又は定款の変更によって加重することが出来ないもの、すなわち組合員が、組合に対して引受けた出資の額を超えて財産上の出捐義務をさせられることがない旨を保障される規定と解される。
    したがって、問題は、組合が損失金を賦課することによって、組合員に「その出資額」を超えて財産上の出捐をしなければならない義務が生ずるかどうかの点にかかっているということになる。
    もし組合員に未払込があるならば、これをもって損金の補てんに当て得るので、第10条第4項は何ら関知するところでないが、もしそれを超えて出捐すべき義務が生ずるのであれば、それは同条項に抵触することとなる。してみれば、組合は法第10条第4項の規定に照らし「その出資額」を上回る経費の賦課とか損失金の負担を課することが出来ないものと解するほかないであろう。
    だがしかし、法第10条第4項の規定は、組合員みずからの意思によっても「その出資」を上回って負担することを禁止する趣旨を有するものとは到底考えられない。よって当該組合のすべての組合員が同意した場合でもなお負担させることが出来ないという理由はないと思われる。
    以上の理由により、総組合員の同意がない限り、総会の決議をもってしても、すべての組合員に「出資額を上回る損失金額」を組合員の負担すべき金額として強制することは出来なく、本問の場合も当該組合員がそれを拒否し脱退するという以上、総会の決議である由をもってこれを請求することは出来ないものと解する。
  • (2)組合員の権利と義務について
    当協同組合では、毎年組合員対して組合に関する知識の普及・啓蒙のために講習会を開催していますが、今般の講習会は、事務局長の私が講師となり、組合員の有する権利と義務について講義することとなりました。
    現在、中小企業等協同組合法を勉強しながら、整理を行っているところですが、なかなかまとめきれず困惑しています。組合員の権利と義務にはどのようなものがあり、どのように分類することができるのかご教示下さい。
    組合員は、定款の組合員の資格に基づいて組合に加入するわけですが、その結果として、中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)では、組合の健全な運営を確保するために組合員に対し、種々の権利を保証するとともに種々の義務を負わせています。
    まず、組合員の権利には、組合員が経済的利益を直接享受することを内容とする「自益権」と、組合員が組合の運営に関与することを内容とする「共益権」とに大きく分類することができます。
    自益権は、個々の組合員が単独で行使することができるもので、次のようなものがあります。
     ・組合事業(共同事業)利用権(組合法第9条の2)
     ・剰余金配当請求権(同第59条)
     ・残余財産分配請求権(同第69条による商法第131条の準用)
     ・持分払戻請求権(同第20条)
     ・出資口数減少請求権(同第23条)
    次に共益権には、組合員が単独で行使できる単独組合員権と、一定数の組合員が共同することにより行使できる少数組合員権があり、前者としては、
     ・議決権及び選挙権(同第11条)
     ・定款、規約、議事録、組合員名簿、決算関係書類の閲覧謄写権(同第39・40条)
     ・代表訴訟権(同第42条による商法第272条の準用)
     ・理事及び清算人の行為差止請求権(同第42条による商法第267条の準用)
     ・決議取消し、決議不存在・無効確認の訴権(同第42条による商法第247条、第252条の準用)
     ・設立無効の訴を提起する権利(同第32条による商法第428条の準用)
     ・合併無効の訴を提起する権利(同第66条による商法第104条の準用)
    などがあり、また後者としては、
     ・役員改選請求権(同第41条)
     ・参事・会計主任の解任請求権(同第45条)
     ・総会招集請求権(同第47条の第2項)
     ・総会招集権(同第48条)
     ・会計帳簿等の閲覧謄写権(同第4条の2)
     ・清算人解任請求権(同第69条による商法第426条第2項の準用)
    などがあります。
    なお、以上のほか、組合員が行政庁に対して求めることのできる権利として、不服申立書(同第104条-単独組合員権)、検査請求権(同第105条-少数組合員権)があります。
    組合員の義務については、
     ・出資義務(同第10条)
     ・損失額支払義務(同第20条第3項)
     ・経費分担義務(同第12条)
     ・共同事業利用義務(同第19条)
     ・団体協約遵守義務(同第9条の2第10項)
    などがあります。
    また、組合法では規定はありませんが、事業協同組合の模範定款例第18条に組合員の事業内容届出の義務があります。そして、これらが、組合法で保証された組合員の権利と課されている義務です。
    権利と義務は、組合運営における車の両輪ともいうべきものです。従って、いずれかが優先される(例えば、義務の履行より権利の主張を優先させる等)状況では適切な組合運営は望めません。
    以上に留意しながら講義すべきであろうと考えます。
  • (3)組合員の対外的責任について
    私は砂利採取業を営む者によって組織されている事業協同組合の組合員です。
    先日、組合の得意先であるAさんが私のところに来て組合の理事長名義で振り出された持参人払式の小切手を見せ、組合で支払いを拒絶されたので、組合員が連帯して支払ってほしい旨言われました。支払義務があるのでしょうか。
    組合員が組合との関係で負うべき責任については、中小企業等協同組合法第10条第5項に「組合員の責任は、その出資額を限度とする。」と規定されています。
    これは、組合員の責任について、無限責任ではなく組合員の出資額を限度とする有限責任である旨を明らかにしています。
    つまり、組合がいかなる債務を被った場合でも、組合員は組合に対して払い込んだ出資額以上の責任は負わないというものです。
    ところで、「組合員の責任」とは組合に対する責任であって、直接に組合の債権者に対してはその責任を有しないと考えられます。
    これは、組合は組合員を構成員とする社団ではありますが、組合員とは別個の独立した人格体として取引の当事者になりうる権利義務を有しており、その取引によって生じた債権債務関係は、組合とその取引先という当事者間にのみ存在することとなるからです。
    つまり、取引先である相手方は組合に対してだけ債務の履行(支払い)を請求することができ、その組合員に直接その請求をすることはできません。
    従って、貴社は組合の得意先であるAさんに支払う義務はありませんが、個人的に組合の債務保証をしている場合は、保証人としてその責任を負わなければならないことは言うまでもありません。
  • (4)組合員の権利義務の一時停止について
    組合員の意思表示に依り組合を休会でき得るか否か?
    組合員にして組合員の経済的事情から賦課金を納入することが苦しいので、暫時組合を休会したい旨の申出があるのでこれについての取扱い方を回答されたい。
    組合員が組合を休会するという意味が不明であるので回答しかねるが、組合が総会又は理事会の決議により、組合員の経費負担義務を免除(この場合は、定款を変更し、とくにやむを得ないと認める場合は、経費の全部又は一部を賦課しないことがある旨を明記する必要がある)するとか、あるいは組合員が自発的に組合に対して有する権利(議決権、選挙権、配当受領権等)を行使しないということであれば、とくに問題はないものと考える。
    しかしながら、例えば組合が組合員に対して賦課金を免除するという条件のもとにその組合員の基本権たる議決権等を停止するというような特約をすることは許されない。
  • (5)組合在籍年数により賦課金・手数料に差等を設けることについて
    設立後数年は配当もなかったが、創立後10年を経た今日、業績も伸び収支もよくなり、新組合員は加入時から配当もあり、事業利用条件も有利となっているので、創立時の組合員とその後の加入組合員とで、次のように賦課金等に差等を設けることはできるか?
    1.創立後加入組合員のみから何らかの方法で賦課金を徴収すること。
    2.使用料及び手数料についても、上記のように差等をつけてよいか?
    1.一般に経費の賦課方法としては、組合員に一律平等に賦課するいわゆる平等割の方法や、組合員の生産高、販売高等によるいわゆる差等額の方法、あるいはこれらの方法を併用する方法等があるが、経費は組合の事業活動に必要な費用(例えば、事務所費、人件費等)として充当される組合内部における一種の公課的なものであるから、新規加入者に対してのみ賦課することは法第14条に規定する現在の組合員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付したことになると解する。
    2.使用料及び手数料は、組合の経済的事業の運営上必要な費用を賄うためのもの(例えば、資金貸付利子、検査のための手数料等)であって、これも新規加入者に対してのみ徴収することとすることはできない。
  • (6)脱退した組合員の持分受取書に対する印紙税について
    組合員が脱退し、出資金を受取ったときは、組合員資格を喪失しているため受取領収書には印紙税法が適用されるか?         
    印紙の貼付について、中協法第20条に定めるとおり、持分は組合員が脱退したときに、その請求権を生ずるのであるから、持分受領のときは、既に組合員ではなく、したがって協同組合員たる特典はなくなり、持分受取書には印紙を貼付する必要がある。
  • (7)企業組合の組合員に対する労働組合法の適用について
    中協法による企業組合において、同法第9条の11の規程により組合の行う事業に従事し、かつ、その対価として報酬その他を得ている組合員は、労働組合法第3条に規定する「労働者」に該当し、労働組合を結成することができるものと解すべきか否か。
    企業組合の従事組合員であって、組合との間に、実質的使用従属関係があると認められる者(労働組合法第2条各号に該当する者を除く。)は労働組合を結成することができるものと解される。
    なお、
    (1)従事組合員の地位の向上を図るためには、企業組合の総会制度を十分に活用して、
      従事組合員の意見を反映させ、これを行うよう指導されることが望ましい。
    (2)労働組合法では、雇用従業員のみを組合員とする労働組合を組織することも差し支
      えないこととされているから念のため申し添える。

設⽴

設立発起人

  • (1)小規模事業者でない者の発起行為について
    中協法による事業協同組合の設立を計画して認可申請したが、設立発起人中に、従業員383名を有し資本金が1億円以上のいわゆる小規模の事業者でないものが加わっているので、実態調査したところ止むを得ないものがあると考えられたが、中協法は、小規模の事業者でないものの加入に関しては法第7条第3項に規定しているが、発起人に関しては何等規定がない。
    小規模の事業者でないものは発起人となり得ないと解すべきか?
    又は発起人として設立の手続を完了し成立した日から30日以内に所定の届出を公正取引委員会に行い、その認定をまってよいと解すべきか?ご質問する。
    発起人は、中協法第24条第1項の規定により、組合員になろうとする者でなければならないことになっているので、組合員資格を有する者であれば発起人となることができる。
    事業協同組合の組合員資格を有する者は、中協法第8条第1項に規定する小規模の事業者であり、設例の事業者がこの小規模の事業者に該当するかどうかは、専ら実態判断によるべきで、300人を超え、資本金が1億円を超えているからといって直ちに小規模の事業者でないと速断することは適当でない。
    貴方の判断でその事業者が小規模の事業者であり、定款の資格事業を行う者であるならば当然組合員資格を有することになり、したがって組合の設立の発起人になり得るのである。
  • (2)未登記組合の連合会設立発起人資格について
    設立登記の済んでない組合は、連合会設立の発起人になり得るか。                                
    連合会の設立発起人は、会員資格を有し、かつ、設立と同時に会員となる意思を有する人格体でなければならないので、設例の組合は未登記であるので法人としての権利能力を有しておらず発起人とはなれない。
  • (3)法人が設立発起人となる場合の諸手続について
    協同組合の設立発起人に法人がなる場合、設立認可申請書、組合員資格誓約書等に署名する発起人の住所、氏名欄には法人の住所、法人名の記載のみで足りるかどうか。
    設立発起人となるものは法人自体であって法人の役員個人ではない。したがって、設立認可申請書、組合員資格誓約書等の発起人の署名欄には、法人の住所、法人名を記載するとともに、代表者氏名が必要である。
    法人というのは、自然人以外のもので法律上「人」として権利義務の主体となり得る能力を認められた団体又は財団であるから、その行為能力は自然人の力を借りなければならない。したがって法人名のみでなく代表者の氏名が必要となるのである。

創立総会

  • (1)創立総会の開催公告期間について
    ある協同組合の創立総会に当たって、11月7日に総会開催の公告をし、同21日に総会を開催したが、この期間は適法であるか。     
    創立総会開催の公告期間については、中協法第27条第2項に「前項の公告は、会議開催日の少なくとも2週間前までにしなければならない。」とあるが、その期間計算方法について中協法に特に規定されていない。株式会社の株主総会の招集通知について、「会日の2週間前までにとは、間2週間の意と解する」との判例(昭和10.7.15.大審院判決)があり、また会日と招集通知との間2週間をおかない招集手続を違法とした判例(昭和25.7.7.東京地裁判決)があり、会社に関してはこの解釈が一般的であるので、組合においても商法の解釈に準ずるのが妥当と解され、ご照会の公告期間は適当ではなく、設問の場合は11月6日以前に開催公告をする必要がある。
  • (2)創立総会における発起人の議決権行使について
    中協法第27条(創立総会)第5項は中小企業等協同組合の創立総会の議事について「創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者で、その会日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して、その議決権の三分の二以上で決する」と規定されている。
    この規定によれば創立総会において議決権を行使する者は設立同意者のみで、発起人の議決権の行使は認められないものと解される。
    したがって、設立同意者が数名以上ある場合は問題を生じないが、たとえば、組合員たる資格を有し、かつ設立と同時に組合員になろうとする意思のある者が、法第24条(発起人)第1項の規定により全員発起人となり、しかも他に設立同意者がない場合は前記法第27条の規定による設立同意者の出席は不可能となり、したがって創立総会における議事決定は不可能となるものと解釈される。
    以上のような全員発起人による組合設立の場合には会社の発起設立の場合と同様創立総会の開催を必要としないものと解されるが、この見解が正しいかどうか?
    もし正しくないとすれば、この場合の創立総会における議事及び運営の取扱についてご教示をいただきたい。
    中協法第24条第1項並びに第27条第3項及び第5項の趣旨からして、発起人も設立同意者として創立総会において議決権を行使することができるものと解される。
    また、創立総会が設立行為における不可欠の要件ともなっているので設問のように、発起人のみによる組合の設立に際しては、創立総会の開催を必要としないとする解釈は成り立たないと考える。

設立手順

  • (1)設立認可申請書に添付する定款の日付等について
    本会では組合設立認可申請書に添付する定款(原始定款)については、従来から定款の末尾に記載する日付には創立総会日を記入し、発起人全員記名捺印したものを行政庁に提出し、認可を受け設立登記を行ってきたが、最近〇〇地方法務局へ設立登記申請を行ったところ、設立認可書原本に合綴している原始定款の日付につき、日付を創立総会開催公告日(創立総会日より2週間前)以前とすべき旨の指摘があった。ついては、貴会の見解を伺いたい。
    なお、中協法の設立登記申請の際添付すべき定款については、法務省民事甲第2195号、昭和31年9月20日法務省民事局長名をもっての通達により、発起人の署名がない場合であっても登記申請は受理できる旨の通達が出されている。
    定款の日付については、法定記載事項ではなく、また発起人の署名については、昭和31年に中小企業庁より署名不要の旨の通達が出ており、本会もこれに従っている。
    しかし、定款に日付を記載するならば貴会の見解のとおりと考えるので、〇〇地方法務局の見解に対しては、公告義務を怠っていない旨の事実を提出し納得してもらうことがよいと思うが、今後、紛争を避けるため定款への日付記載の取りやめについて一考願いたい。
  • (2)所管行政庁が共管の場合の設立認可申請手続について
    地区が県内である自動車販売整備の事業協同組合の所管行政庁は、中協法第111条の規定により国土交通大臣と都道府県知事との共管になると考えられるが、認可の申請は、どちらか一方に行うべきか、あるいは同時に両者に申請すべきか。
    ご指摘のように同組合の所管行政庁は、国土交通大臣と知事であり、組合の認可も両者の所管に属する。
    認可手続については、従来の取扱い方針としては、共管の場合の両者に申請書(正本)を提出することになっている。なお行政庁においては打ち合わせの上両者連盟の上処理されている。

その他

  • (1)設立無効の訴えについて
    違法の手続により成立した組合に、成立後加入した組合員又は成立後就任した理事が中協法第32条に規定する設立無効の訴えを提起することができるか。その場合、組合の設立手続等が違法であったことを承知していた場合と全然知らなかった組合とで差違が生ずるのかご教示願いたい。                    
    設立無効の訴えは商法第428条の準用により、組合員又は理事に限られ、提訴の期間は、組合成立の日より2年以内とされているが、提訴者が設立後加入した組合員等を含むか否かは、同条第2項においても別段の制限もないので、この訴えは設立当時の組合員又は理事に限定されないものと解する。
    また、その組合員又は理事が組合加入前又は理事が就任前に違法の事実を承知していると否とにかかわらず、設立無効の訴えを提起することはできるものと解する。

  • (2)組合成立前の総代選挙について
    総代制をとる組合において、総代の選挙は、組合の設立の日(設立登記の完了の日)後でなければ選挙を実施し総代を選任することは許されないか。つまり組合の成立前の総代決定は法的に有効であるか無効であるか。
    組合の成立前にあっても総代の選挙を行うことは差し支えないものと解する。ただ、総代会は設立中の組合の機関ではないので、当選人は組合の成立を停止条件として総代の就任することとなる。
  • (3)組合設立手続中の事業実施について
    設立認可申請中の協同組合は、その期間中、発起人又は役員の名において、組合としての業務の全部又は一部を実施することができるか?       
    認可申請中の組合の発起人及び認可後設立登記完了前の組合の理事(以下「設立中の組合の発起人及び理事」という。)の権限は、組合の設立それ自体を直接の目的とする行為に限られるものと解する。
    したがって、その範囲を超えた行為によって設立中の組合の発起人及び理事が取得又は負担した権利義務は設立後の組合にその効力は生じない。
    ただし、設立後の組合がその行為を追認した場合にはその効力は設立後の組合に生ずるものと解する。
  • (4)組合設立に係る先進地等視察経費の取扱いについて
    協業組合等では事前に先進地の視察が必要な場合があり、これらを創立費に含めると多額になるが、創立費の額は無制限に認められるものか?
    また、創立費の範囲についても回答頂きたい。
    創立費の範囲については、商法及び財務諸表規則等から類推すると設立趣意書、定款、諸規程類作成の費用、設立同意者の取纏め費用、創立事務所の賃借料、創立事務に携わる使用人の手当給料、創立総会に関する費用、その他組合成立事務に関する必要な費用と考えられる。
    したがって、創立費はあくまで設立準備に必要な範囲内での支出に限られるが、事前の視察経費等は一切創立費に含ませることはできないとするのは適当でないと考えるが、視察費等はどちらかといえば事業開始のための準備費用を組合成立前に支出したとみることの方が適当な場合が多い。
    よって、このような内容の費用は、創立費に含ませない方が適当であり、当該費用は開業費として組合成立後に追認することにより組合の負担とすることが適当と考える。

管理

定款・規約・規程

  • (1)組合員資格の定款記載方法について
    定款上組合員資格を明らかにするため「注」として詳細説明文を条文末尾に記入するのは正しいか?                  
    説明文を条文中に挿入すべきかどうか?                         
    定款上組合員資格を記載するに当たっては、「注」として条文の末尾に詳細に説明文を書くことは望ましくなく、本文中に具体的に、かつ明確に記載するようにされたい。
  • (2)定款変更の効力発生時期について
    中協法第51条第2項において「定款の変更は、行政庁の認可を受けなければその効力を生じない」と規定されているが、変更した場合、その効力の発生時期は、認可したときであるか、あるいは組合が変更決議をしたときに遡及するか?
    定款変更の効力は、行政庁が認可をしたときに発生し、組合が定款変更を議決したときに遡及しないものと解する。
    なお、効力発生時期をさらに厳密にいえば、定款変更の認可は、行政処分であるから、行政庁において決議を終った日又は認可書を作成した日にその効力が発生するのではなく、認可があったことを組合が知り得たとき、すなわち認可書が組合に到着したときから効力が発生することとなる。
  • (3)法令の改廃等により当然変更する定款の変更手続きについて
    1.法令の改廃により既存の定款の規定が当然に変更される場合の定款変更は、変更される定款の規定は法律上無効であるから、総会の決議を経ないでこれを変更することができるか?
    2.事務所の所在地が、行政区画の変更により変更する場合等定款規定の中で事実に基礎を有するものは、その事実の変更により定款を変更する場合には、上述の理由により、総会の決議を必要としないか?
    法令の改廃による定款変更であっても総会決議並びに行政庁の認可は必要であり、行政区画の変更等に伴う定款変更についても同様と解する。  
  • (4)事業年度の変更について
    某組合の事業年度は1月1日より12月31日であるが、〇〇年5月1日に、有効な総会において、8月1日より7月31日と変更議決し、同年5月10日に変更認可を受けた。
    この場合、変更時の事業年度はどのようになるか。
    なお、通常総会はどのように開催したらよろしいか併せて教示願いたい。
    定款変更の議決において特別の定めがなかった場合は、定款変更によって新たな事業年度の始まる8月1日の前日である7月31日までが事業年度とされる。その際、この事業を明らかにする主旨から定款の附則に、
    例えば、「〇〇年に限り、事業年度は、〇〇年1月1日より同年7月31日までを1事業年度とする。」等の規定を設けることが適当と考える。
    なお、通常総会については、経過措置として事業年度が1月~7月に短縮されても、毎事業年度1回開催されなければならない(中協法第46条)ので、当事業年度について必ず開催しなければならない。
  • (5)定款、規約等の解釈について
    私は組合の事務局長に就任したばかりですが、当組合には、定款、規約、規程など様々なものが設けられており、その区別がよく分かりません。
    これらの相違点についてお教え下さい。また、よく「規定」という言葉も使われますが、「規程」と「規定」の違いについてもお示し下さい。
    組合には、中小企業等協同組合法をはじめとして、同法施行令、施行規則など、組合の運営その他を定めた関係諸法規がありますが、組合自体が法に則り、組合を運営していくために必要な具体的方針あるいは一定の基準を定めるものとして、定款、規約、規程等があります。
    定款は、組合の事業を進めるうえにおいて重要な意義を有し、組合の組織、運営等についての基本的な内部規律を定めた自治法規であり、いわば組合の憲法ともいうべきものであす。したがって、この定款の設定及び変更については総会の議決が必要であり、議決方法も特別議決によることとなっています。
    規約は、定款に定められた事項の運用細則ないし事務的事項を定めるもので、組合の業務運営、事業執行等に関し、組合と組合員間を規律する自治法規です。規約を定めるかどうかは任意ですが、これを定めた場合には定款と同様に組合員全員を拘束することとなるため、規約の設定、改廃についても総会の議決を必要とします(この場合には普通議決で足りる。)。役員選挙規約、共同販売事業規約などがこれにあたります。
    規程は、組合の事務執行上に必要な関係を規律する内規であり、理事会において設定又は改廃できるものです。給与規程、旅費規程などがこれにあたります。
    なお、「規定」とは、法律、定款、規約、規程などそれぞれに定められた個々の内容を指すもの、つまり条文の内容を指す場合に使われるもので、「規程」とは明確に区別する必要があります。
  • (6)規則、規約等の定義について
    協同組合の運営上、諸規約諸規程の設定は必要欠くべからざるものであるが、これらを作成するに当たって次の原則的な説明と相違点並びにその使用される場合の事例をお知らせ願いたい。
    1.規則とは
    2.規約とは
    3.規程とは
    4.規定とは
    規約、規程については必ずしも明確な区別はなく、混同して使用されているので、一般的に定義づけることは困難であるが、従来の慣習並びに字義により区別すれば大要次のとおりと思われる。
    1.規則とは、広義に規則という場合、諸々の事項を規定した例えば定款とか規約とか、規程等を総称していわゆる「さだめ」をいうが、最狭義に規則という場合は国の立法機関としての国会以外の機関が制定する成文法=それらは名称を規則というだけで必ずしも法的性格を等しくするものではない=をいい、現在、最高裁判所や衆・参議院等特定の諸機関が規則制定権を認められている。
     なお各大臣が主任の行政事務について発する命令が規則という形であらわれていることもある。
    2.規約とは、例えば協同組合等が組合の業務運営その他一定の事項に関し、組合と組合員間を規律する自治法規であって定款と同様、総会において決められるべき性質をもったもので、選挙規約、委員会規約、金融事業規約、共同購買事業規約等がある。
    3.規程とは、例えば協同組合が組合の事務、会計その他に関して定める内部的な規律であって、主として事務遂行上必要な関係を規律する内規律的なもので、理事会等に諮り決定し得る性質をもつもので、文書処理規程、服務規程、経理規程、給与規程等がある。
    4.規定とは法律、定款、規則、規約、規程などの条文に定められている個々の内容をいい、普通は条文の内容を指すものと考えてよい。
  • (7)組合諸規程の決定機関について
    本組合では、組合運営に必要な規程類を現在作成中であるが、下記のものは総会の承認を得る必要があるものか、理事会の決定のみにてよいものか教示願いたい。
    記文書処理規程、服務規程、人事規程、給与規程、退職金規程、昇給規程、旅費規程
    組合の文書処理規程、服務規程、人事規程、給与規程、退職金規程、旅費規程等主として組合の業務執行上必要な関係を規律する内規的なものの決定は、理事会の議決をもって足り、総会の議決を経る必要はない。
    ただし、給与規程、退職金規程が常勤等の役員に適用される場合は、理事会の決定では事柄の性質上適当でないので、総会の議決を経て決定するのが望ましい。
    なお、役員選挙規約、共同施設利用規約(実際には役員選挙規約、共同施設利用規程といっている場合が多い。)等組合の業務運営その他一定の事業執行に関し、組合と組合員間を規律する自治法規的なものについては総会の議決を経て決定しなければならない(中協法第34条)。
  • (8)副理事長の職務権限に関する定款記載について
    副理事長の職務権限は定款に明記する必要があるか?                                                             
    副理事長の業務分掌を定款に記載すべきかどうかについては定款が組合の組織運営に関する基本的な自治法規である点にかんがみ理事長及び専務理事と同様に定款に記載すべきものと解する。
    事業協同組合の定款例においてもこのような観点から定款に明記するよう指導しているので申し添える。
  • (9)職員に関する規定の定款例について
    事業協同組合定款例の職員に関する規定について次の点を回答されたい。                              
    定款例第33条(参事及び会計主任)と同34条(その他の職員)の規定は、なぜ同一条文にならないのか?
    参事及び会計主任は、組合の使用人であるが、実質的には代表理事の補佐役(特に参事は組合に関する一切の代理権を有する)としての重要な地位を占め全組合員の利害に重大な関係があるので、その他の職員とは別条にしているのである。
  • (10)職員に関する規約等について
    職員設置規定を定款より削除し、すべて「規程」によりたい考えであるが、次に事項について回答頂きたい。
    定款の職員設置条文は、職員の身分保全のためにも、残した方が良いのではないか?
    「規程」は、組合内部業務執行事項で理事会により決定され、人事については総代会の意志反映が全くなくなるので、人事規程を「規約」として総代会承認事項とするのが適当でないか?
    職員の設置規定は、定款の任意事項で記載するか否かは、組合の自由であるが、職員を設置する組合においては、職員という機構を置くことであり、定款に職員をおくと定めることが望ましい。
    人事権の伴わない経営の執行はあり得ないことであり規約として総代会の承認を必要とさせることは、このような理事会の業務執行に関する権限を大幅に縮小させることにもなりかねないので好ましいことではない。
    したがって、仮に総代会において定めるとしても、事務組織などの基本原則に止めることが適当である。
    なお、労働基準法においても使用者の概念は業務執行者である代表理事を指しており、労務契約についての権限は総代会にあるよりも理事会におくことが望ましい。
  • (11)地区を拡大するための定款変更の認可行政庁について
    全県を地区とする事業協同組合が、事業拡張をはかるため、地区を数県に拡大することの定款変更を総会で議決した。この場合、この定款変更の認可の行政庁は何処であるのか?     
    この場合における定款変更の認可の所管行政庁は、当該定款の変更の効力が発生した後に所管することとなる行政庁である。              
  • (12)事務所移転の法的手続きについて
    私どもの協同組合では、事務量の増加等に対処するために組合事務所(主たる事務所)を移転しようと考えています。立地環境、組合員の便宜等を勘案し、候補地を検討した結果、現在所在のA市に隣接するB市に移転する方針を固めました。
    今後、法律的にはどのような手続きをとらなければいけないか教えて下さい。
    組合が事務所を移す場合には、定款変更を要する時と要しない時の2つの場合があります。
    定款変更を要しない場合とは、定款で主たる事務所の所在地について、最小行政区画(例えば「〇〇市」)までを定めている場合でかつその区画の範囲内で事務所の移転を行おうとする場合です。(この場合は、理事会で具体的な所在地を決定し、その議事録を添付して変更登記を行うこととなります。)
    貴組合の場合は、「隣接するB市」に移転しようとするものですから、この最小行政区画を超えての移転になるものと思われますので、定款の「主たる事務所」の規定を変更する必要があります。
    この定款変更を行うためには、まず、総会での特別議決(半数以上の組合員が出席し、その3分の2以上の多数による議決)を経る必要があります(中小企業等協同組合法第51条第1項第1号、第53条第1号)。
    さらに、定款変更については、認可行政庁の認可がないとその効力は生じません(中小企業等協同組合法第51条第2項)ので、行政庁への認可申請が必要となります。
    定款変更が認可されると次に行わなければならないのが、事務所移転の変更登記です。
    具体的には、移転を行った日から2週間以内に旧所在地及び新所在地において、それぞれ移転の登記を行わなければなりません(中小企業等協同組合法第85条第1項)。
    なお登記申請に当たっての添付書類は旧所在地における登記申請のみ必要となっています。
    実施の手続きとしては、新所在地における登記の申請は旧所在地を管轄する登記所を経由し、旧所在地における登記の申請を同時にすることとなります。(中小企業等協同組合法第103条)。
  • (13)事務所の所在地登記について
    組合の事務所登記に際して、何市何町何番地何ビル何階何号室とまで記載しなければならないとの説があるが、建物の名称まで記載する必要があるのか?        
    組合事務所の所在地については、行政区画名をもって表示した地番までを表示すればそれで足り、かつ完全である。                  
    なお、申請者側から何ビル何号室までを記載することは差し支えはない。

役員

  • (1)役員定数について(1)
    中協法第35条において役員の定数は「理事は3人以上、監事は1人以上」と定められているが、その定数の上限は第何条に規定されているのか?
    例えば、ABCDの4法人が協同組合を組織するに当たって理事、監事の定数の上限の決定の方法として、単記式投票によれば組合員1人1票の原則により理事、監事各々最大4人まで選出できることとなるが、連記式投票による場合は組合員総数を上廻る多数の役員を選出することが可能になる。
    定款にて役員の定数は決定しているので単記、連記いずれを採用しても役員の総数は同一でなければならない。
    故にその両方の限度内で組合内容に適した方法で選ぶべきであると解釈しているが如何?
    中小企業等協同組合の役員の数は、中協法第33条1項第11号の規定により、定款の絶対的必要記載事項として、必ず、何人以上何人以内という定数で定款に定めなければならないことになっているが、その数は、同法第35条第2項に規定する数以上であれば、何人であろうと法令違反にはならない。
    役員の定数を定める場合、設問のごとく単記式無記名投票によって選出し得る最大限の数(組合員数)を、その組合の理事及び監事の定数の上限として、その範囲内において、単記式、連記式の何れかを採用すべきであると解して画一的に指導することは無理がある。
    説例のように組合員数が4人である組合においても、組合の業務運営において組合員数を上廻る役員が必要とされる場合も考えられるので、指導としては当該組合の事業規模、役員の業務分担を考慮し、業務の迅速適格な遂行を妨げることとならないよう、必要かつ最少限度の役員の数を定め、その数を選出するについて、単記式、連記式の何れを採用することが妥当であるか検討されるべきである。
  • (2)役員定数について(2)
    中協法第35条第6項に「理事又は監事のうち、その定数の3分の1を超える者が欠けたときは、3箇月以内に補充しなければならない」となっているが、
    1.定数とは何を指すのか?
      本組合の定款変更案では役員の定数及び選任について
     「本組合の役員は理事25人以上30人以内、監事3人又は4人とする。」
     としてあるが、この場合上限の理事30人の3分の1つまり10人まで欠けても補充選挙しなくともよいと解しているが如何?
      但し25人と下限を決めているのでこの場合は5人まで欠けて25人になっても補充選挙の必要はないか?
    2.次に監事の場合上限4人の3分の1つまり1人を欠けても補充選挙の必要はないか?
    3.法定数とは何か?この場合25人と解してよろしいか?
    1.定数については従前は確定数をもって定めることとしたのであるが、役員の死亡等により欠員を生じた場合に、その都度選出することは、事実上不便を生じることが多く、実態にそぐわない点もあるので「何人以上何人以内」を定数としている。
    2.役員補充の場合における取扱いについては、中小企業庁では定款に記載した下限を基準とすることにしているので、説例の場合25人の3分の1以上、即ち9人が欠け16人になった場合に補充選挙の必要が生じてくることになる。監事の場合も同様に下限の3人の3分の1以上が欠けた場合に補充義務が生ずることになる。
    3.上述の趣旨から「何人以上何人以内」を法定数といい、説例の場合は「25人以上30人以内」が法定数であって、下限の25人をもって法定数とはいわない。
  • (3)一法人から複数の役員を選出することについて
    1.理事のうち組合員たる一法人の役員から複数の理事を選任できるか?               
    2.組合員たる一法人の役員から理事と監事を選任できるか?                                 
    3.上記に質疑1.、2.が合法的な場合被選者1人を除き他は員外役員となるか否か?                

    2.の合法的な場合でも、
    (1)一法人でも一組合員であるので一組合員から理事と監事が出ることは役員の兼職禁止に抵触するとの意見
    (2)役員の就任は自然人(個人)として就任するので同一法人から出ても兼職とならないとの意見どちらが正しいか?
     なお、当組合の実際例については組合員たる一法人の代表取締役を理事に、他の平取締役を監事に選任する状況にある。
    1.理事は、組合員たる一法人の役員から複数の理事を選任できる。                      
    2.組合員たる一法人の役員から理事と監事を選任できる。                              
    3.複数の組合役員を選任した場合複数の組合役員は員内である。                             
    4.(2)のとおりである。すなわち、役員の就任は自然人として就任するので、同一法人から出ても兼職とはならない。    
  • (4)法人から選出される役員数を制限することの可否
    法人たる組合員より選出する役員数については、中協法に制限がないが、これを定款により一定の制限を加えることができるか?               
    制限が可能である場合は、それをどのように規定したらよいか?
    組合員が法人である場合、その法人から選出される役員の数を一定数に制限することの可否については、法人組合員から選出される役員の数を一律平等に制限するのであれば差支えないものと考える。
    法人組合員から選出される役員の数を一定数内に制限した場合、実際の選挙について定数を超えて選出された者の取扱いをどうするかが問題となる場合があるので、この点定款に明確に規定しておく必要があると考える。
    なお、定款への規定の仕方としては、次のような表現が適当であろう。
    定款例第30条(役員の選挙)第3項の次に、次の一項を置く。
    (4)前項の規定にかかわらず、投票の結果組合員たる一の法人から定款〇条により定められた定数を超えて組合の役員が選出されることとなる場合は、同条に定められた定数の範囲内で上位得票者のみを当選人とする。
  • (5)法人役員の組合理事が同一法人の他の役員と組合理事を交替することについて
    組合員たる法人の役員が、当該組合の理事に選任されていたところ、法人の経営する業務にたずさわる他の役員に理事を交替する必要が生じたが、何ら手続を経ずしてそのまま理事を交替することができるか?
    理事の選任は、中協法第35条の規定により、必ず総会において選挙又は選任しなければならないから、それによらない理事の交替ということは、法律に違反する。理事というものは、組合員たる法人を代表しているのではなく、個人として、組合との委任契約により、公平な立場から組合の業務執行の決定に参画するのである。
    従って、理事が、組合員たる同一法人の他の役員と交替するということは、理事本来の趣旨からいってもできないことである。
  • (6)役員重任禁止の是非
    役員の選挙規約に「4期連続して役員となることはできない」旨定めることは差支えないか?                 
    選挙権の平等の組合原則は、一方被選挙権の平等を意味するものと解される。                        
    したがって役員重任禁止の規定は、被選挙権を拘束するものであり不適当と考える。                    
  • (7)連合会の役員資格について
    本会定款第15条第5号
    「役員は総会において会員たる信用協同組合の業務を執行する役員の内から単記式無記名投票によって選挙する」としているが、この業務を執行する役員を代表理事と解しているがこれでよいか。
    貴連合会定款第15条第5号に規定している「業務を執行する役員」の範囲については、代表権を有しない理事は理事会において組合の業務執行の意思決定に参加するのみで、実際に組合の業務の執行に当たるのは組合の代表理事であるということから考えて、「業務を執行する役員」を「代表理事」と解することは差し支えない。

  • (8)選挙無効確認請求訴訟係属中に理事が退任した場合
    理事の選挙無効確認請求訴訟が提起され、その係属中に理事の任期が満了となり理事が退任した場合、その訴訟において対象を失うことになり、自然終結となると解するかどうか。
    理事の選挙無効確認請求訴訟係属中、理事の任期が満了となり、理事が退任した場合でも特に訴訟の取り下げ、又は裁判所の却下がない限り、自然終結にはならないものと考える。
  • (9)員外役員の定めのない組合が員外役員をおくことの可否
    協同組合が員外役員をおく場合、次のいずれをとるべきか?                           
    1.員外役員を置く旨定款に定めなくとも、員外役員を置かない旨の規定がなければ、理事の定数の3分の1までは置くことができる。                
    2.員外役員を置く旨定款に定めなければ、員外役員は置けない。                       
    説例については、法律解釈上は、理事の定数のうち3分の2までは必ず組合員又は組合員たる法人の役員であることを充たせば貴見1.の通りであるが、貴見の2.の見地を加味して、員外役員をおく場合は、定款には理事の定数の下限の3分の1以内において「何人」と確定数を記載することが員外役員に関する事項を明確にさせるうえから望ましい。
  • (10)員外理事の資格について(1)
    私どもの協同組合では、組合員の後継者で組織する青年部の役員を組合理事として登用し、役員の若返りと、組合事業の活性化を図りたいと考えております。
    青年部の役員は組合員企業の役員になっている者が多いのですが、個人事業者の後継者である者やまだ組合員企業の役員になっていない者もおります。
    これらの者を役員にすることができるように定款に「員外理事」の規定を設けたいのですが、その際「員外理事」を組合員の後継者である青年部の役員に限定する規定にすることは可能かご教示下さい。
    組合法では、員外理事の定数については、第35条第4項により員外理事の組合業務運営の支配を避けるために一定の制限を付しております。
    しかし、員外理事の資格については、組合法では特に制限規定は設けておりませんので、組合法の趣旨及び公序良俗に反しない限り組合が自主的に定めうるものと解されます。
    ご質問のように、員外理事を組合員の後継者に限定することは、組合運営が組合関係者のみの運営となり、法の趣旨に反するものではないので差し支えないと思料します。
    組合法で「員外理事」を認めた趣旨は、「正規理事(員内理事)」が自己の企業の事業もあることから、組合の事業運営に専念し得ない恐れがあり、他方員外からも広く人材を起用することが望ましいという点にあります。
    員外理事の資格を組合青年部役員である組合員の後継者に限定するのもひとつの方法ですが、組合事業運営に精通した人材を広く外部から起用することも考えてみる必要があると思われます。
  • (11)員外理事の資格について(2)
    この度の役員選挙で、合資会社の有限責任社員であるA氏から理事選挙に立候補したい旨の通知がありました。A氏は、組合事業にも精通し、他の組合員からも信頼された人物なので理事として積極的活動をお願いしたいところですが、組合員の一部から、A氏に理事となる資格はないのではないかとの意見がありました。
    その理由は、組合の定款では「員外理事」を認めていない規定になっているので、「法人の役員」でないA氏にはその資格がないから定款違反になるとのことです。
    どのように解釈すればよいのでしょうかご教示下さい。
    組合法でいう「組合員たる法人の役員」とは、その法人において、その業務執行、業務・会計の監査などの権限を持つ者と解されます。つまり、物的会社の取締役・監査役、人的会社の業務執行社員などがこれにあたります。
    人的会社である合資会社では、「無限責任社員」が原則として会社の業務執行及び会社代表の権限を有する(商法第151条第76条)のに対し、「有限責任社員」は、経済的には無限責任社員の経営する事業に対して資本的関係においてのみ参与し、その事業より生ずる利益の分配にあずかるにすぎないものであるとされ、業務執行及び会社代表の権限を有しないものとされています(商法第156条)。
    しかし、実際には合資会社の定款の規定をもって有限責任社員に対内関係における業務執行権を与えるケースがみられ、通説・判例もこれを支持しています。
    このようなことから、A氏が組合役員になるには、当該合資会社の定款によって業務執行権を認められた有限責任社員となるか、そうでなければ組合の定款を「員外理事」を認める形に変更することが必要となります。
  • (12)員外監事について
    1.役員たる監事は組合員中より選任すべきか?また、組合員外から選任することができるか?            
    2.本組合は定款、規約には明示していないが、これは中協法第34条に基き規約で定めておくべきかどうか?                
     
    1.事業協同組合の役員たる「監事」の資格は、組合員たると以外の者たるを問わないので員外から選出することができる。                
    2.特に定款、規約等に明示する必要はないが、員外役員を認めない組合にあってはその旨を記載することが適当である。                    
     
  • (13)理事と組合との関係について
    理事と組合との関係は民法第643条の委任によるものか。                              
    中協法第42条において準用する商法第254条第3項の規定により、組合と役員(理事又は監事)との内部関係は民法上の委任契約に関する一連の規定が適用される。
    したがって、組合と理事との関係は当然に民法第643条~第656条の規定に拠るところになる。
  • (14)理事の辞任届の効力について
    理事が辞任届を提出し、理事会に出席しないとき、その理事は理事会の決定事項について責任を負わなければならないか?           
    組合と理事との関係は委任関係であり、その委任関係の終了は相手方の承認を必要とせず一方的に終了させることができるので、理事は辞任届をもって理事を辞任したことになる。
    しかし、中協法第42条で準用する商法第258条第1項の関係で、辞任により法定数を欠くときは、辞任した理事は、後任者が就任するまでは理事としての権利義務をもつから、ご質問の欠席した場合は、欠席した理事としての責任を負わなければならない。
  • (15)役員の任期の起算日について
    私は、平成5年5月28日に開催された通常総会において理事に選出され、就任しました。組合の定款では任期は「2年」となっています。
    2年後の任期満了日は、平成7年の5月28日でしょうか、あるいは5月27日でしょうか。
    理事などの役員の任期は、中小企業等協同組合法第36条により「3年以内において定款で定める期間」と定められていますが、この役員の任期の起算は、民法の規定に従わなければなりません。
    民法では、次のように規定されています。
    (期間の起算点(2))
     「第140条 期間ヲ定ムルニ日、週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但其期間カ午前零時ヨリ始マルトキハ此限ニ在ラス」
    ご質問では、5月28日に就任できる状況(前任者の任期が切れているか、辞任届が提出されている等の状況)にあると思われますので、就任日は、5月28日ですが、起算日は前記の民法第140条の前段により「期間の初日は算入されず」、翌日(29日)から起算されることとなり、2年後の平成7年5月28日が満了日となります。
    なお、総会開催日である5月28日に現任者の任期が満了となるため、翌日の29日に就任するような場合は、民法第140条後段により、29日の「午前零時より」任期は始まるので、就任の初日である29日は期間に算入されることとなり、2年後の任期満了日は、平成7年5月28日ということになります。
  • (16)理事の任期伸長規定を置くことの可否について
    役員の任期が常に通常総会の終結の時をもって満了するように定款を変更することはできるか。              
    通常総会が理事の任期を超えて開催されることを想定し得るため、通常総会の会日が年度によって異なるのに応じて理事に任期が短縮又は伸長され、常に通常総会の終結の時をもって任期が満了するように定めることができるようにすれば便宜であり、そうすることによって、決算書類の承認に当たって、決算当時の理事に現任者として説明の任に当たらせることができ、より適正な組合運営が期待できる。
    中協法では、「役員の任期は、3年以内で定款で定める機関とする。」と規定し、3年以内であれば定款で自由に定め得る。
    これにより、理事の任期を2年以下としている組合にあっては、定款に規定することによって任期伸長規定を置くことができる。
    また、中協法は、商法第256条第3項のような任期伸長規定を法律上持たないので、中協法の定める理事の任期である3年を超えることとなるような規定を定款に置くことはできないため、理事の任期を3年としている場合には、この任期伸長規定を置くことはできない。
    なお、監事についても同様である。
    さらに、任期満了又は辞任によって退任した組合の役員は新たに選任された役員が就任するまでなお役員としての権利義務を有することとされているが(中協法第42条が準用する商法第258条)、この規定は退任した役員の残任義務を定めたものであって、役員の任期自体を伸長させる規定ではない。
  • (17)役員任期の延長による現役員の任期について
    役員の任期が定款変更により延長された場合に変更時の役員の任期については、変更時の役員は就任時の委任契約に基づくので、新たな任期に拘束されないとの説があるがどうか?
    組合と役員との関係は委任契約であるが、定款は組合及び役員を拘束する法規性を有しているから、役員は委任契約よりも定款に拘束され、定款変更による延長された任期に従わなければならないと解する。
  • (18)役員任期に関する定款変更認可等について
    総会において、理事及び監事の任期を1年延長する目的をもって理事及び監事の任期を「2年」とあるのを「3年」にそれぞれ定款の変更を決議(組合員110名、出席者数65名、全員賛成)した場合において、次の各号に該当するときは、適法であるか?
    1.理事及び監事の任期中(現在2年)に改正した場合、そのまま理事及び監事の任期は延長(更に1年)されると解して差支えないか?
    2.6月27日に任期満了する理事及び監事が同日本文の定款変更が決議された場合において7月12日に上記定款変更認可申請書の提出があり同日これを認可したときは、理事及び監事の任期が6月27日現在をもって満了し、自然退任すると解し、新たな選挙を必要とするか?
    3.前号の定款変更認可申請書の提出があった場合において、その定款変更箇所を運営指導として、一定の条件(例えばこの規定は令和〇年6月27日から適用する、と記載した場合等。)を付記させて認可しても差支えないか?
    設問1については、定款変更は認可により効力を生ずるため、任期中に認可があれば貴見の通り解しても差し支えない。
    設問2については、定款は認可により効力を生ずるため、認可以前に任期が来た理事及び監事は自然退任となり、新役員の選挙を行わなければならない。
    設問3については、中協法においては設例のような遡及して効力を発生しようとする意思ないし行為を認可することはできないものと解する。
  • (19)全役員辞任の場合の新任者の任期について
    役員の全員が任期の中途において辞任したとき、後任者の任期は、前任者の残任期間であるか?それとも新たに任期を起算すべきか?           
    定款に定められた役員の任期は役員に選任された個々の人に与えられる在任の期間である。従って、残任期間の定めがなければ補欠の役員に対しても定款による任期が与えられる。
    しかしながら、一般的に全員の役員の任期をそろえるための技術的な方法として残任期間の定めを設けるのが通例となっている。
    この場合のように役員の全員が辞任した場合には補欠の役員という概念がなくなるし、また、残任期間の定めにより任期をそろえる必要もないので、残任期間の定めにかかわらず新たに任期を起算できるものと解する。
  • (20)員外理事の代表理事就任について
    事業協同組合において、員外の理事が代表理事になれるか?理事長、専務理事が共に員外である場合はどうか?                  
    員外理事は、組合事業に専念できる者を得るために設けられた制度であることから、代表理事になることは差支えない。
    しかしながら組合は組合員のための組織であることを考慮すると組合の長は組合員のうちから選任されることが好ましい。
    また、理事長、専務理事が共に員外理事であることは一般的には避けるべきであるが、特別の事情でそれが組合運営に却ってプラスとなるのであれば、一概には排除すべきことではないと考える。
  • (21)代表理事を総会で選任することについて
    総会において理事を選挙する際、代表理事を特定して選挙することができるか?
    たとえば理事の定数は5名であるが、そのうち1名は代表理事となるので、選挙の際代表1名、代表権のない理事4名として総会で直接選挙したり、あるいは、選挙は普通に5名を選挙するが、最高得票者を代表理事とすることを条件として行うような選挙方法をとってよろしいか?
    理事一般については、組合と委任契約を締結するのであるから(中協法第42条において準用する商法第254条第3項)中協法においては、総会で選挙する旨を規定しているが(中協法第35条第3項)、代表理事は、理事会を構成する他の理事との信任関係に立ちながら、理事会で決定された組合の業務の執行を正確に実施するところの組合の代表機関であると解される。
    したがって、この趣旨から代表理事は、理事会において選任すべきものとして中協法第42条で商法第261条第1項の規定を準用している。
    いわば代表理事の選任は理事会の専決事項であるから、これを直接総会で選挙することはできない。
  • (22)常任理事と表見代表との関係について
    定款を改正するに当たり第27条第1項において「理事のうち14人を常任理事」とすることとしているが、常任理事なる呼称は表見代表と見なされるか?
    理事長、副理事長、専務理事及び常務理事等一般の社会通念上組合を代表する権限を有するものと認められる名称を付した理事は表見代表理事と認められる(中協法第42条で準用する商法第262条)。
    常任理事についても同様に代表権ありと認められる名称と解されるので、表見代表と見なされるものと考える。
  • (23)協同組合に会長制を設けることの是非
    事業協同組合において、過去に理事長の職にあった者のうちから会長を選任し、代表理事の権限の若干を行わせる会長制を設けたいが、これは可能か?
    ご照会の会長の身分あるいは職務権限の詳細が不明であるが、そのような会長は対外的には少なくとも表見代表とみなされ、また、一般的には組合の管理面において理事長との権限の分担等が複雑になり内部の統一が損なわれるおそれがある。
    したがって、ご照会のような会長制を設けることは、法的には不可能ではないが、運営上好ましくなく、理事又は顧問として協力を得るのが適当である。
    しかしながら、中協法においてこれを禁止する規定はないので、会長制を設けることが組合の実体からみて運営上最良の方法であれば、これを設けることも妥当と思料するが、その適否は実体から判断すべきものであるので所轄行政庁とも協議のうえ判断するのが適当と考える。
  • (24)顧問・相談役・参与について
    私どもの組合では、今般の通常総会で、設立以来長年当組合の発展に貢献してきた代表理事が交替し、理事としての職務も退くこととなりました。
    理事会では、その功績をたたえるとともに、組合の役員ではないにしても、組合が必要とする時は、何時でも助言等を求めることのできる地位に置きたいと考えております。
    中小企業等協同組合法では「顧問」を置くことができることとなっていますが、前理事長を顧問に委嘱することは可能でしょうか。
    また、相談役・参与なども設けたいのですがいかがでしょうか。
    長年、組合の業務執行に携わっていた者が、組合の役員たる地位をはずれたからといって、その後、組合がその豊富な経験、知識等を活かした助言等を求めることができないということはありませんが、いつでも遠慮なく助言等を求めるためには、何らかの役職に委嘱しておくことも得策であると考えます。
    中小企業等協同組合法第43条では、「組合は、理事会の決議により、学識経験のある者を顧問とし、常時組合の重要事項に関し助言を求めることができる。但し、顧問は、組合を代表することはできない。」
  • (25)理事会と代表理事との権限範囲について
    事業協同組合定款参考例第48条(理事会の議決事項)第2号において、理事会の議決事項として「その他業務の執行に関する事項で理事会が必要と認める事項」とあるが、同規定中「理事会が必要と認める事項」とあるのは「理事長が必要と認める事項」の誤りでないか。
    代表理事が行う組合の業務執行は、法令又は定款上、理事会の議決を必要とする事項及び重要な業務執行については必ず理事会の決定に基づいて行わなければならないが、その細目的事項及びそれ以外の業務執行事項は必ずしも理事会の議決に基づいて執行する必要はなく、代表理事自らの権限で決し執行することができる。
    定款参考例第48条第2号にいうところの「業務執行に関する事項」は、後段の代表理事自らの権限で決定し執行し得る事項を指し、同号の規定は、これらの事項のうち、組合運営等の観点から代表理事の決定に任ぜず、特に理事会の決定に基づいて執行することが必要であると理事会が認めた場合は、理事会の議決事項とする旨を定めたものでこの規定に誤りはない。
  • (26)代表理事の資格と残任義務について
    甲事業協同組合の代表理事が、任期途中で理事を辞任してしまいました。そこで、次の2点についてお尋ねします。                                           
    1.この場合、その代表理事は、理事としての退任によって代表理事の地位をも失うことになるのでしょうか。                                   
    2.もしそうだとすると、その代表理事の残任義務はどのようになるのでしょうか。             
    1.代表理事については、中小企業等協同組合法(以下「組合法」という。)は、商法規定を準用しており、理事会において理事の中から選任する建前をとっています
    (商法第261条←組合法第42条)。
    したがって、代表理事は理事であることを前提としますから、理事の任期満了、辞任、解任などにより理事を退任した場合には、代表理事をも当然に退任することになります。
    2.理事の残任義務についても、組合法では商法規定が準用されており、理事の退任によって理事に欠員(定数割れ)を生じた場合には、任期満了又は辞任による退任者は、後任者が就任するまで引き続き理事としての権利義務を有することになっていますが、代表理事についてもこの規定が準用されています
    (商法第258条Ⅰ←商法第261条Ⅲ←組合法第42条)。
    ご質問の場合に代表理事としての残任義務があるかどうかについては、次の3つのパターンに区分してみる必要があります。
    すなわち、
     (1)その退任によって、理事・代表理事ともに欠員を生じた場合には、退任者は理事としての残任義務を負うと同時に、代表理事としての残任義務をも負うことになります。
     (2)また、その退任によって、理事の定数を欠いても、理事会の選任により代表理事には欠員を生じない場合には、退任者は単に理事としての残任義務を負うにとどまり、代表理事としての残任義務はありません。
     (3)では、その退任によって、代表理事の定数を欠いても、理事には欠員を生じない場合はどうでしょうか。一見、代表理事に欠員を生じているので、退任者は代表理事としての残任義務を負うかのようですが、この場合には、退任者は理事としての権利義務者ではないのですから、代表理事の地位が理事の資格を前提とする法の趣旨からして、代表理事としての残任義務はないとされています。
  • (27)辞任した役員の残任義務について
    組合の定款では、理事の定数を「6人以上8人以内」と定めており、当初総会で6人を選出していたが、今回1人の辞任者がでた。組合では、この辞任者については残任義務があるとの解釈をしていたが、たまたまある弁護士に相談したところ、従来の見解と異にするため、その根拠についてご説明いただきたい。
    (弁護士見解)
    商法第258条第1項欠員の場合の処置(残任義務)、同法第498条第1項18号では補充義務が規定されており、これらの規定は、法律又は定款所定の取締役の員数の最低限を割った場合のみ適用され、法律又は定款所定の最低員数の取締役が存在している場合は、株主総会において実際上選任されている員数を欠いても適用されない。
    しかし、一方においては中小企業協同組合法第35条第6項では、一定の範囲内(下限の1/3を超えない範囲)において補充義務を免除している。
    本来、補充義務と残任義務とは表裏一体の関係にあり、一方を免除し一方のみを課すのは妥当とはいえない。
    また、補充義務だけを免除し、残任義務を課す合理的な理由も考えられない。
    以上の理由から今回のケースについては、組合に補充義務もなければ、辞任者について残任義務はないものと判断される。
    組合における理事の定数は、組合の規模、事業内容等に応じ組合の業務執行上必要な人数を定款で定めたものであり、常に定数を充たしておくべきものである。
    理事の実員数が定款上の定数に不足することは、そのこと自体定款違反の状態であり、この場合当該組合の理事は法に定められた定数の遵守義務規定(中協法第42条で商法第254条の2を準用)の上からも速やかに理事の欠員分を補充する手続きをとらなければならない。
    また、中協法が第35条第6項において、商法第498条第1項第18号と異なる補充義務規定を置いているゆえんは、同条第4項において、理事の定数のうち3分の1までは、員外理事とすることが認められたことにかんがみ、員内理事者が3分の1を超えて欠けた場合、員外理事者が員内理事者を上回る場合がでて不都合となることを配慮し、特に3ヶ月以内という期間を限って欠員補充を義務づけた点にあるものと考えられ、同項は決して定数の3分の1を超えた欠員が出るまでの補充義務を免除したものではない。
    したがって、設例の場合は定款で定める理事定数(6人)を1人でも欠いた場合は、直ちに該当理事者に残任義務が発生するものというべきで、罰則を伴った補充義務規定がないことを理由にこれを否定すべきものではないと考える。
    なお、定款において理事の定数に幅をもたせている場合において、下限の人員を選出すると、今回のような事態も生じやすく、「6人以上8人以内」として理事に2人の余裕をもたせた意味がなくなるので今後は定数の上限を選出するようにされたい。
  • (28)役員の残任義務及び役員報酬の支給について
    副理事長を1名から2名に増員し、専務理事1名を減員した定款変更を総会で決議した場合、役員の残任義務及び役員報酬の支給は次の例ではどう扱うべきか?
    (例示)
    (1)定款変更決議の総会開催日        〇〇年5月18日
     同上総会では任期満了(〇〇年4月30日)に伴う理事の選挙を行い、専務理事であった者が落選した。

    (2)理事長、副理事長(増員1名を含む)2名の選出の理事会開催日    〇〇年5月22日

    (3)定款変更認可申請日           〇〇年7月22日

    (4)定款変更認可日             〇〇年7月30日

    以上の場合、
    1.従来専務理事であった者の残任期間は何月何日か?
     また、専務理事への役員報酬は何月分まで支給すべきか?
    2.増員1名の副理事長の役員報酬は何月分より支給すべきか?

    専務理事の残任期間は、新たな役員が選任された5月18日までとなる。
    また、役員報酬は、本来総会で選任された役員についての報酬であるべきであるが、税法上役員報酬は、相談役、顧問等実質的に経営に従事しているものを含むとされていることから、残任義務期間の役員は、法律上の役員ではないが、役員と同等な権利義務を有し、実質的にも組合の経営に従事しているので役員報酬の支給対象となる。
    したがって、設問の専務理事の役員報酬は、4月1日(事業年度が4月1日に開始の場合)から5月18日までの期間の間で役員報酬規程等に照らし、新事業年度の役員報酬の予算の枠内で支給して差支えない。
    次に増員された副理事長の役員報酬は、定款変更が効力を発生する認可日である7月30日から支給することになるが、選任日である5月22日以後認可日まで副理事長の職務と実質的に同内容の職務を行い、経営に従事しているのであれば、役員報酬枠を総会で決議する場合、予めその旨の承認を受けることにより、役員報酬規程等に照らし、副理事長としての報酬額を支給することは可能であり、当該支給額についても税法上役員報酬として認められる。
  • (29)役員の責任とその解除について
    1.代表理事の行った会議費及び交際費の使途につき、理事会、監事、総会において承認を受けたものが、その後(翌年)使途が組合に不要のものであることが判明した。これにつき、組合は損害賠償の請求ができるかどうか?
    2.前項の行為は、代表理事の独断的行為であるが、損害賠償の場合は、当該代表理事の責任に止まるか?あるいは、理事、監事ともに連帯して賠償の責任があるか?
    3.上記の行為を行った代表理事が、使途につき捏造した理由を付し弁明すれば、その行為は止むを得ないとすべきか?
    4.理事、監事の決算書類に関する責任は総会後何年か?
    1.会議費、交際費の支出は理事長の業務執行に属するもので、あらかじめ理事会で決定されるべき性質のものではなく、代表理事以外の理事については責任がないとする見方があるが、代表理事の業務執行といえども職務に違背する不当な行為については未然にこれを防止し、もって組合の利益をはかるいわば総合監視の義務があるので、理事としてこの任務をけ怠し組合に損害を与えたとするならば、連帯して賠償する責任がある。
    また、監事についても、善管義務を怠り計算書類の不正を看過した場合には、理事と共に連帯して損害賠償しなければならない。
    2.交際費、会議費の使途について代表理事が捏造した理由を付したか否かに関しては、いわゆる道義上の問題として解決する場合は別として、理事の忠実義務違反に係る損害賠償請求の訴に伴う問題として裁判所が判断するものである。
    3.理事及び監事の決算関係書類に関する責任は民法の一般原則(第167条第1項)に従い、10年の時効にかかることになっている。なお、理事、監事とも総組合員の同意があれば責任の解除ができることとなっている(商法第266条第5項の準用)。
  • (30)総会で決定した工事費を上回る契約をした理事の責任について
    本件のある協同組合において、老朽化した共同施設を約1,000万円の予算で改築することを臨時総会で議決した。その後、理事会で協議した結果約2,000万円の予算で建設業者を指名契約し、工事に着工した。これに対し組合員中より、不審の声が挙がっているが、この場合に、理事について連帯損害賠償の責任があるか。
    総会で議決された工事費を著しく上回る金額で工事契約を締結したことは、善管義務違反(商法第254条第3項、民法第644条、中協法第42条)及び忠実義務違反(商法第254条ノ3、中協法第42条)となるが、当該組合の場合、組合は現段階では損害を受けていないと解されるので理事の損害賠償責任の問題は生じないと解する。
    したがって、中協法第38条の2第1項(任務懈怠による連帯責任)の適用はないものと考える。
  • (31)破産宣告を受けた組合の理事の責任について
    破産宣告を受けた組合の理事はどの程度の責任を負わねばならないか。                                     
    責任の程度は、破産までの組合事業運営上当該理事がどの程度任務懈怠があったかにかかっており、任務懈怠の範囲は理事会の決定から事業遂行までの間に任務懈怠があったかどうかである。そしてその懈怠の程度において損害賠償等の責任が決定される。
  • (32)決算関係書類の監査を監事が拒んだ場合の処理
    決算関係書類の監査を監事が拒んだ場合監査意見書なしで総会の承認を得ることは可能か?これについて、次のように解釈するが差支えないか?
    (解釈)
    監事を改選のうえ、あらためて監査を行い意見書を付して承認を得るべきである。
    貴見のとおりである。                                                   
  • (33)決算関係書類に添付する監事の監査意見書について
    通常総会で決算関係書類(事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案又は損失処理案)の承認を求めるに際し、理事は監事の意見書を添えて総会に提出しなければならないことになっております。
    監事に次のようなことがある場合、どのように処置したらよいでしょうか。
    1.監事が複数人いる場合、決算関係書類に添付する監査意見書の監事の意見は必ず一致しなければなりませんか。
    組合の決算書をみると、一通の意見書を監事が連名で出している例が多く見受けられます。
    2.監事全員が監査意見書の提出を拒んだ場合に、監事の監査意見書がないまま総会を開催し、決算関係書類の承認を受けることはできますか。
    また、監事の定数が1名の場合、その監事が病気等で、監査をしてもらえないときはどうでしょうか。
    監事は、会計監査を通じて理事の業務執行を監督する立場にある機関です。
    監事には会計帳簿及び書類の閲覧、会計に関する報告徴収、組合の業務及び財産の状況を調査する権限が与えられており、それらの権限に基づいて、監事は各々が独立して監査業務全般を行います。
    1.複数の監事がいる場合、監査結果について監事すべての意見が常に一致するとは限りませんし、その必要性もありません。たとえ監事が複数存在するとしても、監事は合議機関ではなく、各監事はそれぞれが独立して監査業務全般を行うものであるからです。
    重要な部分について監事間に意見の相違がある場合に、その点を監査意見書で明らかにすることは、各監事の責任を明確にするばかりでなく、組合員に対して問題点について注意を促すという意味においても意義があります。
    前述のように、監事は各々が独立して監査業務全般を行いますから、監査意見書は、各監事が各別に作成すべきものです。組合では通常、複数の監事が共同して監査を行い、連名で同一文言の監査意見書を作成することが多いと思われます。しかし、法律的には、監事の合議によって一個の監査意見書が作成された訳ではなく、同一内容の複数の監査意見書が作成されたものと解されます。
     各自の意見書の内容が同一であるので形式を連名にしたにすぎないのです。
    理事は、監事の意見書を添えて決算関係書類を通常総会に提出しなければなりません。しかし、監事が意見書の提出を拒んだ場合は、これを強制的に履行させる方法はありません。また、監事の監査がない状態で決算関係書類を承認する総会の決議がなされた場合は、その決議は取消原因を有することになるものと解されます。
    2.監事全員が意見書の提出を拒んだ場合は、監事を解任し、新たな監事を選任したうえで、新しい監事の監査を経て再度総会を開催しなければなりません。監査意見書の提出を拒む監事の行為は、法令・定款違反(任務懈怠)に当たります。監事の定数が1人であり、その監事が病気等で執務不能になった場合は、監査を行うものが1人もいなくなります。
     他に監査を行う監事が必要になりますが、定款に定める監事の定数の欠員ではないので、そのままの状態で新たに監事を選任することもできません。この場合はその監事に辞任してもらうか、辞任に応じてもらえなければ解任の手続きをとって退任させ、総会を開いて新たに監事を選任して、後任監事の監査を待って改めて通常総会を開くほかありません。
  • (34)理事の参事兼職について
    理事は参事を兼職することができるか?                                                                            
    監事は使用人と兼ねてはならないことになっているが(中協法第37条)理事については別段の定めがないので兼務は差支えない。
    ただし実際問題としては理事が参事を兼ねる必要性は乏しく、その理事を代表理事とするか、専務又は常務理事とすれば足りると考える。          
  • (35)理事長の使用人の兼職
    私どもの組合では、総会から1ヶ月後、事務局長が急死しました。
    小さな組合なので後任の適任者も見つからず、理事長が事務局長の職務を兼務して、とりあえず今年度はこの体制で組合の運営を乗り切っていこうと思います。
    決して財政上余裕のある組合ではありませんが、事務局長に払うべく予算に計上してあった給与について理事長に支給して差し支えありませんか。
    役員と使用人の兼職については中小企業等協同組合法第37条第1項では理事と監事、監事と使用人の兼職のみ禁じています。
    理事については別段の定めがないので兼務は差し支えなく、実際協同組合では、専務理事または常務理事が事務局長を兼務している事例は多いと思われます。
    しかし、ご質問のような理事長が兼務することの是非については、理事長は業務執行の権限を有しているわけですから、たとえ末端の業務であっても理事長としての業務執行に当然包含されると考えるべきで、使用人である事務局長を兼務するということ自体無意味と思われます。
    更に判例に「総会の議決により代表理事の報酬限度額を定めた場合には、代表理事が当該組合の事務分掌上は使用人に相当すべき事務に従事したときであっても、特段の事情のない限り、組合が総会で議決した限度額を超えて代表理事に報酬を支払うことは、その支払の名目を問わず、許されない。」(昭和55年最高裁)とありますので、既に総会も終わっていますから故事務局長分の給与の支給もできないと考えます。
    なお参考ですが使用人を兼務する役員の使用人として受ける給与について税法上は肩書・代表権のない理事が職制上使用人としての地位を有している場合以外は損金への算入を認めていません(法人税法第35条)。
    また総会の場においてもこのような給与分については役員報酬額に含まれない旨明示して決議しておくのがよいでしょう。
  • (36)役員の使用人兼職について
    監事は理事又は使用人と兼ねてはならない事は明示されているが組合が使用する職員は理事となる事が出来るか否か、若し差支えないとすれば、理事を職員として採用しても構わない事と解釈されるが職員の理事兼職について明示願いたい。
    職員で選任された理事が一職員として引続き同一勤務に服する事が出来たとすれば身分は常勤理事であるが、一職員として取扱いをするものであるか?
    中協法第37条第1項において禁止しているのは、次の場合、即ち、①理事と監事、②監事と使用人(職員を含む)である。
    監事は会計監査を通じて理事を監督する立場にあるもので、当然に両者の兼職は禁止される。
    本条の結果、理事と使用人の兼職は差支えないわけで、専ら専務に当たる理事が何々部長というような資格で事務担当者となる事は、従来もよく行われているところであり、これによって弊害のおこる事もないので禁止されない。
    選任された理事が、引き続き職員としての事務に勤務する場合、その職務は職員としての事務を担当する事となるが、通常の場合常勤理事である。
  • (37)理事の兼職禁止規定の解釈について
    中協法第37条第2項の理事の兼職禁止規定は、非常に理解し難い複雑な規定であるので例をあげて説明願いたい。                                       
    本規定の趣旨から説明すると、理事は理事会を構成して組合の業務の執行を決定し、あるいは代表理事となって決定された業務を現実に執行しなければならない等組合運営の首脳部たる地位にあるので、組合事業の経営、その他の組合運営に関し機密に属する事項等も詳細に知っているわけであるが、理事自体が組合事業または組合員資格事業と実質的に競争関係にある事業を行っているとき(法人であるときは、その役員たる地位にあるとき)は、組合の業務運営を不利におとしいれることになり、組合の正常な発展を妨げたり、あるいは組合員に不利益をもたらすおそれがあるので、これを防止するために一定の競合関係にたつ者は、組合の理事となることを禁止したのである。
    例をあげて第37条第2項の規定を説明すれば、
    (1)いま織物製造業者を組合員資格とする組合があり、その組合の共同施設として染色整理業及び原糸の共同購入事業を行っている場合を仮定する。
     この組合の原糸の共同購入事業を利用するために組合員となっているが、織物製造業を営みながら染色整理事業をも兼業して行ったとすれば、その者は組合員ではあるけれど理事への就任が禁止される。
     すなわち、組合の行う染色整理事業と例示した組合員の行う染色整理事業とは完全に競合するからである。
     なお、上記組合員が、組合員となっていない員外者である場合でも、同様の趣旨から員外理事として就任することを禁止される。
    (2)もし、この組合が織物製造業者と染色整理業者の両方を組合員資格として定款に定めていたとすれば、組合が染色整理の共同事業を行っていたとしても、例示した組合員の行う染色整理業は「組合員の資格として定款に定められる事業以外のもの」でなくなるので理事への就任が可能となる。
    なお、この場合に例示した者が員外者であるときは、第2号によって判断される。
    以上が第1号の説明であるが、第2号は員外理事のみに適用される規定である。理事になろうとする者が員外者である場合、(1)の場合であれば、織物製造業を行う者は、大企業である限り、この組合の員外理事に就任することが禁止される。
    (2)の場合であれば織物製造業を行う者も染色整理業を行う者も、大企業である限りこの組合の員外理事に就任することは禁止される。
    中小企業者であれば就任が禁止されないのは、たとえ員外者であっても組合員と同様の状態にあるものと考えてよいからである。
    なお「実質的に競争関係にある事業」とは、製造業と販売業あるいは卸売業と小売業のように縦の系列関係をいうのではなく、取扱商品が代替関係にある場合、たとえば綿スフ織物と絹人絹織物あるいは布レインコートとビニールレインコート等を指すものと解している。
  • (38)全国連合会と地区連合会との役員兼職について
    全国連合会と都道府県を単位とする地区連合会があり両者が実質的に競争関係にある場合において、両組合の理事又は監事の兼職は、法に抵触するか。          
    地区連合会の事業と全国連合会との事業は、実質的に競争関係にあると考えられるが、地区連合会は全国連合会の会員資格として定款に定められる事業以外のものを行うものではないので、中協法第37条第2項第1号に該当せず、また、同条第2項第2号によっても地区連合会が中協法第8条にいう小規模の事業者であれば全国連合会の理事、又は監事に就任することは差し支えないものである。
    なお、中協法第37条第2項は、理事への就任を禁止したものであるから監事への就任は、いずれの場合であっても差し支えないものである。
  • (39)理事の自己契約及び議事録記載内容について
    中協法第38条は理事の自己契約について規定されているが、問題点は次の項である。
    1.理事の自己契約とは、民法第108条の規定の趣旨により、代表権を有する理事のみが対象となるのではないか。
     (注)組合と理事は委任関係にあるが、業務の執行については、代理人となっていない。
    2.自己契約の内容について
    信用組合において(事業協同組合においても同じ)定款に規定された事業を理事が利用しようとする場合、第38条の規定による自己契約として理事会の承認を得る必要があるか。
     (注)信用組合の理事が組合から資金を借り入れる場合
    3.理事の自己契約を承認した場合の議事録の記載方法
    中協法第42条で準用している商法第206条ノ4により、議事録の作成方法について規定されているが、この条文の趣旨から、次のうち、どのような記載方法をとるべきか。
     (例)議事録
       ① 理事の自己契約に関する件
         出席理事全員異議なく賛成
         (この場合理事毎に金額、貸付条件等関係書類を別綴として公開しない)
       ② 理事〇〇より100万円借入申込の件
         書記より説明あり
         出席理事全員異議なく賛成
       ③ ②に対し更に契約の内容について詳細に記載する
         書記より説明あり
         出席理事全員異議なく賛成
    もし、②、③が適当とした場合は、理事個人の信用状態が公開されることとなり、この場合は、「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」(昭和19年法律第4号)第6条との関係はどうなるか。
    1.自己契約の適用について
      本状の趣旨は、理事がその地位を利用し、私利を図るために組合に損害を与えるような契約を締結するのを防止することにある。したがって理事(代表権を有しない理事を含む)が組合と契約する場合は、理事会の承認を受けることを必要としているわけで、この場合代表権を有する理事が契約の当事者であるときは、当事者たる個人の立場と組合の業務執行者たる立場とが一致するので、民法第108条に規定する自己契約禁止の一般原則に抵触することになるが、特に中協法第38条後段において、その適用を除外することとしている。
      代表権を有しない理事については、お説のとおり組合と理事は委任関係にあるが、業務の執行については、代理人となっていないので代表権を有する理事以外の理事の組合との契約は、自己契約にもならないようにも解せられるが、本条において特に代表理事と限定していないこと及び立法の趣旨からかんがみて、また実際の組合運営上からも代表権を有すると否とにかかわらず、理事が組合と契約を締結する場合は承認を受けるべきものと解される。
    2.自己契約の内容について
      自己契約の内容としては、理事が組合から貸付を受け又は自分の設備を組合に貸し、又は他人の所有物をそのものの代理人として組合に売るように、組合を相手方とする一切の法律行為を指すが、組合と利害の衝突のおそれが全くない定型的な契約は承認を受けるべき契約の範囲から除外されるものと解する。
      したがって、定款に規定された事業を理事が利用しようとする場合もその事業の内容に応じて判断すべきであって、設例のように信用組合の理事が当該組合から資金の貸付を受ける場合は上述の除外される契約として解されないので、そのたびに承認を受けるべきであると解する。
      なお、手形の割引、振出等の行為については、これを本条にいわゆる契約であるとした判断もあるが、手形の流通証券たる特質にかんがみ、取引の安全保護の見地から、最近においては消極に解されている。
    3.議事録の記載内容について
      議事録については、商法第260条ノ4第1項及び第2項の規定を準用しているが、その記載事項としては、会議の日時、場所、出席者氏名、議案別の審議の経過、可決、否決の別及び賛成、反対又は棄権した理事の氏名等が記載されていれば一応法律上の要請は満たされているわけである。
      議事録は、理事が責任を追及される場合に重要な役割を果たすものであるから、明確かつ、克明に記載することが必要であるが、いたずらに冗長すぎる必要はなく、議事の経過の要領及び議決の結果が判然としているものであれば差し支えない。
      上記趣旨より設例の議事録の記載内容としては、②の記載例が適当であると考えられる。なお、「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」との関係については、同法は、独占となるような事業あるいは経済の統制を目的とする法令により統制に関する業務を行う会社、組合等に対してそれらの団体が、その職務の性質上知得した行政庁や当該団体の重要な秘密を漏泄窃用するのを防止するために規定された関係法律を整備したものであって、本件の場合のように、理事個人の信用状態の公開というようなこととは関係ない。
  • (40)信用組合理事の自己契約について
    中協法第38条において「理事は理事会の承認を受けた場合に限り組合と契約することができる。この場合には民法第108条(自己契約)の規定を適用しない」とある。
    本条の趣旨は理事がその地位を利用し、組合に不利な取引による損害を与えることを防止するためのものであり、信用組合における貯金関係の如く損害を与えるおそれの全くない場合は含まれないと解している。
    しかし、貸付については当然理事会の承認が必要であると従来指導してきたが信用組合における理事は自己も事業者として営業を行っている場合が多く、それらの商取引から生ずる手形割引や事業資金の借入利用がある。
    この場合、1件ごとに理事会の承認が必要であるとすれば長期借入の場合はともかく、手形割引や短期事業資金の借入について、一々理事会を開催することは実際上なかなか困難であると考える。
    法の趣旨からすれば他の組合員と同一条件のもとにする組合よりの借入については、各人別に理事会において貸付限度を定めておいてこの範囲の貸出は理事長に一任し事後最初の理事会に諮ることにしても差し支えないものと考えるが、その解釈についてご教示をお願いする。
    中協法第38条に規定する理事の自己契約の内容としては、理事が組合から貸付を受け又は自分の設備を組合に貸し又は他人の所有物をそのものの代理人として組合に売るように、組合を相手方とする一切の法律行為を指すが、組合と利害の衝突のおそれが全くない定型的な契約は、承認を受けるべき契約の範囲から除外されるものと解する。
    したがって、定款に規定された事業を理事が利用しようとする場合もそのことの内容に応じて判断すべきであって、設例の場合のように信用組合の理事が当該組合から資金の貸付を受ける場合等は上述の除外される契約としては解されないが、予め各人別に理事会において承認を受けることは差し支えないものと解する。

  • (41)理事の自己契約について
    中協法第38条(理事の自己契約)について、次の場合理事会の承認を必要とするかどうか?                   
    1.法人の代表者として貸出す場合
    2.第三者の保証人として貸出す場合
    1.中協法第38条の趣旨は、理事がその地位を利用して組合に損害を与えることを防止することにあることから、理事会の承認が必要であるものと解する。
    2.理事が第三者のために保証契約を組合と結び、当該第三者に貸出しする場合、保証契約については保証人たる理事は、弁済の能力あることを必要とし(民法第450条第1項第2号)、この要件は、組合が保証人を指名しない限り必要とされている(同条第3項)。
    このように理事と組合との保証契約が組合に不利益となる場合もあり、理事と組合との取引によって組合に損害を与えることを防止しようという中協法第38条の趣旨から、理事会の承認を受けるべきものと解する。
  • (42)役員報酬の請求権について
    役員としての報酬を受けていた某組合の専務理事が在職中にもかかわらず、理事会と意見の対立が原因で、その支払を停止されたが、この理事は不払部分について組合に請求できるか?
    請求できるとして、組合がその支払いを拒んだ場合はどうしたら良いか?
    組合と理事とは委任関係にあるから、委任者である組合(執行機関たる代表者に該当)と受任者である当該理事との間に報酬支払の特約があれば、その契約が解除されていない限り、中協法第42条において準用する商法第254条第3項で準用する民法第648条の規定により、当該理事は組合に対し報酬支払の請求権をもつ。
    また、組合がこれに対して支払を拒む場合は、民事訴訟手続により90万円を超えない請求であれば簡易裁判所、これを超える場合は地方裁判所に、それぞれ「役員報酬請求の訴え」を提起することとなる。
  • (43)参事と代表権を有しない常勤理事等の職能について
    代表権を有しない常勤理事は表見代表権者とみなされても業務の執行はできないものと解するが、一方参事は職員ではあるがその職務の代理権限は裁判上裁判外の広汎に及び、代表権のない常勤理事よりその職能範囲は広いものと解されるが如何。
    参事は、組合に代わってその業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限、すなわち組合の事業全般に関する包括的な「代理権」を有している(中協法第44条第2項、商法第38条第1項)。一方、代表権のない業務担当理事の権限は、理事会の構成員として業務執行の決定などに参画する理事としての一般的権限のほかに、理事会の決議又はそれに基づく業務規則等に定められた業務執行の実行に当たる権限を有する。
    ただ、その業務執行の内容は、純粋に内部的な組合業務に限られ、少しでも組合外部に対する直接の関係を含む事項については、権限を有しない。
    したがって、「職務権限の範囲」は、代表権のない業務担当理事の方が参事より広いが、「業務分担の範囲」という点では参事の方が広いと解する。
    ただし、参事は職員の地位であり、その任免は理事会の決定によるので、理事以上の地位ということではない。
  • (44)途中で総代制を設ける場合の現役員の任期について
    途中で総代制を設け「役員は総代会で選挙する」と規定した場合現役員は辞任しなければならないか。             
    辞任する義務はない。                                               
  • (45)理事定数を減員する場合の方法について
    次の役員改選を機に、理事の定数を現在の8名から7名に減員したいと考えていますが、どのような方法で行えばよいでしょうか。                  
    理事の定数を減員する場合には、予め、理事定数の変更に伴う定款変更のための総会(総代会を含む。)を開催し、そこで定款変更の決議を行い、行政庁の認可を受けたのち、役員改選のための総会を開催し、新定数(7名)による理事を選出するという方法がまず考えられます。
    ただし、この方法によりますと、短期間のうちに2度総会を開催しなければなりませんので、現実の対応が困難な場合も見受けられます。
    そこで、実務上定款変更決議と役員改選を同一総会において行うことが要請されるわけですが、これには次の2つの方法が考えられます。
    1つは、定款変更決議後、ただちに未認可の変更定款(新定款)により新役員を選出するが、その就任については停止条件を付し、全員が定款変更の認可後に就任するという方法です。
    2つは、定款変更後、現行(変更前)定款により8名の新役員を選出し、全員ただちに就任するという方法です。ただし、この方法による場合は、定款変更認可後に、定款規定(7名)と現行役員数(8名)との間に相違が生じますので、調整が必要となります。
    この調整の方法としては、超過する員数の役員に自発的に辞任してもらうか、あるいはその役員の任期に、定款変更の認可日までとする旨の解除条件をつける(つまり、一部役員の任期を制限する)方法が考えられますが、この解除条件は、役員選出前に、定款変更と同じ特別議決によって決議しておく必要があるでしょう。
  • (46)役員(理事)と組合との関係について
    理事と組合との関係は民法第643条の委任によるものか?                                
    中協法第42条において準用する商法第254条第3項の規定により、組合と役員(理事又は監事)との内部関係は民法上の委任契約に関する一連の規定が適用される。
    従って、組合と理事との関係は当然に民法第643条(委任関係の成立)の規定に拠るところになる。
  • (47)理事の辞任届の効力について
    理事が辞任届を提出し、理事会に出席しないとき、その理事は理事会の決定事項について責任を負わなければならないか。                           
    組合と理事との関係は委任関係であり、その委任関係の終了は相手方の承認を必要とせず一方的に終了させることができるので、理事は辞任届をもって理事を辞任したことになる。
    しかし、中協法第42条で準用する商法第258条第1項の関係で、辞任により法定数を欠くときは、辞任した理事は、後任者が就任するまでは理事としての権利義務をもつから、ご質問の欠席した場合は、欠席した理事としての責任を負わなければならない。
  • (48)役員の責任とその解除について
    1.代表理事の行った会議費及び交際費の使途につき、理事会、監事、総会において承認を受けたものが、その後(翌年)使途が組合に不要のものであることが判明した。これにつき、組合は損害賠償の請求ができるかどうか。
    2.前項の行為は、代表理事の独断的行為であるが、損害賠償の場合は、当該代表理事の責任に止まるか。あるいは、理事、監事ともに連帯して賠償の責任があるか。
    3.上記の行為を行った代表理事が、使途につき捏造した理由を付し弁明すれば、その行為はやむを得ないとすべきか。
    4.理事、監事の決算書類に関する責任は総会後何年か。
    1.会議費、交際費の支出は理事長の業務執行に属するもので、予め理事会で決定されるべき性質のものではなく、代表理事以外の理事については責任がないとする見方があるが、代表理事の業務執行といえども職務に違背する不当な行為については未然にこれを防止し、もって組合の利益を図るいわば監視の義務があるので、理事としてこの任務を懈怠し組合の損害を与えたとするならば、連帯して賠償する責任がある。
    また、監事についても、善管義務を怠り計算書類の不正を看過した場合には、理事とともに連帯して損害賠償しなければならない。
    2.交際費、会議費の使途について代表理事が捏造した理由を付したか否かに関しては、いわゆる道義上の問題として解決する場合は別として、理事の忠実義務違反に係る損害賠償請求の訴に伴う問題として裁判所が判断するものである。
    3.理事及び監事の決算関係書類に関する責任は民法の一般原則(第167条第1項)に従い、10年の時効にかかることになっている。
    なお、理事、監事とも総組合員の同意があれば責任の解除ができることとなっている(商法第266条第5項の準用)。
  • (49)「組合員たる法人の役員」たる地位を喪失した理事の員外理事就任の可否
    私どもの協同組合の組合員であるA株式会社の甲代表取締役が組合の理事に就任していたところ、その任期中に、A株式会社が組合員資格事業を廃止したため、組合員資格の喪失により組合を法定脱退しました。
    この場合、甲氏は理事の資格を失いますか。あるいは、員外理事として引続き理事の資格を有するのですか。理事の取扱いについてご教示下さい。
    ちなみに、組合の定款には、「組合員又は組合員たる法人の役員でない者は、理事については2人を超えることができない。」と規定されており、仮に、甲氏が員外理事の資格を有するとなると、現在員外理事として2人就任していますので、定款で定める数を超えてしまうことになります。
    はじめに、選挙の当時、組合員又は組合員たる法人の役員であることを前提として就任した理事(以下、「員内理事」という。)が、任期中に、組合員又は組合員たる法人の役員としての地位を失った場合に、理事に地位を当然に失うかどうかについて考えてみましょう。
    まず、組合員又は組合員たる法人の役員以外の理事、すなわち員外理事を認めない組合においては、その理事は当然に理事の地位を失うと解すべきですが、員外理事を認める組合の場合については、大別して2つの異なる見解があります。
    1つは、員外理事制度は、組合員以外からも幅広く人材を得ることを目的として採用されたものであり、員内理事と員外理事の選出を行う場合の組合員の判断基準はおのずと異なる。
    したがって、員内理事は、組合員又は組合員たる法人の役員であることを前提として理事の地位を認められていたとみるべきであり、この前提を失ったときは、員外理事を認める組合であっても、当然に理事の地位を失うと解すべきであるとする見解です。
    いま1つの見解は、員外理事を認めている組合においては、員内理事は、組合員又は組合員たる法人の役員としての地位を失っても、なお理事としての権利義務を有しており、員外理事としての地位に留まりうるので、当然には理事の地位を失わないとする見解です。
    現在、指導上は、後者の解釈がとられています(「定本中小企業等協同組合法詳解」中小企業庁編著、226頁、「法人登記書式精義(増補版)上」法務省民事局第4課編、427頁)。
    ただし、この場合、員外理事総数が、「理事定数の3分の1を超えてはならない」とする中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)35条第4項の制限、あるいは、定款所定の制限を超えることはできません。
    したがって、次に、この法律又は定款規定に違反する場合が問題になります。
    このような場合は、組合が、この違反状態を是正するための何らかの調整措置を講ずべき事態が生じたということであり、超過員数分だけ、任意の者を解任する義務を負うということになります。
    解決の方法としては、員外理事となった者を自発的に退任させるか、あるいは、員外理事相互間で協議をして、最も得票数の少ない者、組合との関連度が最も少ない者などを退任させるというような方法が考えられますが、員外理事中のだれも退任しようとしない場合には、最終的には、組合法41条の規定により役員の改選を行うしか方法がないと考えられます。
    なお、この場合、特定の理事を法令・定款違反に問うことはできませんので、理事全員について改選請求を行う必要があります。このようにみると、実務上の処理方法としては、員外理事となった者を自発的に退任させるようにするのが良いでしょう。
  • (50)役員に係る諸変更(手続き)について
    私どもの組合では、本年度の通常総会で役員が改選され、新役員が選任されました。(理事10名、監事2名。)
    監事は前任者が再任されましたが、理事については、半数が新たに選任され、就任しました。また、再任した理事のなかには住所を変更した者もおります。
    役員が変更した場合、行政庁に役員変更届を提出することとなっていますが、その方法等についてご教示下さい。
    役員に変更があった場合、中小企業等協同組合法第35条の2では「組合は、役員の氏名又は住所に変更があったときは、その変更の日から2週間以内に、行政庁にその旨を届け出なければならない。」とされております。
    役員の変更とは、役員の氏名又は住所の変更があった場合、役員の改選又は補充があった場合、代表理事の交替、役付理事の交替、役員が死亡又は辞任をした場合など役員に関して変更があった場合の一切をいいます。
    したがって、貴組合にあっても当然、役員の変更届を組合を所管する行政庁に提出しなければなりません。
    変更の届出には、中小企業等協同組合法施行規則第3条(商工組合等にあっては、中小企業団体の組織に関する法律施行規則第1条の8)に規定されている様式による届出書に次の書類を添付して提出することとなります。
    1.変更した事項を記載した書面変更前と変更後の役員の氏名、住所、組合役員の役職、員内員外の別等を対照表にして記載。
    2.変更年月日及びその理由を記載した書面例えば本質問においての変更理由例として「任期満了に伴う役員の改選が行われたため」「〇〇理由の住所移転のため」等と記載すればよいでしょう。
    3.役員の変更が役員の選挙又は選任によった場合は、総会又は総代会の議事録と理事会の議事録(謄本でよい)。
    なお、役員の改選によって、全役員が再任した場合、あるいは、特定の役員の住所等の変更であっても、全役員の氏名、住所等を記載した1.の書類は必要です。

役員選挙

  • (1)立候補届出期間等について
    事業協同組合定款例第30条第5項(立候補制、推薦制をとる組合の役員選挙総会公告期間20日前)と同条第6項(当該組合の立候補者、推薦者の届出期間15日前)とは、日数において反対の性質のものではないか?
    総会会日の公告日と立候補の届出期間との関係については、先ず総会の協議事項、開催月日を明示して公告をなし、その総会会日に役員選挙を行う旨の公告内容の一項目として立候補期間を定めるものであり、おたずねのように反対の性質のものではないと思料する。
  • (2)役員候補者推薦人を理事会に限ることについて
    役員選挙に推薦制をとる組合が、候補者の推薦人を理事会のみに限定することはできるか?                 
    推薦人を理事会のみに限定することは、汎く人材を得る見地から、また他の組合員も等しく選挙し、選挙される権利をもっている点からみても不適当と思料する。       
  • (3)役員候補者を部会別等で推薦することの是非
    役員選挙について推薦制をとる組合において、業種別等の部会別に推薦すべき定数を定め、部会ごとに推薦された者を候補者とする定めは適法か。          
    役員候補者の推薦制については、これが組合員の被選挙権を不当に制限することにならない限り適宜の方法が採用されても差し支えない。
    したがって、組合員が自由に立候補できる制度が併用されるのであれば部会等が推薦母体になること、あるいは推薦母体別に定数を付することも組合員の被選挙権を不当に制限するものとは解されないので差し支えない。
    ただ、これらの規定は、組合運営上の重要事項であるので、選挙規約として総会において規定すべきである。
  • (4)役員定数を超過した投票の効力について
    連記式投票をとる組合の役員選挙に際して、投票すべき役員数を超過して記載された投票(例、役員定数10人のところ12人記載)、あるいは投票すべき員数に達しなく記載された投票の有効、無効について回答されたい。
    なお、本組合には、定款には連記式投票制は明記してあるが、連記すべき数の規定がなく、また規約等にもそれがない。
    選挙すべき役員数を超過した投票は、全部(記載された被選挙人員、設例では12人)無効である。      
    また、選挙すべき役員数に達しない投票については有効である。  
  • (5)定款に定めのない方法による役員選挙の是非について
    当組合の定款では、役員の選出方法は無記名投票制または指名推選制となっているが、総会当日に組合員の一部が指名推選制に反対することが予想されることから、このたびの役員改選に限り、立候補制により役員を選挙したいと考えているが、現行定款のまま行って差支えないでしょうか。
    現行定款のまま行うことはできません。「選挙」は、1組合員1票の「無記名投票」をもって行うことを原則としていますが、総会の出席者全員に異議のない場合は、例外的措置として指名推選の方法によって行うことが認められています。この他に定款参考例では、候補者制等による例を定めています。
    しかしながら、役員の選出は、中協法第35条第3項において「定款の定めるところにより」総会において選挙すると定められている。よって、定款に立候補制の規定がない場合は、立候補制による役員選挙を行うことはできないと解されます。
    役員選出においては、定款だけでなく役員選挙規約を定めるなど適正に運用する必要があります。
  • (6)○×式による役員選挙方法の是非
    投票用紙に予め候補者全員の氏名を連記の上配布し、○×によって投票を行うことの可否。                                  
    差支えない。                                                   
  • (7)指名推選における選考委員の資格について
    指名推選制の選考委員は、組合員でなければならないか?                                                           
    又は、員外役員あるいはその他の非組合員でも差支えないか?                                                
    選考委員は、組合の性格からして組合員のなかから選ぶのが適当と考えるが、組合員以外から選任しても違法ではないので、特別の事情があるときは組合員以外より選ぶことも止むを得ないであろう。
  • (8)地区別、部会別等による役員選挙の是非
    総会の席上において、業種などによる部会別あるいは地区別に役員を選挙することは適法か?                
    中協法第35条第3項により、役員の選挙は「総会において選挙する」となっており、地区別あるいは部会別の選挙は総会における選挙とはならない。
    また、この場合の総会とは、総会の開催されている会場のみを意味するのではなく、総会という機関そのものを意味していると解すべきであるから、設問の選挙が総会の席上であっても、部会別等による選挙は、部会別等に投票所を設けて行う選挙と実質的にかわりなく、総会という機関において行われたこととはならないので適法とみることはできない。
  • (9)認可を受けない変更定款による役員選挙の効力について
    役員の選挙に、指名推選の方法を取り入れるように総会において定款変更の議決をして、その直後に指名推選の方法により役員の選挙を行い、しかもこの指名推選の方法により選ばれた役員は、定款の変更につき行政庁の認可があった日に就任するものであることを同総会において確認した。
    このような役員の改選は適法であるか否か?
    定款の変更について行政庁の認可があった日に就任する旨の停止条件が付された役員の改選であるから、適法であると解する。                  
  • (10)認可を受けない変更定款により役員選挙が行われた場合の定款変更認可方針について
    総会において役員の定数の変更を議決すると同時に、定款の変更に伴う行政庁の認可をまたずして、同日直ちに議決された新しい定数によるところの役員の選挙を行い、その状況を記入した議事録を添付した役員定数の変更の定款変更認可申請書を行政庁に提出してきた場合、どのような指導をすべきか。
    1.定款変更前の定数による役員の選挙と増員分の役員の選挙とを区別して行うこととし、定款変更前の  定数による部分の役員は、ただちに就任し、増員分の役員は選挙の際に定款の変更につき行政庁の認可を受けた日から就任する旨の停止条件を付しておき(停止条件を付した旨は議事録に明確に記載することを要する)、その条件が満たされた日、すなわち行政庁の認可のあった日に就任する。
    2.定款変更による増員分を含めた全役員の選挙を一括して行うこととし、その際に役員の全員につき1に述べたような停止条件を付し、その条件が満たされた日に就任する。

  • (11)定数に満たない役員選挙等について(1)
    立候補制、推薦制をとる組合において、立候補者等が選挙すべき定数に満たなく、規約等に無投票当選の定めがある場合は、その立候補者等の当選が確定し、定数に満たない員数についてのみ再度選挙手続をすべきか?
    それとも、立候補者等が定数に満たない場合は、その者の当選とはならず、全員について再度選挙を行うべきか?
    また、この場合、定数の全員を選挙したにも拘らず、当選人の一部が就任を辞退したときはどうか?
    また、以上の場合、任期満了によって辞任すべき役員の残任義務はどの時点までであるか?
    役員選挙は、その定数を満たすようにすべきであるが、無投票当選の定めがあれば、員数に満たないときでも、その立候補者等の当選は確定し、再度全員について選挙を行う必要はないと解する。
    不足の員数については、総会の延期又は続行する決議を行い、後日総会を再開するかあるいは改めて総会を招集して充足すれば良く、また必要数の全員を選挙したにも拘らず、当選人が就任を辞退した場合は上述と同様、当選人の当選は有効であり、繰上げ当選の定めがあれば次点者を当選人とし、繰上げ当選の定めがないときは、就任辞退による不足数につき、総会の延期、続行、或いは再度招集により選挙することになる。
    残任義務については、組合と役員は委任関係であり、委任関係の成立は当選者が就任を承諾したときからであるから、また一方改選の場合の前任者の残任義務は、例え、後任者の全員が選任されなくとも、後任者が就任すれば解除されるものと解されるから、役員が就任を承諾し役員に就任した時点が問題となる。
    設問の場合については、総会が改めて開催される場合であって前総会において選出された役員が就任しているときはその就任した時をもって前任者の残任義務は解除される。
    また、総会が延期、続会となった場合は、総会は終了せず選挙行為は完了しないから当然続会となった総会において当選した役員は続会における選挙行為が終るまで就任することができないと考えられるから、続会により開催された総会が終了し、かつ後任者が就任するまで、前任者は残任義務を負うものとする。
  • (12)定数に満たない役員選挙等について(2)
    定款上理事の定数が「40名以上45名以内」と定められている組合において役員の選挙を行ったが、30名しか選出されなかった。            
    この場合どのような処理を行うべきか?(この組合の役員選挙方法は定款で連記式無記名投票又は指名推選制度をとることになっている。)
    1.連記式無記名投票を行った場合は、選ばれた30名は役員として有効である。ただし、定数に満たないから、残りの人数について、当該総会において、総会の続会の決議を行っておき、後日選挙を再度行うか、新たに総会を開催して、残りの10名分について選挙をやり直す必要がある。
    この場合、不足分を選ぶ総会は可及的すみやかに開催される必要がある。
     なお、このまま残りの役員の選出を行わないで、いつまでも30人のままでいることは定款違反となるので、行政庁における業務改善命令の対象となり得る。
     また、役員候補者が定数に満たないような組合においては、定款改正を行い、実情にあった定数にする必要があろう。
    2.指名推選で30人を選んだとすると、指名推選の場合は分けて行ってはならないこととなっているので、違法となり、この場合は、再度、全員について選びなおすこととなろう。
  • (13)指名推選により当選した当選人が理事就任を辞退した場合の効力について
    私どもの事業協同組合では、先に開催した通常総会において、指名推選の方法により役員選挙を行いましたが、総会終了後当選理事18人のうち4人が理事就任を辞退しました。
    当組合の理事定数は、定款により「15人以上18人以内」となっていますので、この4人の就任辞退者が出た結果、理事就任者が理事定数の下限を下回ることになってしまいました。
    指名推選の方法をとる場合は被指名人を区分して行ってはならないと聞きましたが、当組合の場合は、再度理事全員について選挙しなおすべきでしょうか。
    また、辞退した4人分についてのみ選挙すればよいのでしょうか。
    指名推選制は、役員選挙について、最も民主的であるべき無記名投票制の例外として設けられている制度ですから、その方法の実施に際しては、法律上、
    ① 総会の出席者中に異議がない場合に限り、この方法の採用が認められること
     (中小企業等協同組合法第35条第9項)
    ② 当選人の決定について、出席者全員の同意を必要とすること(同条第10項)
    ③ 2人以上の理事又は監事を選挙する場合において、被指名人を区分してこの方法を用いてはならないこと(同条第11項)
    この3つの厳しい要件が課されています。
    法がこのような要件を課しているのは、多数派が少数派を排除することによって理事又は監事の構成が多数派に偏することを防止するためです。
    さて、そこでご質問の場合について考えてみましょう。
    ここで提起されている問題は、指名推選の方法により理事の定数の全員を選挙したにもかかわらず、その後一部当選人の就任辞退により、理事数に不足が生じたため、再度役員選挙を行う場合において、先の役員選挙における当選人の当選を有効なものと認めてよいかという問題です。
    これには2つの見解があります。
    1つは、そもそもこのような理事数の不足は、定数の全員が選挙され、当選人が確定した後に生じたものであるから、当選人の当選は有効であるとする見解です。ちなみに、投票によって選挙された場合におけるこのようなケースについては、この考え方により、当選人の当選は有効であると解されており、したがって理事数の不足分については、繰上げ当選の定めがあれば次点者を当選人とし、繰上げ当選の定めがないときは、就任辞退による不足数につき再度選挙すればよいこととされています。
    いま1つの見解は、指名推選制が、前述のように、投票による選挙方法の例外として設けられ、その実施に際しては特に厳しい要件が課せられている点を重視し、就任辞退者分のみの選挙は、多数派による少数派の排除の防止を目的とする法の趣旨に反する結果を招く恐れがあるとして、指名推選の方法をとる場合においては、当選人の当選を無効とし、改めて全員について選挙しなおすべきであるとするものです。
    しかし、ご質問のようなケースにおいては、前者の見解のように、当選人の当選は有効であると解すべきであり、また、ご指摘の、指名推選制に課された要件の中の「被指名人を区分してこの方法を用いてはならない」とする規定については、あくまで1つの選挙行為について指名推選の区分適用を禁止する趣旨のものであって、選挙行為が終了した後に、既に就任を承諾した当選人の当選を無効とし、再度全員について選挙しなおすことまでも求める趣旨のものではないと解されます。
    したがって、貴組合の場合は、就任辞任により不足が生じた4人の理事を補充するための選挙を行うことになります。
  • (14)次点者の繰上げ当選について
    総会において、理事の選挙を行い、総会終了後、理事当選者に対し、就任方を依頼したが、就任を辞退した者があり、この場合次点者を繰上げて理事当選者にすべきか?又は新たに選挙をしなおすべきか?   
    総会において選挙を行い、当選した理事が就任を辞退したときは定款又は役員選挙規約等により次点者繰上げの定めのあるとき以外は、定数を欠く員数分の理事について新たに選挙し、補充すべきであると考える。  
  • (15)任期満了前の役員選挙について
    事業協同組合において、任期満了前に役員の改選を行う場合に次の点をご教示願いたい。                 
    1.任期満了前に改選のための役員選挙を行うことは問題があるか?                      
    2.前項に問題がないとすれば、その選挙の期日は任期満了前の何日以内とすべきか?              
    1.新たに選出された役員は、前役員が辞任しない限り、前役員の任期が終了するまで役員に就任せず、任期満了の翌日に初めて就任することになるわけであるから、前任者の任期満了前に新役員を選出しておくことは何ら差支えない。
    2.任期満了前の何日以内に開催しなければならないかということについては、定説がないので任期満了日に近い期間に行うのが適当である。
    その期間は、任期満了日に近い期間内で組合の実情を勘案して決定し、規約などに定めて
    おくことも一案である。
    なお、農協においては、「任期満了日の60日前から7日前までの間」となっているので
    参考までにつけ加えておく。
  • (16)役員のリコールの手続き
    私どもの組合は20年余りの歴史を有しているのですが、現執行部は組合活動に情熱がなく、運営についても不公平、不明朗な点が多いように感じています。
    このままでは組合の発展はおろか、最近の経済情勢から取り残されるのではないかと危惧されます。
    現役員の任期は2年余もあることから、この際役員改選の請求を起こしたいと思います。これについての手続きについてお教え下さい。
    少数組合員の権利として中小企業等協同組合法第41条では、役員の改選請求と手続きについて定めています。
    まず役員改選の請求をする人は、改選の理由を記載した書面に総組合員の5分の1以上を連署したものを理事に提出することになっています。
    そしてこの請求は、理事全員又は監事全員について同時にしなければなりませんが、法令又は定款若しくは規約の違反を理由として改選を請求するときは、理事、監事それぞれ全員でなくても、その一部の人達だけに対してでもよいことになっています。
    この役員改選の請求があったときは、理事長は理事会に諮ったうえ、請求のあった日から20日以内に臨時総会を開催しなくてはいけません。
    つまり改選の請求のあった日から10日以内に総会の招集の手続きをする必要があります。もしこの手続きがなされなかった場合には、法はその請求をした人が行政庁の承認を得て自ら総会招集の手続きができる旨を認めています。
    そして、この臨時総会の場で役員改選の是非が問われるわけですが、これは通常の議決と同様に出席者の過半数の同意があると役員は解任されます。
    ここで注意しなければならないのは、理事は改選請求に係わる役員に対し、総会の日から7日前までに既出の改選の理由を記載した書面を送り、総会において弁明する機会を与えねばなりません。これを怠ると罰則の規定が適用されます。
    もちろん役員改選の議案が否決されたときは当該役員は引き続いてその職務を従来通り行えます。これに不服がある場合、その旨を行政庁に申し出る別の途が開かれています(中小企業等協同組合法第104条)。
    しかし役員改選請求については、組合員数が少ない組合の場合には極めて少数の組合員の意思で成立するので、みだりに行使すべきでないでしょう。
  • (17)役員選任制の運用
    当組合は、役員の選出を「選任制」の方法で行うこととしておりますが、次の点についてご教示ください。                            
    1.推薦会議への推薦委員の委任状(代理)出席は、可能ですか。また、書面による出席はどうですか。
    2.推薦会議で決定した役員候補者を理事会で修正または拒否することができますか。
    組合役員の選出方法には、大きく分けて、「選挙」による方法(例外として、指名推薦の方法を含む。以下「選挙制」という)と、「選任」による方法(以下「選任制」という)の2つの方法があります。
    「選任制」は、役員を総会の議決(多数決)によって選出するもので、あらかじめ一定の手続により選定した役員候補者を、一つの議案として総会に提出し、これに対する賛否を問う方法です。
    選任制は、選挙制を採ることが総会運営上問題を生じがちな、組合員数の多い大規模の組合で採用する場合に意味のある制度ですが、概ね次の手順に従って行うよう指導されています(昭和55年9月2日付55企庁第1324号中小企業庁指導部長通達「中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律の施行に伴う運用について」参照)。
    (1)推薦委員の選出
    (2)推薦会議の招集
    (3)推薦会議の開催・役員候補者の決定
    (4)役員候補者の承諾
    (5)役員候補者を理事長に推薦
    (6)理事会の開催(役員選任に関する議案の決定)
    (7)総会開催通知(役員候補者名簿の送付)
    (8)総会(役員の選任)
    それでは、ご質問について考えてみましょう。
    1.推薦委員は、その人格に重きをおいて、地域、業種、規模等から組合員によって選出され、役員候補者の決定を委任されたものです。
     このような推薦委員の性格上、その職務行為を他人に委任することはできません。また、
     推薦会議への書面による出席についても、推薦委員の職務は、役員候補者を選定するという、いわば原案そのものの作成に参画するということにあるわけですから、あくまでも推薦会議に実際に出席するのでなければその職務は果たしえず、したがって、書面による出席も認められておりません。
    2.選任制においては、役員候補者の選定は、理事会が行うのではなく、地域、業種、規模等各組合の実態に即して定められた選出母体ごとに組合員の中から選ばれた、推薦委員をもって構成する推薦会議において行うことになっており、理事会は、推薦会議において選定されたところにしたがって役員候補者名簿を作成し、総会提出議案として決定することになっています。
     これは、選任制が選挙制に比べて、組合の民主的運営という点においてやや欠ける面があり、その運用を誤ると組合運営がボス的支配に陥る危険性もあることから、役員候補者の選定に組合員の意向を反映できるよう配慮したものです。
     このようなことから、推薦会議で決定した原案を理事会において修正したり、拒否したりすることができることになると、実質的に理事会が役員候補者を決定することになり、推薦会議まで設けて民主制を担保しようとした趣旨が失われることになります。
     したがって、推薦会議で決定した役員候補者を理事会において修正又は拒否することは許されません。
  • (18)役員選挙についての疑義
    役員改選期を控えていますが、役員選挙方法について2つお尋ねします。
    1.理事と監事とは分けて選出すべきとのことですが、何故でしょうか。
    2.模範定款例によれば「得票数が同じであるときは、くじで当選人を決める。」とありますが、重要な役員をくじで決めるとは不謹慎のように思えます。何故「くじ」としたのでしょうか。
    役員の選挙方法として、例えば、得票数の多い順から理事を決めていき理事の員数を充たした段階で、次の得票数の者から監事としていく。
    このように理事と監事とを1つの選挙で選出することは、適当でありません。
    何故なら、理事は業務執行を、監事は会計等の監査を職務としており、役員であっても職務内容を異にするものです。これを一緒に選出しようとしても、組合員にとっては、極端にいえば意思表示(投票)のしようがないといえます。
    また、このことから得票数の多寡によって両者を区別すべき性格のものでないといえます。このようなことが一緒に選挙しない理由です。
    一般の「くじ」についてのイメージからすれば、不謹慎の感じをもたれるのも最もと思いますが、この場合は恣意の入る余地のない公平・公正な方法として採用されているものです。
    「くじ」以外の方法としては、例えばジャンケンによる方法も考えられますが、感情等の入る余地があります。
    また、投票・挙手等の多数決の方法も考えられますが、必ず多数派が当選することになります。
    なお、全役員を1つの選挙で選出すべき主旨は、役員構成が少数派排除による多数派代表に偏することの防止にあることに留意下さい。
  • (19)増員分役員の就任、就任日について
    総会において役員の定数の変更を議決すると同時に、定款の変更に伴う行政庁の認可をまたずして、同日直ちに議決された新しい定数によるところの役員の選挙を行い、その状況を記入した議事録を添付した役員定数の変更の定款変更認可申請書を行政庁に提出してきた場合、どのようにすべきか?
    設問のごとく、役員の定数の増加につき定款の変更を議決した総会において、行政庁の認可をまたず、ただちに増員分の役員を含めた役員の全員の選挙を行おうとする場合は、次の方法によれば有効と解される。
    1.定款変更前の定数による役員の選挙と増員分の役員の選挙とを区別して行うこととし、定款変更前の定数による部分の役員は、ただちに就任し、増員分の役員は選挙の際に定款の変更につき行政庁の認可を受けた日から就任する旨の停止条件を付しておき(停止条件を付した旨は議事録に明確に記載することを要する)、その条件が満たされた日、すなわち行政庁の認可のあった日に就任する。
    2.定款変更による増員分を含めた全役員の選挙を一括して行うこととし、その際に役員の全員につき1.に述べたような停止条件を付し、その条件が満たされた日に就任する。

役員選任制

  • (1)推薦委員の資格について
    当組合は役員の選出を選任制の方法で行うこととしており、先般地区ごとに推薦委員を選出したところ、ある地区では7人の推薦委員を選出すべきところ、2つの法人組合員の役員で占められてしまっている。
    推薦会議を構成する推薦委員は、組合員が法人の場合、組合員たる法人の役員であれば誰でもなることができるのか。それとも法人の代表者だけしか推薦委員になることができないのか。
    推薦委員は、組合員の中から選任されることになっているがその人格に重きがあるため自然人に限られ、法人は推薦委員となれない。したがって組合員が法人の場合は推薦委員となれるのは、法人の代表者に限られる。
  • (2)推薦委員の任期について
    選任制の方法によって役員を選出する場合、役員候補者は推薦会議で決定することとなるが、推薦会議を構成する推薦委員の任期については、中協法及び事業協同組合定款参考例には特に記載されていない。
    推薦委員の任期はどのように考えたらよいか。
    推薦委員の任期は、役員の任期の期間以内で定めるのが望ましいが、任期を定めない組合にあっては、役員の欠員補充の場合にも改めて推薦委員を選出しなければならず実際上困る場合がでてくるのでこのような場合には、役員全員改選時の推薦委員を選出する際に予め補欠選任の場合の役員候補者の推薦委員も引き続き努めてもらう旨の規定を規約に定めておくことが必要であろう。
  • (3)選出母体ごとに推薦委員の選出方法を違えることについて
    役員改選期に当たり、推薦委員の選出方法を投票用紙の郵送によって選挙するように指示したところ、いくつかの地区からこの方法以外の選出方法をとりたいとの申し出があったが、推薦委員の選出方法は、選出母体ごとに自由に選定させてもかまわないか。
    推薦委員を地域・業種等の選出母体ごとに異なった方法で選出することは、公平の原則から見て適当でないので、推薦委員の選出を指示するに当たっては、統一した選出方法を示して行うことが好ましい。
  • (4)推薦委員選出における委任状による参加等の可否について
    当組合は選任制により役員を選出することとしており、このたび業種別選出母体ごとに集会で推薦委員を選出する旨指示したところ、当日都合により集会に出席できないという組合員から委任状が送られてきた。
    総会では委任状及び書面による参加が認められているが、推薦委員を選出する集会においてはどのように考えたら良いのか。
    推薦委員の選出に当たっては、推薦委員となるべき者に対する組合員の当否の意思表示が判断できればよいので、委任状、書面による参加も差し支えない。        
  • (5)推薦委員選出時の議事録について
    役員の選出方法として選任制を採用する組合が、推薦会議の構成メンバーとなる推薦委員を選出したときは、議事録を作成しておかなければならないか。                   
    議事録は特に必要としないが、選出世話人は、選出方法、選出の期日及び選出の結果を、選出された推薦委員の氏名とともに理事長に報告する必要がある。        
  • (6)推薦委員の解任の可否について
    役員改選期に当たり、このたびの総会で新役員の選出を行った。当組合は選任制の方法を採用しているので、総会の開催に先立って推薦会議で役員候補者を決定したが、推薦会議の構成員である推薦委員の中に、推薦会議の進行を理由もなく妨害する言動をとる者がいるとの指摘を受けた。
    推薦委員にふさわしくない者がいる場合、解任することは可能か。可能とすればどのような方法によるべきか。
    推薦委員は通常、役員改選ごとに招集される推薦会議直前に選出されるので、解任の問題が生じる余地はないと思われるが、役員の任期に合わせて任期を設けた場合には、解任の問題を生じる可能性がある。この場合は、推薦委員を選出した方法に準じて選出母体の組合員の過半数の同意を得て解任すべきである。
  • (7)推薦会議における委任状(代理)出席の可否について
    役員改選期に当たり、役員候補者を選定するために推薦会議を招集したが、会議当日推薦委員の出席が過半数に達せず、流会となった。
    再度開催の手続をとり、有効に成立するように努めるが、再び同様の結果とならないとも限らないので、総会におけるように委任状出席により定足数を確保したいと思うが可能かどうか。
    推薦委員は、地域、業種等の組合員によって選出され、役員候補者の決定を委任されたものであり、推薦委員の人格に重きがある。このような推薦委員の性格上、その職務行為は他人に委任することはできない。また、書面による推薦会議への出席についても、推薦委員の職務が推薦会議に出席し、意見陳述することにより、役員候補者の原案を作成するという性格上、書面による出席は認められない。
  • (8)推薦会議で決定する役員候補者の数について
    選任による方法で役員を選出する組合が推薦会議において決定する役員候補者の人数は、役員の定数とするのか、又は定数を超えた人数の候補者を選び、総会で定数分の役員を決定することとするのか。
    推薦会議で決定する役員候補者の数は、定数に規定されている役員定数である。定数を超えた候補者の決定は認められない。すなわち、役員の定数を定款で「何人以上何人以内」と上限下限で定めている場合は、推薦会議で推薦する役員候補者は、上限で決定することになる。
    何となれば、役員の定数を「何人以上何人以内」と幅を持たせた趣旨は、その範囲内で選出役員数を適宜定めればよいとしたのではなく、「何人」というように確定数で規定しておくと、年度途中で欠員となった場合法律上の補充義務との関係で困る場合が出てくるために認められたものであって、当該組合において必要とする役員の定数はあくまでも上限に掲げた数と考えるべきものだからである。

  • (9)推薦委員が役員候補者となることの可否について
    役員改選期に当たり、選任制を採用している当組合では去る○月○日に推薦会議を開催し、役員候補者を決定したが、候補者の中に推薦会議の構成メンバーである推薦委員が数名含まれている。
    推薦委員が役員候補者となることは問題ないか。
    推薦委員が役員候補者となることは差し支えない。                                                                  
  • (10)推薦会議の議事録の署名について
    当組合は役員を選任制により選出することとしているので、先日推薦会議を開催して役員候補者を決定した。                              
    ところで、推薦会議については議事録を作成しておかなければならないとのことであるが、総会及び理事会の議事録の署名人については前者は商法第244条第2項に、後者は商法第260条ノ4第2項に、それぞれ出席した理事が署名することと規定されている。
    しかし、推薦会議の議事録の署名については特に規定がないが、総会や理事会の議事録に準じて、出席した推薦委員全員が署名することと解釈すべきか。
    推薦会議の議事録は、議長が作成し、その署名は、議長及び出席した推薦委員のうちから予め定めた議事録署名人最低限2人によって行うものとされている。           
  • (11)推薦会議で決定した役員候補者を理事会で修正、拒否することについて
    役員選任規約例第4条第3項では、役員候補者名簿は「理事長に提出」とあるが、理事長及び理事会は、推薦会議で選定した役員候補者を拒否する権限を持っているのか。それとも全く拒否できないのか。
    推薦会議で決定された役員候補者を理事長及び理事会で拒否できることになると、実質的に理事会が役員候補者を決定することになり、推薦会議まで設けて、役員選任における民主制を担保しようとした趣旨が失われることになる。
    したがって、理事長及び理事会は推薦会議において決定された役員候補者を拒否することはできない。
    この点を明確にするため、定款参考例においても役員の選任に関する総会の議決は「推薦会議において推薦された者について行う」旨を定めるようにしている。

  • (12)選任制採用組合における議決によらない場合の総会の書面議決権行使の取扱いについて
    本組合では選任制によって役員を選出することとしている。
    本年度は役員改選の時期であり、総会の開催案内をしたところ、書面をもって予め総会の前に議決権を行使している組合員がいる。総会の当日、出席者の議決以外の方法例えば挙手などによることとなった場合、前もって書面議決をしていたことは無効になるのか、それとも議決以外の方法の多数決の数に反映され加算されるのかどうか。
    選任制を採用した場合、議決以外の方法を採用しようとする場合には、予めその点についても書面により賛否を徴しておく必要がある。その場合の方法としては、総会の開催通知に「挙手等議決以外の方法を採用することになった場合には、書面議決書で行った賛否の判断は、そのまま議案に対する意思表示となる」といった文書を予め通知しておけばよい。
  • (13)選任制を採用しようとする組合の創立総会での役員選出方法について
    組合設立の準備が整い、約2ヵ月後に創立総会を開催することとなった。                                            
    当組合の定款では役員を選任制で選出することとしているが、設立後の役員選出に当たって選任制をとることは可能か。                                        
    設立当時の役員の選出は未だ成立前の組合の設立手続の1つとして行われるものであり(中協法第35条第3項参照)、したがってその選出方法についても必ずしも定款規定に従う必要はなく、法が定める方法(中協法第35条第3項、第7項~第12項)に従って行えばよい。
    しかし、定款上役員の選出方法について選任制を採用しようとする組合にあっては、当初よりこの方法によって役員を選出することが望ましく、その場合選任制について定款並びに規約が規定する手続に可能な限り従って行うように指導すべきである。
    ただし、創立総会以前において選任制を実施するために必要な準備手続(推薦委員の選出、推薦会議の招集等)を完全に履行することは困難と考えられるので、役員候補者は発起人が推薦する等ある程度の修正は認められるべきである。
    したがって、創立総会において役員の選出方法として選任制を採用する組合には、概ね次の手順に従って行えばよい。
    ①発起人による役員候補者の決定
     ↓
    ②役員候補者の承諾
     ↓
    ③役員候補者名簿の作成
     ↓
    ④設立同意者に対する役員候補者名簿の送付(創立総会開催通知)
     ↓
    ⑤創立総会における役員の選出

理事会

  • (1)理事会招集期間の短縮について
    本組合の理事会の招集通知期間は、「会日の7日前」であるが、組合の実情によってこれを「会日の5日前」あるいは「会日の3日前」等に改めてよいか?         
    理事会の招集通知については、中協法第42条において商法第259条ノ2が準用されているが、同条但し書によって期間の短縮が認められているので、組合の場合も短縮することは差支えない。
    なお、短縮する期間については、組合の地区の広狭等によっても異なるが、少なくとも通知を受取ってから議案について研究する位の余裕のあることが適当と思われる。
    また、書面議決を採用している場合は、郵便によって充分組合に到着する期間を加える必要がある。
  • (2)理事の理事会招集請求権を制限することの可否
    理事が県下全域にわたって30余名いる協同組合においては、1~2名の理事の意思によって理事会招集の請求がなされることは組合運営上混乱を生ずる恐れもあり好ましくないとして、これが招集請求を理事の3分の1以上の同意を必要とするよう定款変更を行いたいとする組合があるが、差し支えないか。
    中小企業等協同組合における理事会の招集については、本来、原則として各理事に招集権があるところ(商法第259条準用)、定款参考例第44条第1項においては、特に招集権を理事長に限ったものであり、質問のように招集請求権をさらに限定するよう定款を変更することは中小企業等協同組合における各理事の基本的権限を侵すことになるものと考える。
  • (3)理事会の定足数を定款で変更することについて
    現行中協法第36条の3によると「理事会の議事は、理事の過半数が出席し、その過半数で決する」と規定されているが、本件を定款で「理事会の議事は理事の3分の2以上が出席し、その過半数で決する」と定め得るか?また、上記のとおり定款に規定した場合、理事の過半数が出席し、その過半数で決した議事は有効と解釈されるか?
    ご指摘の如く中協法で「理事会の議事は、理事の過半数が出席し、その過半数で決する」と規定しているが、定款で「理事会の議事は理事の3分の2以上が出席し、その過半数で決する」と加重規定しても差支えないと解される。
    過半数出席を規定した趣旨は、理事会の成立には理事全員の出席は望めないにしても、その性格上、少なくとも過半数の出席は必要である。しかも法は組合のあらゆる業種、業態に普遍的に適用されるものであるために、その最低必要限度である過半数出席を規定したものと解される。
    このような趣旨から、ある特定の組合が、組合の運営に重大なる影響を与える理事会であるから、過半数出席では万全を期し難く、そこで3分の2以上の出席をもって慎重に事を運びたいとする場合、これを否定すべき積極的な理由は見出せない。
    したがって、理事会の定足数を緩和することは当然できないが、これを加重することは甚だしい弊害が生じない限り差支えないものと解される。
    また、法で過半数とあるからと言って、定款で3分の2以上出席と規定した以上は、3分の2に満たない出席では理事会は成立しないと解する。
  • (4)理事会の権限の一部委任について
    理事会の権限の一部を、理事会の決議に基づいて他の機関(対策委員会)に委任できるか?
    某組合では、退職金の支払及びその金額については、理事会で決議を行い、その支払方法、時期、金額の細部決定について、理事会が対策委員会に委任しているが、この場合対策委員会の決定事項の法的効果について(対策委員会は、理事長も含め理事4人、監事1人)。
    総会(総代会)又は理事会に属することとされた権限は、それぞれの機関に専属するものであって、法に別段の定めのない限り、他の機関に委任することはできないものと解する。        
  • (5)理事会議事録の記載事項について
    当組合では、退職金を支出すること及びその金額を理事会で決議した事実はあるが、議事録には、組合の内部事情によってこの点を省略している。
    この場合議事録に記載すべき事項を記載しなかったものとして中協法第115条に該当するものと考えられるが、どうか?
    更にこの場合、実際上は、決議を行っているのであるから、当日の出席理事全員の同意により、議事録の補追を行うことができるか?
    理事会において決議した事項を議事録に記載しなかったことが、故意又は重過失によるものであれば、貴見のとおり中協法第115条第5号の規定に抵触するものと解される。
    また、議事録の補追については、出席理事全員の同意があればできるものと解する。
  • (6)理事会議事録の記載内容及び理事会の公開、傍聴について
    1.理事会の議事録には、議事の内容の全部を記載し公開する必要があるか。                     
    2.理事でない組合員が理事会を傍聴することの可否について。                                  
     
    1.議事録に記載すべき事項の内容及びその詳密の程度は、理事の責任関係を明らかにするに十分であることを要し、かつ、これをもって足りるものであり、また、公開する必要があるかいないかについては、中協法第39条第2項に規定されているとおり、理事会議事録は、各事務所に備え置くことが義務づけられており、組合員及び組合の債権者はいつでも理事に対し閲覧又は謄写を求めることができることになるので、これに反することはできない。
    2.理事会は必ず非公開でなければならないという積極的な理由はないと考える。
  • (7)理事の代理人による理事会出席について
    組合の理事が理事会に出席できない時は、代理人を参加させることができるか?                       
    組合の理事は個人的信頼に基づき選任され、かつ、組合と委任契約を締結した者であるから、その権利の行使及び義務の履行は、理事みずからの意思及び行為として行われるべきである。また、中協法第36条の3第2項においては、組合が特に定款に定めた場合には書面によって理事会の議決に参加することができるとしていることの反対解釈から、理事は、代理人によって議決権を行使することはできないと解する。
  • (8)理事会に欠席した理事の責任について
    現理事で、理事会に出席するつもりだったが、急に主張等の都合で出席出来ず、また書面議決書も提出しなかった場合、理事会の決定事項については賛成したものとみなされるか、或いは無関係とみなされるか?
    もし賛成したものとみなされるならば、反対の意思表示をしない限り出席しようが、欠席しようが同様であるとの解釈になるのではないか?
    理事会に欠席した者は、決定事項について賛成したものとは看なされず、したがって、その決定の段階までは責任はない。
    しかし、理事は、組合の業務について、総合監視の責任があり、理事会が開催されたこと、また当該決定がなされたことを知っていながら、決定から執行までの段階で、これを止むべき何らの措置をとらなかったときは、理事としての一般的任務懈怠の責任は免れ得ない。
  • (9)出席理事の一部が承認捺印しなかった理事会議事録の取扱いについて
    理事会議事録は出席理事全員の承認がなければ議事録として通用しないものかどうか?                 
    不承認の理事(通常1/8~1/10名)からは承認捺印がなく議事録内容の調整修正が困難な場合の議事録の取扱いについてご見解をご教示賜りたい。
    理事会の議事録については、中小企業等協同組合法第42条で、商法第260条ノ4を準用しており、同条第2項によると「議事録ニハ議事ノ経過ノ要領及其ノ結果ヲ記載シ出席シタル理事之ニ署名スルコトヲ要ス」となっている。
    このように理事会の議事録は、理事会議事の記録であって、出席理事の署名は、記録された内容が事実と相違ないことを証明するためのものであるから、出席理事の何人かが署名を拒否し、その署名捺印がないからといってその議事録が直ちに議事録としての意味を失うものではなく、当該議事録の内容が事実に反していない限り、理事会の議事の証拠となるものと解する。
    したがって、出席理事は議事録が事実に反しない限り署名を拒否すべきものではなく、もし理由なく署名を拒否した場合には当然のことながら法律に定められた忠実義務違反となる。
    なお、理由なく署名を拒否する理事がある場合は、不承認理事の署名のない議事録の作成をもって法律上の議事録作成義務は履行されたものと解する。

総会

  • (1)役員任期満了後の総会招集方法について
    理事の任期満了後の総会招集は、どのように行ったらよいか?                             
    (特に問題となるのは、理事改選の総会招集についてである。)                           
    前理事任期満了後における総会招集は、中協法第42条により役員について商法第258条第1項(欠員の場合の処置)が準用され、退任等により役員の員数が欠ける場合は、前役員(任期満了又は辞任による退任に限る)は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有するから、前理事が行うこととなる。
  • (2)総会の招集請求方法について
    中協法第47条第2項の規定に基づき総組合員の5分の1以上の同意を得て、総会招集の請求を理事会に提出したところ、その後組合員が増加し、5分の1を満たさなくなったが、5分の1の要件は、理事会に請求した時点によって判断すべきか、それともその後の増員数を考慮すべきか?
    なお、理事会への請求時点でよいとすれば、臨時総会の招集通知は理事会請求当時の組合員のみ発すればよいか?
    中協法第47条第2項の規定に基づき、組合員が組合員総数の5分の1以上の同意を得て臨時総会の招集を請求する場合には、その請求の日における組合員総数の5分の1以上の同意があれば有効とされ、その後、組合員が増加しても当該請求は適法になされたものと解する。
    なお、総会招集の通知については招集通知を発送する時点における組合員のすべてについて行う必要がある。
  • (3)総会招集請求の要件について
    総組合員の5分の1以上の者が、各人毎に同一書式による総会招集要請書を代表理事宛提出してきた。
    これには、1.組合今後の運営方針を組合員外の特定の者に委任する件、2.役員改選の件が記載されている。
    この場合に、
    1.会議の目的たる事項は示されているが、中協法第47条第2項の招集理由書、同第41条第3項による改選の理由書がないので却下して差支えないか?
    2.組合の業務執行のすべてを員外者に委任することは、法第38条の2の建前よりしていかがか?
    当該請求は、貴見のとおり招集の理由あるいは改選の理由が不充分であり、これを却下して差支えないと考える。
    なお、総会招集の請求は、組合員が他の組合員の同意を得て行うこととなっているので、同一書式により各人毎の同意を得ることは差支えないが、各人毎に直接組合に請求することは適当でない。また、業務執行のすべてを員外者に委託することについては、当該員外者が代表理事であれば差支えないと考える(中協法第35条第4項及び同法42条において準用する商法第78条)。
    ただし、これは、あくまで業務執行の実行の段階でのものであり、組合の運営方針あるいは事業計画の決定等は理事会あるいは総会の権限であって、このような事項を員外者に委託することは中協法違反となり、また、当然総会招集請求却下の理由となる。
  • (4)総会の議長を複数制にすることについて
    総会の議長は、必ず1人でなければならないか、その理由は?                                     
    複数でもよいとすれば、実際問題としてその運用を如何にすべきか?                                   
    総会の議長については、中協法に必ず1人でなければならないという規定はないので、実施組合は皆無と思うが、複数制をとっても法律違反にはならないと解する。
    しかし、議長は、会議体としての総会を代表し、その議事を主宰する職務を有するものであるから、これを複数にすることは議長団内部の意思統一や調整が必要となり、実際問題としてその統一が困難となる場合も考えられ、議事の円滑な進行を阻害することともなりかねないので、1人であることが望まれる。
    特殊の事情等により複数制をとらざるを得ない場合には、できるだけ数を少なくするとともに、議長間で合議制をとるようにすることが必要であり、また、議長間で職務の分担が可能な場合はそれを明確に規定するとか、可否同数の場合の決定権の行使を考慮し議長の意思統一が円滑でないと予想されるときはこれを奇数とすることなども考慮すべきであろう。
  • (5)瑕疵がある場合の総会議決の効力について
    次のような瑕疵がある場合の総会議決の効力、及び行政庁のとるべき措置をご教示願いたい。なお、当該議決に基づく定款変更については、認可済みである。
    1.中協法第10条第3項の限度を超える出資を架空組合員名義に分割するとともに、当該架空組合員の書面議決を議決数に加えた。
    2.持分払戻済の脱退者について、書面議決書を作成、議決権数に加えた。
    3.中協法第53条の特別議決に適合させるため、1、2の作為により法定議決権数を確保する体裁を整えた。
    4.ただし架空組合員の出席数及び議決権数を除いても、法定要件は満たしている。
    総会の議事において、架空組合員の書面議決を議決数に加える等、法令に違反する事実があったとしても、行政庁による定款変更の認可に当たっては、その事実を知り得なかったものであり、議事録等必要書類により適当と認めて認可したものであれば一応形式的には適法に認可されたものと解する。
    しかしながら、上記法令違反を発見した場合は、中協法第54条において準用する商法第247条の規定により組合員又は理事は議決の日から3月以内に議決取消の訴えを提起することができることになっているが、かかる法令違反は、刑法上の私文書偽造にも該当するおそれがあり、行政庁は、かかる法令違反については、中協法第106条の規定による業務改善命令を発動する等速やかに所要の措置を講ずる必要があると考える。
  • (6)総会の延期・続行手続きについて
    総会の会日中に、何らかの理由により議事を終了できないときは、他の日に延期または続行することができるということを聞きました。
    総会の延期と続行とはどのように違うのでしょうか。また、次のような手続きに問題はないでしょうか。
    1.議事の進行状況からみて、会日中に議事を終了しないことが明かな場合、議場に諮らず、議長単独の判断で総会続行の決定をすることができるのでしょうか。
    2.総会の席上では、会場確保等の関係から後日の総会の日時や場所を決定することが難しいと思われます。
     日時、場所の決定を議長に一任し、決定次第速やかに組合員に連絡することとしても問題はないでしょうか。
    3.延期又は続行する総会の開催日時を、場所の確保等の理由から、当初の総会日から1ヵ月程度先の日に定めても構わないでしょうか。
    総会においては延期または続行の決議をすることができ、その場合改めて総会招集の手続きは要しないとされています(組合法第54条(商法第243条準用))。
    ここにいう延期とは、総会の成立後、議事に入らず、会日を後日に変更することをいい、続行とは、議事に入った後、時間の不足その他の事由により審議未了のまま総会を中断し、残りの議事を後日に継続することをいいます。この延期または続行の決議に基づき後日開かれる総会は通常、継続会といわれています。
    このような制度が設けられているのは、何らかの都合により総会を延期または続行しなければならなくなった場合、総会の招集手続きを繰り返さなければならないという煩わしさが生じ、また、招集手続きに必要な10日間は総会を開くことができず、予定の審議も速やかに終了することができないという不都合が生じることを避けるためです。
    1.総会の延期または続行は総会の決議を要件としていますから、総会の決議を経ず、議長の判断のみで延期または続行を決定することはできません。
     ただし、この決議は議案そのものに関する決議ではなく、一種の議事進行に関する決議ですから、あらかじめ招集通知に議題として記載されている必要がないことは当然です。
    2.継続総会と当初の総会とは同一性を有していなければなりません。
     そのためには、総会の延期または続行の決議において、原則として、後日の継続会の日時及び場所を定めることが必要で、期日を定めず、単に総会を後日に延ばすときには、総会は同一性を保ちえず、改めて招集通知が必要になるとされています。
     しかし、実際上会場の都合などで、総会の席上では具体的に決定し得ない場合も有り得ます。その場合、総会が日時、場所の決定を議長に一任し、総会終了後速やかに通知せしめることを
     決議した時には、総会において日時、場所を定めたものとして有効な延期または続行の決議がなされたものと解することができます。なお、この場合議長の通知は、延期または続行の趣旨からして、当初の総会の出席組合員(書面、代理を含む)に対してすれば足りると解されています。
    3.この制度が設けられた趣旨からして、継続会は当初の総会の会日から相当の期間内に開かれることを要します。なぜなら、相当の期間経過後であれば、総会招集の手続きをすることが十分可能であるからです。
     このような解釈から、相当の期間内というのは、総会招集通知に必要な10日間以内と解するのが妥当とされています。
     1カ月も先の日時に開催することは、明らかに継続会とはいえず、改めて総会招集の手続きが必要になると考えられます。
  • (7)総会議事録の署名者について
    総会終了後の各種手続きのうち、議事録の署名者につき、登記所の見解に相違が見られるので、これについてはどのように考えたらよいのか貴見をたまわりたい。            
    総会議事録には、議長及び出席した理事が署名しなければならない(中協法第54条で商法第244条第2項を準用)が、署名すべき理事が誰であるかについては、役員任期の定款規定方法、総会開催日、前任者の退任時期、後任者の就任時期等により、場合を分けて考える必要がある。
    1.定款規定の役員任期を「何年」と定めている場合においては、以下のとおりとなる。
    (1)総会開催日が、前任者の任期満了前であって、前任者から①「総会開催日前」に辞任する旨の辞任届が提出されている場合には、前任者には後任者の就任時までの残任義務があり、一方、後任者が選出されると同時に就任を承諾すると、新旧両理事に議事録への署名を求めることとなる。
     次に、前任者から②「総会開催日」、③「総会終結時」をもって辞任する旨の辞任届が提
    出されている場合には、総会で後任者が選出され、しかもその者がその総会に出席していた
    としても、就任を承諾できるのは、総会開催日翌日以降あるいは総会終結後となるため、後
    任者には議事録への署名義務はなく、それぞれ旧理事が署名することとなる。
     さらに、④辞任届が提出されていない場合には、後任者の就任は、前任者の任期満了後に
    なるため、旧理事に署名を求めるほかはない。
    (2)総会開催日が前任者の任期満了日と一致する期日であって、前任者から①「役員選挙直前」に辞任する旨の辞任届が提出されており、しかもその後任者が同一の総会で選出され、直ちに就任の承諾をした場合には、新旧両理事が署名することとなるが、②「総会終結時」に辞任する旨の辞任届が提出されている場合、又は③辞任届が提出されていない場合には、後任者の就任は、総会終結後あるいは総会開催日翌日以降となり、議事録への署名の必要がないため、それぞれ旧理事が署名することとなる。
    (3)総会開催日が前任者の任期満了後であるときには、前任者には残任義務が生じているが、この場合、後任者の就任承諾の時期が、①「総会での役員選出時」であるときには、新旧両理事に署名義務があり、②「総会終結後」又は③「総会開催日の翌日以降」に就任を承諾する場合には、旧理事が署名することとなる。
    2.定款規定の役員が「何年又は就任後第何回目の通常総会終結時までのいずれか短い期間」と定められている場合には、以下のとおりとなる。
    (1)「何年」到来前に総会が開催される場合には、前任者の任期が「総会終結時」となり、旧理事が署名することとなる。
    (2)「何年」到来後に総会が開催される場合には、前期1-(3)と同様の取扱いとなる。
  • (8)総会議事録の署名者
    当組合では、このたび通常総会が開催され、役員の改選が行われました。
    その結果、役員のほぼ全員が入れ替わることとなり、改選された者は全員その場で就任を承諾しました。
    総会の議事録には、議長と出席した理事が署名することとなっているようですが、今回の場合は、改選前の理事(旧理事)が署名することとなるのでしょうか、それとも改選後の理事(新理事)が署名することとなるのでしょうか。
    なお、当組合の定款には、役員の任期について「2年又は就任後において開催される第2回目の通常総会の終結時までのいずれか短い期間」と規定されています。
    貴組合の定款の役員任期の規定は、「就任後の2年」と「就任から就任後開催される第2回目の通常総会の終結時までの期間」のいずれか短い期間が役員の任期となるというものですから、第2回目の通常総会が就任後2年以内の時期に開催された場合は、その総会の終結時で任期は終了し、2年を超える時期に開催された場合は、就任から2年後の応答日をもって終了することとなります。
    したがって、貴組合の場合、この役員任期規定との関係から、その通常総会が就任後「2年を超えた」時期に開催されたのか、「2年以内」の時期に開催されたのかにより、議事録への署名者が異なってきます。
    1.まず2年の就任期間を経過後に通常総会が開催された場合は、既に改選前の理事(以下「旧理事」という。)の任期は終了していますが、残任義務規定(中小企業等協同組合法第42条で商法第258条第1項を準用)によって後任の理事が就任するまで引き続き理事としての権利義務を有することとなるので、署名義務があります。
     また、通常総会において改選された理事(以下「新理事」という。)が議場において就任承諾をした場合は直ちに就任の効果を生じることとなるので、新理事にも同時に署名義務が生じることとなります。
     つまり、この場合は、新旧両理事が議事録に署名することとなります。
    2.これに対して、旧理事が就任して2年が過ぎないうちに通常総会が開催された場合は、旧理事の任期は、その通常総会が終結する時まで続くこととなりますので、新理事はたとえ、議場で就任承諾をしても、その総会終結以後でないと就任の効果は生じないこととなり、署名義務も生じず、旧理事のみが署名することとなります。
     なお、役員任期の定め方には、貴組合のような場合の他に「〇年」という確定年の定め方もありますが、この場合も総会開催時期、辞任届の有無、辞任届の内容等により、総会議事録の署名者も異なってきます。
  • (9)議長被選任資格の法人の代表者とは
    議長被選任資格についての定款例第39条「組合員たる法人の代表者」の「代表者」とはどういう意味か?                                             
    過去の定款例において、単に「組合員のうちから選ぶ」とあったのを、表現の明確を期するため改正し「組合員たる法人の代表者」を加えたものであって、「代表者」とは代表権を有するものを指し、そのほかに特別の意味はない。

総代・総代会

  • (1)総代会の議決事項について
    中協法第55条(総代会)については同条第6項において総代会については総会に関する規定を準用するとあり、第7項において総代会においては前項の規定にかかわらず総代の選挙(補欠の総代の選挙を除く。)をし、又は第53条(特別議決)、第2号(組合の解散又は合併)若しくは第4号(事業の全部の譲渡)の時効について議決することができないと定められているが、事業協同組合の場合、法令、定款に違反せず総代会において定款変更により地区の縮小(資格の喪失により大量脱退を生ずることとなる)を議決した場合、一部組合員に対する基本的権利を侵害するものと思われるが貴見を承りたい。
    総代会は総会に代わるべきものであり、総代会については総会に関する規定が準用されているので、原則として総会の権限に属するあらゆる事項について議決し得るわけである。ただし、解散、合併若しくは事業の全部の譲渡の議決又は総代の選挙(補欠選挙は除く。)だけは行うことはできないこととなっている。
    したがって、地区の縮小により一部組合員に対する基本的権利を侵害するのではないかという疑義については、法が特に地区の縮小について特別の手続を必要とする旨を規定していないことから定款の変更のみをもって足りると解する。
  • (2)総代制をとる組合が役員選挙を総会で行うことについて
    総代制をとる組合において、役員の選挙だけは総会で行う旨定款に規定してよいか。                                     
    総代会は、総会に代わるものとして、特別の議決事項を除き(解散、合併等の議決)その権限に属する事項については組合の最高決定機関と解すべきである。しかし総代会は定款によって設置されたものであるから、その定款の定めにより、総代会の権限に属すべき事項のうち、特に一定の事項を限って総会の権限に属させることは可能である。したがって、役員選挙を総会において行うことを定款に規定することは差し支えない。
  • (3)総代会設置の定款規定方法について
    信用協同組合が総代制をとるに際し、県内の数組合は、定款に「本組合は総会に代わる総代会を設けることができる」という規定に基づいて、その後、設置に際しては総代会の議決を経て設けている。このことについては、従来、県内各法務局において適当に総代会が設けられたものとして、その後の総代会において諸議案を議決し、登記を要するものについても、適法に議決成立したものとして、各法務局において受理され今日に至っている。ついては中協法の関係条文に照らし、従来「本組合に総代会を設けることができる」と規定されている各組合の定款を「本組合に総代会を置く」に改める必要があるか否かについて貴見を承りたく照会する。なお定款改正を要する場合は、その理由及び法的根拠、また「本組合に総代会を設けることができる」旨の規定の合法性に疑義がある場合も併せてその理由及び根拠についてお知らせ頂きたい。
    中協法第55条において「組合員の総数が200人を超える場合は、定款の定めるところにより、総代に代わるべき総代会を設けることができる」と規定していることから、総代会は必要設置機関ではなく、定款上の任意機関である。したがって、組合は総代会の設置を義務づけられているのではなく、設置しても設置しなくてもよいわけであるが、設置する場合はその旨を明確に規定しなければ、その組合が総代会を設置しているのかどうか、判然としないのであって、「設けることができる」というようなあいまいな規定でなく、明確に規定されたい。
  • (4)総代定数の定款記載方法について
    1.総代の選挙は定款に委任されているが、定款に規定しなければならない事項はなにか。                 
     なお、定款の規定を別記のとおりとした場合違法となるか。                                                          
    2.総代を地区ごとに選挙する場合、その地区の数は次のどれによるべきか。                       
      ① 1地区                                           
      ② 2地区                                            
      (別記)定款規定                                         
     「総代は別に定める総代選挙規定の定めるところにより、組合員のうちから選挙する。」          
             
    1.定款が組合の基本的な規則であることにかんがみ、総代選挙に関する選挙方法、定数、
    任期等の基本的な事項は法律において定款に規定することとされているので、必ず記載しなければならないが、具体的な事項に関しては規約において定めて差し支えない。設例の記載例であっても必ずしも違法とはならないが、上記の点からできるだけ具体的に記載することが望ましい。
    2.総代選挙の地区に関しては、法律上の定めはなく、1地区とするか、2地区とするかは
    いずれでもよく、地区を選定するに当たっては、全組合員の意思が公平に総代会に反映さ れるものであればよいので、そのように指導されたい。
  • (5)総代の定数の決め方について
    協同組合連合会の総代定数の決め方として、次の方法は適法か。
    1.各都道府県を1選挙区ごとに選挙すべき総代の数は、選挙者数5会員までにつき1人の割合とする。
    2.上記方法を改正し、1選挙区10会員までにつき1名の総代、あと同数を連合会に対する出資額、預金又は貸出の割合に応じて配分する。
    総代会は、総会に代わるべき機関であるから、会員中の特定の層に偏った構成になることは好ましくなく、その実情に応じて会員の利害関係を十分に考慮したうえで、総会の構成にできるだけ近い構成をとることが望ましい。
    この意味で、総代の数を各都道府県を1選挙区とし、選挙者数5会員までに1人の割合で定めることは何ら公平を失するものとは考えられない。
    しかしながら、会員の出資額、預金額あるいは貸出額の金額的要素を加味することは、全員が総会において、それぞれ1個の議決権又は選挙権を行使できると同時に総代の被選挙権資格を有することに反し、また、総代会の構成を出資額、預金額あるいは貸出額の多い会員に偏ったものとし、出資額等の少ない会員の意思を十分に反映しない結果となるので、総代会の性格上適切なものでないと考えられる。
  • (6)組合員数が201名を割った場合の総代会の存続について
    私どもの組合では、200名を超える組合員を擁していたため、設立当初から総代会制を採用してきました。                                     
    しかし、経済情勢の変化等の諸要因により、組合員企業の転・廃業が相つぎ、現在組合員数は200名となり、総代会の存続要件(200超)を欠いてしまいました。
    今後もさらに、組合員の脱退があることが予想されることから、新規加入者の勧奨努力は行ってはいるものの、当分の間は存続要件を満たすことは難しい状況となっています。
    このように、組合員数が200名以下に減少した場合、定款は総代会のままとなっていますが、総会と総代会のどちらを開催すればよいのでしょうか。
    総代会に関しては、中小企業等協同組合法第55条(中小企業団体の組織に関する法律では第47条で準用。)に規定されていますが、企業組合、協業組合を除く組合は、組合員総数が200名を超える場合には、定款の定めるところにより、総会に代わるべき総代会を設けることができることになっています。
    貴組合では、既に組合員数が200名となっており、総代会の存続要件(200名超)を欠いているので、総代会は設置しえない状態にあります。
    これは、たとえ定款により総代会を設けていても、組合員が減少し、法定数に達しなくなったときは、総代会は当然に機関としての機能を失うこととなるからです。
    したがって、現行の定款が総代会規定のままになっていても、現在の状態が続く限り、議案審議は総会で行うこととなります。
    そのため、現在、組合の実態と定款とが一致していないわけですから、総代会制廃止にかかわる定款変更を行うか、あるいは、すみやかに組合員を増加して存続要件を満たすことが必要となります。
  • (7)連合会の総代の資格について
    本会の総代の選挙規定では、
    「第2条 総代は会員たる組合の業務を遂行する役員のうちから、選挙区毎に選挙する」
    となっている。
    本件について、業務を執行する役員と具体的に指していることは、その業務執行に当たる固有の者が総代であるのではなく、単に組合(法人)の代表者を意味しているに過ぎず、総代はあくまで組合であると解しているが、間違いないかお伺いする。
    中協法第55条第2項の規定により総代は組合員のうちから選挙されなければならないことになっている。このことから連合会の場合は会員たる組合それ自体が総代となるのであって、会員たる組合の役員が総代となるのではない。したがって総代である組合の役員が辞任又は死亡等により欠員となっても総代の補欠選挙を行う必要はない。
  • (8)創立時の総代選出方法について
    総代制をとり、総代会において役員を選挙する組合にあっては、創立当時の役員も総代会で選任しなければならないか。                   
    総代制をとる組合にあっても、創立当時の役員は創立総会において選挙しなければならない(中協法第35条第3項)。なぜなら創立当時においては、組合設立手続上不可能だからである。
  • (9)総代任期の規約による延長の是非
    某信用組合において、総代の任期を定款で2年と定めているにもかかわらず、規約において任期後もなお1ヵ月は残任し得る旨定めているが、有効か。   
    総代の任期は、理事の如く残任義務の法定規定がないので、定款所定の任期をもって総代はその資格を失う。したがって、規約をもって残任を規定することは、定款違反であり無効である。
  • (10)総代の辞任届の効力について(1)
    総代会の議決により、大多数の総代が辞任届を出した場合、総代会は開けないか。また、それは受理されたと解してよいか。                 
    総代の辞任届を理事長が正式に受理した場合は、その総代は辞任したこととなり、その後に開かれた総代会は、適法に開催されていないので議決取消の訴えの事由となるものと考えられるが、総代の辞任届を理事長が単に預かったものであるときは、総代は辞任したことにならず、その後に開かれた総代会の議決はもちろん有効である。
    なお、総代会で総代の辞任を議決したことは、単なる申し合わせに過ぎないので、辞任届が受理されたかどうかの判断の問題とは何等関係はない。
  • (11)総代の辞任届の効力について(2)
    総代から辞任届が提出された場合、組合が受理すればその日をもってその組合員は総代たる権利義務を失うと解してよろしいか。
    また、辞任届の受理は、総代会に諮ることなく理事会で決定してもよろしいか、あるいは代表理事の権限で受理してよろしいか。
    総代が辞任届を提出し、組合がそれを受理したのであれば、その総代は辞任したことになり、総代たる権利義務は失うものと解する。総代は、いつでも辞任できるものであるから、辞任届が正式に受理されたものであれば当該総代は辞任したことになる。この場合の受理者は、代表理事で差し支えないと解する。
  • (12)総代の代理人を制限することについて
    中協法第55条第6項に、総代会については総会に関する規定を準用するとあり、この場合において第11条第2項中「その組合員の親族若しくは使用人又は他の組合員」とあるのは「他の組合員」となっているが、これを定款を以って次のとおりに致したいが、どうか。
    「総代の代理人は総代でなければならない」
    総代会における代理人については、中協法第55条第6項において規定されているところであるが、これは議事の責任ある運営を確保するため、代理人及び代理し得る人数について総会における場合よりも制限を加えているものであり、また、代理権行使の手続方法を定款に委任している趣旨から、代理人の範囲、代理人が代理し得る組合員の数等を制限することは許されるものと解する。
    したがって、貴見のように、定款をもって総代の代理人を総代たる組合員に制限することは差し支えないものと解する。
  • (13)総代の代理権とリコールについて
    私の所属する事業協同組合は、県一円を地区としており、組合員数も多いため総代会制を採用しています。私も総代の1人に選ばれており、これまで総代会には必ず出席していました。
    しかし、先日開催された総代会には、どうしても都合がつかず、妻に代理人として出席してもらいました。
    総代会から帰ってきた妻に聞くと、妻は代理人にはなれないといわれ、傍聴だけをしてきたとのことです。
    私は妻は親族なのだし、委任状も持たせたので代理人としての資格は十分あると考えていました。親族であっても代理人にはなれないのでしょうか。
    また、せっかく総代に選ばれながら、総代会に出席しなかったことを理由に、総代をリコールされることはありませんか。
    総代会は、組合員数が200人を超える大規模な組合において、定款の定めにより総会に代わって最高意志決定機関として設けることができる制度です(組合法第55条)。
    総代会の構成員である総代は、組合員数の10分の1以上(組合員1000人を超える組合は100人以上)の確定数を定款で定め、1人1票の無記名投票により組合員の地域的分布、業種構成などに応じて組合員を適切に代表するよう組合員のなかから選ばれます。
    総代会については、総会に関する規定が準用されています(組合法第55条第6項)が、代理人の範囲と人数については総会よりも制限されています。
    総会においては、その組合員の親族若しくは使用人又は他の組合員が4人まで代理することができます(組合法第11条第2項、第4項)。
    しかし、総代会において代理人となれるのは他の組合員のみであり、人数は1人だけです(組合法第55条第6項)。
    総代会制度のもとでは、総代は組合員の代表者であるという性格から、代理人は親族や使用人よりも自らが代表した他の組合員(他の総代でもよい)であることが適当といえるからです。
    また議事の責任ある運営を確保するため、代理しえる人数についても総会における場合より制限が加えられています。
    このように、総代会においては組合員の妻は「他の組合員」ではないので代理権はないということになります。
    総代に選ばれた人は、総代の性格を十分認識する必要があります。
    なお代理人の資格を更に限定して例えば他の総代にのみ代理人資格を与えることは、定款の規定に委ねられている事項ですから、定款でそのように定めれば可能です。
    次に総代のリコールについてですが、組合法には何ら規定していません。
    組合法第41条では少数組合員の権利として役員改選の請求を認めていますが、これは役員を総会における選挙または議決による選任により選出することとした趣旨を徹底させ、組合の民主的運営を確保するためです。
    つまり役員は組合の業務執行機関として組合の事業運営につき最も重要な地位を占めるものですから、役員の業務執行が不当であるときは、総組合員の5分の1以上の請求により任期中でも改選できることとしたものです。
    一方、総代については役員と同じく選挙によって選出されることになっていますが、総代は法律及び定款に定められた範囲内の事項について総会に代わり組合の意思を決定する総代会の構成員であり、組合の業務執行の責に任ずるものではありません。
    また、総代会制を採っている組合にあっても、組合員には第47条の規定により総会の招集請求権が与えられていますし、総代会制度そのものが組合の定款により自由に存廃できるものです。
    このような点から考えますと総代について組合員に改選請求権を与える必要は特に認められず、現行法上明文の規定もありませんので、組合員による総代のリコールはできないものと解されます。

委任状・代理人

  • (1)総会における白紙委任状の取扱いについて
    今年もまた、総会のシーズンがやってきましたが、総会における白紙委任状について、次の点をご教示下さい。                                 
    1.白紙委任状は、総会に出席しない組合員が理事長又は総会の議長に議決権の行使を一任したものとして、数に制限なく、これを理事長又は議長の議決権行使の数に加えることができるか。
    2.理事長又は議長の代理権行使の数が制限されるとすれば、理事長又は議長は、他の理事又は他の組合員に委任状行使を依頼することができるか。
    3.白紙委任状は、そのままでは無効であり、必ず代理人の氏名が記入されていることが必要であるならば、いつまでに代理人を決め、有効なものにしておくべきか。
    4.代理人の代理できる数以上に委任状がある場合は、どう処理すればよいか。
    白紙委任状と呼ばれるものは、組合が組合員に対して総会招集の通知とともに議決権代理行使の委任状用紙を送付し、その代理権の授与を勧誘するものであり、通常は、総会に出席しない組合員が議決権を行使すべき代理人を特定しないで白紙にして組合に送るものです。
    このように、白紙委任状は、委任状作成者(授任者)が受任者となる人を特定せずに、記載の一定事務の処理及びこれに要する代理権授与の申込みをし、これの取得者が白紙の部分に受任者として自己の名を記入することによって両者間に契約が成立し、受任者としての権利義務と代理権を取得するものです。
    1.白紙委任状は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会に関して全般の責任をもつ理事長に代理人の選任を一任したものであって、理事長又は議長に議決権の行使を一任したものではないと解されますので、これを理事長がすべて行使することは許されません。理事長が組合員の代理権を行使できるのは、組合員である場合に限られますが、一般の組合員と同様に4人までに制限されます。
     なお、議長については、そもそも総会の議決に加わる権利を有しませんから、権利のない者に議決権の行使を委任することはありえないことですし、また、議長は総会において選任されますが、
     議決権数(総会の定足数)の確認の必要上、その選任前に代理人が指定されていなければなりませんので、議長が代理人の選定をすることはありえないものと解されます。
    2.このように、白紙委任状は、中小企業等協同組合法第11条第2項後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となりうる者の範囲内において、理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解されますから、理事長が組合員の中から受任者を選定し、その組合員に代理権の行使を委任することは問題ありません。
     ただし、他の理事に委任しようとする場合は、その理事が組合員であることを要します。
    3.白紙委任状は、白紙の箇所が補完されて初めて委任状としての効力を発するものですから、総会において行使される際には、代理権を行使する者の氏名が記入されていなければなりません。この代理人の決定は、議決権行使の時(厳密に言えば、議決権数(総会の定足数)の確認時)までになされれば有効であると考えます。
    4.代理人の代理できる数を超える部分の委任状は無効となり、したがって、出席者数にも算入されないものと解されます。
  • (2)委任状による代理制限について
    1.中小企業等協同組合における総会の場合の委任状は、出席者1人につき2人迄の委任を受けることができるとし、それ以上の委任を受けることができないという規定ができるのか?
    2.総会に出席しない組合員が被委任者の氏名を記入せず、組合又は、理事長宛の提出の委任状は数に制限なく理事長、又は総会の議長に一任されたものとして、議決権行使の数に加えることができるか?
    3.委任状も1同様2人迄しか代理出来ないとすれば他の委任状を如何に処理すべきか?
    4.3.の場合、理事長又は議長は、他の理事又は他の組合員に委任権行使を依頼することができるか?
    5.以上の外委任状に対する効力上如何なる制限があるか?
    1.については、中協法第11条第4項で定められているように代理人が代理し得る組合員の数は5人までとなっているが、同条第2項では、「定款の定めるところにより」代理人に議決権又は選挙権を行使させるべき旨が定められているので、右に述べた5人までの制限をさらに定款で縮小することができるものと解される。
     したがって、貴組合の定款で代理人が代理し得る組合員の数を2人までとする旨を規定すれば、これに従わなければならない。
    2.については、代理人の氏名が記載されていない、いわゆる白紙委任状は理事長に代理人の選定を依頼したものであって理事長又は議長に議決権の行使を一任したものではないと解されるから、設問のごとく理事長又は議長がこれを適当に議決権の数に算入することは許されないし、またこれが総会において行使される際には、代理人の氏名が記入されていなければ代理権を証する書面としての効力がないことになる。
    3.については、1.に述べた数を超える部分の委任状は無効となる。
    4.については、2.に述べた白紙委任状の場合、これを中協法第11条第2項後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となり得る者の範囲内において理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解してよい。
     したがって、他の組合員に委任する場合は問題ないが、他の理事に委任しようとする場合は、その理事が組合員でなければならないことになる。
     なお、議長は総会において選任される者であるから、その選任前に代理人が指定されていなければならないので、議長が代理人の選定をすることはあり得ないものと解する。
    5.については、とくにない。
  • (3)議長の委任状行使について
    事業協同組合の総会の議長は、委任状をうけられるか?                                                          
    中協法第52条第3項の規定により議長は議決権を有しない。                                                         
    したがって、委任状による議決権の行使はできない。                                                                                       
  • (4)白紙委任状について
    組合又は理事長あてに提出された白紙委任状は、理事長に代理人の選定を一任したものと解される旨解釈されているが、
    1.理事長が単独で代理人の選定をするということは、自己に都合の良い者を選べるという弊があるが、この点どのように考えるか?
    2.白紙委任状は、そのままでは無効であり、必ず代理人の氏名が記されておることが必要であるとすれば、議案審議に入るまでに代理人を決め、有効ならしめておくことが必要と考えられるがどうか?
    3.代理人のない委任状は無効であるということは、出席者数にも算入されないものと解してよいか?
    白紙委任状と呼ばれるものはご承知のとおり受任者となる人を特定せずに、委任状作成者が、記載の一定事務の処理及びそれに要する代理権授与の申込をなし、これの取得者が白紙の部分に受任者として自己の名を記入することによって両者間に契約が成立し、受任者としての権利義務と代理権を取得するもので、この時に委任状としての効力を発するものである。白紙委任状には種々の種類があるが、通常は、総会に出席しない組合員が議決権を行使すべき代理人を白紙にして組合に送るものである。
    すなわち、組合が組合員に対して総会招集の通知と共に議決権及び選挙権代理行使の委任状用紙を送付し、その代理権の授与を勧誘するものであって、これは一種の慣行として一般会社等でも行われているものである。
    1.したがって、理事長が単独で自己の有利な代理人を選定することは有り得るわけであるが、代理権自体の行使についても中協法第11条第2項~第5項に制限規定が設けられているのでこの点からも若干の弊害は防ぎ得るものである。
    2.前述の説明によっておわかりのように、白紙の箇所が補充されて初めて委任状としての効力を発するものであるから、当然代理権を行使するものの氏名が記入されていなければならない。
     委任状作成者(授任者)の意思を尊重する意味からも議案審議までに完全なる委任状となし、議決権を行使させることが望ましい。
     勿論、代理人の決定は議決権行使の時までになされれば有効である。
    3.代理人の記入のない委任状は、未だ委任状としての効力を発していないので(無効とは異なる)議決権のないのは勿論、中協法第11条第3項の反対解釈からしても出席者数には算入されないものと解してよい。
  • (5)白紙委任状の行使について
    白紙委任状行使の権限は議長にあるか、理事長にあるか?                                                                        
    白紙委任状の行使を特定の組合員に分割して依頼することの可否。                                                     
                  
    総会の議長は、議決権を有せず、議事の進行、採決を行うのみである。一方理事長は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会に関する全般的責任をもつ。
    したがって、白紙委任状行使の権限は、議長にはなく理事長にある。
    白紙委任状行使の権限は理事長にあるが、1代理人の代理し得る議決権の数には限度があるので、特定の組合員に分割してその行使を依頼することは必要であり適法と考える。

その他

  • (1)出資1口の金額の減少について(1)
    組合員の加入を容易にするため、従来出資1口の金額5万円を1万円に変更し、既加入組合員の出資1口を5口に変更する場合は、組合財産に実質的減少をきたさず、したがって債権者の利益を害するおそれもないと思われるが、この場合も中協法第56条の手続を必要とするか?
    出資1口の金額の減少には、一般的に、次の二つの場合がある。
    すなわち、事業の縮小等により予定出資額を必要としなくなった場合の減少、及び欠損を生じた場合における出資額と純財産額とを一致させるための減少である。
    したがって、おたずねの件のような場合は、実質的な出資1口の金額の減少ではないが、形式的には出資1口の金額の減少と解すべきであるから、中協法第56条及び第57条に規定する手続をとらなければならないものと解する。
  • (2)出資1口の金額の減少について(2)
    ある事業協同組合において、その組合員の引き受けた出資の払込みがすでに全額完済しているのであるが、更に出資の増額をはかって組合事業の拡充強化を行うとし、現行の定款の規定では出資1口の金額が10,000円であり、その払込みも1口につき2回払いの5,000円であるが、これでは今後の増資を引き受けかねる組合員が大部分であるので、払込方法を緩和しようとして次のとおり定款を変更しようとしている。
    なお、2.の場合は1口の金額が2分の1になるが、その口数は2倍になるので現在の出資総額には減少をきたさない。
    1.1口の金額は現行のまま10,000円で、その払込方法を1口につき2,500円(現行の2回払を4回払込)にする。
    2.1口の金額を現行10,000円から5,000円に減少し、第1回の払込を1口につき2,500円にする、という方法で何れも条文の中に但し書で増員分につき適用するということを明記しようとするものである。
    以上の場合において、1.又は2.の方法で定款変更認可申請をして、認可されるかどうか?
    おたずねの件については、1.及び2.のいずれの場合であっても認可されることができるものと解する。
    なお、1.の場合は単に出資の払い込み方法の変更であるからとくに問題はないが、2.の場合は、出資1口の金額の減少であるので中協法第56条及び第57条の規定による債権者保護手続をとることが必要であり、またその手続を終了したことを証する書面を定款変更認可申請書に添付しなければならない(中協法施行規則第5条第3項)から注意が必要である。
  • (3)中途脱退者に対する利用分量配当について
    本組合の事業年度は、9月から8月までである。本組合において、本年2月に法定脱退した者が7月に再び加入してきたが、利用分量配当は、脱退前の部分についてはこれをする必要がないと思うがどうか。
    事業協同組合の剰余金の配当は、法第59条第2項の規定により利用分量配当の配当基準となる組合事業の利用分量の算定は、この配当が手数料、使用料等の過徴額の割戻し的な性格をもつものであるから、各組合員が当該事業年度内において納付した手数料、使用料等の額、又は共同事業の利用数量によって行われるのが適当であり、単に当該事業年度の組合員期間等で利用分量を算定することは適当でないと考える。
    したがって、設問の9月から2月までの利用分量等を利用分量配当の算定基準から除外することは不適当であると考える。
  • (4)事業計画書及び収支予算書について
    事業計画書及び収支予算書について、下記事項をお尋ねしたい。                                              
    1.組合の設立認可申請書に添付する事業計画書の記載は、収支予算書に計上した事項については不要であるか?                                                  
    2.あるいは、事業計画書には、出資金並びに借入金で賄なうものだけを記載するのか?              
    3.また、収支予算書、出資金、借入金に関係なく、事業別の資金量のみを計上するのか?                 
    4.収支予算書には、収入から支出を引いた残りを予備費として計上しているが、剰余金としてもよいと考えるがどうか?                                       
        
    1.事業計画書と収支予算書とは、それぞれ別の目的をもって作成されるのであるから重複する部分があっても記載すべきである。
    2.設立当初は別として第2年度の計画書では組合に自己資金があれば当然それを調達源泉として賄なわれる資金の使途を記載すべきである。
    3.収支予算書では、事業別予算を計上することが理想的であるが、実際上容易でないので、事業別資金予算は事業計画書(経営計画)に記載するのが望ましい。
    4.収支予算を総合予算として、見積損益計算書、見積貸借対照表、見積資金収支表の作成であると解すれば剰余金として(計画利益額)計上する方が望ましいわけである。
     しかし、一般的にみれば、組合では官庁式の予算概念をとっているところが多く、剰余金ということよりも収支相償ううえで予備費として支出項目に含ませているようである。

解散、清算、登記

解散・清算

  • (1)解散決議の取消について
    総会において解散を決議した組合が、解散後2週間以内に臨時総会を招集し、さきの解散決議の取消をし、組合の継続を図った。中協法の解散及び清算について商法第95条、第162条及び第406条並びに民法等の準用がないので解散を取消すことはできないものと解するがどうか?
    中協法は、解散及び清算について商法第95条、第162条又は第406条を準用していないので総会において解散を決議した組合が、その後に解散の決議を取消し、組合を継続することはできないものと解する。
  • (2)清算中の組合における組合員の持分の譲渡、加入・脱退について
    清算中の組合においても、解散前の組合同様に、組合員の持分の譲渡や加入・脱退といったことが認められるのでしょうか。                                     
    合が解散したときは、組合は清算の目的の範囲内において存続することとなりますが、清算が組合と組合員との財産関係の処理を中心とする以上、組合員の持分の譲渡や新規加入は認められないと解されます。
    また、脱退による持分の払戻は、組合の一部清算ともいうべきものですから、同様の理由により、自由脱退はもとより、法定脱退の規定も原則として清算中の組合には適用されないと解されます。
    ただし、組合員の死亡又は解散の場合には、相続人又は清算中の法人が組合員として取り扱われることになります。
  • (3)存立時期を定めている組合の存続について
    昭和51年3月31日を存立時期と定款に規定している組合(昭和41年設立)が、組合存続を図るべく、昭和51年2月25日に定款変更の議決を行ったが、定款変更の認可手続を怠たり、昭和53年に至り認可申請をしてきた。                                        
    組合は活発に事業を行っており、認可したいと思うがどうか。
    1.昭和41年の設立認可申請に当たって組合の存立時期を定款に定めたことは、中協法第62条第1項第4号の規定によってその存立時期の満了とともに当然法定解散の効力が発生するものであることを当初から予測していたものである。
     したがって、もしこの組合が存続する意思があれば存立時期満了前において行政庁に対し、法第51条第2項の規定に基づく定款変更の認可申請がなされるべきである。しかるに、組合側は存続の議決はしたが、行政庁に対し認可申請を怠り、既に今日まで2年半を経過しており、この組合においてたとえ存続の意思を有していたとしても所定の手続がなされていない以上、法定解散の事由が消滅したものとはならない。
     このため、本組合は、昭和51年3月31日において法定解散したものであり行政庁に解散届の提出をさせる必要がある。
    2.本組合が存立を希望し、県としてもこれを存続させたい意向であれば、新しく組合設立の申請を行わせるよう指導すべきである。
  • (4)組合解散に伴う債権者に対する公告の方法について
    組合の解散は、官報をもって公告しなければならないか。                                                   
    中小企業等協同組合の解散及び清算については、中協法第69条が準用する会社の清算に関する商法第421条(会社債権者に対する公告)の条文中「官報ヲ以テ公告」が「公告」と読み替えられており、官報による必要はない(中団法は、第5条の23、第47条で中協法第69条を準用)。
    これは、平成10年10月1日に施行された「商法等の一部を改正する法律」(平成9年法律第71号)により、商法の規定自体に公告の方法が官報であることを規定し(商法第100条第1項、同法第421条第1項)、「商法中改正法律施行法」第17条の規定を削除する改正が行われるとともに、同日施行された「商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」(平成9年法律第72号)により、弁護士会、監査法人及び税理士会以外の中協法を含む各種の「業法」について、「公告は官報でする」との部分を準用の対象から除外する改正が一括して行われたことによるものである。
  • (5)解散に伴う残余財産の分配について
    ある協同組合が解散し、現在清算中であるが、土地の値上り等で、残余財産が約2億円ある。この分配について清算人間に意見の対立が生じ、定款の持分の規定(正味財産を出資口数に応じて算定する旨の規定)が解散の際の分配についても解釈上適用されるものと判断している。
    ところが、これに対して小口出資組合員から残余財産の分配については法律にも定款にも何ら直接の規定がないので、具体的な分配方法は総会で決定すべきだ、そして、それには出資口数に関係なく人数割りで分配すべきだとの主張があり訴訟にすらなりかねない事態となっている。
    そこで、
    1.残余財産がある場合にその分配については、定款の持分の規定が解釈上適用されるものかどうか?
    また、
    2.企業組合、協業組合、商工組合の解散の場合にはどうなるのか?
    1.解散に伴う残余財産の分配方法については、中小企業等協同組合法上明文の規定はないが、残余財産の分配は、持分の払戻し的性格を有するので、定款で定める計算方法によって算定された持分に応じて行うべきである。
    2.企業組合、協業組合、出資商工組合についても同様である。

登記・その他

  • (1)地区を拡大するための定款変更の認可行政庁について
    〇〇県を地区とする事業協同組合が、事業拡張を図るため、地区を数県に拡大することの定款変更を総会で議決した。                                            
    この場合、この定款変更の認可の所管行政庁はどこか。                           
    この場合における定款変更の認可の所管行政庁は、当該定款の変更の効力が発生した後に所管することとなる行政庁である。                                         
  • (2)事業用不動産取得決定機関について
    当組合では、従たる事務所にあてるため350万円で店舗を購入したが、これについて中協法並びに定款上総会に付議を要するとの規定がないため、役員会の議決のみで取得したが、これは、事業計画及び収支予算の変更を伴うものとして、あらかじめ総会の議決を要するか?
    本件については、定款に別段の定めがないかぎり、理事会の議決のみをもって購入したとしても、必ずしも違法とはいいがたいが、組合運営上からは、高額にのぼるような事業用不動産を取得する場合は、総会の議決を経るべきである。
    また、その取得については、当然収支予算に計上すべきである。
  • (3)理事の退職金支給に関する手続について
    常勤理事に対する退職金の支給決定は、総会又は総代会の議決事項か?あるいは理事会の議決のみでよいか?
    株式会社等においては、商法の規定により各会社の定款において、総会の付議事項となっているが、中協法には何らの規定がないか?
    また退職金の支給に関し、期前において退職を予想していない場合に、中協法第51条の規定するところにより、収支予算、事業計画の変更を要するものとして、総会の議決を必要とするか否か?
    1.中協法においては、商法第269条を準用していないから、法律上は理事会の決議で行うことを妨げない。
     しかしながら、事柄の性質上、理事会の決定では恣意的になるおそれがあること、商法との均衡等よりして定款に明記して、総会の議決事項とすべきであると思われる。
    2.退職金である否とを問わず、支出をしようとする場合において、当該支出が収支予算において定められていないときは、原則として収支予算の変更について総会の議決を要する。事業計画の場合も同様である。
  • (4)役員退職金の算定方式について
    役員は、職員と比較した場合、職務の内容、範囲、責任の度合いが異なり、職員の退職金支給基準を準用することは適当でなく、別個に支給基準を明確化することが必要とも考えられるが、反面職責の態度からみて単純なる年数計算等による基準は不合理な面があり、規定を設けず、勤務者の業績向上に寄与した功績の評量によって、適宜支給すべきか、貴見を伺いたい。
    貴見のとおり、単純なる年数計算によらず、その業績等によって適宜支給すべきものと思料する。              
  • (5)常勤役員等に対する退職金共済法の適用について
    中小企業退職金共済法の被共済者の範囲に、組合の専務理事等いわゆる使用人と兼職の役員は該当するか。                                                
    組合の専務理事又は常務理事の取扱いについては極めて緩やかに解釈されており、役員報酬を得て純然たる管理職務のみを行う理事若しくは非常勤理事等を除き、事実上使用人と兼務の理事は、被共済者となり得る。
    この事実判断については県労政課等と協議されて判定されるのがよいと考える。
  • (6)職員退職給与引当金について
    定款例第58条(職員退職給与引当金)に「本組合は事業年度末毎に職員退職給与引当金として、職員給与総額の何分の何以上を計上する。」とあるが、これは定款に必らず設けなければならないか?    
    職員退職給与引当金については、絶対に本条を定款に設けなければならないものではなく、組合の任意である。従って、設けても設けなくても差し支えない訳であるが、職員が安心して組合の業務に専念するためには、本条を記載することが望ましい。
  • (7)受取書の非課税の根拠について
    事業協同組合の組合と組合員間における受取書については、印紙税法別表第一第22号の非課税物件欄の規定により「営業に関しない受取書」に該当し、課税されないこととなっているが、その根拠を具体的に示されたい。
    事業協同組合等の事業は、営利を目的としていないので営業ではないと解されるが、印紙税法においては、営業について特別の規定を設け(印紙税法別表第一第22号)、事業協同組合等が出資者以外に対する事業を営業に含ませ、また、出資者が事業協同組合等に対する事業を営業から除外している。
    また、事業協同組合が組合員に対する事業については、印紙税法に明文の規定はないが、営利を目的としていないから、当然のこととして特に規定を設けなかったものと考えられ、また、本来営業であるべき組合員が組合を対象として行う取引等を営業としていないこと等から、当然に営業ではないものと考えられる。
    したがって、印紙税法上において、事業協同組合等の営業に関しない受取書として非課税とされるものは、事業協同組合等が組合員に発行するもの、及び組合員が事業協同組合等に発行するものに限られているものと考えられ、この解釈による取扱が一般的となっている。
  • (8)企業組合から協同組合への組織変更について
    企業組合を協同組合に組織変更することはできるか。                                                         
    企業組合と事業協同組合はその性格を全く異にするものであり、また、中協法には組織変更に関する規定(商法第113条・第163条、有限会社法第64条・第67条参照)もないので、企業組合を事業協同組合に組織変更することはできない。
  • (9)既設の商工組合と協同組合とを一本化する方法について
    組合員をほぼ同一とする事業協同組合と商工組合(非出資)があって、協同組合を解散し商工組合に一本化したいのであるが、その方法として次のいずれが適当か。
    (1)協同組合を商工組合に吸収合併する。
    (2)非出資商工組合を解散し、協同組合を出資商工組合へ組織変更する。
    ご質問の(1)は法的にとることができない。
    (2)の方法による場合は、共同事業に支障を生じないように、できるだけ商工組合の消滅期間を短くすべきである。そのためには、両組合の総会を同時に開催し、解散及び組織変更の決議の後商工組合の解散登記をなし、その抄本を付して組織変更の認可を申請する。
  • (10)組合と会社との合併等について
    土木請負業者を組合員資格とする事業協同組合において、同組合の組合員たる株式会社が資金面より経営難になり、組合との合併を望んでおり、組合としても当該組合員の実績により入札参加が得られるということから(入札資格は合併以外譲渡が禁じられている)賛意を表している。本会ではこれに対し次のような見解であるが、その是非あるいは可能な方法をご教示願いたい。
    (1)組合と会社との合併は法律上考えられない。
    (2)ただし、当該会社の株主を個人として全株主が組合に加入することにより、合併が可能となる。
    この場合、合併により会社の権利義務は組合で継承し、従業員は組合の従業員となる。
    (1)協同組合と会社とは、貴見のとおり合併することはできない。
    (2)株主が個人として組合に加入することは、当該組合の組合員資格があるか否か疑問であり、もし、組合員資格があって組合に加入したとしても合併したことにはならない。
    よって、入札参加資格の譲渡が合併による以外は禁止されているとすれば、加入の方法に
    よっても目的は達成できないことになる。
    (3)したがって、会社の所有する入札資格を活用しようとするには、会社をそのまま存続し、その請け負った工事を他の組合員に分割実施される以外にないものと考える。
  • (11)当期剰余金の処分方法等の解釈について
    1.法定利益準備金、特別積立金の積立て及び法定繰越金の繰越方法について事業協同組合、商工組合等(以下「事業協同組合等」という。)は、その根拠法及び模範定款例の規定解釈により、法定利益準備金及び特別積立金の積立て並びに法定繰越金の繰越に当たっては、当期剰余金を基に行うこととされているために前期からの繰越損失があっても当期において剰余を生ずれば、前述の諸費目の積立て及び繰越しをした後でなければ、繰越損失のてん補を行うことができないと解釈されている。このため、事業協同組合等では、一時、当期剰余金を基に積立て及び繰越しを行った後、それを取崩して繰越損失のてん補を行っている。
     しかしながら、農業協同組合、消費生活協同組合、漁業協同組合等では、それぞれの根拠法の規定においては、事業協同組合等と同様であるにもかかわらず、模範定款例の規定及び所管行政庁の解釈により、当期において剰余が生じても繰越損失がある場合は、まず、それをてん補することとしている(したがって、繰越損失が当期剰余を上回っている場合は、前述の諸費目の積立て及び繰越しは行わない。また繰越損失のてん補後に残余がある場合は、それを基に積立て及び繰越を行う。)。
     ついては、事業協同組合等においても、農業協同組合等と同様な処理が行える旨解釈することとしてよろしいか?
    2.特別積立金の取崩しについて事業協同組合等の模範定款例で規定されている特別積立金は、毎事業年度の剰余金の10分の1以上を積立てることと規定されているだけで、その取崩しについては何ら規定されていない。
     このため、特別積立金は、模範定款例の損失金の処理規定により損失の処理以外には、取崩せないものであるとの解釈がなされている。
     この結果、組合によっては、特別積立金の積立総額が出資総額を上回るほど多額となっても、損失が生じないため取崩しができない結果を招いている。
     しかし、元来、特別積立金は、法律の強制しない任意的積立金であること、また法律の強制する法定利益準備金については、模範定款例の規定においてもその取崩し事由を限定規定していること等を勘案すると、特別積立金は、損失金の処理を主目的としながらも、それ以外の事由であっても総会の議決をもって取崩すことができると解釈するほうが、現実の組合運営においても支障をきたすことがなく、妥当であると考えられるので、そのように解釈することとしてよろしいか?
    1.従来より中小企業庁においては、模範定款例51条(法定利益準備金)、53条(特別積立金)及び54条(法定繰越金)の利益剰余金の規定においては、毎事業年度の剰余金として「当期業績主義」との解釈を採ってきている。
     しかしながら、農業協同組合、消費生活協同組合、漁業協同組合等においては、中小企業等協同組合と同様の法規定にもかかわらず、「繰越損失がある場合」には、それをてん補した後、なお残余がある場合に積立て及び繰越しを行っている。
     したがって、今後は、事業協同組合等においても他組合との整合性及び剰余金としての性格上、貴見のとおり運用して差し支えないものと考える。
    2.特別積立金は、御指摘のとおり、任意積立金的な性格を有しているものであり、何ら法的規制はない。
     したがって、その取崩しについても貴見のとおり「総会の議決をもって取崩す」ことができるものと解される。
     ただし、主目的が損失てん補であるので、それ以外の事由により取崩すことは、次のような場合に限られるべきであると考えられる。
     (1)当期未処理損失がない場合
     (2)当期未処理損失がある場合は、取崩した資金によりそれをてん補した後、なお残余がある場合

商⼯組合に関すること

組合員資格

  • (1)既製服製造業者の商工組合の組合員資格について
    既製服製造業者が工業組合の設立を準備しているが、その定款案の「組合員の資格」は下記のとおりであるが妥当か。                                          
    本組合の組合員たる資格を有するものは、本組合の地区内において自己の計算により原材料を購入して、既製服の製造の事業を営む中団法第5条に規定する中小企業者とする。
    事業の性格からみて、既製服製造業にあっては、製造卸業者(元請)と縫製加工業者(下請賃加工)とに分離して組合を結成することが妥当であるので、この方針により指摘されたい。             
  • (2)商工組合以外の者の商工組合連合会会員資格について
    商工組合が商工組合連合会を組織した場合において、単位商工組合の存しない地域に資格事業を営む大企業があり、商工組合、商工組合連合会に調整能力がある場合には、その大企業を直接商工組合連合会に加入させることができるか。
    商工組合連合会の会員たる資格を有する者は商工組合のみであり、個々の企業が直接連合会に加入することはできない(中団法第13条、第16条参照)。また、中団法第12条の要件を満たしている商工組合には、その商工組合が定款で定めたときは、大企業であっても加入することができることになっているので念のため申し添える。               
  • (3)支店の組合員資格について
    1.設立しようとする商工組合の地区内において、地区外に本社を有する会社の支店がある場合に、この会社は組合員資格を有するかどうか。
     この場合、組合員資格について中協法の解説では、支店が地区内において資格事業を行っていれば、本社が地区外にあってもその法人全体の名において加入することができることになっているが、中協法における「事業を行う」と中団法における「事業を営む」との関係についての解釈をも併せてご教示願いたい。
    2.例えば法人全体の名において加入できると仮定した場合、申請書に記載する法人の所在地は地区外にある本社の所在地とすべきかどうか。
    1.組合が定めた地区内で、組合員たる資格に係る事業を営む拠点を有している事業者は、組合員資格を有し、この場合事業を営む拠点は主たると従たるとを問わない。
     したがって、ご質問のように本社は地区外にあるが支店が地区内にあり、かつ、そこで資格事業を営んでいる場合は組合加入資格を有するものである。
     この場合、支店は独立の法人格を有する事業主体ではないから、法人全体の名において加入することとなる。
     なお、事業を営む者とは、営利を目的として事業を継続反覆して行う者をいい、事業を行う者は必ずしも営利を目的とすることを必要としないので、事業を行う者より狭い概念である。
    2.上記の如く、支店は法人の機関であって独立の法人格を有する事業主体ではないから申請書に記載する法人の所在地は、主たる事務所の所在地(民法第50条)たる本社の所在地を記載することとなる。

事業

  • (1)非出資組合の事業について
    下記1.及び2.の事業を、非出資組合が行い得るかどうか?                             
    1.共同訓練事業                                          
    2.見本市の開催                                           
    1.組合員の従業員を教育するため、共同職業訓練講習会を開催することは、中団法第17条第1項第1号の事業として行い得る。                                      
    2.見本市を開催することは、第17条第2項の共同経済事業の範疇に含まれるものと解されるので、非出資組合で行うことは認められない。                               
  • (2)組合協約について
    中団法第29条第1項に「商工組合の組合員の資格事業に関し取引関係のある事業者であって、中小企業者以外のもの」とあるが、板硝子業界の如き、取引状況下において、小売側の連合協会並びに商工組合が、メーカーと団体交渉ができ得るか。
    貴文書にある如く、実際には現物はメーカーから小売店へ直送されてくる場合であっても、契約はメーカーと特約店、特約店と小売店と二段階に分けてなされていると思われる。もしそうだとすれば、契約面ではメーカーと小売店との間には、取引関係があるとはいえない。
    したがって、小売店のみの商工組合が、メーカーを相手方として応諾義務を負う団体交渉をすることはできない(相手方が応諾義務を負わない団体交渉はできる)。なお、貴文書にある「連合協会」なるものの性格が明らかでないが、それが商工組合連合会のことであれば中団法第33条で第28・29条を準用しているから、商工組合と同様である。本条に基づかない任意団体であれば、本法に規定するごとき団体交渉の権限がないことはいうまでもない。

設立

  • (1)商工組合の設立要件としての資格事業者の2分の1の算定について
    商工組合の設立は一定地域の資格事業を営む者の2分の1の加入者とある数は、一定地域(都道府県)の1地区(例えば1都市)の者の数が全地域の2分の1でこの者のみにて他の市町村の者の加入がなくても組合を設立することができるか。
    一定の地域(都道府県)を地区とする商工組合を設立しようとする場合において、一定都市において資格事業を行う者のみが設立に同意し、その数が地区内の加入資格者数の2分の1に達する場合には、当該地域(都道府県)を地区とする商工組合を設立することは可能である。
    ただし、この場合当該地域(都道府県)の他の部分の者のうち、設立に同意する者が全然いないとか、少人数しかいないような場合は、組合地区を都道府県と定めること自体が、中団法第42条第2項の要件に反すると認められる場合が多いと思われるので、慎重を期せられたい。
  • (2)単位組合が一部未設立の場合の連合会設立について
    全国的にみて相当数の組合未設立の地区があっても、設立されている都道府県の組合のみにて連合会を設立することは可能か。                                                                                   
    中団法第13条の規定により資格事業の全部又は一部が同一である商工組合が、その同一である資格事業について全国を地区とするものであり、また中団法第16条の要件を満たすものであれば、商工組合連合会を設立することは可能である。
  • (3)設立過程の商工組合の地区と支店の組合員資格について
    1.設立しようとする商工組合の地区内において、地区外に本社を有する会社の支店がある場合に、この会社は組合員資格を有するかどうか?
     この場合、組合員資格について中協法の解説では、支店が地区内において資格事業を行っていれば、本社が地区外にあってもその法人全体の名において加入できることになっているが、中協法における「事業を行う」と中団法における「事業を営む」との関係についての解釈をもあわせてご教示下さい。
    2.例えば法人全体の名において加入できると仮定した場合、申請書に記載する法人の所在地は地区外にある本社の所在地とすべきかどうか?
    1.組合が定めた地区内で、組合員たる資格に係る事業を営む拠点を有している事業者は、組合員資格を有し、この場合事業を営む拠点は主たると従たるとを問わない。
     従って、ご質問のように本社は地区外にあるが支店は地区内にあり、かつそこで資格事業を営んでいる場合は組合加入資格を有するものである。
     この場合、支店は独立の法人格を有する事業主体ではないから、法人全体の名において加入することとなる。なお、事業を営む者とは、営利を目的として事業を継続反復して行う者をいい、事業を行う者は必ずしも営利を目的とすることを必要としないので、事業を行う者より狭い概念である。
    2.上記の如く、支店は法人の機関であって独立の法人格を有する事業主体ではないから申請書に記載する法人の所在地は、主たる事務所の所在地(民法50条)たる本社の所在地を記載することとなる。
     なお、このように法人全体の名で加入し、その所在地を本社の所在地とする場合にも、商工組合が調整事業を行う場合は「一定の地域」における事業活動を制限することによって不況事態の克服等を図ろうとするものであるからその地区で行う事業活動の制限は、その法人の地区外の事業活動(地区外の支店、工場、、事業場の活動等)には及ばない。
     更にこの場合、その法人の地区外の事業活動をも、調整事業に従わせなければ効果があがらないとするならば、その事業活動をも含ませるよう、組合の地区を更に拡げるのが適当であると解する。

その他

  • (1)商工組合の特別地区について
    本県及び〇〇県の一部を地区とする事業協同組合は、同一の地域を地区として商工組合に組織変更することができるか。                                        
    なお、本件は〇〇県の一部をその地区に含まなければ組織変更の効果が少なくなる特殊事情がある。   
    ご質問のような地区は、中団法第9条但し書の「その他の場合」に該当し、政令の定め(同法施行例第1条の3(注)現第1条の2)による主務大臣(本件の場合は通商産業局長)の承認を必要とする。したがって、主務大臣の承認があれば当該地区の決定は可能である。
    なお、昭和37年7月31日付企庁第918号「商工組合制度の運用について」通達によって、1又は2以上の都道府県の区域以外の区域を地区とする商工組合の設立は、原則として認可しない方針がとられているが、これはあくまで原則であって、施行令第1条の3((注)現第1条の2)の「特別の地域を商工組合の地区とすることを適当とする特殊な事情」があれば認められるものと考える。
  • (2)組織変更による解散登記の申請人について
    事業協同組合が商工組合に組織変更した場合、事業協同組合の解散登記申請人は、代表清算人又は代表理事のいずれであるか。                                          
    組織変更によって解散する事業協同組合は、清算手続の必要はない。したがって、清算人も選任されないことになるから、申請人は代表理事である。                          
  • (3)商工組合連合会の複数議決権の行使方法について
    1.商工組合連合会に認められる2個以上の議決権、選挙権は、これを同一内容の意思表示として統一行使しなければならないか。                                     
    2.複数議決権等は、1人の代表者がその全部の議決権等を行使しなければならないか。
    3.会員である組合の代表理事以外の者が議決権等を行使した場合及び代表理事を2以上設けている会員において当該2人以上の代表理事がそれぞれ異なる議決権等を行使した場合、これらの効力はどうか。
    1.複数の議決権及び選挙権を特に商工組合連合会員に限り認めた趣旨は、各会員の組合員数等を考慮して組合員の意思を公平、かつ、十分に反映させ得るようにするものである。これを行使する場合には、会員である商工組合の意思表示として統一して行使すべきものであって、各票について別個の意思表示を認めることはできない。
    2.複数議決権、選挙権は、会員の代表者(代表者が2人ある場合においては、いずれか一方が代表する(内部規約等により))1人が全部の議決権又は選挙権を行使するものである。
    3.代表権を有する者以外の者が議決権又は選挙権を行使することは、委任状により代理権を付与されていない場合は無効である。
     また1で述べたように選挙権を分割し、別個の意思表示をすることはできないので、会員を代表し、2以上が議決に参加した場合は、会員を代表している者1人が確定されない限り、すべて無効と解される。

協業組合に関すること

事業

  • (1)原材料仕入のみの協業組合について
    例えばパンの製造業者が、粉の仕入れだけを行う協業組合を設立することは可能であるか。                                
    協業組合は、組合員が加入時に営んでいた事業の全部又は一部を行うことができるので、仕入れだけを協業することはもちろん、製造業者がその取扱品目の一部、例えば食パンなら食パンの作業工程の一部(例えば焼く部分のみ)を協業組合の事業として行うことも差し支えない。
  • (2)研究・宣伝事業のみの協業化について
    協業組合において、研究や宣伝の事業のみを行うことは可能であるか。                                             
    協業は、組合員の従来営んでいた事業の統合であるが、研究や宣伝の業務を生産、販売、加工等の事業の一環として従来から行っていた場合であっても、生産、販売、加工等の事業活動、すなわち本体事業の協業を伴わずに、これらのみを切り離して協業することは、従来営んでいた事業の統合とは考えられないので、協業対象事業にすることはできない。                               
    しかし、従来営んできた生産等の本体事業を協業する場合には、これに必要な研究・宣伝等の事業を行うことは差し支えない。
  • (3)製造業における販売の協業と独禁法との関係について
    1.製造業を行う事業者が販売事業のみを行う協業組合を設立した場合に、その運営について独禁法の制限を受けることになるのではないか。                               
    2.販売事業を行う協業組合が、生産制限事業を併せ行うことは可能か。                  
    1.販売事業のみを協業する協業組合の設立は可能であるが、協業は中団法第5条の17に規定する認可基準に示されているとおり、生産性の向上に寄与するものであることが必要で、販売だけを一本化することによって不当に価格の維持又は吊り上げをねらうものであるような場合は認可されないし、認可後そのような事態になった場合には、公正取引委員会から主務大臣に対し、協業組合の業務又は運営等について検査等の措置をとるべきことを請求する対象となる。したがって、販売事業の協業が真に技術の向上、品質の改善、原価の引き下げ、能率の増進等生産性の向上に寄与する
    ものでなければ、当該協業組合を設立することはできない。
     なお、独禁法との関係を簡単に説明すると、協業組合は、独禁法第2条第2項にいう事業者団体ではないので、一般の事業者と同様に独禁法の適用を受けることになる。したがって、協業組合が単に一定の取引分野を実質的に制限することだけでは独禁法には抵触しないが、私的独占又は不当な取引制限をしたり、不公正な取引方法を用いることは、独禁法違反になる。
    2.販売事業を行う協業組合が、生産制限事業を行うことはできない。販売事業を行う協業組合は、販売部門について協業するものであり、生産部門については他の事業者としての地位にあり、それが生産について制限事業を行うことは、他の事業活動を制限することとなり、独禁法上からも禁止される。
  • (4)協業組合の組合員に対する融資の可否
    協業組合が、その事業遂行に資することを意図して、組合員に対し、次のような融資を行うことは、組合の目的事業の範囲に含まれ、有効として解して差し支えないか。
    1.一部協業の場合であって、例えば組合の生産品を組合員が加工・販売する等組合の目的事業と密接な関連性ある事業を組合員が行っている場合に、組合員の行う当該関連性ある事業遂行に要する資金を融通すること。
    2.組合員が上記事業を実施し、かつ、当該事業を通じて組合と相互に密接な依存関係がある場合に、その組合員の経営状態悪化に際して救済融資をすること。
    3.組合が、組合員の事業を吸収して全部協業を行おうとする場合に、個々の組合員が金融期間等に対し、負担している既存の債務を整理するための資金を融通すること。
    協業組合が協業対象事業及びその関連事業を遂行するために必要な範囲内において設例の場合の融資を行うことは、いずれも差し支えないと解する。                            

  • (5)組合員所有船舶の造改修資金に対する融資の可否
    内航海運業の事業協同組合が、組合員のために共同集荷、共同集金等の事業を行ってきたが、協業組合に移行し、従来の内航運送取扱業のほかに、内航運送業を行う計画である。一方、組合員は、新たに内航船舶貸渡業の許可を受け、その所有船舶運送業は一切行わないこととなる。このような一部協業と解される場合に、組合員が借り受ける船舶の新造資金、補助資金又は中古船買収資金等を組合が組合員に融通することは適法か。
    協業組合の協業対象事業が本件の場合、内航海運業又は内航海運取扱業であり、協業組合から組合員に対する資金貸し付けの使途が当該組合で借り上げて使用する船舶の建造又は補修のためのものであるので、協業組合が、協業の対象としての内航運送業又は内航海運取扱業の遂行上必要な範囲内において、付随的にこのような船舶の建造等のための資金の貸付け及び当該資金を貸し付けるための金融機関からの資金の借り入れをある程度反復して行うことは、中団法の規定上差し支えないと解する。
  • (6)協業組合の金融、教育情報活動について
    一部協業の協業組合は、教育事業、金融事業を実施することができるか。                                       
    協業組合の事業は、特に定められた協業対象事業と関連事業及びその付帯事業に限られている。このうち、関連事業は、協業対象事業に関連する事業で、組合員の事業とは全然関連のないものであるから、本件については考えなくてもよいものである。また、協業対象事業は、組合員の事業の一部又は全部を統合し組合の事業とするものであり、組合員の資金の借入あるいは情報の収集、経営技術等の知識の修得等の活動は、協業対象事業とはなり得ないものである。また、付帯事業についても、協業対象事業等に付帯することを行うのが付帯事業であるので、協業対象事業等で行えないことを、付帯事業で行うことはあり得ないわけである。
    したがって、協業組合においては、事業として金融、教育事業は行えないことになる。このことに関しては、協業組合の基本的な問題であるが、協同組合等の場合はあくまで組合員の事業というものがあり、その事業を補完することが組合の事業であるが、協業組合の場合は、組合員の事業を統合し、それを組合の事業として、その事業の運営のみを考えればよいわけである。すなわち、協業組合の場合は、組合員の事業との関係は、員外者に対するものとまったく同じものと考えてよいものであり、この間の事情は、組合員が別会社を設立したものとして考えればよく理解できるものと思う。
    ただし、協業組合は、独立の事業として金融事業あるいは教育事業はできないが、協業対象事業等の事業遂行上必要があれば、その事業活動の一部分として、組合員に対する資金の貸付、教育情報提供等のことができる。これは、例えば、物品の購入の事業を行っている組合が、当該事業の運営政策上、取引先である組合員に事業資金を貸し付ける等の意味であり、あくまで資金の貸し付けは、組合の事業発展のためのものである。この関係は、例えば、家庭電器メーカーの代理店が、その取引先である系列小売店等に、自己の商品の販売量を多くするため、店舗改造資金や運転資金を貸したり、店舗構成や販売技術等について指導することとまったく同じものである。
  • (7)協業事業を他人に委託すること等の可否
    清涼飲料水の製造業者が、現在試験的に行っているクロレラ飲料の製造を協業することを目的に協業組合を設立しようとしているが、この設立について、次の事項を教示願いたい。
    1.当該クロレラ飲料の販売量が多くないので、1組合員の施設を1年間利用することとして当該組合員に製造を委託する。この場合に、組合から原料を提供し、全製品を引き取るとしたときは、組合はクロレラ飲料の製造業といえるか。
    2.上記のような形態は卸売業とも思われるが、製造業者が協業事業として卸売業を行うことができるか。
    3.また、この場合に組合が提供する原料の仕入れについての協業とはならないか。
    4.その他、この組合について名案はないか。
    1.協業組合の事業を全面的に他人に委託して行うことはできないものと考える。この場合、自己が製造を行うとともに一部を委託製造させるといった、一般的に製造業で行われているかたちであれば、協業対象事業として差し支えないものと解する。
     また、委託製造が製造業であるか否かについては、税制の貸倒引当金設定においてそうみなされているほか、既製服等の業界における下請加工させる部分の多い問屋的なものを組合設立の場合に製造業として扱っている場合もあるが、自己が全然製造せずすべてを委託製造する形態のものは製造業とはいえないと思われ、たとえ製造業と認められても前記のとおり協業対象事業とはならないものと考える。
    2.委託製造販売を卸売業としても、前記のとおり、組合員がそのような事業を営んでいないので協業対象事業にはならないものと考える。
    3.この場合、原料仕入部門の協業ということも考えられるが製造業における仕入部門の協業は、製品を生産するまでの工程の一部の協業であるから、一部を協業し残りの工程を組合員が行わないことは、組合員との関連がなくなり、工程の一部の協業とはいえなく、協業対象事業とはなり得ないものと考える。
    4.ご照会のようなかたちの協業をあくまで実施したいのであれば、委託製造に代えて当該組合員の施設を借用する等により組合の計算において製造するかたちとするのも一方法と思われる。また、組合を設立しても操業までのある程度の準備期間は許されるものと思われるので、定款で組合において製造することとし、土地、設備の調達など操業までの具体的な計画が示され、その準備のための期間が妥当なものであれば、その間の操業を進める準備のための委託製造ということであれば認められるのではないかと思われる。
     なお、以上はクロレラ飲料の試験的な製造販売が営業(中団法の「事業を営む」という意味の営業)と認められるものとしての判断であるが、試験的な製造販売の程度によっては営業と認められない場合もあることを申し添える。
  • (8)設立間もない事業転換等について
    1.休眠組合や不振組合の中には、協業組合になることにより蘇生するものもあると思うが、これについてどう考えるか。
    2.協業組合を組織し事業を開始したが、納入先が代替品に切り替えたとか、斜陽化の速度が予想以上に早く注文激減、採算割れとなり、事業継続が困難となった場合などは事業転換ができるか。それが事業開始後3ヵ月とか6ヵ月の短期間であっても可能か。
    3.製材業等を組合員資格とする事業協同組合が合併したのち、組織を変更し協業組合となったが、計画した事業を開始する前に情勢変化により、事業転換のやむなきに至った。このような場合も事業転換は可能か。
     また、事業転換の認可は転換後の事業内容もその判断基準とされるか。
    1.休眠組合、不振組合等の事業不振の原因が協業組合制度を利用することによって改善されるのであれば、不振組合等の協業組合への組織変更は貴見のとおり奨励すべきものと考える。
    2.協業組合の事業転換については、協業組合設立後3ヵ月とか6ヵ月とかの短い期間であっても、設立時に予期できなかった事業転換の要件(需給構造その他の経済的事情が著しく変化した事態(中団法第5条の7))が発生した場合は、事業転換は可能と考える。
    3.組織変更後情勢の変化によって事業開始に至っていない場合の事業転換については、組織変更時に協業組合の要件を備えるものとして認可を受けたものであり、たまたまそれが予期せぬ情勢の変化によって事業開始が不能となったものであるので、この場合事業を開始しているか否かは問題がないものと考える。
     したがって、この場合に事業転換が可能か否かは、当該組合に関わる情勢の変化が中団法第5条の7に規定する事業転換の要件に合致するか否かの客観的判断にかかっているものと考える。なお、法律に明文の規定はないが、中団法施行規則第1条に規定する事業転換の認可申請書の添付書類(転換後行う事業の内容及びその経営方針、その他)及び協業組合の趣旨から判断して、転換後の事業の内容も当然認可の判断基準になるものと考える(当該事業が経済的基礎のあること、生産性向上に寄与するものであること等)。
  • (9)競業禁止規定の解釈について
    1.競業禁止は、法文上組合員のみに適用されるものであるが、個人企業の場合は、その家業を協業の対象としたものであり家族全員にも競業禁止の義務があるものとは解さないか。                  
    2.組合員が競業する事業に雇用されることはまったく差し支えないか。また、組合の理事の場合はどうか。規約をもって組合員とその家族に競業禁止義務を課するとともに、その有する事業用資産等を競業する業者に売却又は賃貸することを禁止することは差し支えないか。
    1.競業禁止の規定は、組合員が個人の場合は当該組合員のみに適用されるものであり、組合員の家族にまで及ぶものではないと考える。
     ただし、家族が競合する事業を行った場合において、当該事業が実質上組合員によって行われ家族は単なる名義人に過ぎない場合は、競業禁止規定に抵触するものと考える。
    2.競業関係にある事業に雇用され労働に従事することは、競業事業を行うことにはならないものと解されるので、組合員が競業する事業に雇用されることは競業禁止規定に抵触しないものと考える。役員の場合も同様と考える。
    3.組合員が競業事業を行う者に資産を売却することは競業事業を行うこととはいえず、また家族については前記1のとおり、いずれも競業禁止規定に抵触しないと解されるので、これらの問題は中団法の競業禁止規定の問題ではなく、組合と組合員又はその家族との契約の問題である。
     したがって、本来多数決をもって制定する規約によってこれらの行為を禁止するのは適当でなく、組合員等と個々に契約すべきであるが、仮に規約による場合は少なくとも組合員全員の同意を要するものと考える。
  • (10)競業禁止の解除について
    協業組合の組合員に対する競業禁止の義務づけは「協業」の主旨である「事業の統合」を担保するものであるとの理由から、総会の承認による競業禁止の解除については、協業前に受けていた受注残の処理や特定組合員の特殊商品などやむを得ない事情がある場合に認められるという問答が示されている(中小企業庁指導部組織課長吉岡靖夫編著「協業組合制度の解説」)。
    協業組合の組合員に対する競業禁止義務は、事業の統合(企業規模の適正化)による生産性の向上等を目的とする協業組合制度の基本でありその解除については組合は慎重であるべきことは当然であるが、協業組合が競業禁止を解除することが可能であるのは、例えば、「同種の事業であっても、組合及び組合員の提供する製品やサービスについてその種類が異なるなど、双方の事業経営に実際上競合関係が生ずることなく、また競業禁止を解除することが組合及び組合員の事業経営の強化に資することになる場合」等においても、法第5条の8の規定によって競業禁止の解除が可能であると考えるが、このように解してよいか。
    貴殿の解釈で問題ないと考える。                                                                               
    なお、競業禁止を解除することによって協業組合制度の本旨が損なわれることのないよう十分留意されたい。                                                 
  • (11)協業組合の事業転換の認可について
    協業組合制度の運用に当たっては、「協業組合制度の運用について」(昭和42年10月13日付け42企庁第1420号)に基づいて行政庁において事務処理が行われるが、協業組合の事業転換の認可については、以下のように運用されると解して差し支えないか。
    1.同通達2(1)中、「『需給構造その他の経済的事情が著しく変化したため事業の転換を行う必要』があると客観的に認められる場合」に該当する旨の説明は、必ずしも公的な統計に基づいて行わなければならない訳ではなく、業界団体の統計その他の信頼できる資料により説明することも可能である。
    2.「将来、当該転換にかかる事業に比重を移すことを前提として、従来の事業を併せ行うこととしても差し支えない」とあるのは、当該協業組合の事業全体において新規事業の割合が将来増大していくとの見通しのもとに従来事業を継続しても差し支えないという趣旨であって、事業全体に新規事業が占める割合が半分を超える見通しであることまで求めるものではない。
    貴見のとおり。                                                                                             
  • (12)協業組合における競業禁止・新規事業の展開等について
    豆腐製造業6社による全部協業の協業組合が、豆腐・油揚げの製造販売と食料品の仕入販売を協業対象事業として実施している。
    売上の増大に伴い、また、取引先からの要望もあり、豆腐・油揚げ以外に、納豆ともやしの製造販売の必要性が生じてきた。納豆は原材料が豆腐と同じ大豆であるため実施可能ではないかと考え、中小企業庁を介して農林水産省まで照会した結果、工程がまったく違うため関連事業には該当しない旨の回答を受けた。
    組合としての製造はあきらめ、食料品の仕入販売が協業対象事業であったため、組合員全員の出資による別会社を設立し、豆腐・もやしを製造させ、それを組合に納入、組合が取引先へ販売する体制を取った。組合所有の工場の一部をその会社に貸与し、月々賃貸料を徴していたところ、県から組合の事業として賃貸料を徴することはおかしいとの指摘があった。
    また、売上拡大策の一環として、組合工場とは遠隔地域において豆腐会社を設立、豆腐の製造を開始した。
    この件についても、組合とその会社の実事業が同じであることから競業禁止の規定に抵触するとの指摘があり、総会を開催して全員の競業禁止を解除することとしたが、経営戦略上同じような会社を設立して役員になることが競業禁止に抵触するのが疑問に思う。
    組合では、今後、新規事業の展開を真剣に検討している。また、消費の多様化に対応していくため、消費者を対象とした料理講習会等いろいろな企画を計画しているが、新規事業については、別会社で実施、事業実績があがるようになってから組合に加入させ、協業対象事業を逐次増加させていくことが現行法として可能な方法であろうが、1人の加入で直ちに協業対象事業になるか否か疑問が残る。
     ・競業禁止について
      経営戦略上の関連会社等の場合でも抵触するか。同業の関連会社を設立し役員になることは往々にしてあることと思う。
     ・別会社への施設貸与について
      組合事業として可能か。
     ・新規事業の展開について
      新規事業を実施する1人の加入で協業対象事業になり得るか。その場合、組合員全員で別会社を設立、実績をあげながら逐次協業対象事業を追加していくことも可能か。
     ・消費者を対象とした事業の実施について
      料理講習会等需要拡大を目的とした事業は、関連事業もしくは付帯事業に該当するか。
    1.商法においては、会社の取締役が自己又は第三者のために行う競業取引について競業避止義務を定めているが、他の会社の取締役となることは禁止しておらず、取締役は同業の営業を目的とする他の会社の取締役となることができる(この場合でも、取締役が同種の営業を目的とする他の会社の代表取締役になるときは、当然第三者のために競業取引をなす場合を生ずるから、競業避止義務が生じ、取締役会の承認を得なければならないと解されている。)。中団法においては、協業組合の役員のみでなく、組合員全員及び組合たる法人の役員が自ら競業事業を行うことを禁止し、また競業事業を行う会社の役員になることも禁止している。これは競業禁止義務が協業組合制度の本旨である「事業の統合」を担保するものであり、事業の統合の当然の帰結として、統合した事業については参加事業者が全て組合に依存すべきものであるからである。競業事業を自ら行うことばかりでなく、競業事業を行う会社の役員になることをも禁止したのは、それを容認することによって、別会社の設立などにより事業の統合という立法の目的が著しく減殺されてしまうことを避止するためである。
     貴照会のように、協業組合の組合員全員出資による関連会社を設立して、組合員あるいは組合員たる法人の役員がその関連会社の役員になる場合であっても、その会社が協業事業を行うことは事業の統合という立法の目的を減殺することになり、協業組合制度の主旨からして、競業禁止の規定に抵触するものと考える。
     なお、競業禁止の解除については、中小企業庁組織課長回答(平成3年6月13日付け)において、協業前に受けていた受注残の処理や特定組合員の特殊商品などの場合ばかりでなく、組合と組合員の行う事業が「同種の事業であっても、組合及び組合員の提供する製品やサービスについてその種類が異なるなど、双方の事業経営に実際上競合関係が生ずることなく、また競業禁止を解除することが組合及び組合員の事業経営の強化に資することになる場合等」においても可能であるとされているので参考にされたい。
    2.別会社への施設貸与について
    協業組合の行いうる事業は、協業対象事業と協業対象事業に関する事業及びこれらに付帯する事業に限られている。一般的に、豆腐・油揚げの製造販売を協業対象事業とする組合が行う施設貸与は、協業対象事業でないことはもちろんであるが、関連事業あるいは付帯事業にも該当しない。しかしながら、協業対象事業及び関連事業を遂行するために必要な範囲内において、貴照会のように、関連会社に組合施設の一部を貸与することは差し支えないと考える。
    3.新規事業の展開について
    協業組合の協業対象事業は「組合員又は組合員になろうとする者がその営む事業の部類に属する事業」を協業組合の事業として行うものであるから、協業対象事業を追加拡大しようとする場合、現在の組合員の中には追加しようとする事業を営んでいる者がいなくても、当該事業を営んでいる者を新規に加入させることによって、すなわち「組合員になろうとするものが営む事業を」統合するという形で追加拡大することができる。この場合、新規に加入する組合員の数は1人でも差し支えない。したがって、貴照会のように、組合が現在行っていない事業を行う別会社を組合員全員の出資により設立し、その会社を加入させることによって組合の協業対象事業を追加拡大していくことも制度上可能である。
     なお、中小企業庁指導部長通達(平成3年6月13日付け、3企庁第1326号)において、協業組合の事業転換の認可の弾力的な運用が図れるようになり、設例のようなケースは事業転換の1つとして可能であると考えるので参考にされたい。
    4.料理講習会等需要拡大を目的とした事業の実施について
    貴照会の豆腐・油揚げの製造販売を協業対象事業とする協業組合が行う料理講習会等需要拡大を目的とした事業は、付帯事業に該当すると考える。付帯事業は、本体となる事業が廃止されたときには、独立して行うことができないことに注意されたい。

設立

  • (1)異業種による協業組合設立について(1)
    下記の事業者が、全部協業により協業組合を設立しようとする場合に、認可することの適否について。               
                 

     【組合員予定業種及び人員】
       ・燃料販売業のみ           2人
       ・燃料と米穀の販売業         6人
       ・燃料と住宅機器(風呂等)の販売機  2人
            計            10人
    このように、組合員になろうとする者の事業に多少の差があっても、協業組合の事業(協業対象事業)を燃料、米穀及び住宅機器の販売業とすれば、全部協業の協業組合は可能である。                       
    ただし、このような組合の設立を認可する場合は、異種の業種を協業する効果について十分審査する必要があると考える。                                
  • (2)異業種による協業組合設立について(2)
    本県において、業種を各々異にする業者(豆腐、味噌、こんにゃく、うどん)による協業組合設立の動きがあるが、これらの業者は、製造過程の一部、販売先、包装・荷造、保管、配送、原材料等が一部共通しており、各参加者に専門分野があり一国一城主精神の活用により組合運営上好結果が期待できる。公害処理の集約化が図れる、生産、配送等、衛生面の集約化が図れる、販売先、労働力の相互利用が実現できる、原材料の一括仕入れができる、多角的経営による経営の安定化が図れる、等の効果をねらった協業化である。                                
    ご照会のような組合員になろうとする者の事業の種類が各々異なっている組合でも、中団法第5条の7の規定により、当該各事業は協業対象事業になり得るものであり、その点では協業組合を設立し得るものと考える。
    また一方、協業組合は中団法第5条の2に規定する「企業規模の適正化による生産性の向上等を効率的に推進」すること等を目的としており、これを充たすことが設立の要件であるので、ご紹介の事例がこの要件を満たすものであれば設立は可能と考える。
    なお、本事例の場合は、同業種による協業ではなく、異業種、かつ、業種間の関連性が少ない者による協業であるので、それが生産性向上等の要件に該当するか否かは中団法第5条の17に規定する協業計画書等に具体化されるものによらなければ早急には判断しかねるので了承されたい。          
  • (3)ブランド統一等を目的とする協業組合設立について
    本件の清酒醸造業界においては構造改善の動きが活発化し、その一環として共同化等が検討されているが、これにつき次のような場合は事業協同組合又は協業組合の設立ができるか、ご照会する。
    (1)共同ビン詰めを行い、それを統一ブランドにより共同販売する。
    (2)ブランド統一し、共同ブランドで販売する。

    共同ビン詰めを行い、共同ビン詰めしたものを統一ブランドで共同販売する場合は、事業協同組合、協業組合いずれによっても実施可能である。
    しかし、共同ビン詰め又は共同販売を伴わず、ブランドの統一のみである場合は、それは協業対象事業となり得ず協業組合の設立はできない。ただし、事業協同組合によるのであれば、それは販路の維持開拓事業等として行え、設立も不可能ではないと考える。

加入

  • (1)協業組合の加入方法について
    豆腐の製造販売を行う協業組合の組合員が、自らは引退し、事業を子供に譲りたいと考えているが、現在、事業は全部を協業組合で行っているので、事業を譲るためには、本人に代わり、子供を協業組合に加入させなければならない。                                       
    組合員の子供を協業組合に加入させることはできるか。子供は現在会社勤めをしており、豆腐の製造販売は行っていない。
    協業組合への加入には、原始加入と承継加入の2つの方法がある。さらに、承継加入は、相続加入、組合員である法人の解散に伴う役員の承継加入、持分譲渡加入に分けられる。
    1.原始加入とは、組合員資格を有する事業者(資格事業を営んでいる者)が組合の成立後、新たに組合に加入することをいう。この場合、組合員となる(組合員たる地位の取得)ためには、加入の申出をして、組合の承諾(総会は特別議決)を得た後、出資金の払込み(加入金がある場合は加入金の支払いを含む)を完了することが必要である。
    2.相続加入とは、自然人である組合員が死亡した場合、その相続人が組合に加入することをいう。この場合、相続人は定款に定める期間内に加入の申出をすることが必要であるが、組合の承諾を要しない。相続人が複数人いる場合には、組合員たる地位を承継できるのは、相続人のうち1人に限られる。また相続人が資格事業を営んでいるか否かは問われない。相続人は、組合員(被相続人)の死亡等(相続開始時)に組合員となったものとみなされる。
    3.法人の役員の承継加入とは、組合員である法人が解散した場合、その法人の代表権を有していた役員の1人が組合員となることをいう。その場合法人は、解散時に、法人を代表する役員であった者の1人に持分払戻請求権の全部を譲り渡す。役員であった者は、定款で定める期間内に組合に加入の申出をし、かつ、組合の承諾(総会の特別議決)を得ることが必要である。役員であった者が加入時に資格事業を営んでいるかどうかは問われず、法人の解散時に組合員となったものとみなされる。
    4.持分譲受加入とは、組合員以外の者が既に組合員となっている者から、当該組合員の持分の全部又は一部を譲り受けることによって組合に加入することをいう。持分譲受加入には、①非組合員であって組合員資格を有する事業者が既に組合員となっている者からその持分の全部又は一部を譲り受けて加入する場合と、②組合員の推定相続人(現状のままで相続が開始されれば直ちに相続人となるはずの者)の1人が組合員から持分の全部を譲り受けて加入する場合の2種類がある。
    組合員でない者が持分を譲り受ける場合は、譲受人は資格事業を営み(組合員資格を有し)、 持分を譲り受けて組合に加入しようとする事業者でなければならないのが原則であるが、推定相続人の場合は資格事業を営んでいる必要はない。いずれの場合も、組合員は持分譲渡について総会の承諾(総会の特別議決)を得る一方、持分の譲受人は加入について組合の承諾(総会の特別議決)を得なければならない。持分の譲り受けであるから出資金や加入金の払込みは不要である。協業組合への加入の方法は、以上のとおりであるが、設問の場合は、推定相続人の持分譲受加入によって組合員の子供に事業を譲る(協業組合へ加入させる)ことができる。
  • (2)2以上の工場を有する企業の2以上の協業組合への加入の可否
    製氷業の業界であるが、氷は地域間の流通がほとんど行われない商品であるため、大規模企業では中小規模の生産設備を全国に散在させている。本業界で経済圏単位ごとの協業組合が設立された場合に、その大企業が1つの協業組合に加入したときは、当該大企業の経済圏を異にする他の工場まで律せられることになり、本業界の実態と遊離することになる。
    そこで、中団法第5条の8により、総会承認による競業禁止の解除並びに2つ以上の組合への加入により上記の問題の解決を図りたいが、ご見解を承りたい。
    経済圏を異にして2つ以上の工場を有する企業が各経済圏単位に設立される協業組合に加入した場合、当該企業の行っている協業対象事業は、他の経済圏で行っている事業についても競業が禁止されることになる。
    また、当該企業が1協業組合に加入すれば、他の経済圏で行っている協業対象事業について競業の禁止を解除しない限り当該事業を行うことができず協業組合に加入することはできない。
    なお、総会の承認を得ることにより競業の禁止が解除できるが、協業を効果あらしめるためには、協業組合の行う事業と実質的に競合する事業はこれを禁止しているものであり、解除できる場合は受注残の処理等極めて例外的な措置として認められているものである。したがって、製氷業の場合について競業の禁止を解除することが組合員の生産性の向上等を阻害しないものであるかどうかを判断する必要がある。
  • (3)協業組合と事業協同組合の相互加入、協業組合連合会の可否
    協業組合は事業協同組合に加入できるか。また、事業協同組合及び企業組合は協業組合に加入できるか。協業組合の連合会をつくることはどうか。                     
    協業組合も一個の事業者として、当然事業協同組合に加入できるが、事業協同組合や企業組合が協業組合に加入することはできない。なぜなら協業組合の組合員となる資格を有する者は「加入の際に定款で定める事業の全部又は一部を営むもの」とされている(中団法第5条の5)。すなわち、営利を目的として事業を行っている者でなければ協業組合の組合員になれないことになっているが、事業協同組合も企業組合もともに営利の目的で事業を行うものではないからである。なお、実際問題としても競業禁止義務が組合員全体に課せられている協業組合に事業協同組合や企業組合が加入できることにすると協同組合の共同利用や企業組合の従事義務との関係に矛盾が出てくる。
    次に協業組合の連合会がつくれるかどうかについては、中団法は協業組合連合会という制度を設けていないので、これをつくることはできない。
    つまり、協業組合は、事業協同組合のように組合員の利用によって事業活動を行うものでなく、その限りでは会社と同様の事業体であるので、連合会制度が設けられていないのである。したがって、協業組合が他の協業組合とともに共通の利益増進等を図ろうとする場合は、事業協同組合の活用によることとなる。

議決権・選挙権・投票

  • (1)議決権・選挙権に関する定款記載方法について
    議決権、選挙権に出資割制を認める場合の定款の記載方法については、模範定款例に「組合員は、それぞれの出資持口数に何を加えた議決権及び選挙権を有する。」とあるが、加えるべき数は整数によらなければならないか。整数を加えることとすれば、議決権、選挙権については、出資口数割の議決権等の総数は平等割の議決権等の総数を超えることができないので、組合員の移動、出資口数の変更等によって、定款変更しなければならないケースが多くなる。
    協業組合の場合は、平等の議決権等のほかに、出資に比例して議決権等が認められ、出資比例議決権数が制限されているので、定款の記載について、質問のような整数による確定数を記載すると、組合員の移動や出資の増加等によって、この制限を超える事態も当然予想され、定款変更がその都度行われなければならないことになる。
    これについての定款規定は、議決権等を行使する際に各組合員が有している議決権等を算出できるものであればよく、必ずしも整数による確定数を記載する必要はないと考える。
    この場合に、定款の記載をどのようにすればよいかであるが、1つの参考を示すと、次のような内容でよろしいのではないかと考える。
    〔例〕
    第〇条 組合員は、それぞれの出資持口数に、各組合員に平等に与えられた議決権数を加えた数の議決権及び選挙権を有する。
    2 前項の各組合員に平等に与えられる議決権数は、出資総口数を組合員の総数で除して計算した数より大きく、その数に最も近い整数とする。
    (注)平等割の議決権(選挙権)数を、前項よりも多くする場合は、第2項を次のように記載する。
    2 前項の各組合員に平等に与えられる選挙権数又は議決権数は、出資総口数を組合員の総数で除し、その除して計算した数に何を加えた数とする。この場合において、小数点以下の端数がでたときは切り捨てるものとする。
    (注)加えるべき数は、平等割の議決権数等を何個にするかによって適宜記載する。
  • (2)1人1票制の場合の累積投票等について
    役員の選挙権を1組合員1票とする協業組合では、理事の選挙に累積投票を採用できないか。また、累積投票を監事の選挙に採用できないか。                                 
    累積投票とは、協業組合で理事を2人以上選任するときに、各組合員に1選挙権につき選挙される理事の数と同様の選挙権(3人の理事を選出する選挙のときは、1選挙権につき3票)を与え、各組合員がその選挙権を1人に集中して投票しても、また数人に適宜に分散して投票することもその自由に任せ、その結果得票数の多いものから順次所定の員数までのものを当選者とする制度をいう。このように累積投票制は1人の組合員が複数の投票を行うことになるので、役員の選挙について1人1票をとる協業組合では累積投票制を採用することはできないと解されている。
    次に監事の選挙についても累積投票制を採用できないかとのご質問であるが、監事の選挙については累積投票を採用することはできない。累積投票は、理事(株式会社では取締役)の選挙についてのみ採用できる選挙の方法である。累積投票は少数派の組合員にもその有する選挙権数に比例して理事を選出する機会を与えるために採用された制度で、少数派の保護を目的としている。監事は、組合の会計に不正や誤りがあるかどうかを監督することを職務とする機関で、公正、中立でなければならない。少数派組合員の保護を目的とする累積投票は監事の選挙にはなじまない選挙方法であるわけである。

組織変更

  • (1)組織変更の際の役員任期について
    次のことについて、本県と〇〇地方法務局との間に疑義が生じており、教示願いたい。
    (本県の見解)
    事業協同組合から協業組合へ組織変更した場合の役員の任期は、中団法並びに同法において準用する中協法に特別の規定はないので「1年以内」という設立当時の任期の特例は適用されず定款に定める任期となると考える。
    (〇〇地方法務局の見解)
    中団法第98条の2第2項により、組織変更の場合の登記については中協法第97条第1項の規定が準用されるので、登記上は組織変更といえども一方の組合の解散及び他方の組合の設立として扱われる。
    したがって、役員の任期についても、組織変更の場合であっても、中協法第36条第2項の規定により1年以内としなければならない。
    事業協同組合から協業組合へ組織変更した場合における役員の任期については、貴見のとおり組合の新設ではなく、中団法第5条の23で準用する中協法第36条第2項の規定(役員の1年以内の改選)は適用されず、組織変更後1年以内の役員の改選は義務づけられないと考える。
  • (2)組織変更の際の役員改選について
    事業協同組合から協業組合に組織変更したときは役員の改選をしなければならないか。事業協同組合から商工組合に組織変更した場合には役員の改選をしなければならないことになっているか。
    貴見のとおり事業協同組合から商工組合への組織変更が行われた場合(商工組合から事業協同組合への組織変更が行われた場合も同じ)には、中団法第98条により登記をした日の翌日から起算して、90日以内に役員の全部を改選しなければならないことになっているが、事業協同組合から協業組合に組織変更したときは、役員の改選をする必要はない。ただ、役員の改選をする必要がないというのは法律上のことであって、組合運営という立場からすれば協業組合に組織変更した場合には多くの場合、組合の趣旨、目的やあり方がかなり大幅に変化することになるし、新しい組織による組合運営が始まるわけであるから、この際、役員の改選を行い心機一転するのも一方法と考えられる。
  • (3)組織変更の際の事業要件について
    事業協同組合から協業組合に組織変更が認められているが、組織変更の場合は、新規設立より協業対象事業の要件が緩やかと聞いている。これを具体的に説明されたい。
    協業組合への組織変更については、中団法第95条に規定されており中協法第9条の2第1項第1号の事業を行っている事業協同組合は、組織変更によって協業組合になることができることとなっている。また、この場合、事業協同組合が行っている上記第1号の事業は、主務大臣が定めるものに限って、協業組合の協業対象事業とみなされることとなっている。この主務大臣が定めるものについては、関係主務大臣連盟の通達(昭42・10・12)が出ており、前記第1号の事業のうち、協定等の調整事業だけが除外されている。
    したがって、価格協定などの調整事業を除いて、他の第1号事業のすべて、例えば、共同生産(加工)、共同販売、共同購買等組合員事業の主要部分の共同事業に限らず、共同保管、共同運送、あるいは事務代行、共同宣伝等の販路開拓事業などを行っていても、協業組合への組織変更が可能であり、それがそれぞれ協業対象事業とみなされることになる。
    しかし、調査事業を除いて、第1号事業であればいかなる事業を行っていても、組織変更が認められるかというと、協業組合になるためには、その事業が、技術の向上、品質の改善、原価の引き下げ、能率の増進等生産性の向上に寄与するものであることが必要とされているので、この要件に適合するものでなければならない。
    この点、新設の場合の要件と同じとも受けとれるが、例えば織物業者が現在自分たちが実施していない染色の事業を共同して行いたい場合に、協同組合ならば行うことができるが、新設である限り協業組合では実施できないことになる。しかし、既に協同組合で染色事業を行っていれば、染色事業が協業の対象事業とみなされ、協業組合になることによって染色事業の生産性向上が図られると認められれば、協業組合に組織変更ができるわけであるから、この点からは、新設の場合よりも組織変更による方が、協業組合になることができる要件が緩やかといえるであろう。
  • (4)組織変更の際の解散登記等について
    事業協同組合や企業組合が協業組合に組織変更した場合、その事業協同組合や企業組合の解散登記をする必要があるか。なお、解散登記が必要な場合は清算人を選任しなければならないか。
    一定の要件を備えた事業協同組合、事業協同小組合及び企業組合は、組織を変更して協業組合になることができるが、この組織変更というのは、事業内容、運営など目的やあり方が異なる別の種類の法人に、解散、設立という手続を要しないでなれることであり、協業組合になっても法律上同一の人格が事業協同組合等から継続されることである。
    普通、別の種類の組合になるためには、それまでの組合を解散し清算してから、改めて新規の設立手続をしなければならないわけであるが、それでは無駄な費用と手続がかかり、そのうえ一時事業を中止しなければならないので、その弊を避けるために、特別の場合に限って組織変更という制度が設けられており、現在協業組合への組織変更のほか、事業協同組合と商工組合相互間の組織変更が認められ、また会社では、株式会社と有限会社相互間及び合資会社と合名会社相互間の組織変更が認められている。
    したがって、組織変更の場合は解散、設立という手続を要しないから、清算することも必要でなく清算人を選任しなくてもよいことになる。
    しかし、登記については、中団法において組織変更の登記をすべきことを規定しており、(第98条の2)、また登記が組織変更の効力発生要件ともなっている(第95条第6項)。したがって、実際に解散が行われなくても、事業協同組合等においては解散の登記をしなければならないと同時に、協業組合においても設立の登記を行わなければならないこととなっている。
    なお、この登記手続について若干紹介すると、組織変更の認可の日から2週間以内に、解散と設立の登記を同時に申請する必要があり、添付書類については、解散登記の場合は組織変更のあった総会の議事録及び認可書、設立登記の場合は定款、認可書、総会等の議事録(代表理事選任を証すべき書面として添付する)、出資総口数を証する書面、その他通常の解散、設立の登記と同様の書面を添付することとなっている。この場合、解散、設立の両方の登記を同時に申請するので認可書などが重複することがあるが、その場合は、「設立登記申請書添付の書面を援用する」と付記すれば、重複する書面の添付を省略することができる。また、代表理事、出資総口数等が組織変更の際変動がなかった場合は、「〇〇の書面は〇〇協同組合の登記簿の記載を援用する。」と申請書に付記すれば、代表理事の資格を証する書面としての総会の議事録等の添付を省略することができる。なお、組織変更の際代表理事に変更があった場合は、解散の登記の申請は、新たに選任された協業組合の代表理事が行うこととなっている。
  • (5)組織変更の場合の不動産登記について
    事業協同組合から協業組合に組織変更した場合に、協業組合名義で登記した固定資産の名義変更登記に係る登録免許税の課税の有無並びにその根拠について、ご回報願いたい。                
    事業協同組合名義で登記している不動産の協業組合名義への変更の登記については、不動産1個につき1,000円の登録免許税が課税される。(登録免許税法上の取扱いは、「不動産の登記の更正の登記」に該当することとされている。-登録免許税法別表第1中の-不動産の登記の(11))。
    (注)本件については、組織変更に係る不動産登記が不動産の移転の登記か登記名義人の表示変更の登記か疑義のあるところ、後者の登記とされたものである。なおこれに関しては、昭和25年6月16日付民事1,612号及び昭和29年11月16日付民事甲2,402号の通達がある。
  • (6)組織変更の際の課税上の取扱いについて
    中団法に基づく協業組合については、中協法に基づく事業協同組合からの組織変更が認められている。
    これら組合に対する法人税の取扱いは、事業協同組合については協同組合等として、協業組合について普通法人として扱われている。
    ついては、事業協同組合が、事業年度途中において協業組合に組織変更した場合に、次の事項について課税上どのように取り扱われるか疑義があるので照会する。
    1.税率の適用
    2.事業協同組合であった期間に対応する事業分量配当に対する法人税法第61条の規定の適用
    事業協同組合が事業年度中途でその組織を協業組合に変更した場合には、組織変更の日を含む事業年度(以下「組織変更年度」という。)における法人税の課税上、その法人は、法人税法第2条第9号に規定する普通法人に該当することになる。
    したがって、組織変更年度においては法人税法第61条(協同組合等の事業分量配当等の損金算入)の規定の適用はないし、組織変更年度の所得に対する法人税率は普通法人の税率が適用される。
  • (7)組織変更の際の青色申告の届出について
    青色申告の承認を受けている組合が協業組合に組織変更した場合、改めて青色申告の承認を受ける必要があるか。                                              
    組織変更前の組合と組織変更後の協業組合とは同一人格と考えられるので、組織形態が変わっても改めて青色申告の承認を受ける必要はない。しかし、組合の名称の変更が行われるので、変更した名称を税務署に届け出ておかなければならない。

その他

  • (1)現物出資資産の範囲とその時期について
    1.現物出資の目的たる財産は、賃貸対照表上の資産に限られるか。協業を目的とする組合で、組合員の借入金を肩代わりし、一方機械等の資産も合わせて組合に持ち込み、差し引き正味財産を出資として取り扱おうとするものである。この方法は、差し支えないか。適当でないとすれば、他の方法をお教え願いたい。
    2.事業協同組合が協業組合に組織変更する時点において、現物出資制を取り入れることは可能か(組織変更認可申請の変更定款に現物出資制を入れることの是非)。これについては、次の2つの意見があると思うがどうか。また、登記の方法についてはどうか。
     ① 改正中団法第95条第2項に、定款、事業計画の変更を決めるとしている。現物出資制の採用も一種の定款変更であるから同時に行っても差し支えない。
     ② 組織変更認可は組織変更に限るものであるから、別件として扱うべきである。
    1.現物出資の対象となるものは組合の賃貸対照表に表示し得る資産であるが、ご照会の場合は負債を伴う資産の出資という点に若干疑問点が考えられる。
    現物出資に関し、その対象となる機械等の資産と組合が肩代わりする負債に対応する資産がそれぞれ別個のものとして処理すれば問題ないと考える(例えば、2台の機械について1台を現物出資とし1台を肩代わり充当分とする。あるいは正味財産相当額を現物出資とする。)が、別個のものとして処理できない場合、例えば分割できない1台の機械についてその一部分を現物出資に他の部分を負債充当分に当てることとなる資産については、1個として働くものを分割する形となるものであり、現物出資の性格から問題があるのではないかと考える。
     なお、この場合に、当該機械のすべてを出資し、負債分を組合で肩代わりする代わりに組合員への貸付金とする方法等が問題のない処理方法と考える。
    2.組織変更の際の定款変更は、組合の名称、事業の変更、地区の廃止等組織変更に伴い当然変更しなければならないものを指し、その他の事項の変更は別個のものと解する。
     しかし、このことは、組織変更時における組織変更上当然必要とされる事項以外の事項についての変更を妨げるものではないと考える。
     したがって、組織変更認可申請の変更定款に現物出資制を付加することは可能と考える。
     当期においても同様の考え方から同時に申請しても差し支えないものと解する。
  • (2)配当に対する税制上の取扱いについて
    協業組合は、出資配当のほか、どのような方法でも利益の分配ができると聞いているが、これに対して課税面ではどう扱われるか。                                     
    お尋ねのように、協業組合は、定款に規定すれば、いかなる方法の分配も行うことができる。なお、定款に定めなければ出資配当に限られることになるが、出資配当についても、事業協同組合等のように年1割以内という制限がなく、どのような額の配当もできる。
    したがって、協業前の各組合員の取扱実績に応ずる配当や、最低保障的に各組合員平等割の配当、あるいは協同組合の利用分量配当のように、組合との取引量に応ずる配当なども可能である。もちろん、1種類だけでなく、出資配当と平等割配当というように、各種の配当を組み合わせて配当することもできるわけである。
    これら分配に対する税の取扱いは、すべて配当所得として取り扱われることとなっている(所得税法施行令第62条)。
    したがって、配当所得とされる結果、協業組合がこれらの配当をした場合は、法人税について配当分に対する軽減税率が適用されることになる。また、これら配当を受けた組合員については、組合員が法人の場合は、一定のものについて受取配当の益金不算入の適用が受けられ、個人の場合は、配当控除、源泉分離課税の対象となるほか、事業税の対象から除外されることとなる。
    なお、協業組合が組合員に、これらの配当を交付する場合には、20%の源泉徴収をする必要がある。
  • (3)協業組合の法人組合員が解散する場合の対応について
    甲製品の製造・販売を行う協業組合の組合員であるA株式会社が解散の意向を示している。A株式会社は、協業時から甲製品の製造・販売事業しか行っておらず、現在、法人の役員・従業員は、組合のそれぞれ役員・従業員となっている。現在でも法人は、名ばかりの存在であり、組合にとっても、仮に法人が解散しても何ら支障がないように思えるが、どのように対応したらよいか。
    協業組合は、組合員となる事業者が、従来営んでいた事業の一部又は全部を協業(統合)することによって、企業規模の適正化、技術水準の向上、経営管理の近代化等を推進することにより、生産性の向上等を図ろうとする組織である。この意味では、法人間の合併と同様な効果をあげることができるが、法人間の合併によって達成される「事業の統合」が、法人の解散を前提とするのに対し、協業組合による協業化は、複数の事業者の事業活動を一体化し、これを「協同して経営する」ことを意味しており、「協同して経営」して行く以上、加入事業者の法人格は、消滅させることができない。法人格の消滅は協同経営の主体がなくなることを意味するから、法人の解散は、協業組合においては法定脱退事由(中団法第5条の23)となっており、A株式会社が解散するならば、組合は脱退の手続をとらなければならないことになる。ただ、このような場合を救済するための措置として、中団法第5条の13では、解散法人の代表権を有している役員が組合の承諾を前提にその法人が有している組合員たる権利義務を包括的に承継できることとなっている。つまり、法人組合員が、解散時にその法人を代表する役員であった者の1人に持分払戻請求権を譲渡し、かつ、その者が、組合に対して加入の申し出をした場合は、加入資格を取得することとなる。この申し出を受けて組合は、総会の議決(特別議決)により、加入を承諾することができる。この承諾を得た場合、解散法人から持分の譲渡を受けたその役員は、解散した法人の有していた組合に対する権利義務を承継することとなる。お尋ねの場合は、このような方法で対応することもできる。
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