組合実務Q&A

掲載している事案ごとの考え⽅があらゆる事案についてそのまま適合するものとは限りません。
個別具体的な問題解決に当たっての参考資料としてご活⽤下さい。

1. 通則

名称

  • (1)組合の類似名称について
    事業協同組合の設立において、県の認可になったあとにおいても、下記のとおり中協法第6条第3項において準用する商法第19条から第21条までの類似名称に抵触するため、登記できず支障をきたしているので何分の指導を賜りたい。
    (1)既設組合  静岡漆器工業協同組合
        申請分  静岡県漆器工業協同組合
    (2)既設組合  静岡写真材料商協同組合
        申請分  静岡カメラ商協同組合

         参考  静岡県精麦工業協同組合
             静岡県精麦協同組合
             静岡県茶商工業協同組合
             静岡茶商工業協同組合
    ご質問の「静岡漆器工業協同組合」と「静岡県漆器工業協同組合」が、中協法第6条第3項において準用する商法第19条から第21条まで(商号)の規定に抵触するか否かについては、法務省より類似名称である旨示されているので了知されたい。
    同一市町村内に同一若しくは類似の名称を有し、かつ、概ね同様の事業を行う組合が併存することは、第三者との取引上、相手方に不測の損害と不便を及ぼすおそれが極めて多いと判断されるものであるから、「静岡県漆器工業協同組合」の名称を変更させる必要があると考えられる。
    また、「静岡県写真材料商協同組合」と「静岡カメラ商協同組合」については、上述の趣旨から類似名称にならないと解され、法務省においても同様の見解を示しているので了知されたい。
  • (2)地区を表わしていない組合名称の是非
    〇〇工業協同組合より、その名称を「日本〇〇工業協同組合」と改めたい旨定款変更認可申請の相談があったが、この組合は東京都をその地区としており、前記のごとく「〇〇組合」を「日本〇〇組合」と改める点に関しては、組合の実態を現わす上において不適当と考えられる。
    しかし、この認可申請に当たっては格別の法的根拠もないようなので、それに対するご見解をお示し願いたい。
    設問については、中協法上は、これを禁止する根拠はないが、組合指導の面からすれば、貴見のごとく、東京都の区域を地区とする組合が全国を地区とする組合であると一般通念上誤認されるような名称を使用すること自体、好ましいことではなく、また同様の組合が他にも設立されていると考えられるので、これとの均衡を考慮し、でき得れば組合の実態にふさわしい名称を使用するようにするのが適当と考える。

組合員・組合員資格

  • (1)小規模事業者の判断について
    今般、設立途上の事業協同組合の設立同意書の中に、中協法第7条に規定する小規模事業者の範囲を超えた事業者が含まれているが、どのように対処したらよいか?
    中協法に基づく事業協同組合の組合員となることのできる者は、小規模の事業者であるが、その規模の基準は、中協法第7条に規定されているように、資本の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業者については1億円)を超えない法人たる事業者、又は常時使用する従業員の数が300人(小売業を主たる事業とする事業者については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については100人)を超えない事業者となっている。
    しかしながら、この基準を超える事業者であっても、実質的に小規模事業者であると認められれば組合員になれることになっている。したがって、設立途上の設立同意者については、その事業者の従業員数、資本の額又は出資の総額並びに資本力及び市場支配力等諸般の実情を勘案して発起人が小規模事業者と判断した場合には、いったん組合員たる地位を与え、組合成立後に公正取引委員会に届け出ることとなる。
    この場合に公正取引委員会から実質的に小規模事業者でないと最終的に認定されるまでは、その組合員又は組合に対して特別の措置がとられることはないのである。
  • (2)支店の組合員資格について
    小売業を営む者で組合の地区内に支店があって、当該支店は従業員50人以下である。
    地区外の本店は従業員50人以上で、しかも資本金が1,000万円を超えている場合、この支店は組合員資格に疑義があるか?
    疑義があるとすれば公正取引委員会に届け出る必要があるか?
    また、その場合の手続方法は?
    組合員資格に関する使用従業員数の数は、本支店合わせたものとされているから、ご質問の場合明らかに50人を超え、しかも資本金が1,000万円を超えているので、公取委への届出が必要である。
    ただし、組合員たる資格は従業員数、資本の額又は出資の総額が絶対的要件でなくその事業者の資本力、市場支配力、組合の内容等諸般の実情を勘案して判断すべきである。
    なお、当面その判定は組合自体が行うことになる。
    なお、公取委への届出の様式及び内容については、「中小企業等協同組合法第7条第3項の規定による届出に関する規則」(昭和39年2月7日公正取引委員会規則第1号)に具体的に定められている。
  • (3)公正取引委員会への届出について
    中協法第7条第1項第1号に規定する中小企業者の規模を超え、数カ所に支店をもつ業者が、各支店所在地に存在する組合に加入する場合、公正取引委員会への届出は、本店所在地の組合のみでよいか?
    中協法第7条第3項の届出義務は、組合に対して課せられたものであって、組合員が他の組合に重複加入している場合でもそれぞれ加入している組合に届出義務がある。
  • (4)農業者の組合員資格及び事業所の定義について
    管内の群を一円とした農業者で、乳牛飼育及び養鶏を行う者が、飼料の共同購入、生産品の共同販売等を主な共同事業として、組合を設立する旨の認可申請があったが、定款に次の疑義があるので回示願いたい。
    (定款)
    第8条 本組合の組合員たる資格を有する者は左の各号の要件を備える小規模の事業者とする。
    1 畜産を行う事業者であること。
    2 組合の地区内に事業場を有すること。
    (1)1号(畜産を行う事業者であること)についてであるが、加入申込者100名は全員農家でそれぞれ乳牛1、2頭を所有し、乳牛の販売をしているもの、又は養鶏を行い卵を販売しているもの等であるが、加入資格定款記載は畜産を行う事業者としてあり、これを認めて差し支えないか。
    (2)2号(組合の地区内に事業場を有すること)については、組合員になろうとする者全員が組合を通じて牛乳及び鶏卵の共同販売を行おうとするものであるが、事業場とはこれら養畜者(組合員になろうとする者)の畜舎等を事業場として認めて差し支えないか。
    (1)農家であっても、その者が畜産又は養鶏の事業を行うものであるときは、畜産又は養鶏の事業者として事業協同組合を組織することは差し支えない。なお、畜産には養鶏を含まないと解されるので説例の「畜産を行う事業者」は「畜産又は養鶏を行う事業者」とするのが適当である。
    (2)畜舎等を事業場と解しても差し支えない。
  • (5)協同組合連合会への他の法律に基づく協同組合の加入について
    協同組合連合会に加入することができることとなっている中協法以外の法律に基づく協同組合にはどのようなものがあるのか。
    協同組合連合会の会員たる資格を有する者については、中協法第8条第5項で、連合会の地区と全く同一であるか又はその区域内の一部のみを地区として、①中協法に基づいて設立された組合(企業組合を除く)及び連合会並びに②他の法律に基づいて設立された協同組合とされ、定款に組合の種類を具体的に規定しておくことが必要である。
    つまり、①は事業協同組合、事業協同小組合、火災共済協同組合、信用協同組合、協同組合連合会を指し、②はその名称中に「協同組合」という文字を使用すると否とを問わず、およそ中小規模の事業者等構成員の相互扶助を目的とし、協同組合精神に基づき設立された組合及び連合会を指すもので、塩業組合、森林組合、消費生活協同組合、農業協同組合及びそれらの連合会がある。
    一方、中団法に基づく協業組合、商工組合や、酒税の保全及び酒類組合等に関する法律に基づく酒造組合、酒販組合等は、協同組合と本質的に性格を異にしており、協同組合ではないから会員資格に含めることはできない。
    また、商店街振興組合についても、中小規模の事業者のみが加入できることとなっていないので、加入資格はないものと解される。
    なお、水産業協同組合法に基づく漁業生産組合及び森林組合法に基づく森林生産組合は、企業組合とほとんど同様の性格を有する組合であり、企業組合については会社等と同様にそれ自体が一個の企業体であり、事業協同組合のように事業者の結合体ではないことから連合会への直接加入を認めるべきではないと解する。
    2 中協法に基づく協同組合連合会には、その行う事業の種類により、次の3つの種類に区分される。
    (1)火災共済協同組合連合会、再共済事業を行うために火災共済協同組合で組織する連合体であり、中協法第26条の2の規定により、火災共済協同組合以外の前掲各種組合には会員資格を与えることができない。また、この連合会は全国を通じて1つしか設立できない。
    (2)信用協同組合連合会、連合会自体の事業として信用事業のみを行う連合会である。法律解釈上では信用協同組合で組織する連合会という意味ではないので、信用協同組合以外の組合も、連合会の定款の加入資格として規定されていれば加入することができる。
    (3)(1)及び(2)以外の協同組合連合会 連合会の事業として再共済事業、信用事業以外の一般の経済事業又は非経済事業あるいはその両事業を行う連合会であり、事業協同組合で組織する連合会という意味ではないので、連合会の定款の会員資格として規定されていれば、事業協同組合以外の前掲各種組合も加入することができる。
    なお、上記2の(2)及び(3)の連合会の加入資格で「前掲各種組合」とは、1で説明した中協法の趣旨に沿わない組合まで含める意味ではないので念のため申し添える。
  • (6)組合加入資格と独占禁止法の関係について
    私どもの組合は、一般機械器具製造業者で組織する事業協同組合ですが、最近、当組合の地区内に本社を置く資本金1億5千万円、従業員350人の中堅機械メーカーA社が、当組合に加入の申し込みを行ってきました。
    当組合としては、組織強化のためA社を受け入れたいのですが、このように法律上の中小企業者の範囲を超える事業者であっても、組合に加入できるのでしょうか。
    この問題は、(1)事業協同組合の組合員資格と、(2)独禁法との関係、の2つの問題に分けて考える必要があります。
    (1)まず、事業協同組合(以下、「組合」という。)の組合員資格は、中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)第8条で「小規模の事業者」であることが定められており、いわゆる大企業は組合には加入できないことになっています。これは、組合が中小企業者のための組織制度として設けられているからにほかなりません。
     この小規模事業者の基準は、組合法第7条第1項第1号に定められており、製造業の場合は、資本金が1億円以下であるか、常時使用する従業員数が300人以下であることがその要件となっています。
     したがって、A社の場合はこの基準を超える事業者ということになりますが、ただ、小規模事業者であるか否かの判断は、この基準のみによって行われるものではなく、これを超える事業者であっても、その事業者の競争力、市場支配力、地域経済の実情等、諸般の実態を検討したうえで実質的にみて小規模の事業者と認められる場合は組合員となる資格を有することになります。
     そして、この実質的小規模事業者であるか否かの判断は、加入の申し込みがあった際に組合自身が行うことになります。
    (2)貴組合の判断によってA社が実質的小規模事業者と認定され、組合への加入が認められたとしますと、次に独占禁止法(以下、「独禁法」という。)との関係がでてきます。
     まず組合は、小規模事業者の基準を超える事業者が組合に加入している場合には、その事実が発生した日から30日以内に公正取引委員会に届け出ることが義務づけられています。
     独禁法は第24条によって、事業協同組合等については小規模事業者の団体として、同法を適用しないこととしています。
     つまり、組合はその小規模事業者団体性をもって独禁法の適用除外団体とされているところから、小規模事業者の基準を超える事業者が組合に加入しているときは、公正取引委員会はその事業者が実質的にみて小規模事業者でないと認めた場合には、独禁法の適用除外が解除され、その組合に同法が適用されることになります。
     先に述べた公正取引委員会への届出は、同委員会がこの認定を行うについてその事実を知るために義務づけられているものです。ただし、公正取引委員会のこの認定は、届出がなされた時に行われるのではなく、組合の共同行為に問題が生じたときに行われているようです。
     なお、認定により独禁法の適用を受けても組合は存続します。また、公正取引委員会は、この認定権の行使のほかに、組合法第107条により、常時使用する従業員数が100人を超える事業者が実質的に小規模事業者でないと認めるときは、その者を組合から脱退させることができることになっています(排除権)。
     この認定権と排除権の関係については、公正取引委員会は、認定権を行使して組合そのものに独禁法を適用するか、あるいはこの排除権を行使して大企業を排除するか、いずれか一方の措置を選択することができるものと解されています。
  • (7)商工会議所加入を組合員資格要件とすることについて
    会議所の会員であることを組合員の加入資格とすることは適当か?
    事業協同組合は、組合員の経済的地位の向上をはかるための組織として、組合員が共同して経済事業を行うものであり、したがって組合員の資格の決め方は経済的要件に限るのが適当で、「会議所の会員であること」と規定することは、経済的な見地からみて必要性が認められず、いわゆる資格事業という概念に該当しないと思われるので、適当でないと考える。
  • (8)社団法人会員であることを組合員資格要件とすることについて
    (財)不動産流通近代化センターの発足により、全国的に不動産業者の組織化が図られているが、(社)宅地建物取引業協会〇〇支部で、〇〇地区不動産協同組合の設立諸準備を進めているところであるが、定款の組合員資格に「社団法人〇〇宅地建物取引業協会の会員であること」と規定することはさしつかえないか?
    社団法人との協調の内容、組合の設立趣旨・事業内容等が判然としないので判断しかねる点はあるが、一般的には、次のような理由からご照会の事項は適当でないものと考える。
    (1)組合員の加入資格は、経済的条件に限るべきであるが、本件では、経済的にどのような必要性があるかあいまいである。
    (2)この場合、社団法人会員であることをもって、企業規模等の一定水準にある者を確保するという趣旨も考えられるが、これは、同水準にある非会員企業の加入を制限することとなる。なお、企業規模等による区別は、組合の趣旨から、特別の理由がある場合を除き、適当でないところである。
    (3)また、社団法人会員であることをもって、協調性・事業近代化への積極性等を判断する材料とする意図も考えられるが、かかる抽象的な事項を組合員資格として定款に規定することは適当でないところである。
    (4)組合が他の団体の意向等に左右されるため、組合の独立性・自主性が失われるおそれがある。すなわち、加入脱退、事業実施等が他の団体の意向に左右され、組織、事業運営両面が不安定となり、意見決定等における自主性がそこなわれるおそれがある。
  • (9)賛助会員制度について
    平成3年、中小企業庁の通達により、組合に賛助会員制度を設けることが認められたと聞きました。           
    私どもの事業協同組合でも、賛助会員制の導入を検討しておりますが、次の点についてご教示下さい。   
    (1)賛助会員の資格に制限はあるのでしょうか。                                                                               
    (2)賛助会員の組合事業利用は、員内利用扱いとなるのでしょうか。
    平成3年6月に、事業協同組合等の模範定款例の一部改正(平成3年6月12日付3企庁第1362号、中小企業庁指導部長通達)が行われ、賛助会員制に関する規定が定款例に次のように位置づけられました。
    第7章 賛助会員
    (賛助会員)
    第50条 本組合は、本組合の趣旨に賛同し、本組合の事業の円滑な実施に協力しようとする者を賛助会員とすることができる。ただし、賛助会員は、本組合において、法に定める組合員には該当しないものとする。
    2 賛助会員について必要な事項は、規約で定める。
    この賛助会員制が定款例に位置づけられた趣旨は、組合が賛助会員制を活用して外部関係者を組織化することにより、その協力と理解を得るなど、最近特に重要性が高まっている組合と組合外部との交流・連携を促進しようというものです。
    したがって、単なる資金集めのためにこの制度を活用することはできません。
    (1)賛助会員の資格は、定款例には、「本組合の趣旨に賛同し、本組合の事業の円滑な実施に協力しようとする者」となっており、このほかに特に資格についての制限はありません。
     賛助会員の資格は、組合の実情に応じて定めることができますが、外部関係者を組織化することにより、その協力・理解関係の一層の増進に資するという賛助会員制の主旨に留意し、その範囲を逸脱しないようにすることが肝要です。
     また、賛助会員は法に定める組合員には該当しないので、注意が必要です。
    (2)賛助会員は組合員ではないので、定款に定める組合事業を利用する場合は、員外利用に該当することになります。
     組合が賛助会員に対して行う利便の供与等の事業活動としては、例えば、
      ① 組合が作成または発行する資料等情報の提供、
      ② 組合または組合員との情報交換のための懇談会等の開催、
      ③ 賛助会員に対する指導・教育、
      ④ その他賛助会員制の設置目的を達成するために必要な事業等が考えられますが、これらの事業活動は、
     あくまで賛助会員制の主旨を逸脱しない範囲で行うことができるものです。
     また、組合が賛助会員に対して行うこのような事業活動は、直接の利用者が賛助会員であっても、その利用の態様が組合員の利用と競合する(組合員の利用に支障を与える)ものではなく、むしろ組合員への奉仕という組合本来の目的の達成のために必要な事業として行うのですから、この場合の賛助会員の利用は、員外利用には該当しないと解されています(平成3年6月12日付3企庁第1325号、中小企業庁指導部長通達「中小企業等協同組合法及び中小企業団体の組織に関する法律の運用について」において、員外利用の概念が明示されているので、参照されたい。)
     最後に、定款例では、賛助会員についての必要な事項を規約で定めることとしていますので、賛助会員制を導入する場合は、規約を設け、制度の内容を明確にしておくことが必要です(全国中央会作成の「規約例」を参照されたい。)。

その他

  • (1)組合の政治的中立の解釈について
    中協法第5条第3項において規定する「組合は、特定の政党のために利用してはならない」とは、政治活動を一切禁止しているものと解釈すべきか否か?
    中協法第5条は、中協法に基づいて設立される組合が備えていなければならない基準と運営上守るべき原則を規定したものであり、第1項で基準を、第2項及び第3項で原則を示している。
    設問の中協法第5条第3項「組合は、特定の政党のために利用してはならない」の規定は、通称政治的中立の原則と称されるもので、中小企業者等が共同して事業を行う組織である組合は、経済団体という基本的性格を逸脱して政治団体化し、特定の政党の党利党略に利用されることは、組合の本来の目的からみて当然のこととして禁止している訳である。
    しかし、本規定は、組合の外部勢力により、あるいは組合内部の少数者によって、組合が政治目的のために悪用されることを防止する趣旨であり、したがって、総会等で特定候補者の支持を決議し、その者への投票を組合員に強制すること等を禁じているものと解されるので、組合の健全な発達を図るための例えば国会等への建議、陳情等までも禁止する意味をもつものではない。
  • (2)組合役職員の政治活動について
    「組合は、特定の政党のために利用してはならない」という規制(中協法第5条第3項)以外に、中協法には特に規定していない。
    したがって、その趣旨に反しない限り、組合の役職員は、公民として有する政治活動は規制されないと解され、また、公職の候補者となることについても、道義上理事会の同意を求めるなり、就業規則の定めるところにしたがい最高責任者の許可を得た範囲で行うことについても同様禁止事項に該当しないものと解されるが、見解を承りたい。
    中協法第5条第3項の趣旨は、組合の外部勢力により、あるいは内部の少数者によって組合が政治目的のため利用されることを防止することにある。
    具体的な内容としては、「組合の名において」特定の公職選挙の候補者(組合の役職員が候補者である場合を含む)を推せんしたり、あるいは総会等において特定の候補者の推せんや特定政党の支持を決議することなどが該当すると解する。
    したがって、組合の役職員が、本条の趣旨に反することなく、個人の立場で政治活動を行い又は、公職選挙に立候補することは何ら差支えなく、憲法上認められた国民の権利として当然のことと考える。
  • (3)組合が会社・財団等に対して行う出資・出捐の可否について
    最近の組合員ニーズの多様化・高度化等に伴い、組合は従来より一層広範でかつ多面的な事業展開を要請されている。このような中で、組合が組合員のニーズに対応しようとする場合、組合単独で行うよりも他の組織と連携して行った方が効率的であるもの、又は連携しないと実現し得ないもの等もあり、組合が出資・出捐という方法・手段により、連携する組織に関与し、これとの緊密な関係を保ちつつ、組合の事業を円滑に推進し、組合員のニーズの実現を図っていくことが必要になっている。
    組合が会社・財団等に対して行う次のような出資・出捐については、組合はその目的の範囲内の行為として、これを行うことができると解してよいか。
    1.組合員全体の経済的地位の向上のために、その事業を補完・支援しその発展に資する事業を行う会社・財団等の対する出資等
    例えば、
      ① 小売業を営むものからなる組合がその組合員の入店する店舗の維持・発展のために行う共同出資会社への出資
      ② 商店街の街づくり会社、業界の技術研究開発会社等第三セクターへの出資・出捐
    2.組合の共同事業を円滑に推進するために連携が必要な会社等に対する出資等
     例えば、
      ① 組合の取引先会社への出資
      ② 組合の共同事業を補完する事業を実施する会社(共販会社、卸会社、共同計算センターなど)への出資
    事業協同組合、事業協同小組合、同連合会、商工組合及び同連合会(以下「組合」という。)の行う出資等が、組合自身の営利を目的とする行為とならず、組合員全体の経済的地位の向上に役立つものであり、かつ、それが例えば総会の議決を経るなど組合員の総意を反映した形で行われるものである場合には、組合の目的の範囲内の行為としてこれを行い得るものと解する。
  • (4)組合の株式取得の是非について
    事業協同組合は組合員たる株式会社の株式を取得することができるか?   
    組合が組合事業の遂行に益する関連機関の株式を所有すること及び余裕金を管理する一方法として安全有利な株式を所有することは可能である。
    ただし、利殖事業として株式を所有することは、組合の事業目的を逸脱することになる。

2. 事業

  • (1)定款記載事業を実施しない場合の処理について
    定款に、
    第7条 本組合は第1条の目的を達成するため次の事業を行う。
    1 組合員の取扱品の共同購買、共同保管及び共同配送
    2 組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む)及び組合員のためにするその借入
    3 〇〇金庫、✕✕銀行その他組合員の取引金融機関に対する組合員の債務の保証
    第41条 総会においては、法又はこの定款で定めるもののほか、次の事項を議決する。
    1 借入金額の最高限度
    2 一組合員に対する貸付け(手形の割引を含む)又は一組合員のためにする債務保証の金額の最高限度
    と規定している協同組合が、
    1. 定款第7条第2号及び第3号の事業は当分の間実施しないこととして総会に対し定款第41条第2号の決議の審議を求めず、総会に出席した組合員もこれに関する決議を要求しなかったために、総会がこれに関する一切の決議をせずに終了したときには、理事は職務過怠の責を負うべきか?
    2. 定款に記載してある事業を一定期間実施しないときは、必ず総会にはかり定款の一部を改正して、その該当事項は削除しなければならないか?
    1. ある事業年度において組合が行おうとする事業については、事業計画書及び収支予算書に記載され、総会の議決を経なければならないことになっている(中協法第51条第1項第3号)ので、この議決を経ていない事業は、定款に記載されていても、当該事業年度においては、実施しないことになる。
    したがって、設問の事業資金の借入及び貸付事業については、その組合が当該事業年度においてこれを実施しないため、事業計画書及び収支予算書に記載されていないのであれば、借入金額の最高限度、一組合員に対する貸付金額の最高限度等に関する議決を行わなかったとしても、理事の任務過怠であるとして指摘する程の問題ではないと解する。
    2. その事業の実施が、翌事業年度ないし近い将来において再開される見込がある場合には、特に定款を改正して、当該条項を削除する必要はない。
  • (2)組合事業の利用強制について
    製氷業者において、組合員の製氷をすべて組合を通して販売する目的をもって事業協同組合設立の動きがあるが、これら事業につき次の点をお尋ねする。
    1. 組合規約で「組合員の製氷はすべて組合を通じて販売しなければならない」旨の直販禁止を行うことは、独禁法上からも差し支えないか。
    2. 上記の規約に罰則を付する場合とそうでない場合とでは、法的に効果は異なるか。
    3. 販売価格は、組合自体が定める価格であるので、「価格協定事業」に該当しないと考えるがどうか。
    1. 協同組合の事業の利用を組合員に強制することは、その行為の内容が独禁法第24条但し書に該当するもの、すなわち、「不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引上げることとなる場合」でない限り差支えないと解する。
    したがって、ご質問のように組合規約に組合員の製品の直売禁止を規定することは、独禁法第24条の要件を充たしている限り差支えない。
    なお、組合事業の利用を強制することは、組合員の自由を不当に拘束する危険があること、また、農協法第19条において組合が組合員と組合事業の一部の専属利用契約を締結する場合は、契約の締結は組合員の任意としていることから、農協法第19条を類推して組合は組合員が自由意思により専属利用契約を締結した場合のほか組合事業の利用強制はできないとする有力な説があるので、慎重に行う必要がある。
    例えば、組合規約により行う場合でも、組合員全員一致による議決を行う等の配慮が必要であろう。
    2. 組合事業の利用強制が適法と解される以上、当然罰則を付けることは、差支えない。
    3. 貴見のとおりである。
  • (3)共同受注と一括下請負の禁止について
    事業協同組合が建設工事等を共同受注しようとする場合、建設業法第22条「一括下請負の禁止」の規定が適用されているが、同条第3項の但し書きの規定により発注者の承諾を得た場合に限り共同受注が同条本文の適用の除外となることとなっている。
    しかし、同条の主旨は一括下請負により工事施工の責任が不明確となること、あるいは商業ブローカー的不良建設業者の出現等を排除するために規定されたものであることからすると、建設業関係の事業協同組合は建設業法の許可基準の要件を満たし、組合にしかるべき有資格者が設置されているとして建設業の許可を受けており、組合の管理、監督のもとで工事施工する場合、責任の所在は明らかである。
    また、協同組合の特殊性を考慮すればブローカーを排除するための規定には該当しないものと考えられる。
    したがって、事業協同組合の共同受注は、建設業法第22条「一括下請負の禁止」の条項に該当しないものと思われるが、これに関してご見解をお示し頂きたい。
    また、測量関係組合が共同受注する場合の測量法第56条の2「一括下請負の禁」条項に関しても建設業法と同様に解釈してよろしいか併せてご見解をお示し頂きたい。
    1 建設工事について建設業における組合の共同受注については、建設省計画局建設業課と協議したところ、
     次のとおり解釈される。
    (1)建設業法第22条で一括下請負をいかなる方法をもってするかを問わず原則禁止している趣旨は、
      ①発注者の保護②中間搾取の排除である。
      (注)① 一括下請負は実際上の工事施工の責任の所在を不明確にし、ひいては工事の適正な施工を妨げるおそれがある。
         ② 中間搾取を容認すれば、工事の質の低下、商業ブローカー的 不良建設業者の輩出のおそれがある。
    (2)組合の場合、通常中間搾取のおそれはないとしても、受注した案件を単に組合員に配分するだけでは、発注者側として具体的にどのような者が工事を行い、技術的な管理を行うのか不明であるため、上記1.①の観点から一括下請負に該当するといわざるを得ない。
    (3)しかしながら、組合はもともと建設業法に基づき、しかるべき資格を有する技術者がいること等について審査のうえ、建設業の許可を受けているはずであり、組合として受注した案件について組合として責任ある管理、監督のもとに施行する場合には一括下請け負いには該当しないと考えられる。
    (4)したがって、組合としては、(1)組合として責任ある管理、監督のもとに施行するか(この場合には、一括下請負には該当しないと考えられる。)、(2)しからざる場合においては、一括下請負に該当するため、書面により発注者の承諾を得て施行するか(建設業法第22条第3項参照)いずれかによることが必要である。
    2 測量業について測量業における組合の共同受注についても、同省測量業課と協議した結果、測量法に基づき登録を受けた組合が責任ある管理、監督のもとに施行する共同受注については、建設業の解釈と同様に「一括下請負」には該当しないものと考えられる。
    3 以上のとおり、いずれの場合にせよ発注者としては、当該組合の具体的内容、信頼性等について不明な場合、「一括下請負禁止」をもち出していることも考えられ、上記1の4.を踏まえつつ、各組合において発注者と協議されたい。
  • (4)公平奉仕の原則の適用について
    一部の組合員のみに利用される組合事業を実施することは、いわゆる公平奉仕の原則に反するか。 
    従来、以下のような場合には、いわゆる公平奉仕の原則(中協法第5条第2項、中団法第7条第2項)に反しないものとされてきたが、さらに、個々の組合事業それぞれにおいて、全ての組合員に対して奉仕することまでを求める趣旨ではなく、組合が全ての組合員を対象とした共同事業を適切に実施している場合においては、組合が一部の組合員を対象とした他の共同事業を行っても、その他の組合員を対象にした共同事業が別途行われる計画、仕組みとなっている場合には、公平奉仕の原則に反しないこととされている。
     ① 組合事業が現実に一部の組合員についてのみ利用されるのであっても、組合事業の利用の機会が公平に与えられるようになっている場合
     ② 組合事業の利用の機会が過渡的に一部の組合員についてのみ与えられているにすぎないとしても、将来的に他の組合員にも利用の機会が与えられる計画、仕組みとなっている場合
     ③ 組合員の事業が有機的に連携している組合において、資材購入や研究開発等の組合事業が一部の組合員についてのみ利用される場合においても、その効果が組合員事業の連携等を通じ究極的に他の組合員にも及ぶことが明らかである場合
  • (5)組合が行う税務相談等と税理士法との関係について
    事業協同組合において行う組合員の税の申告、申請書類等の作成の事務代行は、税理士法に違反するとの抗議をうけたが、はたして税理士法違反か?
    協同組合の行う事業でも、その事業に関し他の法律の定めがあれば、特に適用除外がない限りこれに従わなければならない。
    税の申告等の税務官公署に提出する書類の作成業務として行われる税務相談等は税理士の独占業務であり、税理士以外の者がこれを行うことは税理士法違反となる。ただし、組合員多数のために行う税務講習会、経理指導に付随し、たまたま行う税務相談等はその対象にはならない。
    また、日常の記帳、決算の指導代行を行うことも差支えない。
  • (6)金融事業について
    中協法による協同組合(以下「組合」という。)が、「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む。)」の事業を行うために、必要な資金を組合が増資する名目で一定の額(1口1万円)に達するまで日掛又は月掛の方法により預り金として受入れ(受入勘定科目「増資引当預り金」預り期間1年、支払金利は定期積金方式に準ずる)て調達すること、又は組合員から借受証券により借入れて(支払金利についての約定はしていないが年6%を予定している)調達することは組合員よりの消費貸借と理解されるので、中協法第9条の2第1項第2号に規定している「及び組合員のためにするその借入」に違反するものではないと解してよいか?
    組合が、「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む)」の事業を行うために必要な資金を、増資の名目で受入れ出資金として貸付けることは貸付金が回収不可能となった場合等において増資をするために預り入れている組合員に不測の迷惑を及ぼすおそれがあり、ひいては増資の目的を達成し得ないこととなるので適当でない。
    しかし、単に増資するまで経理を区分して日掛又は月掛の方法により組合が受け入れることは差支えないが、これに対し組合員に金利を支払うことは預金の受入れとなると解する。
    法第9条の2第1項第2号の規定の趣旨は、組合員に対する事業資金の貸付事業と組合員に貸付けるための事業資金の借入れを認めているのであり、組合がその行う共同加工施設の設置等の共同事業のために資金を借り入れる場合は本号に規定する資金の借入れには該当せず、その附帯事業として当然認容されるものであり、本号はあくまでも組合員の事業資金の貸付のために必要な資金の借入事業を認めているのである。
    また、その借入先を特定しているものではなく、その必要な資金を銀行その他の金融機関に限らず、組合員からも借入れることによって実質的に預金の受入れになることまでも認められるものではない。
  • (7)組合員等からの資金受入れについて
    金融事業の資金調達のため、組合員等より、3ヶ月、6ヶ月等に期間を限定し満期に利息を支払う契約で借入れている組合があるが、これは、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第2条に違反する行為であると考えられるがどうなのか?
    組合が「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む。)及び組合員のためにするその借入」の事業を行うために、その必要な資金を銀行その他の金融機関に限らず、組合員からも借入れることは差支えないが、その借入れが預金貯金又は定期積金と同様の性格を有するものであるかぎり「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」に違反するものと考えられる。
    また、一定の期間を定め、その中途又は満期日に一定の金額を給付することを目的として掛金を受入れることは、相互銀行法に違反するものと考えられるのみならず中協法の事業協同組合の範囲を逸脱するものと考えられる。
  • (8)借入金額等の最高限度の解釈について
    定款例第41条第1号及び第2号の借入金額等の「最高限度」とは、次のいずれに解釈するのが正しいか?                                                             
    (1)年度間の借入累計額
    (2)借入残高の最高額
    最高限度を、ある期間中における増減の変化を通じての最高状態と解釈し、貴見(2)が正当と解する。
  • (9)組合員の取引の相手方の債務保証について
    組合員が銀行に対して、その営業上の取引の相手方の債務を保証する場合、組合は、事業として、その債務を再保証することができるか?
    組合員の銀行に対し行う債務保証が、その営業上の取引の相手方の債務であり、かつ、その取引に直接関係する債務の保証であれば、組合がそれを再保証することは、当該銀行が定款に定められた金融機関である限り、事業として行えるものと解する。
  • (10)員外利用の制限の内容について
    次のような場合、組合の共同事業や施設を組合員以外の者が利用することとなるが、員外利用に該当するか。
    1 組合が組合員のために共同受発注・配送・決済等の事業をコンピュータ・オンラインシステムを利用して行う場合において、組合員の取引先等が当該システムを利用すること。
    2 商店街等商業集積を形成する組合が、顧客吸引力の増大のために、例えば、アーケード、駐車場、物品預かり所、休憩所、公園、公衆便所、コミュニティホール、展示場、研修室、カルチャー教室等の一般公衆の利便を図るための施設を設置してこれをその利用に供すること。
    員外者が組合事業に関与する場合であっても、組合員のための員外者からの物品購入事業における場合のように、その関与が組合員の利用と競合せず、むしろ組合員への奉仕という組合の本来の目的の達成に必要であるときには、員外利用に該当しないと考えられる。
    なお、組合事業は営利を目的として運営されることのないよう留意されたい。
    1 組合が組合員の事業を外部との取引又はその仲立ちを行う場合における、取引の相方等の当該組合事業への関与であり、員外利用に該当しない。
    2 組合が、組合員の事業を支援するために行う、組合員の取引先、顧客等に対する施設、サービス等の提供であり、員外利用に該当しない。
  • (11)組合事業の範囲について
    次のような行為は、組合の行為として行うことができるか。                                        
    例1 林道の除雪作業を組合事業として実施している林業の組合が、村からの依頼で道路の除雪作業を実施
    例2 商店街組合が構築している商店情報ネットワークを、当該地域在住老人等の緊急・救急通報システムとして活用
    労働奉仕、祭事、寄付等の行為は、組合が一つの社会的存在として当然行い得る行為であると解され、説例のような場合はこれに該当すると考えられる。
    なお、以下の事例については、原則として組合事業の範囲内であると考えられる。
    1.組合員の事業と何らかの関連性を有する場合
     ① 従来、自動車部品の共同仕入を行っていた自動車整備業の組合が、新規に販売のための車両の共同仕入を実施する。
     ② 従来、寝具乾燥の共同受注を行っていた寝具衛生加工業の組合が、新規に入浴サービスを実施する。
     ③ 採石業の組合が、採石によりできる池を利用して養殖を実施する。
     ④ 従来、呉服の共同仕入を行っていた呉服小売業の組合が、新規に毛皮、コート及び宝石の共同仕入を実施する。
     ⑤ 従来、文具の共同仕入を行っていた文具小売業の組合が、新規に名刺の共同印刷を実施する。
     ⑥ 理容業の組合が、美容業で行うデザインパーマや新サービスの提供をめざしてアンテナショップを設置する。
    2.社会的存在である法人として当然行い得る行為
     ① 林業及び木製品製造業の組合が、村から道路の除雪作業を受託する。
     ② 商店街組合が、町からゴミ収集車3両を無償で賃借し、町内のゴミ収集及び焼却場までの運搬業務を受託する。
     ③ 地域異業種組合が、市から公園の清掃管理及び自販機の設置・管理を受託する。
     ④ 組合が地域おこしのための祭事等を実施する。
    また、以下の事例については、組合事業の範囲を逸脱するおそれがあると考えられる。
     ① 製造業の組合が、新たに土地を購入して駐車場を設営する。
     ② 製造業の組合が、組合事業の停滞を打破するため、観光ホテル等レジャー施設を設営する。
     ③ 商店街組合が、自己の地域と無関係の遠方のゴミ収集事業を実施する。
     ④ 卸団地組合が敷地内にビルを建設し、賃貸マンションを経営する。
  • (12)員外利用について
    1 次のような場合は、員外利用に該当するか。
     例1 組合員の取り扱う物品の共同販売事業を実施する組合が、組合員の取り扱っていない物品を員外者から仕入れ、組合で販売する(例えば、弁当の共同販売を実施する組合が、日本茶、みそ汁等を仕入れ、販売する)。
     例2 中古自動車販売業者で組織する組合等で行う競売(オークション)事業に員外者が参加し、組合員に販売又は、組合員から購入する。
    2 組合が他の組合と共同して事業を行う次のような場合は、員外利用に該当するか。
     例1 複数の商店街組合が、共同して連合大売り出しを実施する。
     例2 複数の商店街組合が、共同商品券を発行する。
    1 員外利用は、組合事業の一部を組合員の利用と競合する態様で員外者に利用させる場合に発生する概念であり、員外者が組合事業に関与していても、組合が購入する物品の仕入れ先、組合が販売する物品の販売先など組合員の利用と本来的に競合しない態様での関与であれば、員外利用の概念が生じないと考えられ、説例のような場合はこれに該当すると考えられる。
    2 組合が他の組合と共同して事業を行う場合については、当該共同事業が各組合の組合事業として適切な内容の共同事業であれば、各組合員にとって当該共同事業の利用は自己の組合事業を利用しているにすぎず、員外利用の概念が生じないと考えられ、説例のような場合はこれに該当すると考えられる。
    なお、以下の事例については、原則として員外利用規制に違反しないと考えられる。
    1 組合員の利用と競合しない態様での非組合員の関与
     ① 共同販売事業を実施する組合が、品揃えの充実のために非組合員の生産物品も販売する。
     ② 新幹線の駅に共同売店を出店しているが、品揃えのために員外者の取り扱い物品も販売する。
     ③ 地域の商工業者、サービス業者等により構成されている組合が、情報ネットワークを提供し、このネットワークに非組合員の情報もインプットする。
     ④ 中古自動車販売業の組合で行うオークション事業に、非組合員(有資格中小企業者、大企業、他の同業種組合の組合員等)が参加し、組合員に販売する。
    2 組合等の共同事業
     ① 複数の商店街組合が連合大売り出しを実施する。
     ② 近隣の組合が共同して会館を設置する。
     ③ 複数の玩具の小売店組合が連携し、玩具の共同購入を実施する。
     ④ 複数の商店街組合が、共同して共通商品券を発行する。
     ⑤ 複数の商店街組合が連携し、それぞれが発行する商品券の相互利用を認める。
     ⑥ 複数のクレジットカードの組合が連携し、相互にカードの取扱いを認める。
    また、以下の事例については、員外利用規制に違反するおそれがあると考えられる。
     ① クレジットカード事業を実施している組合が、非出資者の利用を員内利用として計算する。
     ② 共同店舗事業を実施している組合が、大企業に店舗の大半を賃貸する。
     ③ 建築資材の共同購買事業において、組合員の必要量を大幅に超えて大量に購入し、非組合員に販売する。
     ④ 仕出し弁当事業を実施している組合が、非組合員からも積極的に注文を受けて弁当を供給する。
     ⑤ 組合員従業者宿舎に空き家が大幅に生じたため、一般者に対し賃貸する。
  • (13)商店街組合が商店街の空店舗を活用した事業を行うことについて
    商店街組合が行う空き店舗事業(商店街組合が空き店舗を活用して顧客向けに行う個店の経営事業、商店街組合が空き店舗を取得して個店の経営を行う事業者に利用させる事業)は、いわゆる直接奉仕の原則に反しないか。
    商店街組合(商店街協同組合又は商店街振興組合及びこれらの連合会)が行う空き店舗事業(商店街組合が、商店街に生じた個店の廃業に伴う空き店舗を活用して、商店街の顧客向けの個店経営の事業や、空き店舗を取得してこれを個店の経営を行う事業者に利用させる事業)については、「①商店街全体としての店揃え、品揃えを維持し、商店街全体の集客力を維持することにより、組合員の円滑な事業活動に実施に寄与する事業であること」という条件を満たしていれば、その事業は、組合員に直接の奉仕をすることを目的とする事業であり、組合員の事業に関する共同施設に含まれると解される。
    なお、空き店舗事業を行う際に、商店街内に商店街組合が行う空き店舗事業と競合する事業を営む事業者がある場合には、商店街組合は、その事業者に不当に不利益を被らせることのないよう十分な配慮が必要であるとされている。
  • (14)販売業者の組合が行う委託販売について
    小売販売業者で組織する協同組合であるが、組合員の取扱う商品を組合員から委託を受けて組合事業として販売することは差支えないか?
    協同組合が事業の一つとして組合員の委託により、その取扱品の販売をすることは可能であると解するが、これも特殊の場合(例えば、一組合員で扱うには数量、金額が大きすぎる場合、取引相手が組合員の通常の取引先ではない場合、売れ残り品を出張販売する場合等)に限られるべきと思料する。
    というのは通常組合自体がこれを行うときは、組合の目的とする組合員の利益を図ることと相反すると思われるからである。
    なお、組合員の委託による販売であれば、員外利用にはならない。
  • (15)電気工事業協同組合の建設業法に基づく許可について
    組合事業の一つとして内外線工事の共同受注を行おうとするときは、建設業法第3条第1項ただし書きに該当する場合を除き、同条の許可を受けなければならないが、同法第7条により許可を受けるには一定の資格を有するものの存在が要件となっており、組合の場合は役員及び職員が上記の資格を有すれば、その者が非常勤であっても許可を受けられると思われるが、この解釈でよろしいか?
    協同組合が組合事業の一つとして内外線工事の共同受注を行おうとするときは、建設業法第3条に基づく許可を必要とし、その組合の役員及び組合の使用人のうちそれぞれ1人が同法第7条(一般建設業)(特定建設業においては第15条)に規定する許可の要件を備えなければならない。
    この場合の役員及び使用人の勤務の態様は、運用上常勤であることを要する。
  • (16)損害保険代理業務の実施
    事業協同組合の事業として損害保険の代理業務を実施したいが、可能かどうか?      
    事業協同組合の事業として損害保険の代理業務は可能かどうかについては、中協法上では実施することに問題はないが、損害保険協会では、事業協同組合への損害保険代理店委託に関する方針として、一般代理店を圧迫するおそれがある等の理由から、代理店委託を自粛することとしているため、実施することは困難であると解される。

3. 組合員

出資・出資金

  • (1)員外者の出資について
    中協法には員外者が出資してはいけないという禁止規定はないが絶対にいけないものか?その根拠を何処に求めるべきか?    
    組合員は一口以上の出資を有しなければならないということは、中協法第10条に規定するところであり、その出資額を限度として責任を負うものであることも同条第4項に規定するところである。
    さらに協同組合とは組合員が相互扶助の精神に基づき協同して事業を行うため組織されたものであるから、これらを総合して考えるならば、組合は組合員のためのものであり、員外者が出資するということはあり得ない。
    なお、員外者の組合事業の利用については、中協法では准組合員制度を認めていないので、中協法第9条の2第3項の員外利用制限が適用される。
  • (2)組合の債務に対する組合員の責任について
    1.組合の借入金、買掛金等の対外債務に対する組合員の負うべき責任の限度については中協法第10条の出資金を限度とする有限責任は絶対的なものであるか?
     例えば、総会において、各自の出資金以上の金額を負担すべきことを決議した場合、あるいは、組合員の或特定の者を指名して負担せしめることを決議した場合等、この決議は有効であるか?
    2.上記に関して貸付金、売掛金等の未回収のため、借入金等の返済不能を生じた場合、責任は誰が負い債権の追及は何処まで及ぶか?
    3.赤字累積による清算の場合はどうか?
    1.組合がその事業の遂行上、第三者と取引をし、借入金、買掛金等の債務を負い、かつ、その弁済が不能となった場合において、組合員が負うべき責任は、その出資額を限度とし、総会その他の決議をもってしても、これを超える責任を負わせることはできないものと解する(中協法第10条第4項)。
     なお、組合が借り入れた資金を組合員に貸付けた場合、組合が共同購買した物品を組合員に販売した場合等において生じた組合と組合員間の債権債務関係については、出資とは関係なく、組合に対して債務を負っている組合員は、弁済の責に任じなければならない。
     また、組合の第三者に対する債務について全部又は一部の組合員が組合のために連帯して保証をしている場合(いわゆる連帯保証)に、その保証をした組合員は、個人的に無限に責任を負うことになる。
    2.従って、設問のごとく、組合員に対して出資額以上の責任を負わせること、組合の債務につき、特定の組合員を指名して弁済の責に任じさせること等を総会において決議し、決議なる故をもって負担させることは、法令違反であるから無効である。
    3.組合財産をもって債務を完済するに足りない場合において、解散をし、又は破産の宣告を受けたときも、組合員の責任は、上述の組合と同様である。なお、本件の如き事例も、総会の決議である旨をもって組合員に限度額以上の出資金を強制することはできないが、自主的意思によって負担しようとすることを阻止するものではない。
  • (3)出資証券紛失の際の取扱について
    協同組合の組合員が、その出資証券を紛失した場合、組合及び組合員はどのような手続きをしたらよいか?     
    出資証券は、市場性を有する証券ではないから、一般の有価証券と同様に取扱う必要はなく、例えば預金通帳、領収書等の紛失の場合の取扱いと同様組合員より紛失届を提出させ、それにより組合は新たに証券を再交付するだけで差支えない。したがって、公示催告の手続きは要しない。
  • (4)行方不明組合員の出資金整理について
    組合員Aは、昭和〇〇年1月30日に組合に加入し、平成✕✕年12月30日まで組合を利用していたが、その後行方不明となった。組合としては、Aの出資を整理し実質上の組合員の出資のみとしたいが、どのような処理が適当か?
    なお、Aの組合に対する負債はない。
    出資を整理するには、当該組合員が組合を脱退することが前提となり、ご照会の場合の行方不明組合員については資格喪失による脱退か、または除名による強制脱退が考えられる。
    具体的事情が不明で判断し兼ねる点があるが、もし行方不明と同時に事業を廃止しているのであれば、資格喪失として処理することが可能と解する。
    この場合、組合員たる資格が喪失したことを理事会において確認した旨を議事録にとどめると同時に、内容証明郵便をもって持分払戻請求権の発生した旨の通知を行うことが適当と考える。
    除名は総会の決議を要しこの場合除名しようとする組合員に対する通知、弁明の機会の賦与等の手続が必要であるが、組合員に対する通知は組合員の届出住所にすれば足り、この通知は通常到達すべきであったときに到達したものとみなされるから一応通知はなされたものと解される。
    弁明の機会の賦与については、その組合員が総会に出席せず弁明を行わない場合は、その組合員は弁明の権利を放棄したものとみなされ、除名決議の効力を妨げるものではないと解される。
    なお、除名が確定した場合は、資格喪失の場合と同様の通知をするのが適当である。
    以上の手続きにより、当該組合員に持分払戻請求権が発生するが、その請求権は2年間で時効により消滅するので、時効まで未払持分として処理し、時効成立をまってこれを雑収入又は債務免除益に振替えるのが適当と考える。

加入・加入金

  • (1)事業協同組合への加入の自由と加入拒否の「正当な理由」
    事業協同組合が、加入申込者に対して、正当な理由がある場合には加入拒否ができると聞きましたが、どのような場合に「正当な理由」として加入を拒否することができるのですか。
    事業協同組合(以下「組合」という。)への加入の自由は、協同組合法の基本原則の1つです。
    組合員は任意に加入し、また脱退できることが組合の重要な要件であり、組合員たる資格を有する者が組合に加入しようとするときは、組合は正当な理由がないのに、その加入を拒み、またはその加入につき現在の組合員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならないこととされています(中小企業等協同組合法第14条)。
    法は、組合が、相互扶助の精神を基調とする人的結合体であることから、加入の自由の原則をとっていますが、また、相互扶助の精神に基づき協同して事業を行う事業体であることから、組合の運営を考えて「正当な理由」のある限り加入を拒否することを許しています。
    この「正当な理由」とは、組合への加入資格がある者に対して一般的に保証されている加入の自由が、具体的な特定人に対して保障されないことになっても、組合法の趣旨から、あるいは社会通念上からも、不当ではないと認められる理由をいうものですから、組合が「正当な理由」に該当するかどうかを判断する際には、この点に十分留意することが必要です。
    組合が加入を拒否できる「正当な理由」は、その原因が「加入の申込みをする側にある場合」と、「受け入れる組合の側にある場合」とがあります。
    前者については、例えば、
     ・加入申込者の規模が大きく、これを加入させれば組合の民主的運営が阻害され、あるい は独占禁止法の適用を受けることとなる恐れがあるような場合
     ・除名された者が、除名直後、またはその除名理由となった原因事実が解消していないのに、加入の申込みをした場合
     ・加入申込前に員外者として組合の活動を妨害していたような者である場合
     ・その者の日頃の行動からして、加入をすれば組合の内部秩序がかき乱され、組合の事業活動に支障をきたす恐れが十分に予想される場合
     ・加入により、組合の信用が著しく低下する恐れがある場合
     ・組合員の情報、技術等のソフトな経営資源を活用する事業を行う際に、その経営資源や事業の成果等に係る機密の保持が必要とされる場合において、例えば、契約・誓約の締結、提出などの方法により機密の保持を加入条件とし、これに従わないものの加入を拒む場合(ただし、条件はすべての組合員に公平に適用されることが必要)
     ・組合の定款に定められている出資の引受け、経費、加入金の負担等が履行できないことが明らかな者である場合等が考えられます。
    また、後者については、例えば、
     ・組合の共同施設の稼働能力が現在の組合員数における利用量に比して不足がちである  等、新規組合員の増加により組合事業の円滑な運営が不可能となるような場合
     ・総会の会日の相当の期間前から総会の終了するまでの間加入を拒む場合
    等が考えられます。
    以上が、「正当な理由」と認められる場合の例示ですが、前者の②④⑥及び後者の②は、平成3年の中小企業庁における組合制度の見直しにより、農業協同組合等他の協同組合制度の解釈を参考に、新たに「正当な理由」に該当するものとして認められたものです。
  • (2)加入金の性格と定款記載について
    当組合の定款には、脱退者の持分の払戻しについては、「組合員の本組合に対する出資額を限度とする」旨の規定をしている。定款参考例によれば、このように規定している組合では加入者からの加入金を徴収する旨の規定は削除することとされている。加入金は定款の定めがなければ徴収できないということであるので、このことにより、当組合では、加入金は徴収できないと考えられる。
    加入の際の事務手数料的なものを徴収することはできないのか。この場合、定款に「加入金」ではなく、「加入事務手数料」を徴収できる旨の規定を置くことはできるか。
    中協法では、組合が定款で定めた場合には加入金を徴収することを認めている(第15条、第33条)が、この加入金の意味については、特に規定していない。しかし、その趣旨から広義に解釈すれば、持分調整金と加入事務手数料を意味するものと考えられる。
    持分調整金とは、持分の算定方法について、改算式算定方法(組合の正味財産の価額を出資総口数で除して、出資1口当たりの持分額を算定する方法。したがって組合員の持分は均一となる)を採っている場合において、組合財産の増加によって出資1口当たりの持分額が出資1口金額を超えている場合に、その超過した部分に当たる差額を新規加入者より徴収し、新規加入者と既存組合員との持分についての公平を保とうとするものである。
    このように、持分調整金は、改算式の持分算定方法を採用する組合において徴収することになるが、たとえ改算式を採っている組合でも、貴組合のように、定款の規定により脱退者の持分の払戻しが「出資額を限度」として行われる組合にあっては、常に払戻額が出資額を上回ることはなく、新旧組合員の持分の調整を行う必要が生じないので、持分調整金としての加入金を取ることはできないとされている。定款参考例でいう「加入金」は、この持分調整金を意味していると解されるので、このような組合にあっては加入金の項を削除するよう指導されている。
    次に、加入事務手数料についてであるが、これは組合に加入する際に要する事務的費用、例えば出資証券や組合員証の発行費用などであるが、これを加入者に負担させるために徴収するものをいう。この加入事務手数料は、広く加入金の一種と考えられるが、これはあくまで実費の範囲を超えないものであり、その性質上それほど多額なものとなり得ないものである。このような実質的なものの徴収は、加入金の規定によらなくても組合として徴収し得るものである。
    しかし、このことは、加入事務手数料を徴収できる旨の定款記載を禁じるものでなく、例えば徴収の根拠を明らかにしておく等の必要がある場合には、この旨を掲載しても差し支えないと考えられる。
    (注)持分の算定方法には、前記の改算式算定方法のほかに、加算式算定方法がある。
       (「65 持分の算定方法について」参照)
  • (3)組合員の加入の是非について
    私は仕出し屋を営む者で、同業者で構成している事業協同組合にも加入しております。
    今月の組合報を見ていましたら、私の店の近所に昨年出店したばかりのA商事が、組合への加入を承諾された旨を知りました。
    私のところはA商事とはいわば商売敵で、最新の調理機器を備えたA商事のために、昨年の売上はかなり減っております。また今後、A商事の加入のためにこれまでの組合の共同受注の割当ても減ることになるのではないかと危惧しております。
    組合がこのような利害関係にある私に何の相談もなくA商事の加入を承諾したことは甚だ遺憾であり、組合の今回の決定の白紙撤回を求めたいのですが、可能でしょうか。
    お話によりますと所属されている組合では組合員の加入については理事会で意志決定されておるように推察されます。
    中小企業等協同組合法では第54条において総会について商法第252条(決議の不存在確認・無効確認の訴え)を準用しており、総会決議の効力を争うことができることとされていますが、理事会についての同様の準用規定がありません。
    しかし組合員の加入のように、組合の意志決定が常に総会の議決によらなければならないというものでなく、その権限が理事会に委ねられている場合には、商法第252条を類推適用し、理事会の決議の無効確認を求めることは可能であると思われます。
    さて組合法第14条では、組合は正当な理由がないのに組合員たる資格を有する者からする加入申込みを拒んではならない旨を規定しています。
    つまり資格を有する者に対してはその者が希望をすれば組合に加入して組合の事業の恩恵を受けることができるということです。
    ここでの加入申込みを拒否しうる正当な理由とは、
     ・加入申込者の規模が大きく、これを加入させれば組合の民主的運営が阻害され、あるいは私的独占禁止の適用を受けるおそれがある場合
     ・除名された組合員がただちに加入申込みをしてきた場合
     ・加入申込み前に員外者として組合の活動を妨害していた場合
     ・その加入により組合の信用が著しく低下するおそれがある場合
     ・共同施設の稼働能力が現在の組合員のみでも不足がちである等、組合員の増加により組合事業の円滑な運営が不可能となる場合
    等に限られると解されています。
    したがって、本事例の場合、単に受注配分が減るというだけでは、加入申込みを拒否し得る正当な理由とは言い難いと考えます。
  • (4)法定脱退した組合員の持分譲受加入の是非
    組合員Aは、平成○年12月2日組合員資格喪失により法定脱退したが、その未払持分を譲受けることによりBの加入を、翌年の3月15日の理事会で承諾した。
    このような資格喪失者の未払持分で譲受加入ができるか?
    脱退した組合員の持分は、脱退と同時に持分のもつ身分権的なものが喪失しており、持分払戻請求権という債権として残っているだけである。
    したがって、既に法定脱退した者の組合員としての権利義務を承継することとなる譲受加入ということはあり得ず、当該譲受人の加入は新規加入の手続によらなければならない。
  • (5)個人組合員の会社移行の場合の取扱いについて
    組合員であるA商店(個人企業)では、現在、A商店を株式会社組織に変更する手続きを進めているところですが、手続きが完了した時、組合は、A商店から、定款の規定に基づき、「名称」の変更届を出してもらうとともに組合員名簿を変更しようと考えています。この処理方法でよろしいでしょうか。
    「名称の変更」という点に着眼するならば、この手続きのみでよいように思われますが、この手続きには、大きな見落しがあります。
    つまり、定款で組合員に名称等の変更が生じた場合、届出義務を求めていますが、これは、個人企業の場合は、個人企業としての性格を有しながら、商号等の企業名を変更する場合です。
    ご照会の場合は、「個人企業」であるA商店が、「株式会社法人」であるA商店に変更されるようですが、これは、個人企業であるA商店の脱退(A商店は代表者の事業の廃止に伴い法定脱退(中小企業等協同組合法第19条第1項第1号))とA商店株式会社という法人の新規加入という2つの行為を含んでいます。
    したがって、原則的には、個人企業A商店には、事業の廃止に伴い持分払戻し請求権が生じ、組合は、この請求に応じ、脱退の手続きをとることが必要となります。
    また、法人であるA商店株式会社を組合に加入させるには、A商店株式会社からの加入の申し出が必要であり、この申し出に対する組合の承諾が得られた後、A商店株式会社は組合に対して、出資金の払込みを行うこととなります。
    しかし、個人企業であるA商店と法人であるA商店株式会社が、実態的にみて、併存するようであるならば、組合員であるA商店は、組合の承諾を得た後、法人であるA商店株式会社に持分を譲渡し、脱退することが可能です。
    この場合には、譲り受けた法人は、当然に組合員となり、出資金の払込みは、必要としません。

持分

  • (1)持分払い戻し方法変更のための定款変更の議決方法について
    持分全額払戻制をとる組合が、出資限度の払戻方法に定款変更する場合は、組合員にあっては既得権の放棄を意味するので、総会における定款変更決議とは別に組合員全員の同意が必要ではないか?
    持分払戻方法に関する定款変更については、中協法第53条による特別議決をもって足り、特に組合員全員の同意は要しないものと解する。
    すなわち、中協法第53条において定款変更は特別議決によること、また持分払戻しに関して同法第20条に「・・・定款の定めるところにより・・・全部又は一部の払戻しを請求・・・」と規定するだけであり、中協法上組合員全員の同意を要する規定がないので、これが法律上明文の規定がないことを根拠として、通常の定款変更の手続きで足るものと解する。
    なお、持分については、既得権たる財産権と解する見解のほか、脱退等により現実化する潜在的な期待権とする見解もあるので、本件については、総組合員の同意を得ることは好ましいことではあるが、現行法上は法53条の特別議決をもって足りるとする見解は中小企業庁においても採用しているものである。
  • (2)持分の譲渡について(1)
    中協法第17条第1項によれば、組合員は、その持分の譲渡について組合の承諾を得なければならないこととなっているが、組合は、その承諾を総会で決定しなければならないか?あるいは理事会でよいか?
    また、同条第2項においては、持分の譲受人が組合員でないときは加入の例によらなければならないこととなっているが、加入の例によるとは、どの範囲を意味するのか?
    持分譲渡の承諾は、業務の執行に属すると考えられるので、加入の承諾の場合と同様(事業協同組合模範定款例第9条第2項)理事会で決定すれば足りるものと解する。
    「加入の例による」とは、加入の場合に準じて取り扱うということであるから、譲受人は組合員たる資格を有する者であって、かつ、その持分を譲り受けると同時に組合に加入する意思を有していなければならないことになる。
    また、組合の側においては、その譲渡の承諾に当たっては、正当な理由がなければこれを拒否し、又は承諾に際して不当に困難な条件を付してはならない。
  • (3)持分の譲渡について(2)
    1.他人の持分の全部又は一部を譲り受けて組合に加入しようとする者からも加入金を取る定めをしても良いか。
    2.中協法第17条第3項の「持分の譲受人は、その持分について、譲渡人の権利義務を承継する」とあるが、この場合の権利義務の承継とは具体的にどの様なことを言うのか?また質問1との解釈上の関連性について説明されたい。
    3.加入に関し、定款に「他人の持分の全部又は一部を承継した場合はこの限りでない」と規定したとき、この後に「この場合の全部又は一部とは5口以上をいう」と但し書きしてもよいか?
    1.加入金は持分調整金としての性格を有するものであるので、持分譲受加入の場合には徴収できないと考えられる。なぜならば、持分譲受加入の場合には、出資の払込手続を必要としないので、定款に定めた出資一口金額とこれに応ずる持分額との調整を行う必要が生じない(すでにこの点を考慮して持分の譲渡価格が当事者間で決定されたものと考えられる。)
    2.組合員の持分とは、組合員がその資格に基づいて組合に対し請求し又は支払うべき計算上の金額とこれを含めた組合員として有する権利義務を包括的に指す、組合員たる地位ともいうべきものの二義があると解され、本条、第15条、第16条、第61条にいう持分は後者を意味し、第20条、第22条は前者を意味している。
     したがって、法律上の持分が、いずれの意義に用いられているかは、個別的に判定すべきである。このような観点から本条における持分を組合員たる地位の譲渡と解するかぎり議決権、選挙権、出資義務、定款服従義務等、組合員として当然有する権利義務も承継されるとともに持分払戻請求権又は出資払込義務も承継されるのである。1.との関連について、持分の譲受加入の場合には原始加入の場合と異なり、出資払込及び持分調整金の問題が生じないのは、本条の持分を前述のとおり解すれば、持分の譲渡は組合員の入替を意味する場合もあるから、その譲受に伴う代金(払込済出資金と持分調整金との合計額)の授受は当事者間で行われ、組合と譲受人とのあいだには関係を生じないからである。
    3.貴組合の定款において、貴組合への出資口数を最低5口以上とし、また、現組合員のすべてが5口以上の出資を有しており、かつ5口未満の口数が生じた場合の処置が明確であれば差し支えないと解する。つまり、上記の場合以外においては新規加入者と譲受加入者との均衡を失するとともに脱退の自由を制限するおそれがあると思料されるからである。
  • (4)脱退組合員の持分債権の保全処分について
    組合員Bの倒産によりその債権者Aより組合宛に債務者であるBの持分を支払停止命令(裁判所より)してきた。そのため、組合は、当年末決算において持分算出をしたが、支払を中止し、現在組合にて保管しているが、その処置を如何にすべきか、次の点をご指導頂きたい。
    債務者Bの持分払戻請求権は、仮差押えのため、中協法第21条(時効)には該当しないものと思われるがどうか?
    仮に組合が、この差押え該当部分を組合外に処分するためにはどのような手続きが必要か?
    組合に対してなされた保全処分(仮差押)は法定手続に従い有効に執行(処分決定の送達)がなされたものであるから、この場合、組合は供託等による持分払戻金の組合外への処分の道はない。
    したがって、債権者AがBとの間の本訴を提起して、転付命令又は取立命令を得て直接請求してくるか、また債務者Bが仮差押を取消して組合に請求してくるのを待つよりほか、他に方法はないと考える。
    なぜなら、組合は持分払戻金を保管することにつき何等の不利益を受けるものではなく当該仮差押におよんだAB間の訴訟上の当事者たる資格を有しているからである。
    債権者Aが仮差押したことが、民法にいう時効中断事由に該当するかどうかについては、学説、判例に争いがあり、判例は債務者Bの有する第三債務者(組合)に対する債権をその債権者Aが差押えても、その債権(持分払戻請求権)の消滅時効の進行はそれによって中断しないものとしており、したがって、この場合には仮差押のあるなしに拘らず2年で時効が完成することになる。
    学説は判例の立場に反対で、この場合の差押も債権消滅時効の中断事由になるとするのが一般で、この場合は、請求権は時効にかかわらず、依然存在することになる。
  • (5)法定脱退者の持分払戻請求権の時効進行時期について
    中小企業等協同組合法第21条には、脱退者の持分払戻請求権は脱退の時から2年間行使されない場合は時効となる旨の規定がありますが、組合員の解散・死亡等による、いわゆる法定脱退の場合は、その事由が発生した時から時効が進行するものと考えてよろしいでしょうか。
    解散等による法定脱退の場合は、その事由が発生した時にその組合員は、当然に脱退することになります。したがって、持分払戻請求権もこの脱退事由の発生時(脱退時)に発生します。
    しかしながら、持分の価額は、事業年度末における組合の財産によって算定することとなっています(中小企業等協同組合法第20条第2項)ので、持分払戻請求権は、この持分が算定された後に行使されることとなります。
    つまり、法定脱退の場合も自由脱退の場合と同様に事業年度末までは、これを行使することができないこととなっています。
    このようなことから、法定脱退者の持分払戻請求権の時効も自由脱退者と同様に事業年度末から進行するものと考えます。
  • (6)持分払戻方法を変更した場合の新定款の効力について
    脱退者に対する持分を全額払い戻す旨の定款規定を出資額限度に改めるための臨時総会が適法に開催され、決議が有効に成立し、当該事業年度にこの変更申請が認可された場合において、次の者に対する持分の払い戻しに関する定款の適用については、各々次のように解釈するが適当か?
    1.臨時総会で反対を唱え、容れられなかったため脱退を予告した組合員
    (解釈)
    自由脱退の場合は、脱退を予告した組合員といえども事業年度の終了日までは、組合員たる地位を失っていないし、組合に対する権利義務も他の組合員と同様に有しているのであるから、年度途中で変更のあった場合でも、変更後の定款によって持分の払戻しを行うこととなる。
    2.死亡等による法定脱退者
    (解釈)
    死亡等による法定脱退の場合は、組合員の意思にかかわらず法定された事由に該当するにいたったとき法律上の効果としてただちに脱退せざるを得ず、組合員たる地位及び権利を失うのであるから、持分の払戻しはその脱退の時点において効力を有していた定款に準拠すべきであると解する。
    1、2とも貴見のとおりである。
  • (7)出資額限度持分払戻し規定の意味
    私はこのたび所属している組合を脱退することとなりました。
    私の所属する組合の持分払戻しに関する規定はいわゆる出資額限度の払戻しとなっていますが、いろいろ調べた結果、ここでいう「出資額限度」とは、払戻しの「下限」を出資額と定めたものであり、出資額以上の払戻しを受けることも可能のように思われますが、この解釈で間違いないでしょうか。
    組合の脱退者に対する持分の払戻しに関して中小企業等協同組合法では、第20条第1項において、「組合員は、脱退したときは、定款の定めるところによりその持分の全部又は一部の払戻しを請求することができる。」と定められています。
    貴見の解釈は、昭和46年1月6日付け45企庁第2084号中小企業庁指導部長通達を類推されたものと思われますので、以下に本通達の要旨を示します。
     一 持分の払戻しの際の組合財産は時価による。
     二 この場合において、組合の実態にかんがみ、定款で持分の一部の払戻しを定める
      ことができる。なお、払戻しの額の下限は出資額とし、定款において、それを上廻
      る額を適宜定めることは差支えない。
    この通達の主旨は、組合が持分の一部の払戻しを定める場合、最低でも個々の組合員が拠出した出資額は払戻されるべきであるとの考え方から、出資額を下廻って払戻す規定を設けることは許されないということを述べています。
    つまり、組合員は出資額までは持分を保障されているという意味です(除名による場合、組合財産が出資総額より減少した場合はこの限りでない。)。ところで、貴組合の定款規定は出資額限度払戻しの規定とのことですが、この規定は、組合員の権利として払戻してもらうべき持分として、出資額が最低保障されているものです。
    しかし、出資額限度は、持分の一部について払戻す方法の一つですから、出資額以上払戻すことができるという意味のものではありません。

脱退

  • (1)脱退を申し出た組合員の取扱等について(1)
    中協法第18条により組合を脱退することができるが、その予告期限、脱退の時期等は中協法により90日前までに予告し、事業年度の終了日に脱退できるようになっている。したがって、それまでは組合員の地位を失ってないから、その組合員も他の組合員と同様に議決権の行使、経費を負担する等の権利、義務を有するが、脱退者の申出の点についての効力と其の取扱い方について、
    (1)①A組合員 5月10日に脱退の申出をした場合
       ②B組合員 7月 2日に脱退の申出をした場合
       ③C組合員12月30日に脱退の申出をした場合
    (2)脱退申出の組合員が其の後の組合運営についての権利義務を主張し行使できるか否か。
    (3)脱退者は其の申出日以降組合賦課金の納入をせず期末迄見送ることになるが、その間の取扱い方について。
    (4)脱退した組合員に対し期末に精算等の上、出資金の払戻をするが未納賦課金を其の際、持分払戻する場合相殺して差支えないか。法第22条からして相殺することも妨げないと解されているか。
    設例の組合事業年度終了日が3月31日であれば、(1)の①~③は、いずれも90日の予告期間を満足させているので、脱退の申告があった日の属する事業年度末までは、組合員たる地位を失わないから、脱退の申出をしない組合員となんら差別してはならない。
    したがって、(2)についても事業年度末までの期間内は組合員としての権利義務を負わなければならないし、また(3)にいうごとく、賦課金を納入しないならば組合員としての義務を怠ることになり、除名、過怠金の徴収等の制裁も定款の定めにしたがって可能となるわけである。
    (4)については、脱退した組合員が組合に対して未納賦課金その他の債務を負っている場合は、組合は中協法第22条の規定による持分の払戻停止によって対抗でき、あるいは民法第505条の規定により払い戻すべき持分とその債務とを相殺することもできる。(68-71)
  • (2)脱退を申し出た組合員の取扱等について(2)
    1.中協法第18条に、組合を脱退するには「事業年度末90日前迄に予告し、年度末に脱退できる」とあるが、例えばある組合で為された決議が一部の業態の組合員に著しく不利で営業不能となる為、仮に9月1日に脱退を通告しても、翌年3月末日迄は脱退できないか、又その決議に拘束されるか?
    2.組合員が転廃業して組合を脱退したが、1ヶ月又は2ヶ月後再び元の事業を始めた場合、前に加入していた組合の拘束を受けるか?
    1.中協法第18条に自由脱退の予告期間及び事業年度末でなければ脱退できない旨を規定した趣旨は、その年度の事業計画遂行上、組合の財産的基礎を不安定にさせないためであるから、設例のような場合、即ち9月1日に脱退を予告しても翌年3月末日迄は脱退できない。従ってその間、除名されない限りは依然組合員であるから決議にも拘束されるし、組合員としての権利を有し、義務を負わなければならない。
    2.組合員が転廃業すれば、組合員資格を失い、法定脱退することになるので、組合員資格としての事業を再開しても、直ちに組合員となるわけではないから、その組合の拘束を受けることはない。
  • (3)脱退予告者の権利について
    1.自由脱退予告者は、持分が計算される期末までの期間は組合員であり、持分権があると解釈してよろしいか?
    2.1.の組合員は、その持分を確定する決算総会(通常総会、通常5月に開催される)に出席して、組合員権を行使することはできないと解釈してよろしいか?
    3.脱退予告者が総代である場合、期末までの期間に総代の任期満了による改選があったときは、その組合員は総代の選挙権並びに被選挙権があるか否か?
    1.組合員は、中協法第18条の規定により、脱退することができるが、この場合、予告を必要とし、かつ、脱退の効果は事業年度末でなければ発生しない。したがって、組合員は予告後も年度末に至るまでの間は依然として組合員たる地位を失うものではなく、それまでの間は、組合員としての一切の権利を有し、かつ義務を負うものである。
    2.脱退の効果は、事業年度末において発生し、それ以後は、組合員たる地位を失うものであるから、組合員として事業年度終了後の総会に出席することはできない。
    3.脱退届を提出している組合員が総代であっても、事業年度末に至るまでは組合員たる地位を失うものではないから、総代の選挙権及び被選挙権を有する。
  • (4)脱退予告をした組合員への経費の賦課と配当について
    ある組合員から、事業年度の途中で文書により脱退したい旨の通知がありました。その後、その組合員は組合の共同事業を利用しなくなったのですが、本年度の残りの経費(賦課金)の請求をしてもよいのでしょうか。
    また今年度は、かなりの利益計上が予想される状況にありますが、来年度の通常総会において、配当する旨の決議がなされた場合は、その組合員にも配当できるのでしょうか。
    組合員は、その年度の90日前までに予告することにより、組合を脱退することができますが、脱退の時期は事業年度末とされています(中小企業等協同組合法第18条)。このように脱退の時期を事業年度末に限定したのは、脱退による持分の払戻しにより組合事業計画が遂行できなくなることを防止する等の主旨からですが、いずれにしても、廃業等による組合員資格の喪失(法定脱退)でない限り、事業年度末までは他の組合員と同様に組合員としての権利・義務を有しているわけですから、仮に共同事業を利用しなかったとしても、年度中に賦課される経費を免れることはできません。
    したがって、組合は残りの経費を請求すべきです。
    請求しても、なお組合員が経費を支払わなかった場合は、組合は脱退に際しての持分の払戻しを、経費の支払いが完了するまで停止することができる(中小企業等協同組合法第22条)ほか、更に民法第505条の規定により、払戻すべき持分と未収の経費を相殺することも可能です。
    また、事業年度末に脱退した組合員に対する配当については、その源泉である剰余金は、その組合員の脱退した日が属する事業年度において生じたものですので配当することは可能であると考えます。
  • (5)中途脱退者に対する利用分量配当について
    本組合の事業年度は、9月から8月までである。本組合において、本年2月に法定脱退した者が7月に再び加入してきたが、利用分量配当は、脱退前の部分についてはこれをする必要がないと思うがどうか?
    事業協同組合の剰余金の配当は、法第59条第2項の規定により利用分量配当の配当基準となる組合事業の利用分量の算定は、この配当が手数料、使用料等の過徴額の割戻し的な性格をもつものであるから、各組合員が当該事業年度内において納付した手数料、使用料等の額、又は共同事業の利用数量によって行われるのが適当であり、単に当該事業年度の組合員期間等で利用分量を算定することは適当でないと考える。したがって、設問の9月から2月までの利用数量等を利用分量配当の算定基準から除外することは不適当であると考える。

その他

  • (1)組合員の責任の限度について
    中協法第10条第4項によれば、「組合員の責任はその出資を限度とする」とあり、また法第20条第3項によれば「組合の財産をもってその債務を完済するに足りないときは、組合は定款の定めるところにより、脱退した組合員に対し、その負担に帰すべき損失額の払込を請求することができる」とある。
    この条文のうちその負担に以降の部分は「未払出資金があればこれを請求し得る」という解釈と「その負担に帰すべき」という言句により、前述の解釈を拡大して「組合員の責任は出資額を限度とする」という第10条第4項の規定を無視する解釈が成り立つことも考えられるがどうか?
    また一例として出資金50万円、諸積立金20万円の組合が共販事業の失敗により欠損金100万円を生じた。積立金をとりくずし残額80万円を組合員が特別賦課金をもって補てんする決議を行ったが、一部組合員は出資金をもってそれに充当させ、脱退することを申し入れた。
    この場合組合の財産をもって債務を完済し得ない30万円について脱退組合員に請求できないか?
    なおこの欠損金は数年にわたり、累積され既に先の総会に経て承認を受けているものであり、その再建をはかるため特別賦課金の徴収を決議されたものである。
    中協法第20条第3項にいう「その負担に帰すべき損失額の払込云々・・・」の条項は脱退者の持分の払戻に関し規定されたものであって、法第10条第4項の規定により、組合員は明らかに有限責任であるから、当然、「組合の未払込出資金があり、かつ欠損を生じている場合においては、未払込出資金額を限度としてその負担に帰すべき損失金額の払込を請求することが出来る」と解すべきである。
    勿論、定款に損失額払込の規定を設けない場合には、請求権がないことは法の規定からして明白である。
    よって貴見第2の解釈の如く「その負担に帰すべき云々・・・」のみを抽出してこの語句を拡張解釈することは妥当でないと解する。
    なお、本規定は、無限責任の場合の規定であって、有限責任の場合の規定ではないとの見解もあるが、一応これは立法論として別に論ぜられるべき問題であると思う。
    例題の場合の、総会で議決された組合の欠損金補てんについては、当該組合員が、特別賦課金をもってこれに当てることを承認したものでなければこれを請求することはできないものと解する。
    すなわち、法はその第10条第4項において「組合員の責任はその出資額を限度とする」と定めているので、出資額を上回る経費の分担とか、損失金の負担とか法第10条第4項との関係を検討してみると、まず、法は「出資額」を限度とするものである旨を規定しているのであるから、組合員が組合に対して負う財産上の出捐義務は、その額において有限であり、組合員がその額を超えて、財産上の出捐義務を負担することがないことは明らかである。
    また、その限度である出資額というのは組合員が出資を引受けた額、即ち加入する際に引受けた額のままであることもあろうし、加入後に他の組合員の持分を譲り受けることもあるだろうが、要するに組合員がみずからの意思で引き受けた出資の額と解するのが相当であろうと思う。
    総会の決議又は定款の変更によって出資1口の金額の増加とか、出資額を上回る経費又は損失金について任意に賦課せしめることが出来るとすれば、法律上は、際限なく組合員の負担を加重させることが可能となり、組合員の責任には何ら「限度」が存在しないこととなって、法が第10条第4項に定めた「その額をもって組合員の財産上の出捐義務の限度である」旨の規定は無意味なものとならざるを得ない。
    法第10条第4項の存在を無意味なものとして否定しない以上、同条項は総会の決議又は定款の変更によって加重することが出来ないもの、すなわち組合員が、組合に対して引受けた出資の額を超えて財産上の出捐義務をさせられることがない旨を保障される規定と解される。
    したがって、問題は、組合が損失金を賦課することによって、組合員に「その出資額」を超えて財産上の出捐をしなければならない義務が生ずるかどうかの点にかかっているということになる。
    もし組合員に未払込があるならば、これをもって損金の補てんに当て得るので、第10条第4項は何ら関知するところでないが、もしそれを超えて出捐すべき義務が生ずるのであれば、それは同条項に抵触することとなる。してみれば、組合は法第10条第4項の規定に照らし「その出資額」を上回る経費の賦課とか損失金の負担を課することが出来ないものと解するほかないであろう。
    だがしかし、法第10条第4項の規定は、組合員みずからの意思によっても「その出資」を上回って負担することを禁止する趣旨を有するものとは到底考えられない。よって当該組合のすべての組合員が同意した場合でもなお負担させることが出来ないという理由はないと思われる。
    以上の理由により、総組合員の同意がない限り、総会の決議をもってしても、すべての組合員に「出資額を上回る損失金額」を組合員の負担すべき金額として強制することは出来なく、本問の場合も当該組合員がそれを拒否し脱退するという以上、総会の決議である由をもってこれを請求することは出来ないものと解する。
  • (2)組合員の権利と義務について
    当協同組合では、毎年組合員対して組合に関する知識の普及・啓蒙のために講習会を開催していますが、今般の講習会は、事務局長の私が講師となり、組合員の有する権利と義務について講義することとなりました。
    現在、中小企業等協同組合法を勉強しながら、整理を行っているところですが、なかなかまとめきれず困惑しています。組合員の権利と義務にはどのようなものがあり、どのように分類することができるのかご教示下さい。
    組合員は、定款の組合員の資格に基づいて組合に加入するわけですが、その結果として、中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)では、組合の健全な運営を確保するために組合員に対し、種々の権利を保証するとともに種々の義務を負わせています。
    まず、組合員の権利には、組合員が経済的利益を直接享受することを内容とする「自益権」と、組合員が組合の運営に関与することを内容とする「共益権」とに大きく分類することができます。
    自益権は、個々の組合員が単独で行使することができるもので、次のようなものがあります。
     ・組合事業(共同事業)利用権(組合法第9条の2)
     ・剰余金配当請求権(同第59条)
     ・残余財産分配請求権(同第69条による商法第131条の準用)
     ・持分払戻請求権(同第20条)
     ・出資口数減少請求権(同第23条)
    次に共益権には、組合員が単独で行使できる単独組合員権と、一定数の組合員が共同することにより行使できる少数組合員権があり、前者としては、
     ・議決権及び選挙権(同第11条)
     ・定款、規約、議事録、組合員名簿、決算関係書類の閲覧謄写権(同第39・40条)
     ・代表訴訟権(同第42条による商法第272条の準用)
     ・理事及び清算人の行為差止請求権(同第42条による商法第267条の準用)
     ・決議取消し、決議不存在・無効確認の訴権(同第42条による商法第247条、第252条の準用)
     ・設立無効の訴を提起する権利(同第32条による商法第428条の準用)
     ・合併無効の訴を提起する権利(同第66条による商法第104条の準用)
    などがあり、また後者としては、
     ・役員改選請求権(同第41条)
     ・参事・会計主任の解任請求権(同第45条)
     ・総会招集請求権(同第47条の第2項)
     ・総会招集権(同第48条)
     ・会計帳簿等の閲覧謄写権(同第4条の2)
     ・清算人解任請求権(同第69条による商法第426条第2項の準用)
    などがあります。
    なお、以上のほか、組合員が行政庁に対して求めることのできる権利として、不服申立書(同第104条-単独組合員権)、検査請求権(同第105条-少数組合員権)があります。
    組合員の義務については、
     ・出資義務(同第10条)
     ・損失額支払義務(同第20条第3項)
     ・経費分担義務(同第12条)
     ・共同事業利用義務(同第19条)
     ・団体協約遵守義務(同第9条の2第10項)
    などがあります。
    また、組合法では規定はありませんが、事業協同組合の模範定款例第18条に組合員の事業内容届出の義務があります。そして、これらが、組合法で保証された組合員の権利と課されている義務です。
    権利と義務は、組合運営における車の両輪ともいうべきものです。従って、いずれかが優先される(例えば、義務の履行より権利の主張を優先させる等)状況では適切な組合運営は望めません。
    以上に留意しながら講義すべきであろうと考えます。
  • (3)組合員の対外的責任について
    私は砂利採取業を営む者によって組織されている事業協同組合の組合員です。
    先日、組合の得意先であるAさんが私のところに来て組合の理事長名義で振り出された持参人払式の小切手を見せ、組合で支払いを拒絶されたので、組合員が連帯して支払ってほしい旨言われました。支払義務があるのでしょうか。
    組合員が組合との関係で負うべき責任については、中小企業等協同組合法第10条第5項に「組合員の責任は、その出資額を限度とする。」と規定されています。
    これは、組合員の責任について、無限責任ではなく組合員の出資額を限度とする有限責任である旨を明らかにしています。
    つまり、組合がいかなる債務を被った場合でも、組合員は組合に対して払い込んだ出資額以上の責任は負わないというものです。
    ところで、「組合員の責任」とは組合に対する責任であって、直接に組合の債権者に対してはその責任を有しないと考えられます。
    これは、組合は組合員を構成員とする社団ではありますが、組合員とは別個の独立した人格体として取引の当事者になりうる権利義務を有しており、その取引によって生じた債権債務関係は、組合とその取引先という当事者間にのみ存在することとなるからです。
    つまり、取引先である相手方は組合に対してだけ債務の履行(支払い)を請求することができ、その組合員に直接その請求をすることはできません。
    従って、貴社は組合の得意先であるAさんに支払う義務はありませんが、個人的に組合の債務保証をしている場合は、保証人としてその責任を負わなければならないことは言うまでもありません。
  • (4)組合員の権利義務の一時停止について
    組合員の意思表示に依り組合を休会でき得るか否か?
    組合員にして組合員の経済的事情から賦課金を納入することが苦しいので、暫時組合を休会したい旨の申出があるのでこれについての取扱い方を回答されたい。
    組合員が組合を休会するという意味が不明であるので回答しかねるが、組合が総会又は理事会の決議により、組合員の経費負担義務を免除(この場合は、定款を変更し、とくにやむを得ないと認める場合は、経費の全部又は一部を賦課しないことがある旨を明記する必要がある)するとか、あるいは組合員が自発的に組合に対して有する権利(議決権、選挙権、配当受領権等)を行使しないということであれば、とくに問題はないものと考える。
    しかしながら、例えば組合が組合員に対して賦課金を免除するという条件のもとにその組合員の基本権たる議決権等を停止するというような特約をすることは許されない。
  • (5)脱退した組合員の持分受取書に対する印紙税について
    組合員が脱退し、出資金を受取ったときは、組合員資格を喪失しているため受取領収書には印紙税法が適用されるか?  
    印紙の貼付について、中協法第20条に定めるとおり、持分は組合員が脱退したときに、その請求権を生ずるのであるから、持分受領のときは、既に組合員ではなく、したがって協同組合員たる特典はなくなり、持分受取書には印紙を貼付する必要がある。

4. 設⽴

設立発起人

  • (1)小規模事業者でない者の発起行為について
    中協法による事業協同組合の設立を計画して認可申請したが、設立発起人中に、従業員383名を有し資本金が1億円以上のいわゆる小規模の事業者でないものが加わっているので、実態調査したところ止むを得ないものがあると考えられたが、中協法は、小規模の事業者でないものの加入に関しては法第7条第3項に規定しているが、発起人に関しては何等規定がない。
    小規模の事業者でないものは発起人となり得ないと解すべきか?
    又は発起人として設立の手続を完了し成立した日から30日以内に所定の届出を公正取引委員会に行い、その認定をまってよいと解すべきか?ご質問する。
    発起人は、中協法第24条第1項の規定により、組合員になろうとする者でなければならないことになっているので、組合員資格を有する者であれば発起人となることができる。
    事業協同組合の組合員資格を有する者は、中協法第8条第1項に規定する小規模の事業者であり、設例の事業者がこの小規模の事業者に該当するかどうかは、専ら実態判断によるべきで、300人を超え、資本金が1億円を超えているからといって直ちに小規模の事業者でないと速断することは適当でない。
    貴方の判断でその事業者が小規模の事業者であり、定款の資格事業を行う者であるならば当然組合員資格を有することになり、したがって組合の設立の発起人になり得るのである。

創立総会

  • (1)創立総会の開催公告期間について
    ある協同組合の創立総会に当たって、11月7日に総会開催の公告をし、同21日に総会を開催したが、この期間は適法であるか。   
    創立総会開催の公告期間については、中協法第27条第2項に「前項の公告は、会議開催日の少なくとも2週間前までにしなければならない。」とあるが、その期間計算方法について中協法に特に規定されていない。株式会社の株主総会の招集通知について、「会日の2週間前までにとは、間2週間の意と解する」との判例(昭和10.7.15.大審院判決)があり、また会日と招集通知との間2週間をおかない招集手続を違法とした判例(昭和25.7.7.東京地裁判決)があり、会社に関してはこの解釈が一般的であるので、組合においても商法の解釈に準ずるのが妥当と解され、ご照会の公告期間は適当ではなく、設問の場合は11月6日以前に開催公告をする必要がある。
  • (2)創立総会における発起人の議決権行使について
    中協法第27条(創立総会)第5項は中小企業等協同組合の創立総会の議事について「創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者で、その会日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して、その議決権の三分の二以上で決する」と規定されている。
    この規定によれば創立総会において議決権を行使する者は設立同意者のみで、発起人の議決権の行使は認められないものと解される。
    したがって、設立同意者が数名以上ある場合は問題を生じないが、たとえば、組合員たる資格を有し、かつ設立と同時に組合員になろうとする意思のある者が、法第24条(発起人)第1項の規定により全員発起人となり、しかも他に設立同意者がない場合は前記法第27条の規定による設立同意者の出席は不可能となり、したがって創立総会における議事決定は不可能となるものと解釈される。
    以上のような全員発起人による組合設立の場合には会社の発起設立の場合と同様創立総会の開催を必要としないものと解されるが、この見解が正しいかどうか?
    もし正しくないとすれば、この場合の創立総会における議事及び運営の取扱についてご教示をいただきたい。
    中協法第24条第1項並びに第27条第3項及び第5項の趣旨からして、発起人も設立同意者として創立総会において議決権を行使することができるものと解される。
    また、創立総会が設立行為における不可欠の要件ともなっているので設問のように、発起人のみによる組合の設立に際しては、創立総会の開催を必要としないとする解釈は成り立たないと考える。

設立手順

  • (1)設立認可申請書に添付する定款の日付等について
    本会では組合設立認可申請書に添付する定款(原始定款)については、従来から定款の末尾に記載する日付には創立総会日を記入し、発起人全員記名捺印したものを行政庁に提出し、認可を受け設立登記を行ってきたが、最近〇〇地方法務局へ設立登記申請を行ったところ、設立認可書原本に合綴している原始定款の日付につき、日付を創立総会開催公告日(創立総会日より2週間前)以前とすべき旨の指摘があった。ついては、貴会の見解を伺いたい。
    なお、中協法の設立登記申請の際添付すべき定款については、法務省民事甲第2195号、昭和31年9月20日法務省民事局長名をもっての通達により、発起人の署名がない場合であっても登記申請は受理できる旨の通達が出されている。
    定款の日付については、法定記載事項ではなく、また発起人の署名については、昭和31年に中小企業庁より署名不要の旨の通達が出ており、本会もこれに従っている。
    しかし、定款に日付を記載するならば貴会の見解のとおりと考えるので、〇〇地方法務局の見解に対しては、公告義務を怠っていない旨の事実を提出し納得してもらうことがよいと思うが、今後、紛争を避けるため定款への日付記載の取りやめについて一考願いたい。
  • (2)所管行政庁が共管の場合の設立認可申請手続について
    地区が県内である自動車販売整備の事業協同組合の所管行政庁は、中協法第111条の規定により国土交通大臣と都道府県知事との共管になると考えられるが、認可の申請は、どちらか一方に行うべきか、あるいは同時に両者に申請すべきか。
    ご指摘のように同組合の所管行政庁は、国土交通大臣と知事であり、組合の認可も両者の所管に属する。
    認可手続については、従来の取扱い方針としては、共管の場合の両者に申請書(正本)を提出することになっている。なお行政庁においては打ち合わせの上両者連盟の上処理されている。

その他

  • (1)組合設立手続中の事業実施について
    設立認可申請中の協同組合は、その期間中、発起人又は役員の名において、組合としての業務の全部又は一部を実施することができるか?  
    認可申請中の組合の発起人及び認可後設立登記完了前の組合の理事(以下「設立中の組合の発起人及び理事」という。)の権限は、組合の設立それ自体を直接の目的とする行為に限られるものと解する。
    したがって、その範囲を超えた行為によって設立中の組合の発起人及び理事が取得又は負担した権利義務は設立後の組合にその効力は生じない。
    ただし、設立後の組合がその行為を追認した場合にはその効力は設立後の組合に生ずるものと解する。

5. 管理

定款・規約・規程

  • (1)組合員資格の定款記載方法について
    定款上組合員資格を明らかにするため「注」として詳細説明文を条文末尾に記入するのは正しいか?                  
    説明文を条文中に挿入すべきかどうか?
    定款上組合員資格を記載するに当たっては、「注」として条文の末尾に詳細に説明文を書くことは望ましくなく、本文中に具体的に、かつ明確に記載するようにされたい。
  • (2)定款変更の効力発生時期について
    中協法第51条第2項において「定款の変更は、行政庁の認可を受けなければその効力を生じない」と規定されているが、変更した場合、その効力の発生時期は、認可したときであるか、あるいは組合が変更決議をしたときに遡及するか?
    定款変更の効力は、行政庁が認可をしたときに発生し、組合が定款変更を議決したときに遡及しないものと解する。
    なお、効力発生時期をさらに厳密にいえば、定款変更の認可は、行政処分であるから、行政庁において決議を終った日又は認可書を作成した日にその効力が発生するのではなく、認可があったことを組合が知り得たとき、すなわち認可書が組合に到着したときから効力が発生することとなる。
  • (3)法令の改廃等により当然変更する定款の変更手続きについて
    1.法令の改廃により既存の定款の規定が当然に変更される場合の定款変更は、変更される定款の規定は法律上無効であるから、総会の決議を経ないでこれを変更することができるか?
    2.事務所の所在地が、行政区画の変更により変更する場合等定款規定の中で事実に基礎を有するものは、その事実の変更により定款を変更する場合には、上述の理由により、総会の決議を必要としないか?
    法令の改廃による定款変更であっても総会決議並びに行政庁の認可は必要であり、行政区画の変更等に伴う定款変更についても同様と解する。 
  • (4)事業年度の変更について
    某組合の事業年度は1月1日より12月31日であるが、〇〇年5月1日に、有効な総会において、8月1日より7月31日と変更議決し、同年5月10日に変更認可を受けた。
    この場合、変更時の事業年度はどのようになるか。
    なお、通常総会はどのように開催したらよろしいか併せて教示願いたい。
    定款変更の議決において特別の定めがなかった場合は、定款変更によって新たな事業年度の始まる8月1日の前日である7月31日までが事業年度とされる。その際、この事業を明らかにする主旨から定款の附則に、
    例えば、「〇〇年に限り、事業年度は、〇〇年1月1日より同年7月31日までを1事業年度とする。」等の規定を設けることが適当と考える。
    なお、通常総会については、経過措置として事業年度が1月~7月に短縮されても、毎事業年度1回開催されなければならない(中協法第46条)ので、当事業年度について必ず開催しなければならない。
  • (5)定款、規約等の解釈について
    私は組合の事務局長に就任したばかりですが、当組合には、定款、規約、規程など様々なものが設けられており、その区別がよく分かりません。
    これらの相違点についてお教え下さい。また、よく「規定」という言葉も使われますが、「規程」と「規定」の違いについてもお示し下さい。
    組合には、中小企業等協同組合法をはじめとして、同法施行令、施行規則など、組合の運営その他を定めた関係諸法規がありますが、組合自体が法に則り、組合を運営していくために必要な具体的方針あるいは一定の基準を定めるものとして、定款、規約、規程等があります。
    定款は、組合の事業を進めるうえにおいて重要な意義を有し、組合の組織、運営等についての基本的な内部規律を定めた自治法規であり、いわば組合の憲法ともいうべきものであす。したがって、この定款の設定及び変更については総会の議決が必要であり、議決方法も特別議決によることとなっています。
    規約は、定款に定められた事項の運用細則ないし事務的事項を定めるもので、組合の業務運営、事業執行等に関し、組合と組合員間を規律する自治法規です。規約を定めるかどうかは任意ですが、これを定めた場合には定款と同様に組合員全員を拘束することとなるため、規約の設定、改廃についても総会の議決を必要とします(この場合には普通議決で足りる。)。役員選挙規約、共同販売事業規約などがこれにあたります。
    規程は、組合の事務執行上に必要な関係を規律する内規であり、理事会において設定又は改廃できるものです。給与規程、旅費規程などがこれにあたります。
    なお、「規定」とは、法律、定款、規約、規程などそれぞれに定められた個々の内容を指すもの、つまり条文の内容を指す場合に使われるもので、「規程」とは明確に区別する必要があります。
  • (6)規則、規約等の定義について
    協同組合の運営上、諸規約諸規程の設定は必要欠くべからざるものであるが、これらを作成するに当たって次の原則的な説明と相違点並びにその使用される場合の事例をお知らせ願いたい。
    1.規則とは
    2.規約とは
    3.規程とは
    4.規定とは
    規約、規程については必ずしも明確な区別はなく、混同して使用されているので、一般的に定義づけることは困難であるが、従来の慣習並びに字義により区別すれば大要次のとおりと思われる。
    1.規則とは、広義に規則という場合、諸々の事項を規定した例えば定款とか規約とか、規程等を総称していわゆる「さだめ」をいうが、最狭義に規則という場合は国の立法機関としての国会以外の機関が制定する成文法=それらは名称を規則というだけで必ずしも法的性格を等しくするものではない=をいい、現在、最高裁判所や衆・参議院等特定の諸機関が規則制定権を認められている。
     なお各大臣が主任の行政事務について発する命令が規則という形であらわれていることもある。
    2.規約とは、例えば協同組合等が組合の業務運営その他一定の事項に関し、組合と組合員間を規律する自治法規であって定款と同様、総会において決められるべき性質をもったもので、選挙規約、委員会規約、金融事業規約、共同購買事業規約等がある。
    3.規程とは、例えば協同組合が組合の事務、会計その他に関して定める内部的な規律であって、主として事務遂行上必要な関係を規律する内規律的なもので、理事会等に諮り決定し得る性質をもつもので、文書処理規程、服務規程、経理規程、給与規程等がある。
    4.規定とは法律、定款、規則、規約、規程などの条文に定められている個々の内容をいい、普通は条文の内容を指すものと考えてよい。
  • (7)組合諸規程の決定機関について
    本組合では、組合運営に必要な規程類を現在作成中であるが、下記のものは総会の承認を得る必要があるものか、理事会の決定のみにてよいものか教示願いたい。
    記文書処理規程、服務規程、人事規程、給与規程、退職金規程、昇給規程、旅費規程
    組合の文書処理規程、服務規程、人事規程、給与規程、退職金規程、旅費規程等主として組合の業務執行上必要な関係を規律する内規的なものの決定は、理事会の議決をもって足り、総会の議決を経る必要はない。
    ただし、給与規程、退職金規程が常勤等の役員に適用される場合は、理事会の決定では事柄の性質上適当でないので、総会の議決を経て決定するのが望ましい。
    なお、役員選挙規約、共同施設利用規約(実際には役員選挙規約、共同施設利用規程といっている場合が多い。)等組合の業務運営その他一定の事業執行に関し、組合と組合員間を規律する自治法規的なものについては総会の議決を経て決定しなければならない(中協法第34条)。
  • (8)地区を拡大するための定款変更の認可行政庁について
    全県を地区とする事業協同組合が、事業拡張をはかるため、地区を数県に拡大することの定款変更を総会で議決した。この場合、この定款変更の認可の行政庁は何処であるのか? 
    この場合における定款変更の認可の所管行政庁は、当該定款の変更の効力が発生した後に所管することとなる行政庁である。 
  • (9)事務所移転の法的手続きについて
    私どもの協同組合では、事務量の増加等に対処するために組合事務所(主たる事務所)を移転しようと考えています。立地環境、組合員の便宜等を勘案し、候補地を検討した結果、現在所在のA市に隣接するB市に移転する方針を固めました。
    今後、法律的にはどのような手続きをとらなければいけないか教えて下さい。
    組合が事務所を移す場合には、定款変更を要する時と要しない時の2つの場合があります。
    定款変更を要しない場合とは、定款で主たる事務所の所在地について、最小行政区画(例えば「〇〇市」)までを定めている場合でかつその区画の範囲内で事務所の移転を行おうとする場合です。(この場合は、理事会で具体的な所在地を決定し、その議事録を添付して変更登記を行うこととなります。)
    貴組合の場合は、「隣接するB市」に移転しようとするものですから、この最小行政区画を超えての移転になるものと思われますので、定款の「主たる事務所」の規定を変更する必要があります。
    この定款変更を行うためには、まず、総会での特別議決(半数以上の組合員が出席し、その3分の2以上の多数による議決)を経る必要があります(中小企業等協同組合法第51条第1項第1号、第53条第1号)。
    さらに、定款変更については、認可行政庁の認可がないとその効力は生じません(中小企業等協同組合法第51条第2項)ので、行政庁への認可申請が必要となります。
    定款変更が認可されると次に行わなければならないのが、事務所移転の変更登記です。
    具体的には、移転を行った日から2週間以内に旧所在地及び新所在地において、それぞれ移転の登記を行わなければなりません(中小企業等協同組合法第85条第1項)。
    なお登記申請に当たっての添付書類は旧所在地における登記申請のみ必要となっています。
    実施の手続きとしては、新所在地における登記の申請は旧所在地を管轄する登記所を経由し、旧所在地における登記の申請を同時にすることとなります。(中小企業等協同組合法第103条)。
  • (10)事務所の所在地登記について
    組合の事務所登記に際して、何市何町何番地何ビル何階何号室とまで記載しなければならないとの説があるが、建物の名称まで記載する必要があるのか?   
    組合事務所の所在地については、行政区画名をもって表示した地番までを表示すればそれで足り、かつ完全である。                  
    なお、申請者側から何ビル何号室までを記載することは差し支えはない。

役員

  • (1)役員定数について(1)
    中協法第35条において役員の定数は「理事は3人以上、監事は1人以上」と定められているが、その定数の上限は第何条に規定されているのか?
    例えば、ABCDの4法人が協同組合を組織するに当たって理事、監事の定数の上限の決定の方法として、単記式投票によれば組合員1人1票の原則により理事、監事各々最大4人まで選出できることとなるが、連記式投票による場合は組合員総数を上廻る多数の役員を選出することが可能になる。
    定款にて役員の定数は決定しているので単記、連記いずれを採用しても役員の総数は同一でなければならない。
    故にその両方の限度内で組合内容に適した方法で選ぶべきであると解釈しているが如何?
    中小企業等協同組合の役員の数は、中協法第33条1項第11号の規定により、定款の絶対的必要記載事項として、必ず、何人以上何人以内という定数で定款に定めなければならないことになっているが、その数は、同法第35条第2項に規定する数以上であれば、何人であろうと法令違反にはならない。
    役員の定数を定める場合、設問のごとく単記式無記名投票によって選出し得る最大限の数(組合員数)を、その組合の理事及び監事の定数の上限として、その範囲内において、単記式、連記式の何れかを採用すべきであると解して画一的に指導することは無理がある。
    説例のように組合員数が4人である組合においても、組合の業務運営において組合員数を上廻る役員が必要とされる場合も考えられるので、指導としては当該組合の事業規模、役員の業務分担を考慮し、業務の迅速適格な遂行を妨げることとならないよう、必要かつ最少限度の役員の数を定め、その数を選出するについて、単記式、連記式の何れを採用することが妥当であるか検討されるべきである。
  • (2)役員定数について(2)
    中協法第35条第6項に「理事又は監事のうち、その定数の3分の1を超える者が欠けたときは、3箇月以内に補充しなければならない」となっているが、
    1.定数とは何を指すのか?
      本組合の定款変更案では役員の定数及び選任について
     「本組合の役員は理事25人以上30人以内、監事3人又は4人とする。」
     としてあるが、この場合上限の理事30人の3分の1つまり10人まで欠けても補充選挙しなくともよいと解しているが如何?
      但し25人と下限を決めているのでこの場合は5人まで欠けて25人になっても補充選挙の必要はないか?
    2.次に監事の場合上限4人の3分の1つまり1人を欠けても補充選挙の必要はないか?
    3.法定数とは何か?この場合25人と解してよろしいか?
    1.定数については従前は確定数をもって定めることとしたのであるが、役員の死亡等により欠員を生じた場合に、その都度選出することは、事実上不便を生じることが多く、実態にそぐわない点もあるので「何人以上何人以内」を定数としている。
    2.役員補充の場合における取扱いについては、中小企業庁では定款に記載した下限を基準とすることにしているので、説例の場合25人の3分の1以上、即ち9人が欠け16人になった場合に補充選挙の必要が生じてくることになる。監事の場合も同様に下限の3人の3分の1以上が欠けた場合に補充義務が生ずることになる。
    3.上述の趣旨から「何人以上何人以内」を法定数といい、説例の場合は「25人以上30人以内」が法定数であって、下限の25人をもって法定数とはいわない。
  • (3)一法人から複数の役員を選出することについて
    1.理事のうち組合員たる一法人の役員から複数の理事を選任できるか?               
    2.組合員たる一法人の役員から理事と監事を選任できるか?                                 
    3.上記に質疑1.、2.が合法的な場合被選者1人を除き他は員外役員となるか否か?                

    2.の合法的な場合でも、
    (1)一法人でも一組合員であるので一組合員から理事と監事が出ることは役員の兼職禁止に抵触するとの意見
    (2)役員の就任は自然人(個人)として就任するので同一法人から出ても兼職とならないとの意見どちらが正しいか?
     なお、当組合の実際例については組合員たる一法人の代表取締役を理事に、他の平取締役を監事に選任する状況にある。
    1.理事は、組合員たる一法人の役員から複数の理事を選任できる。                      
    2.組合員たる一法人の役員から理事と監事を選任できる。                              
    3.複数の組合役員を選任した場合複数の組合役員は員内である。                             
    4.(2)のとおりである。すなわち、役員の就任は自然人として就任するので、同一法人から出ても兼職とはならない。   
  • (4)法人役員の組合理事が同一法人の他の役員と組合理事を交替することについて
    組合員たる法人の役員が、当該組合の理事に選任されていたところ、法人の経営する業務にたずさわる他の役員に理事を交替する必要が生じたが、何ら手続を経ずしてそのまま理事を交替することができるか?
    理事の選任は、中協法第35条の規定により、必ず総会において選挙又は選任しなければならないから、それによらない理事の交替ということは、法律に違反する。理事というものは、組合員たる法人を代表しているのではなく、個人として、組合との委任契約により、公平な立場から組合の業務執行の決定に参画するのである。
    従って、理事が、組合員たる同一法人の他の役員と交替するということは、理事本来の趣旨からいってもできないことである。
  • (5)連合会の役員資格について
    本会定款第15条第5号
    「役員は総会において会員たる信用協同組合の業務を執行する役員の内から単記式無記名投票によって選挙する」としているが、この業務を執行する役員を代表理事と解しているがこれでよいか。
    貴連合会定款第15条第5号に規定している「業務を執行する役員」の範囲については、代表権を有しない理事は理事会において組合の業務執行の意思決定に参加するのみで、実際に組合の業務の執行に当たるのは組合の代表理事であるということから考えて、「業務を執行する役員」を「代表理事」と解することは差し支えない。
  • (6)員外役員の定めのない組合が員外役員をおくことの可否
    協同組合が員外役員をおく場合、次のいずれをとるべきか?                           
    1.員外役員を置く旨定款に定めなくとも、員外役員を置かない旨の規定がなければ、理事の定数の3分の1までは置くことができる。                
    2.員外役員を置く旨定款に定めなければ、員外役員は置けない。 
    説例については、法律解釈上は、理事の定数のうち3分の2までは必ず組合員又は組合員たる法人の役員であることを充たせば貴見1.の通りであるが、貴見の2.の見地を加味して、員外役員をおく場合は、定款には理事の定数の下限の3分の1以内において「何人」と確定数を記載することが員外役員に関する事項を明確にさせるうえから望ましい。
  • (7)員外理事の資格について(1)
    私どもの協同組合では、組合員の後継者で組織する青年部の役員を組合理事として登用し、役員の若返りと、組合事業の活性化を図りたいと考えております。
    青年部の役員は組合員企業の役員になっている者が多いのですが、個人事業者の後継者である者やまだ組合員企業の役員になっていない者もおります。
    これらの者を役員にすることができるように定款に「員外理事」の規定を設けたいのですが、その際「員外理事」を組合員の後継者である青年部の役員に限定する規定にすることは可能かご教示下さい。
    組合法では、員外理事の定数については、第35条第4項により員外理事の組合業務運営の支配を避けるために一定の制限を付しております。
    しかし、員外理事の資格については、組合法では特に制限規定は設けておりませんので、組合法の趣旨及び公序良俗に反しない限り組合が自主的に定めうるものと解されます。
    ご質問のように、員外理事を組合員の後継者に限定することは、組合運営が組合関係者のみの運営となり、法の趣旨に反するものではないので差し支えないと思料します。
    組合法で「員外理事」を認めた趣旨は、「正規理事(員内理事)」が自己の企業の事業もあることから、組合の事業運営に専念し得ない恐れがあり、他方員外からも広く人材を起用することが望ましいという点にあります。
    員外理事の資格を組合青年部役員である組合員の後継者に限定するのもひとつの方法ですが、組合事業運営に精通した人材を広く外部から起用することも考えてみる必要があると思われます。
  • (8)員外理事の資格について(2)
    この度の役員選挙で、合資会社の有限責任社員であるA氏から理事選挙に立候補したい旨の通知がありました。A氏は、組合事業にも精通し、他の組合員からも信頼された人物なので理事として積極的活動をお願いしたいところですが、組合員の一部から、A氏に理事となる資格はないのではないかとの意見がありました。
    その理由は、組合の定款では「員外理事」を認めていない規定になっているので、「法人の役員」でないA氏にはその資格がないから定款違反になるとのことです。
    どのように解釈すればよいのでしょうかご教示下さい。
    組合法でいう「組合員たる法人の役員」とは、その法人において、その業務執行、業務・会計の監査などの権限を持つ者と解されます。つまり、物的会社の取締役・監査役、人的会社の業務執行社員などがこれにあたります。
    人的会社である合資会社では、「無限責任社員」が原則として会社の業務執行及び会社代表の権限を有する(商法第151条第76条)のに対し、「有限責任社員」は、経済的には無限責任社員の経営する事業に対して資本的関係においてのみ参与し、その事業より生ずる利益の分配にあずかるにすぎないものであるとされ、業務執行及び会社代表の権限を有しないものとされています(商法第156条)。
    しかし、実際には合資会社の定款の規定をもって有限責任社員に対内関係における業務執行権を与えるケースがみられ、通説・判例もこれを支持しています。
    このようなことから、A氏が組合役員になるには、当該合資会社の定款によって業務執行権を認められた有限責任社員となるか、そうでなければ組合の定款を「員外理事」を認める形に変更することが必要となります。
  • (9)員外監事について
    1.役員たる監事は組合員中より選任すべきか?また、組合員外から選任することができるか?            
    2.本組合は定款、規約には明示していないが、これは中協法第34条に基き規約で定めておくべきかどうか?             
    1.事業協同組合の役員たる「監事」の資格は、組合員たると以外の者たるを問わないので員外から選出することができる。                
    2.特に定款、規約等に明示する必要はないが、員外役員を認めない組合にあってはその旨を記載することが適当である。            
  • (10)理事と組合との関係について
    理事と組合との関係は民法第643条の委任によるものか。     
    中協法第42条において準用する商法第254条第3項の規定により、組合と役員(理事又は監事)との内部関係は民法上の委任契約に関する一連の規定が適用される。
    したがって、組合と理事との関係は当然に民法第643条~第656条の規定に拠るところになる。
  • (11)理事の辞任届の効力について
    理事が辞任届を提出し、理事会に出席しないとき、その理事は理事会の決定事項について責任を負わなければならないか? 
    組合と理事との関係は委任関係であり、その委任関係の終了は相手方の承認を必要とせず一方的に終了させることができるので、理事は辞任届をもって理事を辞任したことになる。
    しかし、中協法第42条で準用する商法第258条第1項の関係で、辞任により法定数を欠くときは、辞任した理事は、後任者が就任するまでは理事としての権利義務をもつから、ご質問の欠席した場合は、欠席した理事としての責任を負わなければならない。
  • (12)役員の任期の起算日について
    私は、平成5年5月28日に開催された通常総会において理事に選出され、就任しました。組合の定款では任期は「2年」となっています。
    2年後の任期満了日は、平成7年の5月28日でしょうか、あるいは5月27日でしょうか。
    理事などの役員の任期は、中小企業等協同組合法第36条により「3年以内において定款で定める期間」と定められていますが、この役員の任期の起算は、民法の規定に従わなければなりません。
    民法では、次のように規定されています。
    (期間の起算点(2))
     「第140条 期間ヲ定ムルニ日、週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但其期間カ午前零時ヨリ始マルトキハ此限ニ在ラス」
    ご質問では、5月28日に就任できる状況(前任者の任期が切れているか、辞任届が提出されている等の状況)にあると思われますので、就任日は、5月28日ですが、起算日は前記の民法第140条の前段により「期間の初日は算入されず」、翌日(29日)から起算されることとなり、2年後の平成7年5月28日が満了日となります。
    なお、総会開催日である5月28日に現任者の任期が満了となるため、翌日の29日に就任するような場合は、民法第140条後段により、29日の「午前零時より」任期は始まるので、就任の初日である29日は期間に算入されることとなり、2年後の任期満了日は、平成7年5月28日ということになります。
  • (13)理事の任期伸長規定を置くことの可否について
    役員の任期が常に通常総会の終結の時をもって満了するように定款を変更することはできるか。       
    通常総会が理事の任期を超えて開催されることを想定し得るため、通常総会の会日が年度によって異なるのに応じて理事に任期が短縮又は伸長され、常に通常総会の終結の時をもって任期が満了するように定めることができるようにすれば便宜であり、そうすることによって、決算書類の承認に当たって、決算当時の理事に現任者として説明の任に当たらせることができ、より適正な組合運営が期待できる。
    中協法では、「役員の任期は、3年以内で定款で定める機関とする。」と規定し、3年以内であれば定款で自由に定め得る。
    これにより、理事の任期を2年以下としている組合にあっては、定款に規定することによって任期伸長規定を置くことができる。
    また、中協法は、商法第256条第3項のような任期伸長規定を法律上持たないので、中協法の定める理事の任期である3年を超えることとなるような規定を定款に置くことはできないため、理事の任期を3年としている場合には、この任期伸長規定を置くことはできない。
    なお、監事についても同様である。
    さらに、任期満了又は辞任によって退任した組合の役員は新たに選任された役員が就任するまでなお役員としての権利義務を有することとされているが(中協法第42条が準用する商法第258条)、この規定は退任した役員の残任義務を定めたものであって、役員の任期自体を伸長させる規定ではない。
  • (14)役員任期の延長による現役員の任期について
    役員の任期が定款変更により延長された場合に変更時の役員の任期については、変更時の役員は就任時の委任契約に基づくので、新たな任期に拘束されないとの説があるがどうか?
    組合と役員との関係は委任契約であるが、定款は組合及び役員を拘束する法規性を有しているから、役員は委任契約よりも定款に拘束され、定款変更による延長された任期に従わなければならないと解する。
  • (15)役員任期に関する定款変更認可等について
    総会において、理事及び監事の任期を1年延長する目的をもって理事及び監事の任期を「2年」とあるのを「3年」にそれぞれ定款の変更を決議(組合員110名、出席者数65名、全員賛成)した場合において、次の各号に該当するときは、適法であるか?
    1.理事及び監事の任期中(現在2年)に改正した場合、そのまま理事及び監事の任期は延長(更に1年)されると解して差支えないか?
    2.6月27日に任期満了する理事及び監事が同日本文の定款変更が決議された場合において7月12日に上記定款変更認可申請書の提出があり同日これを認可したときは、理事及び監事の任期が6月27日現在をもって満了し、自然退任すると解し、新たな選挙を必要とするか?
    3.前号の定款変更認可申請書の提出があった場合において、その定款変更箇所を運営指導として、一定の条件(例えばこの規定は令和〇年6月27日から適用する、と記載した場合等。)を付記させて認可しても差支えないか?
    設問1については、定款変更は認可により効力を生ずるため、任期中に認可があれば貴見の通り解しても差し支えない。
    設問2については、定款は認可により効力を生ずるため、認可以前に任期が来た理事及び監事は自然退任となり、新役員の選挙を行わなければならない。
    設問3については、中協法においては設例のような遡及して効力を発生しようとする意思ないし行為を認可することはできないものと解する。
  • (16)全役員辞任の場合の新任者の任期について
    役員の全員が任期の中途において辞任したとき、後任者の任期は、前任者の残任期間であるか?それとも新たに任期を起算すべきか?  
    款に定められた役員の任期は役員に選任された個々の人に与えられる在任の期間である。従って、残任期間の定めがなければ補欠の役員に対しても定款による任期が与えられる。
    しかしながら、一般的に全員の役員の任期をそろえるための技術的な方法として残任期間の定めを設けるのが通例となっている。
    この場合のように役員の全員が辞任した場合には補欠の役員という概念がなくなるし、また、残任期間の定めにより任期をそろえる必要もないので、残任期間の定めにかかわらず新たに任期を起算できるものと解する。
  • (17)員外理事の代表理事就任について
    事業協同組合において、員外の理事が代表理事になれるか?理事長、専務理事が共に員外である場合はどうか?      
    員外理事は、組合事業に専念できる者を得るために設けられた制度であることから、代表理事になることは差支えない。
    しかしながら組合は組合員のための組織であることを考慮すると組合の長は組合員のうちから選任されることが好ましい。
    また、理事長、専務理事が共に員外理事であることは一般的には避けるべきであるが、特別の事情でそれが組合運営に却ってプラスとなるのであれば、一概には排除すべきことではないと考える。
  • (18)代表理事を総会で選任することについて
    総会において理事を選挙する際、代表理事を特定して選挙することができるか?
    たとえば理事の定数は5名であるが、そのうち1名は代表理事となるので、選挙の際代表1名、代表権のない理事4名として総会で直接選挙したり、あるいは、選挙は普通に5名を選挙するが、最高得票者を代表理事とすることを条件として行うような選挙方法をとってよろしいか?
    理事一般については、組合と委任契約を締結するのであるから(中協法第42条において準用する商法第254条第3項)中協法においては、総会で選挙する旨を規定しているが(中協法第35条第3項)、代表理事は、理事会を構成する他の理事との信任関係に立ちながら、理事会で決定された組合の業務の執行を正確に実施するところの組合の代表機関であると解される。
    したがって、この趣旨から代表理事は、理事会において選任すべきものとして中協法第42条で商法第261条第1項の規定を準用している。
    いわば代表理事の選任は理事会の専決事項であるから、これを直接総会で選挙することはできない。
  • (19)協同組合に会長制を設けることの是非
    事業協同組合において、過去に理事長の職にあった者のうちから会長を選任し、代表理事の権限の若干を行わせる会長制を設けたいが、これは可能か?
    ご照会の会長の身分あるいは職務権限の詳細が不明であるが、そのような会長は対外的には少なくとも表見代表とみなされ、また、一般的には組合の管理面において理事長との権限の分担等が複雑になり内部の統一が損なわれるおそれがある。
    したがって、ご照会のような会長制を設けることは、法的には不可能ではないが、運営上好ましくなく、理事又は顧問として協力を得るのが適当である。
    しかしながら、中協法においてこれを禁止する規定はないので、会長制を設けることが組合の実体からみて運営上最良の方法であれば、これを設けることも妥当と思料するが、その適否は実体から判断すべきものであるので所轄行政庁とも協議のうえ判断するのが適当と考える。
  • (20)顧問・相談役・参与について
    私どもの組合では、今般の通常総会で、設立以来長年当組合の発展に貢献してきた代表理事が交替し、理事としての職務も退くこととなりました。
    理事会では、その功績をたたえるとともに、組合の役員ではないにしても、組合が必要とする時は、何時でも助言等を求めることのできる地位に置きたいと考えております。
    中小企業等協同組合法では「顧問」を置くことができることとなっていますが、前理事長を顧問に委嘱することは可能でしょうか。
    また、相談役・参与なども設けたいのですがいかがでしょうか。
    長年、組合の業務執行に携わっていた者が、組合の役員たる地位をはずれたからといって、その後、組合がその豊富な経験、知識等を活かした助言等を求めることができないということはありませんが、いつでも遠慮なく助言等を求めるためには、何らかの役職に委嘱しておくことも得策であると考えます。
    中小企業等協同組合法第43条では、「組合は、理事会の決議により、学識経験のある者を顧問とし、常時組合の重要事項に関し助言を求めることができる。但し、顧問は、組合を代表することはできない。」
  • (21)理事会と代表理事との権限範囲について
    事業協同組合定款参考例第48条(理事会の議決事項)第2号において、理事会の議決事項として「その他業務の執行に関する事項で理事会が必要と認める事項」とあるが、同規定中「理事会が必要と認める事項」とあるのは「理事長が必要と認める事項」の誤りでないか。
    代表理事が行う組合の業務執行は、法令又は定款上、理事会の議決を必要とする事項及び重要な業務執行については必ず理事会の決定に基づいて行わなければならないが、その細目的事項及びそれ以外の業務執行事項は必ずしも理事会の議決に基づいて執行する必要はなく、代表理事自らの権限で決し執行することができる。
    定款参考例第48条第2号にいうところの「業務執行に関する事項」は、後段の代表理事自らの権限で決定し執行し得る事項を指し、同号の規定は、これらの事項のうち、組合運営等の観点から代表理事の決定に任ぜず、特に理事会の決定に基づいて執行することが必要であると理事会が認めた場合は、理事会の議決事項とする旨を定めたものでこの規定に誤りはない。
  • (22)代表理事の資格と残任義務について
    甲事業協同組合の代表理事が、任期途中で理事を辞任してしまいました。そこで、次の2点についてお尋ねします。                                           
    1.この場合、その代表理事は、理事としての退任によって代表理事の地位をも失うことになるのでしょうか。                                   
    2.もしそうだとすると、その代表理事の残任義務はどのようになるのでしょうか。   
    1.代表理事については、中小企業等協同組合法(以下「組合法」という。)は、商法規定を準用しており、理事会において理事の中から選任する建前をとっています
    (商法第261条←組合法第42条)。
    したがって、代表理事は理事であることを前提としますから、理事の任期満了、辞任、解任などにより理事を退任した場合には、代表理事をも当然に退任することになります。
    2.理事の残任義務についても、組合法では商法規定が準用されており、理事の退任によって理事に欠員(定数割れ)を生じた場合には、任期満了又は辞任による退任者は、後任者が就任するまで引き続き理事としての権利義務を有することになっていますが、代表理事についてもこの規定が準用されています
    (商法第258条Ⅰ←商法第261条Ⅲ←組合法第42条)。
    ご質問の場合に代表理事としての残任義務があるかどうかについては、次の3つのパターンに区分してみる必要があります。
    すなわち、
     (1)その退任によって、理事・代表理事ともに欠員を生じた場合には、退任者は理事としての残任義務を負うと同時に、代表理事としての残任義務をも負うことになります。
     (2)また、その退任によって、理事の定数を欠いても、理事会の選任により代表理事には欠員を生じない場合には、退任者は単に理事としての残任義務を負うにとどまり、代表理事としての残任義務はありません。
     (3)では、その退任によって、代表理事の定数を欠いても、理事には欠員を生じない場合はどうでしょうか。一見、代表理事に欠員を生じているので、退任者は代表理事としての残任義務を負うかのようですが、この場合には、退任者は理事としての権利義務者ではないのですから、代表理事の地位が理事の資格を前提とする法の趣旨からして、代表理事としての残任義務はないとされています。
  • (23)辞任した役員の残任義務について
    組合の定款では、理事の定数を「6人以上8人以内」と定めており、当初総会で6人を選出していたが、今回1人の辞任者がでた。組合では、この辞任者については残任義務があるとの解釈をしていたが、たまたまある弁護士に相談したところ、従来の見解と異にするため、その根拠についてご説明いただきたい。
    (弁護士見解)
    商法第258条第1項欠員の場合の処置(残任義務)、同法第498条第1項18号では補充義務が規定されており、これらの規定は、法律又は定款所定の取締役の員数の最低限を割った場合のみ適用され、法律又は定款所定の最低員数の取締役が存在している場合は、株主総会において実際上選任されている員数を欠いても適用されない。
    しかし、一方においては中小企業協同組合法第35条第6項では、一定の範囲内(下限の1/3を超えない範囲)において補充義務を免除している。
    本来、補充義務と残任義務とは表裏一体の関係にあり、一方を免除し一方のみを課すのは妥当とはいえない。
    また、補充義務だけを免除し、残任義務を課す合理的な理由も考えられない。
    以上の理由から今回のケースについては、組合に補充義務もなければ、辞任者について残任義務はないものと判断される。
    組合における理事の定数は、組合の規模、事業内容等に応じ組合の業務執行上必要な人数を定款で定めたものであり、常に定数を充たしておくべきものである。
    理事の実員数が定款上の定数に不足することは、そのこと自体定款違反の状態であり、この場合当該組合の理事は法に定められた定数の遵守義務規定(中協法第42条で商法第254条の2を準用)の上からも速やかに理事の欠員分を補充する手続きをとらなければならない。
    また、中協法が第35条第6項において、商法第498条第1項第18号と異なる補充義務規定を置いているゆえんは、同条第4項において、理事の定数のうち3分の1までは、員外理事とすることが認められたことにかんがみ、員内理事者が3分の1を超えて欠けた場合、員外理事者が員内理事者を上回る場合がでて不都合となることを配慮し、特に3ヶ月以内という期間を限って欠員補充を義務づけた点にあるものと考えられ、同項は決して定数の3分の1を超えた欠員が出るまでの補充義務を免除したものではない。
    したがって、設例の場合は定款で定める理事定数(6人)を1人でも欠いた場合は、直ちに該当理事者に残任義務が発生するものというべきで、罰則を伴った補充義務規定がないことを理由にこれを否定すべきものではないと考える。
    なお、定款において理事の定数に幅をもたせている場合において、下限の人員を選出すると、今回のような事態も生じやすく、「6人以上8人以内」として理事に2人の余裕をもたせた意味がなくなるので今後は定数の上限を選出するようにされたい。
  • (24)役員の責任とその解除について
    1.代表理事の行った会議費及び交際費の使途につき、理事会、監事、総会において承認を受けたものが、その後(翌年)使途が組合に不要のものであることが判明した。これにつき、組合は損害賠償の請求ができるかどうか?
    2.前項の行為は、代表理事の独断的行為であるが、損害賠償の場合は、当該代表理事の責任に止まるか?あるいは、理事、監事ともに連帯して賠償の責任があるか?
    3.上記の行為を行った代表理事が、使途につき捏造した理由を付し弁明すれば、その行為は止むを得ないとすべきか?
    4.理事、監事の決算書類に関する責任は総会後何年か?
    1.会議費、交際費の支出は理事長の業務執行に属するもので、あらかじめ理事会で決定されるべき性質のものではなく、代表理事以外の理事については責任がないとする見方があるが、代表理事の業務執行といえども職務に違背する不当な行為については未然にこれを防止し、もって組合の利益をはかるいわば総合監視の義務があるので、理事としてこの任務をけ怠し組合に損害を与えたとするならば、連帯して賠償する責任がある。
    また、監事についても、善管義務を怠り計算書類の不正を看過した場合には、理事と共に連帯して損害賠償しなければならない。
    2.交際費、会議費の使途について代表理事が捏造した理由を付したか否かに関しては、いわゆる道義上の問題として解決する場合は別として、理事の忠実義務違反に係る損害賠償請求の訴に伴う問題として裁判所が判断するものである。
    3.理事及び監事の決算関係書類に関する責任は民法の一般原則(第167条第1項)に従い、10年の時効にかかることになっている。なお、理事、監事とも総組合員の同意があれば責任の解除ができることとなっている(商法第266条第5項の準用)。
  • (25)決算関係書類に添付する監事の監査意見書について
    通常総会で決算関係書類(事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案又は損失処理案)の承認を求めるに際し、理事は監事の意見書を添えて総会に提出しなければならないことになっております。
    監事に次のようなことがある場合、どのように処置したらよいでしょうか。
    1.監事が複数人いる場合、決算関係書類に添付する監査意見書の監事の意見は必ず一致しなければなりませんか。
    組合の決算書をみると、一通の意見書を監事が連名で出している例が多く見受けられます。
    2.監事全員が監査意見書の提出を拒んだ場合に、監事の監査意見書がないまま総会を開催し、決算関係書類の承認を受けることはできますか。
    また、監事の定数が1名の場合、その監事が病気等で、監査をしてもらえないときはどうでしょうか。
    監事は、会計監査を通じて理事の業務執行を監督する立場にある機関です。
    監事には会計帳簿及び書類の閲覧、会計に関する報告徴収、組合の業務及び財産の状況を調査する権限が与えられており、それらの権限に基づいて、監事は各々が独立して監査業務全般を行います。
    1.複数の監事がいる場合、監査結果について監事すべての意見が常に一致するとは限りませんし、その必要性もありません。たとえ監事が複数存在するとしても、監事は合議機関ではなく、各監事はそれぞれが独立して監査業務全般を行うものであるからです。
    重要な部分について監事間に意見の相違がある場合に、その点を監査意見書で明らかにすることは、各監事の責任を明確にするばかりでなく、組合員に対して問題点について注意を促すという意味においても意義があります。
    前述のように、監事は各々が独立して監査業務全般を行いますから、監査意見書は、各監事が各別に作成すべきものです。組合では通常、複数の監事が共同して監査を行い、連名で同一文言の監査意見書を作成することが多いと思われます。しかし、法律的には、監事の合議によって一個の監査意見書が作成された訳ではなく、同一内容の複数の監査意見書が作成されたものと解されます。
     各自の意見書の内容が同一であるので形式を連名にしたにすぎないのです。
    理事は、監事の意見書を添えて決算関係書類を通常総会に提出しなければなりません。しかし、監事が意見書の提出を拒んだ場合は、これを強制的に履行させる方法はありません。また、監事の監査がない状態で決算関係書類を承認する総会の決議がなされた場合は、その決議は取消原因を有することになるものと解されます。
    2.監事全員が意見書の提出を拒んだ場合は、監事を解任し、新たな監事を選任したうえで、新しい監事の監査を経て再度総会を開催しなければなりません。監査意見書の提出を拒む監事の行為は、法令・定款違反(任務懈怠)に当たります。監事の定数が1人であり、その監事が病気等で執務不能になった場合は、監査を行うものが1人もいなくなります。
     他に監査を行う監事が必要になりますが、定款に定める監事の定数の欠員ではないので、そのままの状態で新たに監事を選任することもできません。この場合はその監事に辞任してもらうか、辞任に応じてもらえなければ解任の手続きをとって退任させ、総会を開いて新たに監事を選任して、後任監事の監査を待って改めて通常総会を開くほかありません。
  • (26)理事の参事兼職について
    理事は参事を兼職することができるか?
    監事は使用人と兼ねてはならないことになっているが(中協法第37条)理事については別段の定めがないので兼務は差支えない。
    ただし実際問題としては理事が参事を兼ねる必要性は乏しく、その理事を代表理事とするか、専務又は常務理事とすれば足りると考える。    
  • (27)理事長の使用人の兼職
    私どもの組合では、総会から1ヶ月後、事務局長が急死しました。
    小さな組合なので後任の適任者も見つからず、理事長が事務局長の職務を兼務して、とりあえず今年度はこの体制で組合の運営を乗り切っていこうと思います。
    決して財政上余裕のある組合ではありませんが、事務局長に払うべく予算に計上してあった給与について理事長に支給して差し支えありませんか。
    役員と使用人の兼職については中小企業等協同組合法第37条第1項では理事と監事、監事と使用人の兼職のみ禁じています。
    理事については別段の定めがないので兼務は差し支えなく、実際協同組合では、専務理事または常務理事が事務局長を兼務している事例は多いと思われます。
    しかし、ご質問のような理事長が兼務することの是非については、理事長は業務執行の権限を有しているわけですから、たとえ末端の業務であっても理事長としての業務執行に当然包含されると考えるべきで、使用人である事務局長を兼務するということ自体無意味と思われます。
    更に判例に「総会の議決により代表理事の報酬限度額を定めた場合には、代表理事が当該組合の事務分掌上は使用人に相当すべき事務に従事したときであっても、特段の事情のない限り、組合が総会で議決した限度額を超えて代表理事に報酬を支払うことは、その支払の名目を問わず、許されない。」(昭和55年最高裁)とありますので、既に総会も終わっていますから故事務局長分の給与の支給もできないと考えます。
    なお参考ですが使用人を兼務する役員の使用人として受ける給与について税法上は肩書・代表権のない理事が職制上使用人としての地位を有している場合以外は損金への算入を認めていません(法人税法第35条)。
    また総会の場においてもこのような給与分については役員報酬額に含まれない旨明示して決議しておくのがよいでしょう。
  • (28)役員の使用人兼職について
    監事は理事又は使用人と兼ねてはならない事は明示されているが組合が使用する職員は理事となる事が出来るか否か、若し差支えないとすれば、理事を職員として採用しても構わない事と解釈されるが職員の理事兼職について明示願いたい。
    職員で選任された理事が一職員として引続き同一勤務に服する事が出来たとすれば身分は常勤理事であるが、一職員として取扱いをするものであるか?
    中協法第37条第1項において禁止しているのは、次の場合、即ち、①理事と監事、②監事と使用人(職員を含む)である。
    監事は会計監査を通じて理事を監督する立場にあるもので、当然に両者の兼職は禁止される。
    本条の結果、理事と使用人の兼職は差支えないわけで、専ら専務に当たる理事が何々部長というような資格で事務担当者となる事は、従来もよく行われているところであり、これによって弊害のおこる事もないので禁止されない。
    選任された理事が、引き続き職員としての事務に勤務する場合、その職務は職員としての事務を担当する事となるが、通常の場合常勤理事である。
  • (29)理事の兼職禁止規定の解釈について
    中協法第37条第2項の理事の兼職禁止規定は、非常に理解し難い複雑な規定であるので例をあげて説明願いたい。 
    本規定の趣旨から説明すると、理事は理事会を構成して組合の業務の執行を決定し、あるいは代表理事となって決定された業務を現実に執行しなければならない等組合運営の首脳部たる地位にあるので、組合事業の経営、その他の組合運営に関し機密に属する事項等も詳細に知っているわけであるが、理事自体が組合事業または組合員資格事業と実質的に競争関係にある事業を行っているとき(法人であるときは、その役員たる地位にあるとき)は、組合の業務運営を不利におとしいれることになり、組合の正常な発展を妨げたり、あるいは組合員に不利益をもたらすおそれがあるので、これを防止するために一定の競合関係にたつ者は、組合の理事となることを禁止したのである。
    例をあげて第37条第2項の規定を説明すれば、
    (1)いま織物製造業者を組合員資格とする組合があり、その組合の共同施設として染色整理業及び原糸の共同購入事業を行っている場合を仮定する。
     この組合の原糸の共同購入事業を利用するために組合員となっているが、織物製造業を営みながら染色整理事業をも兼業して行ったとすれば、その者は組合員ではあるけれど理事への就任が禁止される。
     すなわち、組合の行う染色整理事業と例示した組合員の行う染色整理事業とは完全に競合するからである。
     なお、上記組合員が、組合員となっていない員外者である場合でも、同様の趣旨から員外理事として就任することを禁止される。
    (2)もし、この組合が織物製造業者と染色整理業者の両方を組合員資格として定款に定めていたとすれば、組合が染色整理の共同事業を行っていたとしても、例示した組合員の行う染色整理業は「組合員の資格として定款に定められる事業以外のもの」でなくなるので理事への就任が可能となる。
    なお、この場合に例示した者が員外者であるときは、第2号によって判断される。
    以上が第1号の説明であるが、第2号は員外理事のみに適用される規定である。理事になろうとする者が員外者である場合、(1)の場合であれば、織物製造業を行う者は、大企業である限り、この組合の員外理事に就任することが禁止される。
    (2)の場合であれば織物製造業を行う者も染色整理業を行う者も、大企業である限りこの組合の員外理事に就任することは禁止される。
    中小企業者であれば就任が禁止されないのは、たとえ員外者であっても組合員と同様の状態にあるものと考えてよいからである。
    なお「実質的に競争関係にある事業」とは、製造業と販売業あるいは卸売業と小売業のように縦の系列関係をいうのではなく、取扱商品が代替関係にある場合、たとえば綿スフ織物と絹人絹織物あるいは布レインコートとビニールレインコート等を指すものと解している。
  • (30)全国連合会と地区連合会との役員兼職について
    全国連合会と都道府県を単位とする地区連合会があり両者が実質的に競争関係にある場合において、両組合の理事又は監事の兼職は、法に抵触するか。    
    地区連合会の事業と全国連合会との事業は、実質的に競争関係にあると考えられるが、地区連合会は全国連合会の会員資格として定款に定められる事業以外のものを行うものではないので、中協法第37条第2項第1号に該当せず、また、同条第2項第2号によっても地区連合会が中協法第8条にいう小規模の事業者であれば全国連合会の理事、又は監事に就任することは差し支えないものである。
    なお、中協法第37条第2項は、理事への就任を禁止したものであるから監事への就任は、いずれの場合であっても差し支えないものである。
  • (31)理事定数を減員する場合の方法について
    次の役員改選を機に、理事の定数を現在の8名から7名に減員したいと考えていますが、どのような方法で行えばよいでしょうか。   
    理事の定数を減員する場合には、予め、理事定数の変更に伴う定款変更のための総会(総代会を含む。)を開催し、そこで定款変更の決議を行い、行政庁の認可を受けたのち、役員改選のための総会を開催し、新定数(7名)による理事を選出するという方法がまず考えられます。
    ただし、この方法によりますと、短期間のうちに2度総会を開催しなければなりませんので、現実の対応が困難な場合も見受けられます。
    そこで、実務上定款変更決議と役員改選を同一総会において行うことが要請されるわけですが、これには次の2つの方法が考えられます。
    1つは、定款変更決議後、ただちに未認可の変更定款(新定款)により新役員を選出するが、その就任については停止条件を付し、全員が定款変更の認可後に就任するという方法です。
    2つは、定款変更後、現行(変更前)定款により8名の新役員を選出し、全員ただちに就任するという方法です。ただし、この方法による場合は、定款変更認可後に、定款規定(7名)と現行役員数(8名)との間に相違が生じますので、調整が必要となります。
    この調整の方法としては、超過する員数の役員に自発的に辞任してもらうか、あるいはその役員の任期に、定款変更の認可日までとする旨の解除条件をつける(つまり、一部役員の任期を制限する)方法が考えられますが、この解除条件は、役員選出前に、定款変更と同じ特別議決によって決議しておく必要があるでしょう。
  • (32)役員(理事)と組合との関係について
    理事と組合との関係は民法第643条の委任によるものか?  
    中協法第42条において準用する商法第254条第3項の規定により、組合と役員(理事又は監事)との内部関係は民法上の委任契約に関する一連の規定が適用される。
    従って、組合と理事との関係は当然に民法第643条(委任関係の成立)の規定に拠るところになる。
  • (33)理事の辞任届の効力について
    理事が辞任届を提出し、理事会に出席しないとき、その理事は理事会の決定事項について責任を負わなければならないか。
    組合と理事との関係は委任関係であり、その委任関係の終了は相手方の承認を必要とせず一方的に終了させることができるので、理事は辞任届をもって理事を辞任したことになる。
    しかし、中協法第42条で準用する商法第258条第1項の関係で、辞任により法定数を欠くときは、辞任した理事は、後任者が就任するまでは理事としての権利義務をもつから、ご質問の欠席した場合は、欠席した理事としての責任を負わなければならない。
  • (34)役員の責任とその解除について
    1.代表理事の行った会議費及び交際費の使途につき、理事会、監事、総会において承認を受けたものが、その後(翌年)使途が組合に不要のものであることが判明した。これにつき、組合は損害賠償の請求ができるかどうか。
    2.前項の行為は、代表理事の独断的行為であるが、損害賠償の場合は、当該代表理事の責任に止まるか。あるいは、理事、監事ともに連帯して賠償の責任があるか。
    3.上記の行為を行った代表理事が、使途につき捏造した理由を付し弁明すれば、その行為はやむを得ないとすべきか。
    4.理事、監事の決算書類に関する責任は総会後何年か。
    1.会議費、交際費の支出は理事長の業務執行に属するもので、予め理事会で決定されるべき性質のものではなく、代表理事以外の理事については責任がないとする見方があるが、代表理事の業務執行といえども職務に違背する不当な行為については未然にこれを防止し、もって組合の利益を図るいわば監視の義務があるので、理事としてこの任務を懈怠し組合の損害を与えたとするならば、連帯して賠償する責任がある。
    また、監事についても、善管義務を怠り計算書類の不正を看過した場合には、理事とともに連帯して損害賠償しなければならない。
    2.交際費、会議費の使途について代表理事が捏造した理由を付したか否かに関しては、いわゆる道義上の問題として解決する場合は別として、理事の忠実義務違反に係る損害賠償請求の訴に伴う問題として裁判所が判断するものである。
    3.理事及び監事の決算関係書類に関する責任は民法の一般原則(第167条第1項)に従い、10年の時効にかかることになっている。
    なお、理事、監事とも総組合員の同意があれば責任の解除ができることとなっている(商法第266条第5項の準用)。
  • (35)「組合員たる法人の役員」たる地位を喪失した理事の員外理事就任の可否
    私どもの協同組合の組合員であるA株式会社の甲代表取締役が組合の理事に就任していたところ、その任期中に、A株式会社が組合員資格事業を廃止したため、組合員資格の喪失により組合を法定脱退しました。
    この場合、甲氏は理事の資格を失いますか。あるいは、員外理事として引続き理事の資格を有するのですか。理事の取扱いについてご教示下さい。
    ちなみに、組合の定款には、「組合員又は組合員たる法人の役員でない者は、理事については2人を超えることができない。」と規定されており、仮に、甲氏が員外理事の資格を有するとなると、現在員外理事として2人就任していますので、定款で定める数を超えてしまうことになります。
    はじめに、選挙の当時、組合員又は組合員たる法人の役員であることを前提として就任した理事(以下、「員内理事」という。)が、任期中に、組合員又は組合員たる法人の役員としての地位を失った場合に、理事に地位を当然に失うかどうかについて考えてみましょう。
    まず、組合員又は組合員たる法人の役員以外の理事、すなわち員外理事を認めない組合においては、その理事は当然に理事の地位を失うと解すべきですが、員外理事を認める組合の場合については、大別して2つの異なる見解があります。
    1つは、員外理事制度は、組合員以外からも幅広く人材を得ることを目的として採用されたものであり、員内理事と員外理事の選出を行う場合の組合員の判断基準はおのずと異なる。
    したがって、員内理事は、組合員又は組合員たる法人の役員であることを前提として理事の地位を認められていたとみるべきであり、この前提を失ったときは、員外理事を認める組合であっても、当然に理事の地位を失うと解すべきであるとする見解です。
    いま1つの見解は、員外理事を認めている組合においては、員内理事は、組合員又は組合員たる法人の役員としての地位を失っても、なお理事としての権利義務を有しており、員外理事としての地位に留まりうるので、当然には理事の地位を失わないとする見解です。
    現在、指導上は、後者の解釈がとられています(「定本中小企業等協同組合法詳解」中小企業庁編著、226頁、「法人登記書式精義(増補版)上」法務省民事局第4課編、427頁)。
    ただし、この場合、員外理事総数が、「理事定数の3分の1を超えてはならない」とする中小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)35条第4項の制限、あるいは、定款所定の制限を超えることはできません。
    したがって、次に、この法律又は定款規定に違反する場合が問題になります。
    このような場合は、組合が、この違反状態を是正するための何らかの調整措置を講ずべき事態が生じたということであり、超過員数分だけ、任意の者を解任する義務を負うということになります。
    解決の方法としては、員外理事となった者を自発的に退任させるか、あるいは、員外理事相互間で協議をして、最も得票数の少ない者、組合との関連度が最も少ない者などを退任させるというような方法が考えられますが、員外理事中のだれも退任しようとしない場合には、最終的には、組合法41条の規定により役員の改選を行うしか方法がないと考えられます。
    なお、この場合、特定の理事を法令・定款違反に問うことはできませんので、理事全員について改選請求を行う必要があります。このようにみると、実務上の処理方法としては、員外理事となった者を自発的に退任させるようにするのが良いでしょう。
  • (36)役員に係る諸変更(手続き)について
    私どもの組合では、本年度の通常総会で役員が改選され、新役員が選任されました。(理事10名、監事2名。)
    監事は前任者が再任されましたが、理事については、半数が新たに選任され、就任しました。また、再任した理事のなかには住所を変更した者もおります。
    役員が変更した場合、行政庁に役員変更届を提出することとなっていますが、その方法等についてご教示下さい。
    役員に変更があった場合、中小企業等協同組合法第35条の2では「組合は、役員の氏名又は住所に変更があったときは、その変更の日から2週間以内に、行政庁にその旨を届け出なければならない。」とされております。
    役員の変更とは、役員の氏名又は住所の変更があった場合、役員の改選又は補充があった場合、代表理事の交替、役付理事の交替、役員が死亡又は辞任をした場合など役員に関して変更があった場合の一切をいいます。
    したがって、貴組合にあっても当然、役員の変更届を組合を所管する行政庁に提出しなければなりません。
    変更の届出には、中小企業等協同組合法施行規則第3条(商工組合等にあっては、中小企業団体の組織に関する法律施行規則第1条の8)に規定されている様式による届出書に次の書類を添付して提出することとなります。
    1.変更した事項を記載した書面変更前と変更後の役員の氏名、住所、組合役員の役職、員内員外の別等を対照表にして記載。
    2.変更年月日及びその理由を記載した書面例えば本質問においての変更理由例として「任期満了に伴う役員の改選が行われたため」「〇〇理由の住所移転のため」等と記載すればよいでしょう。
    3.役員の変更が役員の選挙又は選任によった場合は、総会又は総代会の議事録と理事会の議事録(謄本でよい)。
    なお、役員の改選によって、全役員が再任した場合、あるいは、特定の役員の住所等の変更であっても、全役員の氏名、住所等を記載した1.の書類は必要です。

役員選挙

  • (1)役員定数を超過した投票の効力について
    連記式投票をとる組合の役員選挙に際して、投票すべき役員数を超過して記載された投票(例、役員定数10人のところ12人記載)、あるいは投票すべき員数に達しなく記載された投票の有効、無効について回答されたい。
    なお、本組合には、定款には連記式投票制は明記してあるが、連記すべき数の規定がなく、また規約等にもそれがない。
    選挙すべき役員数を超過した投票は、全部(記載された被選挙人員、設例では12人)無効である。      
    また、選挙すべき役員数に達しない投票については有効である。  
  • (2)定款に定めのない方法による役員選挙の是非について
    当組合の定款では、役員の選出方法は無記名投票制または指名推選制となっているが、総会当日に組合員の一部が指名推選制に反対することが予想されることから、このたびの役員改選に限り、立候補制により役員を選挙したいと考えているが、現行定款のまま行って差支えないでしょうか。
    現行定款のまま行うことはできません。「選挙」は、1組合員1票の「無記名投票」をもって行うことを原則としていますが、総会の出席者全員に異議のない場合は、例外的措置として指名推選の方法によって行うことが認められています。この他に定款参考例では、候補者制等による例を定めています。
    しかしながら、役員の選出は、中協法第35条第3項において「定款の定めるところにより」総会において選挙すると定められている。よって、定款に立候補制の規定がない場合は、立候補制による役員選挙を行うことはできないと解されます。
    役員選出においては、定款だけでなく役員選挙規約を定めるなど適正に運用する必要があります。
  • (3)○×式による役員選挙方法の是非
    投票用紙に予め候補者全員の氏名を連記の上配布し、○×によって投票を行うことの可否。  
    差支えない。 
  • (4)指名推選における選考委員の資格について
    指名推選制の選考委員は、組合員でなければならないか?                                                           
    又は、員外役員あるいはその他の非組合員でも差支えないか? 
    選考委員は、組合の性格からして組合員のなかから選ぶのが適当と考えるが、組合員以外から選任しても違法ではないので、特別の事情があるときは組合員以外より選ぶことも止むを得ないであろう。
  • (5)地区別、部会別等による役員選挙の是非
    総会の席上において、業種などによる部会別あるいは地区別に役員を選挙することは適法か? 
    中協法第35条第3項により、役員の選挙は「総会において選挙する」となっており、地区別あるいは部会別の選挙は総会における選挙とはならない。
    また、この場合の総会とは、総会の開催されている会場のみを意味するのではなく、総会という機関そのものを意味していると解すべきであるから、設問の選挙が総会の席上であっても、部会別等による選挙は、部会別等に投票所を設けて行う選挙と実質的にかわりなく、総会という機関において行われたこととはならないので適法とみることはできない。
  • (6)認可を受けない変更定款による役員選挙の効力について
    役員の選挙に、指名推選の方法を取り入れるように総会において定款変更の議決をして、その直後に指名推選の方法により役員の選挙を行い、しかもこの指名推選の方法により選ばれた役員は、定款の変更につき行政庁の認可があった日に就任するものであることを同総会において確認した。
    このような役員の改選は適法であるか否か?
    定款の変更について行政庁の認可があった日に就任する旨の停止条件が付された役員の改選であるから、適法であると解する。  
  • (7)定数に満たない役員選挙等について(1)
    立候補制、推薦制をとる組合において、立候補者等が選挙すべき定数に満たなく、規約等に無投票当選の定めがある場合は、その立候補者等の当選が確定し、定数に満たない員数についてのみ再度選挙手続をすべきか?
    それとも、立候補者等が定数に満たない場合は、その者の当選とはならず、全員について再度選挙を行うべきか?
    また、この場合、定数の全員を選挙したにも拘らず、当選人の一部が就任を辞退したときはどうか?
    また、以上の場合、任期満了によって辞任すべき役員の残任義務はどの時点までであるか?
    役員選挙は、その定数を満たすようにすべきであるが、無投票当選の定めがあれば、員数に満たないときでも、その立候補者等の当選は確定し、再度全員について選挙を行う必要はないと解する。
    不足の員数については、総会の延期又は続行する決議を行い、後日総会を再開するかあるいは改めて総会を招集して充足すれば良く、また必要数の全員を選挙したにも拘らず、当選人が就任を辞退した場合は上述と同様、当選人の当選は有効であり、繰上げ当選の定めがあれば次点者を当選人とし、繰上げ当選の定めがないときは、就任辞退による不足数につき、総会の延期、続行、或いは再度招集により選挙することになる。
    残任義務については、組合と役員は委任関係であり、委任関係の成立は当選者が就任を承諾したときからであるから、また一方改選の場合の前任者の残任義務は、例え、後任者の全員が選任されなくとも、後任者が就任すれば解除されるものと解されるから、役員が就任を承諾し役員に就任した時点が問題となる。
    設問の場合については、総会が改めて開催される場合であって前総会において選出された役員が就任しているときはその就任した時をもって前任者の残任義務は解除される。
    また、総会が延期、続会となった場合は、総会は終了せず選挙行為は完了しないから当然続会となった総会において当選した役員は続会における選挙行為が終るまで就任することができないと考えられるから、続会により開催された総会が終了し、かつ後任者が就任するまで、前任者は残任義務を負うものとする。
  • (8)定数に満たない役員選挙等について(2)
    定款上理事の定数が「40名以上45名以内」と定められている組合において役員の選挙を行ったが、30名しか選出されなかった。            
    この場合どのような処理を行うべきか?(この組合の役員選挙方法は定款で連記式無記名投票又は指名推選制度をとることになっている。)
    1.連記式無記名投票を行った場合は、選ばれた30名は役員として有効である。ただし、定数に満たないから、残りの人数について、当該総会において、総会の続会の決議を行っておき、後日選挙を再度行うか、新たに総会を開催して、残りの10名分について選挙をやり直す必要がある。
    この場合、不足分を選ぶ総会は可及的すみやかに開催される必要がある。
     なお、このまま残りの役員の選出を行わないで、いつまでも30人のままでいることは定款違反となるので、行政庁における業務改善命令の対象となり得る。
     また、役員候補者が定数に満たないような組合においては、定款改正を行い、実情にあった定数にする必要があろう。
    2.指名推選で30人を選んだとすると、指名推選の場合は分けて行ってはならないこととなっているので、違法となり、この場合は、再度、全員について選びなおすこととなろう。
  • (9)指名推選により当選した当選人が理事就任を辞退した場合の効力について
    私どもの事業協同組合では、先に開催した通常総会において、指名推選の方法により役員選挙を行いましたが、総会終了後当選理事18人のうち4人が理事就任を辞退しました。
    当組合の理事定数は、定款により「15人以上18人以内」となっていますので、この4人の就任辞退者が出た結果、理事就任者が理事定数の下限を下回ることになってしまいました。
    指名推選の方法をとる場合は被指名人を区分して行ってはならないと聞きましたが、当組合の場合は、再度理事全員について選挙しなおすべきでしょうか。
    また、辞退した4人分についてのみ選挙すればよいのでしょうか。
    指名推選制は、役員選挙について、最も民主的であるべき無記名投票制の例外として設けられている制度ですから、その方法の実施に際しては、法律上、
    ① 総会の出席者中に異議がない場合に限り、この方法の採用が認められること
     (中小企業等協同組合法第35条第9項)
    ② 当選人の決定について、出席者全員の同意を必要とすること(同条第10項)
    ③ 2人以上の理事又は監事を選挙する場合において、被指名人を区分してこの方法を用いてはならないこと(同条第11項)
    この3つの厳しい要件が課されています。
    法がこのような要件を課しているのは、多数派が少数派を排除することによって理事又は監事の構成が多数派に偏することを防止するためです。
    さて、そこでご質問の場合について考えてみましょう。
    ここで提起されている問題は、指名推選の方法により理事の定数の全員を選挙したにもかかわらず、その後一部当選人の就任辞退により、理事数に不足が生じたため、再度役員選挙を行う場合において、先の役員選挙における当選人の当選を有効なものと認めてよいかという問題です。
    これには2つの見解があります。
    1つは、そもそもこのような理事数の不足は、定数の全員が選挙され、当選人が確定した後に生じたものであるから、当選人の当選は有効であるとする見解です。ちなみに、投票によって選挙された場合におけるこのようなケースについては、この考え方により、当選人の当選は有効であると解されており、したがって理事数の不足分については、繰上げ当選の定めがあれば次点者を当選人とし、繰上げ当選の定めがないときは、就任辞退による不足数につき再度選挙すればよいこととされています。
    いま1つの見解は、指名推選制が、前述のように、投票による選挙方法の例外として設けられ、その実施に際しては特に厳しい要件が課せられている点を重視し、就任辞退者分のみの選挙は、多数派による少数派の排除の防止を目的とする法の趣旨に反する結果を招く恐れがあるとして、指名推選の方法をとる場合においては、当選人の当選を無効とし、改めて全員について選挙しなおすべきであるとするものです。
    しかし、ご質問のようなケースにおいては、前者の見解のように、当選人の当選は有効であると解すべきであり、また、ご指摘の、指名推選制に課された要件の中の「被指名人を区分してこの方法を用いてはならない」とする規定については、あくまで1つの選挙行為について指名推選の区分適用を禁止する趣旨のものであって、選挙行為が終了した後に、既に就任を承諾した当選人の当選を無効とし、再度全員について選挙しなおすことまでも求める趣旨のものではないと解されます。
    したがって、貴組合の場合は、就任辞任により不足が生じた4人の理事を補充するための選挙を行うことになります。
  • (10)次点者の繰上げ当選について
    総会において、理事の選挙を行い、総会終了後、理事当選者に対し、就任方を依頼したが、就任を辞退した者があり、この場合次点者を繰上げて理事当選者にすべきか?又は新たに選挙をしなおすべきか?   
    総会において選挙を行い、当選した理事が就任を辞退したときは定款又は役員選挙規約等により次点者繰上げの定めのあるとき以外は、定数を欠く員数分の理事について新たに選挙し、補充すべきであると考える。 
  • (11)任期満了前の役員選挙について
    事業協同組合において、任期満了前に役員の改選を行う場合に次の点をご教示願いたい。                 
    1.任期満了前に改選のための役員選挙を行うことは問題があるか?                      
    2.前項に問題がないとすれば、その選挙の期日は任期満了前の何日以内とすべきか?    
    1.新たに選出された役員は、前役員が辞任しない限り、前役員の任期が終了するまで役員に就任せず、任期満了の翌日に初めて就任することになるわけであるから、前任者の任期満了前に新役員を選出しておくことは何ら差支えない。
    2.任期満了前の何日以内に開催しなければならないかということについては、定説がないので任期満了日に近い期間に行うのが適当である。
    その期間は、任期満了日に近い期間内で組合の実情を勘案して決定し、規約などに定めて
    おくことも一案である。
    なお、農協においては、「任期満了日の60日前から7日前までの間」となっているので
    参考までにつけ加えておく。
  • (12)増員分役員の就任、就任日について
    総会において役員の定数の変更を議決すると同時に、定款の変更に伴う行政庁の認可をまたずして、同日直ちに議決された新しい定数によるところの役員の選挙を行い、その状況を記入した議事録を添付した役員定数の変更の定款変更認可申請書を行政庁に提出してきた場合、どのようにすべきか?
    設問のごとく、役員の定数の増加につき定款の変更を議決した総会において、行政庁の認可をまたず、ただちに増員分の役員を含めた役員の全員の選挙を行おうとする場合は、次の方法によれば有効と解される。
    1.定款変更前の定数による役員の選挙と増員分の役員の選挙とを区別して行うこととし、定款変更前の定数による部分の役員は、ただちに就任し、増員分の役員は選挙の際に定款の変更につき行政庁の認可を受けた日から就任する旨の停止条件を付しておき(停止条件を付した旨は議事録に明確に記載することを要する)、その条件が満たされた日、すなわち行政庁の認可のあった日に就任する。
    2.定款変更による増員分を含めた全役員の選挙を一括して行うこととし、その際に役員の全員につき1.に述べたような停止条件を付し、その条件が満たされた日に就任する。

理事会

  • (1)理事会招集期間の短縮について
    本組合の理事会の招集通知期間は、「会日の7日前」であるが、組合の実情によってこれを「会日の5日前」あるいは「会日の3日前」等に改めてよいか?
    理事会の招集通知については、中協法第42条において商法第259条ノ2が準用されているが、同条但し書によって期間の短縮が認められているので、組合の場合も短縮することは差支えない。
    なお、短縮する期間については、組合の地区の広狭等によっても異なるが、少なくとも通知を受取ってから議案について研究する位の余裕のあることが適当と思われる。
    また、書面議決を採用している場合は、郵便によって充分組合に到着する期間を加える必要がある。
  • (2)理事会の権限の一部委任について
    理事会の権限の一部を、理事会の決議に基づいて他の機関(対策委員会)に委任できるか?
    某組合では、退職金の支払及びその金額については、理事会で決議を行い、その支払方法、時期、金額の細部決定について、理事会が対策委員会に委任しているが、この場合対策委員会の決定事項の法的効果について(対策委員会は、理事長も含め理事4人、監事1人)。
    総会(総代会)又は理事会に属することとされた権限は、それぞれの機関に専属するものであって、法に別段の定めのない限り、他の機関に委任することはできないものと解する。
  • (3)理事会議事録の記載事項について
    当組合では、退職金を支出すること及びその金額を理事会で決議した事実はあるが、議事録には、組合の内部事情によってこの点を省略している。
    この場合議事録に記載すべき事項を記載しなかったものとして中協法第115条に該当するものと考えられるが、どうか?
    更にこの場合、実際上は、決議を行っているのであるから、当日の出席理事全員の同意により、議事録の補追を行うことができるか?
    理事会において決議した事項を議事録に記載しなかったことが、故意又は重過失によるものであれば、貴見のとおり中協法第115条第5号の規定に抵触するものと解される。
    また、議事録の補追については、出席理事全員の同意があればできるものと解する。
  • (4)理事会議事録の記載内容及び理事会の公開、傍聴について
    1.理事会の議事録には、議事の内容の全部を記載し公開する必要があるか。                     
    2.理事でない組合員が理事会を傍聴することの可否について。 
    1.議事録に記載すべき事項の内容及びその詳密の程度は、理事の責任関係を明らかにするに十分であることを要し、かつ、これをもって足りるものであり、また、公開する必要があるかいないかについては、中協法第39条第2項に規定されているとおり、理事会議事録は、各事務所に備え置くことが義務づけられており、組合員及び組合の債権者はいつでも理事に対し閲覧又は謄写を求めることができることになるので、これに反することはできない。
    2.理事会は必ず非公開でなければならないという積極的な理由はないと考える。
  • (5)理事の代理人による理事会出席について
    組合の理事が理事会に出席できない時は、代理人を参加させることができるか?
    理事は個人的信頼に基づき選任され、かつ、組合と委任契約を締結した者であるから、その権利の行使及び義務の履行は、理事みずからの意思及び行為として行われるべきである。また、中協法第36条の3第2項においては、組合が特に定款に定めた場合には書面によって理事会の議決に参加することができるとしていることの反対解釈から、理事は、代理人によって議決権を行使することはできないと解する。
  • (6)理事会に欠席した理事の責任について
    現理事で、理事会に出席するつもりだったが、急に主張等の都合で出席出来ず、また書面議決書も提出しなかった場合、理事会の決定事項については賛成したものとみなされるか、或いは無関係とみなされるか?
    もし賛成したものとみなされるならば、反対の意思表示をしない限り出席しようが、欠席しようが同様であるとの解釈になるのではないか?
    理事会に欠席した者は、決定事項について賛成したものとは看なされず、したがって、その決定の段階までは責任はない。
    しかし、理事は、組合の業務について、総合監視の責任があり、理事会が開催されたこと、また当該決定がなされたことを知っていながら、決定から執行までの段階で、これを止むべき何らの措置をとらなかったときは、理事としての一般的任務懈怠の責任は免れ得ない。
  • (7)出席理事の一部が承認捺印しなかった理事会議事録の取扱いについて
    理事会議事録は出席理事全員の承認がなければ議事録として通用しないものかどうか?                 
    不承認の理事(通常1/8~1/10名)からは承認捺印がなく議事録内容の調整修正が困難な場合の議事録の取扱いについてご見解をご教示賜りたい。
    理事会の議事録については、中小企業等協同組合法第42条で、商法第260条ノ4を準用しており、同条第2項によると「議事録ニハ議事ノ経過ノ要領及其ノ結果ヲ記載シ出席シタル理事之ニ署名スルコトヲ要ス」となっている。
    このように理事会の議事録は、理事会議事の記録であって、出席理事の署名は、記録された内容が事実と相違ないことを証明するためのものであるから、出席理事の何人かが署名を拒否し、その署名捺印がないからといってその議事録が直ちに議事録としての意味を失うものではなく、当該議事録の内容が事実に反していない限り、理事会の議事の証拠となるものと解する。
    したがって、出席理事は議事録が事実に反しない限り署名を拒否すべきものではなく、もし理由なく署名を拒否した場合には当然のことながら法律に定められた忠実義務違反となる。
    なお、理由なく署名を拒否する理事がある場合は、不承認理事の署名のない議事録の作成をもって法律上の議事録作成義務は履行されたものと解する。

総会

  • (1)役員任期満了後の総会招集方法について
    理事の任期満了後の総会招集は、どのように行ったらよいか?
    (特に問題となるのは、理事改選の総会招集についてである。)   
    前理事任期満了後における総会招集は、中協法第42条により役員について商法第258条第1項(欠員の場合の処置)が準用され、退任等により役員の員数が欠ける場合は、前役員(任期満了又は辞任による退任に限る)は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有するから、前理事が行うこととなる。
  • (2)総会の招集請求方法について
    中協法第47条第2項の規定に基づき総組合員の5分の1以上の同意を得て、総会招集の請求を理事会に提出したところ、その後組合員が増加し、5分の1を満たさなくなったが、5分の1の要件は、理事会に請求した時点によって判断すべきか、それともその後の増員数を考慮すべきか?
    なお、理事会への請求時点でよいとすれば、臨時総会の招集通知は理事会請求当時の組合員のみ発すればよいか?
    中協法第47条第2項の規定に基づき、組合員が組合員総数の5分の1以上の同意を得て臨時総会の招集を請求する場合には、その請求の日における組合員総数の5分の1以上の同意があれば有効とされ、その後、組合員が増加しても当該請求は適法になされたものと解する。
    なお、総会招集の通知については招集通知を発送する時点における組合員のすべてについて行う必要がある。
  • (3)総会招集請求の要件について
    総組合員の5分の1以上の者が、各人毎に同一書式による総会招集要請書を代表理事宛提出してきた。
    これには、1.組合今後の運営方針を組合員外の特定の者に委任する件、2.役員改選の件が記載されている。
    この場合に、
    1.会議の目的たる事項は示されているが、中協法第47条第2項の招集理由書、同第41条第3項による改選の理由書がないので却下して差支えないか?
    2.組合の業務執行のすべてを員外者に委任することは、法第38条の2の建前よりしていかがか?
    当該請求は、貴見のとおり招集の理由あるいは改選の理由が不充分であり、これを却下して差支えないと考える。
    なお、総会招集の請求は、組合員が他の組合員の同意を得て行うこととなっているので、同一書式により各人毎の同意を得ることは差支えないが、各人毎に直接組合に請求することは適当でない。また、業務執行のすべてを員外者に委託することについては、当該員外者が代表理事であれば差支えないと考える(中協法第35条第4項及び同法42条において準用する商法第78条)。
    ただし、これは、あくまで業務執行の実行の段階でのものであり、組合の運営方針あるいは事業計画の決定等は理事会あるいは総会の権限であって、このような事項を員外者に委託することは中協法違反となり、また、当然総会招集請求却下の理由となる。
  • (4)瑕疵がある場合の総会議決の効力について
    次のような瑕疵がある場合の総会議決の効力、及び行政庁のとるべき措置をご教示願いたい。なお、当該議決に基づく定款変更については、認可済みである。
    1.中協法第10条第3項の限度を超える出資を架空組合員名義に分割するとともに、当該架空組合員の書面議決を議決数に加えた。
    2.持分払戻済の脱退者について、書面議決書を作成、議決権数に加えた。
    3.中協法第53条の特別議決に適合させるため、1、2の作為により法定議決権数を確保する体裁を整えた。
    4.ただし架空組合員の出席数及び議決権数を除いても、法定要件は満たしている。
    総会の議事において、架空組合員の書面議決を議決数に加える等、法令に違反する事実があったとしても、行政庁による定款変更の認可に当たっては、その事実を知り得なかったものであり、議事録等必要書類により適当と認めて認可したものであれば一応形式的には適法に認可されたものと解する。
    しかしながら、上記法令違反を発見した場合は、中協法第54条において準用する商法第247条の規定により組合員又は理事は議決の日から3月以内に議決取消の訴えを提起することができることになっているが、かかる法令違反は、刑法上の私文書偽造にも該当するおそれがあり、行政庁は、かかる法令違反については、中協法第106条の規定による業務改善命令を発動する等速やかに所要の措置を講ずる必要があると考える。
  • (5)総会の延期・続行手続きについて
    総会の会日中に、何らかの理由により議事を終了できないときは、他の日に延期または続行することができるということを聞きました。
    総会の延期と続行とはどのように違うのでしょうか。また、次のような手続きに問題はないでしょうか。
    1.議事の進行状況からみて、会日中に議事を終了しないことが明かな場合、議場に諮らず、議長単独の判断で総会続行の決定をすることができるのでしょうか。
    2.総会の席上では、会場確保等の関係から後日の総会の日時や場所を決定することが難しいと思われます。
     日時、場所の決定を議長に一任し、決定次第速やかに組合員に連絡することとしても問題はないでしょうか。
    3.延期又は続行する総会の開催日時を、場所の確保等の理由から、当初の総会日から1ヵ月程度先の日に定めても構わないでしょうか。
    総会においては延期または続行の決議をすることができ、その場合改めて総会招集の手続きは要しないとされています(組合法第54条(商法第243条準用))。
    ここにいう延期とは、総会の成立後、議事に入らず、会日を後日に変更することをいい、続行とは、議事に入った後、時間の不足その他の事由により審議未了のまま総会を中断し、残りの議事を後日に継続することをいいます。この延期または続行の決議に基づき後日開かれる総会は通常、継続会といわれています。
    このような制度が設けられているのは、何らかの都合により総会を延期または続行しなければならなくなった場合、総会の招集手続きを繰り返さなければならないという煩わしさが生じ、また、招集手続きに必要な10日間は総会を開くことができず、予定の審議も速やかに終了することができないという不都合が生じることを避けるためです。
    1.総会の延期または続行は総会の決議を要件としていますから、総会の決議を経ず、議長の判断のみで延期または続行を決定することはできません。
     ただし、この決議は議案そのものに関する決議ではなく、一種の議事進行に関する決議ですから、あらかじめ招集通知に議題として記載されている必要がないことは当然です。
    2.継続総会と当初の総会とは同一性を有していなければなりません。
     そのためには、総会の延期または続行の決議において、原則として、後日の継続会の日時及び場所を定めることが必要で、期日を定めず、単に総会を後日に延ばすときには、総会は同一性を保ちえず、改めて招集通知が必要になるとされています。
     しかし、実際上会場の都合などで、総会の席上では具体的に決定し得ない場合も有り得ます。その場合、総会が日時、場所の決定を議長に一任し、総会終了後速やかに通知せしめることを
     決議した時には、総会において日時、場所を定めたものとして有効な延期または続行の決議がなされたものと解することができます。なお、この場合議長の通知は、延期または続行の趣旨からして、当初の総会の出席組合員(書面、代理を含む)に対してすれば足りると解されています。
    3.この制度が設けられた趣旨からして、継続会は当初の総会の会日から相当の期間内に開かれることを要します。なぜなら、相当の期間経過後であれば、総会招集の手続きをすることが十分可能であるからです。
     このような解釈から、相当の期間内というのは、総会招集通知に必要な10日間以内と解するのが妥当とされています。
     1カ月も先の日時に開催することは、明らかに継続会とはいえず、改めて総会招集の手続きが必要になると考えられます。
  • (6)総会議事録の署名者について
    総会終了後の各種手続きのうち、議事録の署名者につき、登記所の見解に相違が見られるので、これについてはどのように考えたらよいのか貴見をたまわりたい。 
    総会議事録には、議長及び出席した理事が署名しなければならない(中協法第54条で商法第244条第2項を準用)が、署名すべき理事が誰であるかについては、役員任期の定款規定方法、総会開催日、前任者の退任時期、後任者の就任時期等により、場合を分けて考える必要がある。
    1.定款規定の役員任期を「何年」と定めている場合においては、以下のとおりとなる。
    (1)総会開催日が、前任者の任期満了前であって、前任者から①「総会開催日前」に辞任する旨の辞任届が提出されている場合には、前任者には後任者の就任時までの残任義務があり、一方、後任者が選出されると同時に就任を承諾すると、新旧両理事に議事録への署名を求めることとなる。
     次に、前任者から②「総会開催日」、③「総会終結時」をもって辞任する旨の辞任届が提
    出されている場合には、総会で後任者が選出され、しかもその者がその総会に出席していた
    としても、就任を承諾できるのは、総会開催日翌日以降あるいは総会終結後となるため、後
    任者には議事録への署名義務はなく、それぞれ旧理事が署名することとなる。
     さらに、④辞任届が提出されていない場合には、後任者の就任は、前任者の任期満了後に
    なるため、旧理事に署名を求めるほかはない。
    (2)総会開催日が前任者の任期満了日と一致する期日であって、前任者から①「役員選挙直前」に辞任する旨の辞任届が提出されており、しかもその後任者が同一の総会で選出され、直ちに就任の承諾をした場合には、新旧両理事が署名することとなるが、②「総会終結時」に辞任する旨の辞任届が提出されている場合、又は③辞任届が提出されていない場合には、後任者の就任は、総会終結後あるいは総会開催日翌日以降となり、議事録への署名の必要がないため、それぞれ旧理事が署名することとなる。
    (3)総会開催日が前任者の任期満了後であるときには、前任者には残任義務が生じているが、この場合、後任者の就任承諾の時期が、①「総会での役員選出時」であるときには、新旧両理事に署名義務があり、②「総会終結後」又は③「総会開催日の翌日以降」に就任を承諾する場合には、旧理事が署名することとなる。
    2.定款規定の役員が「何年又は就任後第何回目の通常総会終結時までのいずれか短い期間」と定められている場合には、以下のとおりとなる。
    (1)「何年」到来前に総会が開催される場合には、前任者の任期が「総会終結時」となり、旧理事が署名することとなる。
    (2)「何年」到来後に総会が開催される場合には、前期1-(3)と同様の取扱いとなる。
  • (7)総会議事録の署名者
    当組合では、このたび通常総会が開催され、役員の改選が行われました。
    その結果、役員のほぼ全員が入れ替わることとなり、改選された者は全員その場で就任を承諾しました。
    総会の議事録には、議長と出席した理事が署名することとなっているようですが、今回の場合は、改選前の理事(旧理事)が署名することとなるのでしょうか、それとも改選後の理事(新理事)が署名することとなるのでしょうか。
    なお、当組合の定款には、役員の任期について「2年又は就任後において開催される第2回目の通常総会の終結時までのいずれか短い期間」と規定されています。
    貴組合の定款の役員任期の規定は、「就任後の2年」と「就任から就任後開催される第2回目の通常総会の終結時までの期間」のいずれか短い期間が役員の任期となるというものですから、第2回目の通常総会が就任後2年以内の時期に開催された場合は、その総会の終結時で任期は終了し、2年を超える時期に開催された場合は、就任から2年後の応答日をもって終了することとなります。
    したがって、貴組合の場合、この役員任期規定との関係から、その通常総会が就任後「2年を超えた」時期に開催されたのか、「2年以内」の時期に開催されたのかにより、議事録への署名者が異なってきます。
    1.まず2年の就任期間を経過後に通常総会が開催された場合は、既に改選前の理事(以下「旧理事」という。)の任期は終了していますが、残任義務規定(中小企業等協同組合法第42条で商法第258条第1項を準用)によって後任の理事が就任するまで引き続き理事としての権利義務を有することとなるので、署名義務があります。
     また、通常総会において改選された理事(以下「新理事」という。)が議場において就任承諾をした場合は直ちに就任の効果を生じることとなるので、新理事にも同時に署名義務が生じることとなります。
     つまり、この場合は、新旧両理事が議事録に署名することとなります。
    2.これに対して、旧理事が就任して2年が過ぎないうちに通常総会が開催された場合は、旧理事の任期は、その通常総会が終結する時まで続くこととなりますので、新理事はたとえ、議場で就任承諾をしても、その総会終結以後でないと就任の効果は生じないこととなり、署名義務も生じず、旧理事のみが署名することとなります。
     なお、役員任期の定め方には、貴組合のような場合の他に「〇年」という確定年の定め方もありますが、この場合も総会開催時期、辞任届の有無、辞任届の内容等により、総会議事録の署名者も異なってきます。

総代・総代会

  • (1)総代会の議決事項について
    中協法第55条(総代会)については同条第6項において総代会については総会に関する規定を準用するとあり、第7項において総代会においては前項の規定にかかわらず総代の選挙(補欠の総代の選挙を除く。)をし、又は第53条(特別議決)、第2号(組合の解散又は合併)若しくは第4号(事業の全部の譲渡)の時効について議決することができないと定められているが、事業協同組合の場合、法令、定款に違反せず総代会において定款変更により地区の縮小(資格の喪失により大量脱退を生ずることとなる)を議決した場合、一部組合員に対する基本的権利を侵害するものと思われるが貴見を承りたい。
    総代会は総会に代わるべきものであり、総代会については総会に関する規定が準用されているので、原則として総会の権限に属するあらゆる事項について議決し得るわけである。ただし、解散、合併若しくは事業の全部の譲渡の議決又は総代の選挙(補欠選挙は除く。)だけは行うことはできないこととなっている。
    したがって、地区の縮小により一部組合員に対する基本的権利を侵害するのではないかという疑義については、法が特に地区の縮小について特別の手続を必要とする旨を規定していないことから定款の変更のみをもって足りると解する。
  • (2)総代制をとる組合が役員選挙を総会で行うことについて
    総代制をとる組合において、役員の選挙だけは総会で行う旨定款に規定してよいか。    
    総代会は、総会に代わるものとして、特別の議決事項を除き(解散、合併等の議決)その権限に属する事項については組合の最高決定機関と解すべきである。しかし総代会は定款によって設置されたものであるから、その定款の定めにより、総代会の権限に属すべき事項のうち、特に一定の事項を限って総会の権限に属させることは可能である。したがって、役員選挙を総会において行うことを定款に規定することは差し支えない。
  • (3)総代会設置の定款規定方法について
    信用協同組合が総代制をとるに際し、県内の数組合は、定款に「本組合は総会に代わる総代会を設けることができる」という規定に基づいて、その後、設置に際しては総代会の議決を経て設けている。このことについては、従来、県内各法務局において適当に総代会が設けられたものとして、その後の総代会において諸議案を議決し、登記を要するものについても、適法に議決成立したものとして、各法務局において受理され今日に至っている。ついては中協法の関係条文に照らし、従来「本組合に総代会を設けることができる」と規定されている各組合の定款を「本組合に総代会を置く」に改める必要があるか否かについて貴見を承りたく照会する。なお定款改正を要する場合は、その理由及び法的根拠、また「本組合に総代会を設けることができる」旨の規定の合法性に疑義がある場合も併せてその理由及び根拠についてお知らせ頂きたい。
    中協法第55条において「組合員の総数が200人を超える場合は、定款の定めるところにより、総代に代わるべき総代会を設けることができる」と規定していることから、総代会は必要設置機関ではなく、定款上の任意機関である。したがって、組合は総代会の設置を義務づけられているのではなく、設置しても設置しなくてもよいわけであるが、設置する場合はその旨を明確に規定しなければ、その組合が総代会を設置しているのかどうか、判然としないのであって、「設けることができる」というようなあいまいな規定でなく、明確に規定されたい。
  • (4)総代定数の定款記載方法について
    1.総代の選挙は定款に委任されているが、定款に規定しなければならない事項はなにか。                 
     なお、定款の規定を別記のとおりとした場合違法となるか。                                                          
    2.総代を地区ごとに選挙する場合、その地区の数は次のどれによるべきか。                       
      ① 1地区                                           
      ② 2地区                                            
      (別記)定款規定                                         
     「総代は別に定める総代選挙規定の定めるところにより、組合員のうちから選挙する。」
    1.定款が組合の基本的な規則であることにかんがみ、総代選挙に関する選挙方法、定数、
    任期等の基本的な事項は法律において定款に規定することとされているので、必ず記載しなければならないが、具体的な事項に関しては規約において定めて差し支えない。設例の記載例であっても必ずしも違法とはならないが、上記の点からできるだけ具体的に記載することが望ましい。
    2.総代選挙の地区に関しては、法律上の定めはなく、1地区とするか、2地区とするかは
    いずれでもよく、地区を選定するに当たっては、全組合員の意思が公平に総代会に反映さ れるものであればよいので、そのように指導されたい。
  • (5)総代の定数の決め方について
    協同組合連合会の総代定数の決め方として、次の方法は適法か。
    1.各都道府県を1選挙区ごとに選挙すべき総代の数は、選挙者数5会員までにつき1人の割合とする。
    2.上記方法を改正し、1選挙区10会員までにつき1名の総代、あと同数を連合会に対する出資額、預金又は貸出の割合に応じて配分する。
    総代会は、総会に代わるべき機関であるから、会員中の特定の層に偏った構成になることは好ましくなく、その実情に応じて会員の利害関係を十分に考慮したうえで、総会の構成にできるだけ近い構成をとることが望ましい。
    この意味で、総代の数を各都道府県を1選挙区とし、選挙者数5会員までに1人の割合で定めることは何ら公平を失するものとは考えられない。
    しかしながら、会員の出資額、預金額あるいは貸出額の金額的要素を加味することは、全員が総会において、それぞれ1個の議決権又は選挙権を行使できると同時に総代の被選挙権資格を有することに反し、また、総代会の構成を出資額、預金額あるいは貸出額の多い会員に偏ったものとし、出資額等の少ない会員の意思を十分に反映しない結果となるので、総代会の性格上適切なものでないと考えられる。
  • (6)組合員数が201名を割った場合の総代会の存続について
    私どもの組合では、200名を超える組合員を擁していたため、設立当初から総代会制を採用してきました。                                     
    しかし、経済情勢の変化等の諸要因により、組合員企業の転・廃業が相つぎ、現在組合員数は200名となり、総代会の存続要件(200超)を欠いてしまいました。
    今後もさらに、組合員の脱退があることが予想されることから、新規加入者の勧奨努力は行ってはいるものの、当分の間は存続要件を満たすことは難しい状況となっています。
    このように、組合員数が200名以下に減少した場合、定款は総代会のままとなっていますが、総会と総代会のどちらを開催すればよいのでしょうか。
    代会に関しては、中小企業等協同組合法第55条(中小企業団体の組織に関する法律では第47条で準用。)に規定されていますが、企業組合、協業組合を除く組合は、組合員総数が200名を超える場合には、定款の定めるところにより、総会に代わるべき総代会を設けることができることになっています。
    貴組合では、既に組合員数が200名となっており、総代会の存続要件(200名超)を欠いているので、総代会は設置しえない状態にあります。
    これは、たとえ定款により総代会を設けていても、組合員が減少し、法定数に達しなくなったときは、総代会は当然に機関としての機能を失うこととなるからです。
    したがって、現行の定款が総代会規定のままになっていても、現在の状態が続く限り、議案審議は総会で行うこととなります。
    そのため、現在、組合の実態と定款とが一致していないわけですから、総代会制廃止にかかわる定款変更を行うか、あるいは、すみやかに組合員を増加して存続要件を満たすことが必要となります。
  • (7)連合会の総代の資格について
    本会の総代の選挙規定では、
    「第2条 総代は会員たる組合の業務を遂行する役員のうちから、選挙区毎に選挙する」
    となっている。
    本件について、業務を執行する役員と具体的に指していることは、その業務執行に当たる固有の者が総代であるのではなく、単に組合(法人)の代表者を意味しているに過ぎず、総代はあくまで組合であると解しているが、間違いないかお伺いする。
    中協法第55条第2項の規定により総代は組合員のうちから選挙されなければならないことになっている。このことから連合会の場合は会員たる組合それ自体が総代となるのであって、会員たる組合の役員が総代となるのではない。したがって総代である組合の役員が辞任又は死亡等により欠員となっても総代の補欠選挙を行う必要はない。
  • (8)総代任期の規約による延長の是非
    某信用組合において、総代の任期を定款で2年と定めているにもかかわらず、規約において任期後もなお1ヵ月は残任し得る旨定めているが、有効か。  
    総代の任期は、理事の如く残任義務の法定規定がないので、定款所定の任期をもって総代はその資格を失う。したがって、規約をもって残任を規定することは、定款違反であり無効である。
  • (9)総代の辞任届の効力について(1)
    総代会の議決により、大多数の総代が辞任届を出した場合、総代会は開けないか。また、それは受理されたと解してよいか。         
    総代の辞任届を理事長が正式に受理した場合は、その総代は辞任したこととなり、その後に開かれた総代会は、適法に開催されていないので議決取消の訴えの事由となるものと考えられるが、総代の辞任届を理事長が単に預かったものであるときは、総代は辞任したことにならず、その後に開かれた総代会の議決はもちろん有効である。
    なお、総代会で総代の辞任を議決したことは、単なる申し合わせに過ぎないので、辞任届が受理されたかどうかの判断の問題とは何等関係はない。
  • (10)総代の辞任届の効力について(2)
    総代から辞任届が提出された場合、組合が受理すればその日をもってその組合員は総代たる権利義務を失うと解してよろしいか。
    また、辞任届の受理は、総代会に諮ることなく理事会で決定してもよろしいか、あるいは代表理事の権限で受理してよろしいか。
    総代が辞任届を提出し、組合がそれを受理したのであれば、その総代は辞任したことになり、総代たる権利義務は失うものと解する。総代は、いつでも辞任できるものであるから、辞任届が正式に受理されたものであれば当該総代は辞任したことになる。この場合の受理者は、代表理事で差し支えないと解する。
  • (11)総代の代理人を制限することについて
    中協法第55条第6項に、総代会については総会に関する規定を準用するとあり、この場合において第11条第2項中「その組合員の親族若しくは使用人又は他の組合員」とあるのは「他の組合員」となっているが、これを定款を以って次のとおりに致したいが、どうか。
    「総代の代理人は総代でなければならない」
    総代会における代理人については、中協法第55条第6項において規定されているところであるが、これは議事の責任ある運営を確保するため、代理人及び代理し得る人数について総会における場合よりも制限を加えているものであり、また、代理権行使の手続方法を定款に委任している趣旨から、代理人の範囲、代理人が代理し得る組合員の数等を制限することは許されるものと解する。
    したがって、貴見のように、定款をもって総代の代理人を総代たる組合員に制限することは差し支えないものと解する。
  • (12)総代の代理権とリコールについて
    私の所属する事業協同組合は、県一円を地区としており、組合員数も多いため総代会制を採用しています。私も総代の1人に選ばれており、これまで総代会には必ず出席していました。
    しかし、先日開催された総代会には、どうしても都合がつかず、妻に代理人として出席してもらいました。
    総代会から帰ってきた妻に聞くと、妻は代理人にはなれないといわれ、傍聴だけをしてきたとのことです。
    私は妻は親族なのだし、委任状も持たせたので代理人としての資格は十分あると考えていました。親族であっても代理人にはなれないのでしょうか。
    また、せっかく総代に選ばれながら、総代会に出席しなかったことを理由に、総代をリコールされることはありませんか。
    総代会は、組合員数が200人を超える大規模な組合において、定款の定めにより総会に代わって最高意志決定機関として設けることができる制度です(組合法第55条)。
    総代会の構成員である総代は、組合員数の10分の1以上(組合員1000人を超える組合は100人以上)の確定数を定款で定め、1人1票の無記名投票により組合員の地域的分布、業種構成などに応じて組合員を適切に代表するよう組合員のなかから選ばれます。
    総代会については、総会に関する規定が準用されています(組合法第55条第6項)が、代理人の範囲と人数については総会よりも制限されています。
    総会においては、その組合員の親族若しくは使用人又は他の組合員が4人まで代理することができます(組合法第11条第2項、第4項)。
    しかし、総代会において代理人となれるのは他の組合員のみであり、人数は1人だけです(組合法第55条第6項)。
    総代会制度のもとでは、総代は組合員の代表者であるという性格から、代理人は親族や使用人よりも自らが代表した他の組合員(他の総代でもよい)であることが適当といえるからです。
    また議事の責任ある運営を確保するため、代理しえる人数についても総会における場合より制限が加えられています。
    このように、総代会においては組合員の妻は「他の組合員」ではないので代理権はないということになります。
    総代に選ばれた人は、総代の性格を十分認識する必要があります。
    なお代理人の資格を更に限定して例えば他の総代にのみ代理人資格を与えることは、定款の規定に委ねられている事項ですから、定款でそのように定めれば可能です。
    次に総代のリコールについてですが、組合法には何ら規定していません。
    組合法第41条では少数組合員の権利として役員改選の請求を認めていますが、これは役員を総会における選挙または議決による選任により選出することとした趣旨を徹底させ、組合の民主的運営を確保するためです。
    つまり役員は組合の業務執行機関として組合の事業運営につき最も重要な地位を占めるものですから、役員の業務執行が不当であるときは、総組合員の5分の1以上の請求により任期中でも改選できることとしたものです。
    一方、総代については役員と同じく選挙によって選出されることになっていますが、総代は法律及び定款に定められた範囲内の事項について総会に代わり組合の意思を決定する総代会の構成員であり、組合の業務執行の責に任ずるものではありません。
    また、総代会制を採っている組合にあっても、組合員には第47条の規定により総会の招集請求権が与えられていますし、総代会制度そのものが組合の定款により自由に存廃できるものです。
    このような点から考えますと総代について組合員に改選請求権を与える必要は特に認められず、現行法上明文の規定もありませんので、組合員による総代のリコールはできないものと解されます。

委任状・代理人

  • (1)総会における白紙委任状の取扱いについて
    今年もまた、総会のシーズンがやってきましたが、総会における白紙委任状について、次の点をご教示下さい。                                 
    1.白紙委任状は、総会に出席しない組合員が理事長又は総会の議長に議決権の行使を一任したものとして、数に制限なく、これを理事長又は議長の議決権行使の数に加えることができるか。
    2.理事長又は議長の代理権行使の数が制限されるとすれば、理事長又は議長は、他の理事又は他の組合員に委任状行使を依頼することができるか。
    3.白紙委任状は、そのままでは無効であり、必ず代理人の氏名が記入されていることが必要であるならば、いつまでに代理人を決め、有効なものにしておくべきか。
    4.代理人の代理できる数以上に委任状がある場合は、どう処理すればよいか。
    白紙委任状と呼ばれるものは、組合が組合員に対して総会招集の通知とともに議決権代理行使の委任状用紙を送付し、その代理権の授与を勧誘するものであり、通常は、総会に出席しない組合員が議決権を行使すべき代理人を特定しないで白紙にして組合に送るものです。
    このように、白紙委任状は、委任状作成者(授任者)が受任者となる人を特定せずに、記載の一定事務の処理及びこれに要する代理権授与の申込みをし、これの取得者が白紙の部分に受任者として自己の名を記入することによって両者間に契約が成立し、受任者としての権利義務と代理権を取得するものです。
    1.白紙委任状は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会に関して全般の責任をもつ理事長に代理人の選任を一任したものであって、理事長又は議長に議決権の行使を一任したものではないと解されますので、これを理事長がすべて行使することは許されません。理事長が組合員の代理権を行使できるのは、組合員である場合に限られますが、一般の組合員と同様に4人までに制限されます。
     なお、議長については、そもそも総会の議決に加わる権利を有しませんから、権利のない者に議決権の行使を委任することはありえないことですし、また、議長は総会において選任されますが、
     議決権数(総会の定足数)の確認の必要上、その選任前に代理人が指定されていなければなりませんので、議長が代理人の選定をすることはありえないものと解されます。
    2.このように、白紙委任状は、中小企業等協同組合法第11条第2項後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となりうる者の範囲内において、理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解されますから、理事長が組合員の中から受任者を選定し、その組合員に代理権の行使を委任することは問題ありません。
     ただし、他の理事に委任しようとする場合は、その理事が組合員であることを要します。
    3.白紙委任状は、白紙の箇所が補完されて初めて委任状としての効力を発するものですから、総会において行使される際には、代理権を行使する者の氏名が記入されていなければなりません。この代理人の決定は、議決権行使の時(厳密に言えば、議決権数(総会の定足数)の確認時)までになされれば有効であると考えます。
    4.代理人の代理できる数を超える部分の委任状は無効となり、したがって、出席者数にも算入されないものと解されます。
  • (2)委任状による代理制限について
    1.中小企業等協同組合における総会の場合の委任状は、出席者1人につき2人迄の委任を受けることができるとし、それ以上の委任を受けることができないという規定ができるのか?
    2.総会に出席しない組合員が被委任者の氏名を記入せず、組合又は、理事長宛の提出の委任状は数に制限なく理事長、又は総会の議長に一任されたものとして、議決権行使の数に加えることができるか?
    3.委任状も1同様2人迄しか代理出来ないとすれば他の委任状を如何に処理すべきか?
    4.3.の場合、理事長又は議長は、他の理事又は他の組合員に委任権行使を依頼することができるか?
    5.以上の外委任状に対する効力上如何なる制限があるか?
    1.については、中協法第11条第4項で定められているように代理人が代理し得る組合員の数は5人までとなっているが、同条第2項では、「定款の定めるところにより」代理人に議決権又は選挙権を行使させるべき旨が定められているので、右に述べた5人までの制限をさらに定款で縮小することができるものと解される。
     したがって、貴組合の定款で代理人が代理し得る組合員の数を2人までとする旨を規定すれば、これに従わなければならない。
    2.については、代理人の氏名が記載されていない、いわゆる白紙委任状は理事長に代理人の選定を依頼したものであって理事長又は議長に議決権の行使を一任したものではないと解されるから、設問のごとく理事長又は議長がこれを適当に議決権の数に算入することは許されないし、またこれが総会において行使される際には、代理人の氏名が記入されていなければ代理権を証する書面としての効力がないことになる。
    3.については、1.に述べた数を超える部分の委任状は無効となる。
    4.については、2.に述べた白紙委任状の場合、これを中協法第11条第2項後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となり得る者の範囲内において理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解してよい。
     したがって、他の組合員に委任する場合は問題ないが、他の理事に委任しようとする場合は、その理事が組合員でなければならないことになる。
     なお、議長は総会において選任される者であるから、その選任前に代理人が指定されていなければならないので、議長が代理人の選定をすることはあり得ないものと解する。
    5.については、とくにない。
  • (3)議長の委任状行使について
    事業協同組合の総会の議長は、委任状をうけられるか?
    中協法第52条第3項の規定により議長は議決権を有しない。
    したがって、委任状による議決権の行使はできない。  
  • (4)白紙委任状について
    組合又は理事長あてに提出された白紙委任状は、理事長に代理人の選定を一任したものと解される旨解釈されているが、
    1.理事長が単独で代理人の選定をするということは、自己に都合の良い者を選べるという弊があるが、この点どのように考えるか?
    2.白紙委任状は、そのままでは無効であり、必ず代理人の氏名が記されておることが必要であるとすれば、議案審議に入るまでに代理人を決め、有効ならしめておくことが必要と考えられるがどうか?
    3.代理人のない委任状は無効であるということは、出席者数にも算入されないものと解してよいか?
    白紙委任状と呼ばれるものはご承知のとおり受任者となる人を特定せずに、委任状作成者が、記載の一定事務の処理及びそれに要する代理権授与の申込をなし、これの取得者が白紙の部分に受任者として自己の名を記入することによって両者間に契約が成立し、受任者としての権利義務と代理権を取得するもので、この時に委任状としての効力を発するものである。白紙委任状には種々の種類があるが、通常は、総会に出席しない組合員が議決権を行使すべき代理人を白紙にして組合に送るものである。
    すなわち、組合が組合員に対して総会招集の通知と共に議決権及び選挙権代理行使の委任状用紙を送付し、その代理権の授与を勧誘するものであって、これは一種の慣行として一般会社等でも行われているものである。
    1.したがって、理事長が単独で自己の有利な代理人を選定することは有り得るわけであるが、代理権自体の行使についても中協法第11条第2項~第5項に制限規定が設けられているのでこの点からも若干の弊害は防ぎ得るものである。
    2.前述の説明によっておわかりのように、白紙の箇所が補充されて初めて委任状としての効力を発するものであるから、当然代理権を行使するものの氏名が記入されていなければならない。
     委任状作成者(授任者)の意思を尊重する意味からも議案審議までに完全なる委任状となし、議決権を行使させることが望ましい。
     勿論、代理人の決定は議決権行使の時までになされれば有効である。
    3.代理人の記入のない委任状は、未だ委任状としての効力を発していないので(無効とは異なる)議決権のないのは勿論、中協法第11条第3項の反対解釈からしても出席者数には算入されないものと解してよい。
  • (5)白紙委任状の行使について
    白紙委任状行使の権限は議長にあるか、理事長にあるか?
    白紙委任状の行使を特定の組合員に分割して依頼することの可否。
                 総会の議長は、議決権を有せず、議事の進行、採決を行うのみである。一方理事長は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会に関する全般的責任をもつ。
    したがって、白紙委任状行使の権限は、議長にはなく理事長にある。
    白紙委任状行使の権限は理事長にあるが、1代理人の代理し得る議決権の数には限度があるので、特定の組合員に分割してその行使を依頼することは必要であり適法と考える。

その他

  • (1)中途脱退者に対する利用分量配当について
    本組合の事業年度は、9月から8月までである。本組合において、本年2月に法定脱退した者が7月に再び加入してきたが、利用分量配当は、脱退前の部分についてはこれをする必要がないと思うがどうか。
    事業協同組合の剰余金の配当は、法第59条第2項の規定により利用分量配当の配当基準となる組合事業の利用分量の算定は、この配当が手数料、使用料等の過徴額の割戻し的な性格をもつものであるから、各組合員が当該事業年度内において納付した手数料、使用料等の額、又は共同事業の利用数量によって行われるのが適当であり、単に当該事業年度の組合員期間等で利用分量を算定することは適当でないと考える。
    したがって、設問の9月から2月までの利用分量等を利用分量配当の算定基準から除外することは不適当であると考える。
  • (2)事業計画書及び収支予算書について
    事業計画書及び収支予算書について、下記事項をお尋ねしたい。                                              
    1.組合の設立認可申請書に添付する事業計画書の記載は、収支予算書に計上した事項については不要であるか?                                                  
    2.あるいは、事業計画書には、出資金並びに借入金で賄なうものだけを記載するのか?              
    3.また、収支予算書、出資金、借入金に関係なく、事業別の資金量のみを計上するのか?                 
    4.収支予算書には、収入から支出を引いた残りを予備費として計上しているが、剰余金としてもよいと考えるがどうか?   
    1.事業計画書と収支予算書とは、それぞれ別の目的をもって作成されるのであるから重複する部分があっても記載すべきである。
    2.設立当初は別として第2年度の計画書では組合に自己資金があれば当然それを調達源泉として賄なわれる資金の使途を記載すべきである。
    3.収支予算書では、事業別予算を計上することが理想的であるが、実際上容易でないので、事業別資金予算は事業計画書(経営計画)に記載するのが望ましい。
    4.収支予算を総合予算として、見積損益計算書、見積貸借対照表、見積資金収支表の作成であると解すれば剰余金として(計画利益額)計上する方が望ましいわけである。
     しかし、一般的にみれば、組合では官庁式の予算概念をとっているところが多く、剰余金ということよりも収支相償ううえで予備費として支出項目に含ませているようである。

6. 解散、清算、登記

解散・清算

  • (1)組合解散に伴う債権者に対する公告の方法について
    組合の解散は、官報をもって公告しなければならないか。   
    中小企業等協同組合の解散及び清算については、中協法第69条が準用する会社の清算に関する商法第421条(会社債権者に対する公告)の条文中「官報ヲ以テ公告」が「公告」と読み替えられており、官報による必要はない(中団法は、第5条の23、第47条で中協法第69条を準用)。
    これは、平成10年10月1日に施行された「商法等の一部を改正する法律」(平成9年法律第71号)により、商法の規定自体に公告の方法が官報であることを規定し(商法第100条第1項、同法第421条第1項)、「商法中改正法律施行法」第17条の規定を削除する改正が行われるとともに、同日施行された「商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」(平成9年法律第72号)により、弁護士会、監査法人及び税理士会以外の中協法を含む各種の「業法」について、「公告は官報でする」との部分を準用の対象から除外する改正が一括して行われたことによるものである。
  • (2)解散に伴う残余財産の分配について
    ある協同組合が解散し、現在清算中であるが、土地の値上り等で、残余財産が約2億円ある。この分配について清算人間に意見の対立が生じ、定款の持分の規定(正味財産を出資口数に応じて算定する旨の規定)が解散の際の分配についても解釈上適用されるものと判断している。
    ところが、これに対して小口出資組合員から残余財産の分配については法律にも定款にも何ら直接の規定がないので、具体的な分配方法は総会で決定すべきだ、そして、それには出資口数に関係なく人数割りで分配すべきだとの主張があり訴訟にすらなりかねない事態となっている。
    そこで、
    1.残余財産がある場合にその分配については、定款の持分の規定が解釈上適用されるものかどうか?
    また、
    2.企業組合、協業組合、商工組合の解散の場合にはどうなるのか?
    1.解散に伴う残余財産の分配方法については、中小企業等協同組合法上明文の規定はないが、残余財産の分配は、持分の払戻し的性格を有するので、定款で定める計算方法によって算定された持分に応じて行うべきである。
    2.企業組合、協業組合、出資商工組合についても同様である。

登記・その他

  • (1)地区を拡大するための定款変更の認可行政庁について
    〇〇県を地区とする事業協同組合が、事業拡張を図るため、地区を数県に拡大することの定款変更を総会で議決した。                                            
    この場合、この定款変更の認可の所管行政庁はどこか。
    この場合における定款変更の認可の所管行政庁は、当該定款の変更の効力が発生した後に所管することとなる行政庁である。 
  • (2)事業用不動産取得決定機関について
    当組合では、従たる事務所にあてるため350万円で店舗を購入したが、これについて中協法並びに定款上総会に付議を要するとの規定がないため、役員会の議決のみで取得したが、これは、事業計画及び収支予算の変更を伴うものとして、あらかじめ総会の議決を要するか?
    本件については、定款に別段の定めがないかぎり、理事会の議決のみをもって購入したとしても、必ずしも違法とはいいがたいが、組合運営上からは、高額にのぼるような事業用不動産を取得する場合は、総会の議決を経るべきである。
    また、その取得については、当然収支予算に計上すべきである。
  • (3)理事の退職金支給に関する手続について
    常勤理事に対する退職金の支給決定は、総会又は総代会の議決事項か?あるいは理事会の議決のみでよいか?
    株式会社等においては、商法の規定により各会社の定款において、総会の付議事項となっているが、中協法には何らの規定がないか?
    また退職金の支給に関し、期前において退職を予想していない場合に、中協法第51条の規定するところにより、収支予算、事業計画の変更を要するものとして、総会の議決を必要とするか否か?
    1.中協法においては、商法第269条を準用していないから、法律上は理事会の決議で行うことを妨げない。
     しかしながら、事柄の性質上、理事会の決定では恣意的になるおそれがあること、商法との均衡等よりして定款に明記して、総会の議決事項とすべきであると思われる。
    2.退職金である否とを問わず、支出をしようとする場合において、当該支出が収支予算において定められていないときは、原則として収支予算の変更について総会の議決を要する。事業計画の場合も同様である。
  • (4)常勤役員等に対する退職金共済法の適用について
    中小企業退職金共済法の被共済者の範囲に、組合の専務理事等いわゆる使用人と兼職の役員は該当するか。
    組合の専務理事又は常務理事の取扱いについては極めて緩やかに解釈されており、役員報酬を得て純然たる管理職務のみを行う理事若しくは非常勤理事等を除き、事実上使用人と兼務の理事は、被共済者となり得る。
    この事実判断については県労政課等と協議されて判定されるのがよいと考える。
  • (5)職員退職給与引当金について
    定款例第58条(職員退職給与引当金)に「本組合は事業年度末毎に職員退職給与引当金として、職員給与総額の何分の何以上を計上する。」とあるが、これは定款に必らず設けなければならないか?  
    職員退職給与引当金については、絶対に本条を定款に設けなければならないものではなく、組合の任意である。従って、設けても設けなくても差し支えない訳であるが、職員が安心して組合の業務に専念するためには、本条を記載することが望ましい。
  • (6)受取書の非課税の根拠について
    事業協同組合の組合と組合員間における受取書については、印紙税法別表第一第22号の非課税物件欄の規定により「営業に関しない受取書」に該当し、課税されないこととなっているが、その根拠を具体的に示されたい。
    事業協同組合等の事業は、営利を目的としていないので営業ではないと解されるが、印紙税法においては、営業について特別の規定を設け(印紙税法別表第一第22号)、事業協同組合等が出資者以外に対する事業を営業に含ませ、また、出資者が事業協同組合等に対する事業を営業から除外している。
    また、事業協同組合が組合員に対する事業については、印紙税法に明文の規定はないが、営利を目的としていないから、当然のこととして特に規定を設けなかったものと考えられ、また、本来営業であるべき組合員が組合を対象として行う取引等を営業としていないこと等から、当然に営業ではないものと考えられる。
    したがって、印紙税法上において、事業協同組合等の営業に関しない受取書として非課税とされるものは、事業協同組合等が組合員に発行するもの、及び組合員が事業協同組合等に発行するものに限られているものと考えられ、この解釈による取扱が一般的となっている。
  • (7)企業組合から協同組合への組織変更について
    企業組合を協同組合に組織変更することはできるか。 
    企業組合と事業協同組合はその性格を全く異にするものであり、また、中協法には組織変更に関する規定(商法第113条・第163条、有限会社法第64条・第67条参照)もないので、企業組合を事業協同組合に組織変更することはできない。
  • (8)当期剰余金の処分方法等の解釈について
    1.法定利益準備金、特別積立金の積立て及び法定繰越金の繰越方法について事業協同組合、商工組合等(以下「事業協同組合等」という。)は、その根拠法及び模範定款例の規定解釈により、法定利益準備金及び特別積立金の積立て並びに法定繰越金の繰越に当たっては、当期剰余金を基に行うこととされているために前期からの繰越損失があっても当期において剰余を生ずれば、前述の諸費目の積立て及び繰越しをした後でなければ、繰越損失のてん補を行うことができないと解釈されている。このため、事業協同組合等では、一時、当期剰余金を基に積立て及び繰越しを行った後、それを取崩して繰越損失のてん補を行っている。
     しかしながら、農業協同組合、消費生活協同組合、漁業協同組合等では、それぞれの根拠法の規定においては、事業協同組合等と同様であるにもかかわらず、模範定款例の規定及び所管行政庁の解釈により、当期において剰余が生じても繰越損失がある場合は、まず、それをてん補することとしている(したがって、繰越損失が当期剰余を上回っている場合は、前述の諸費目の積立て及び繰越しは行わない。また繰越損失のてん補後に残余がある場合は、それを基に積立て及び繰越を行う。)。
     ついては、事業協同組合等においても、農業協同組合等と同様な処理が行える旨解釈することとしてよろしいか?
    2.特別積立金の取崩しについて事業協同組合等の模範定款例で規定されている特別積立金は、毎事業年度の剰余金の10分の1以上を積立てることと規定されているだけで、その取崩しについては何ら規定されていない。
     このため、特別積立金は、模範定款例の損失金の処理規定により損失の処理以外には、取崩せないものであるとの解釈がなされている。
     この結果、組合によっては、特別積立金の積立総額が出資総額を上回るほど多額となっても、損失が生じないため取崩しができない結果を招いている。
     しかし、元来、特別積立金は、法律の強制しない任意的積立金であること、また法律の強制する法定利益準備金については、模範定款例の規定においてもその取崩し事由を限定規定していること等を勘案すると、特別積立金は、損失金の処理を主目的としながらも、それ以外の事由であっても総会の議決をもって取崩すことができると解釈するほうが、現実の組合運営においても支障をきたすことがなく、妥当であると考えられるので、そのように解釈することとしてよろしいか?
    1.従来より中小企業庁においては、模範定款例51条(法定利益準備金)、53条(特別積立金)及び54条(法定繰越金)の利益剰余金の規定においては、毎事業年度の剰余金として「当期業績主義」との解釈を採ってきている。
     しかしながら、農業協同組合、消費生活協同組合、漁業協同組合等においては、中小企業等協同組合と同様の法規定にもかかわらず、「繰越損失がある場合」には、それをてん補した後、なお残余がある場合に積立て及び繰越しを行っている。
     したがって、今後は、事業協同組合等においても他組合との整合性及び剰余金としての性格上、貴見のとおり運用して差し支えないものと考える。
    2.特別積立金は、御指摘のとおり、任意積立金的な性格を有しているものであり、何ら法的規制はない。
     したがって、その取崩しについても貴見のとおり「総会の議決をもって取崩す」ことができるものと解される。
     ただし、主目的が損失てん補であるので、それ以外の事由により取崩すことは、次のような場合に限られるべきであると考えられる。
     (1)当期未処理損失がない場合
     (2)当期未処理損失がある場合は、取崩した資金によりそれをてん補した後、なお残余がある場合

7. 商⼯組合に関すること

組合員資格

  • (1)既製服製造業者の商工組合の組合員資格について
    既製服製造業者が工業組合の設立を準備しているが、その定款案の「組合員の資格」は下記のとおりであるが妥当か。                                          
    本組合の組合員たる資格を有するものは、本組合の地区内において自己の計算により原材料を購入して、既製服の製造の事業を営む中団法第5条に規定する中小企業者とする。
    事業の性格からみて、既製服製造業にあっては、製造卸業者(元請)と縫製加工業者(下請賃加工)とに分離して組合を結成することが妥当であるので、この方針により指摘されたい。   
  • (2)商工組合以外の者の商工組合連合会会員資格について
    商工組合が商工組合連合会を組織した場合において、単位商工組合の存しない地域に資格事業を営む大企業があり、商工組合、商工組合連合会に調整能力がある場合には、その大企業を直接商工組合連合会に加入させることができるか。
    商工組合連合会の会員たる資格を有する者は商工組合のみであり、個々の企業が直接連合会に加入することはできない(中団法第13条、第16条参照)。また、中団法第12条の要件を満たしている商工組合には、その商工組合が定款で定めたときは、大企業であっても加入することができることになっているので念のため申し添える。 
  • (3)支店の組合員資格について
    1.設立しようとする商工組合の地区内において、地区外に本社を有する会社の支店がある場合に、この会社は組合員資格を有するかどうか。
     この場合、組合員資格について中協法の解説では、支店が地区内において資格事業を行っていれば、本社が地区外にあってもその法人全体の名において加入することができることになっているが、中協法における「事業を行う」と中団法における「事業を営む」との関係についての解釈をも併せてご教示願いたい。
    2.例えば法人全体の名において加入できると仮定した場合、申請書に記載する法人の所在地は地区外にある本社の所在地とすべきかどうか。
    1.組合が定めた地区内で、組合員たる資格に係る事業を営む拠点を有している事業者は、組合員資格を有し、この場合事業を営む拠点は主たると従たるとを問わない。
     したがって、ご質問のように本社は地区外にあるが支店が地区内にあり、かつ、そこで資格事業を営んでいる場合は組合加入資格を有するものである。
     この場合、支店は独立の法人格を有する事業主体ではないから、法人全体の名において加入することとなる。
     なお、事業を営む者とは、営利を目的として事業を継続反覆して行う者をいい、事業を行う者は必ずしも営利を目的とすることを必要としないので、事業を行う者より狭い概念である。
    2.上記の如く、支店は法人の機関であって独立の法人格を有する事業主体ではないから申請書に記載する法人の所在地は、主たる事務所の所在地(民法第50条)たる本社の所在地を記載することとなる。

事業

  • (1)組合協約について
    中団法第29条第1項に「商工組合の組合員の資格事業に関し取引関係のある事業者であって、中小企業者以外のもの」とあるが、板硝子業界の如き、取引状況下において、小売側の連合協会並びに商工組合が、メーカーと団体交渉ができ得るか。
    貴文書にある如く、実際には現物はメーカーから小売店へ直送されてくる場合であっても、契約はメーカーと特約店、特約店と小売店と二段階に分けてなされていると思われる。もしそうだとすれば、契約面ではメーカーと小売店との間には、取引関係があるとはいえない。
    したがって、小売店のみの商工組合が、メーカーを相手方として応諾義務を負う団体交渉をすることはできない(相手方が応諾義務を負わない団体交渉はできる)。なお、貴文書にある「連合協会」なるものの性格が明らかでないが、それが商工組合連合会のことであれば中団法第33条で第28・29条を準用しているから、商工組合と同様である。本条に基づかない任意団体であれば、本法に規定するごとき団体交渉の権限がないことはいうまでもない。

8. 協業組合に関すること

事業

  • (1)製造業における販売の協業と独禁法との関係について
    1.製造業を行う事業者が販売事業のみを行う協業組合を設立した場合に、その運営について独禁法の制限を受けることになるのではないか。                               
    2.販売事業を行う協業組合が、生産制限事業を併せ行うことは可能か。 
    1.販売事業のみを協業する協業組合の設立は可能であるが、協業は中団法第5条の17に規定する認可基準に示されているとおり、生産性の向上に寄与するものであることが必要で、販売だけを一本化することによって不当に価格の維持又は吊り上げをねらうものであるような場合は認可されないし、認可後そのような事態になった場合には、公正取引委員会から主務大臣に対し、協業組合の業務又は運営等について検査等の措置をとるべきことを請求する対象となる。したがって、販売事業の協業が真に技術の向上、品質の改善、原価の引き下げ、能率の増進等生産性の向上に寄与する
    ものでなければ、当該協業組合を設立することはできない。
     なお、独禁法との関係を簡単に説明すると、協業組合は、独禁法第2条第2項にいう事業者団体ではないので、一般の事業者と同様に独禁法の適用を受けることになる。したがって、協業組合が単に一定の取引分野を実質的に制限することだけでは独禁法には抵触しないが、私的独占又は不当な取引制限をしたり、不公正な取引方法を用いることは、独禁法違反になる。
    2.販売事業を行う協業組合が、生産制限事業を行うことはできない。販売事業を行う協業組合は、販売部門について協業するものであり、生産部門については他の事業者としての地位にあり、それが生産について制限事業を行うことは、他の事業活動を制限することとなり、独禁法上からも禁止される。
  • (2)協業組合の金融、教育情報活動について
    一部協業の協業組合は、教育事業、金融事業を実施することができるか。
    協業組合の事業は、特に定められた協業対象事業と関連事業及びその付帯事業に限られている。このうち、関連事業は、協業対象事業に関連する事業で、組合員の事業とは全然関連のないものであるから、本件については考えなくてもよいものである。また、協業対象事業は、組合員の事業の一部又は全部を統合し組合の事業とするものであり、組合員の資金の借入あるいは情報の収集、経営技術等の知識の修得等の活動は、協業対象事業とはなり得ないものである。また、付帯事業についても、協業対象事業等に付帯することを行うのが付帯事業であるので、協業対象事業等で行えないことを、付帯事業で行うことはあり得ないわけである。
    したがって、協業組合においては、事業として金融、教育事業は行えないことになる。このことに関しては、協業組合の基本的な問題であるが、協同組合等の場合はあくまで組合員の事業というものがあり、その事業を補完することが組合の事業であるが、協業組合の場合は、組合員の事業を統合し、それを組合の事業として、その事業の運営のみを考えればよいわけである。すなわち、協業組合の場合は、組合員の事業との関係は、員外者に対するものとまったく同じものと考えてよいものであり、この間の事情は、組合員が別会社を設立したものとして考えればよく理解できるものと思う。
    ただし、協業組合は、独立の事業として金融事業あるいは教育事業はできないが、協業対象事業等の事業遂行上必要があれば、その事業活動の一部分として、組合員に対する資金の貸付、教育情報提供等のことができる。これは、例えば、物品の購入の事業を行っている組合が、当該事業の運営政策上、取引先である組合員に事業資金を貸し付ける等の意味であり、あくまで資金の貸し付けは、組合の事業発展のためのものである。この関係は、例えば、家庭電器メーカーの代理店が、その取引先である系列小売店等に、自己の商品の販売量を多くするため、店舗改造資金や運転資金を貸したり、店舗構成や販売技術等について指導することとまったく同じものである。
  • (3)競業禁止規定の解釈について
    1.競業禁止は、法文上組合員のみに適用されるものであるが、個人企業の場合は、その家業を協業の対象としたものであり家族全員にも競業禁止の義務があるものとは解さないか。                  
    2.組合員が競業する事業に雇用されることはまったく差し支えないか。また、組合の理事の場合はどうか。規約をもって組合員とその家族に競業禁止義務を課するとともに、その有する事業用資産等を競業する業者に売却又は賃貸することを禁止することは差し支えないか。
    1.競業禁止の規定は、組合員が個人の場合は当該組合員のみに適用されるものであり、組合員の家族にまで及ぶものではないと考える。
     ただし、家族が競合する事業を行った場合において、当該事業が実質上組合員によって行われ家族は単なる名義人に過ぎない場合は、競業禁止規定に抵触するものと考える。
    2.競業関係にある事業に雇用され労働に従事することは、競業事業を行うことにはならないものと解されるので、組合員が競業する事業に雇用されることは競業禁止規定に抵触しないものと考える。役員の場合も同様と考える。
    3.組合員が競業事業を行う者に資産を売却することは競業事業を行うこととはいえず、また家族については前記1のとおり、いずれも競業禁止規定に抵触しないと解されるので、これらの問題は中団法の競業禁止規定の問題ではなく、組合と組合員又はその家族との契約の問題である。
     したがって、本来多数決をもって制定する規約によってこれらの行為を禁止するのは適当でなく、組合員等と個々に契約すべきであるが、仮に規約による場合は少なくとも組合員全員の同意を要するものと考える。
  • (4)競業禁止の解除について
    協業組合の組合員に対する競業禁止の義務づけは「協業」の主旨である「事業の統合」を担保するものであるとの理由から、総会の承認による競業禁止の解除については、協業前に受けていた受注残の処理や特定組合員の特殊商品などやむを得ない事情がある場合に認められるという問答が示されている(中小企業庁指導部組織課長吉岡靖夫編著「協業組合制度の解説」)。
    協業組合の組合員に対する競業禁止義務は、事業の統合(企業規模の適正化)による生産性の向上等を目的とする協業組合制度の基本でありその解除については組合は慎重であるべきことは当然であるが、協業組合が競業禁止を解除することが可能であるのは、例えば、「同種の事業であっても、組合及び組合員の提供する製品やサービスについてその種類が異なるなど、双方の事業経営に実際上競合関係が生ずることなく、また競業禁止を解除することが組合及び組合員の事業経営の強化に資することになる場合」等においても、法第5条の8の規定によって競業禁止の解除が可能であると考えるが、このように解してよいか。
    貴殿の解釈で問題ないと考える。                                                                               
    なお、競業禁止を解除することによって協業組合制度の本旨が損なわれることのないよう十分留意されたい。
  • (5)協業組合の事業転換の認可について
    協業組合制度の運用に当たっては、「協業組合制度の運用について」(昭和42年10月13日付け42企庁第1420号)に基づいて行政庁において事務処理が行われるが、協業組合の事業転換の認可については、以下のように運用されると解して差し支えないか。
    1.同通達2(1)中、「『需給構造その他の経済的事情が著しく変化したため事業の転換を行う必要』があると客観的に認められる場合」に該当する旨の説明は、必ずしも公的な統計に基づいて行わなければならない訳ではなく、業界団体の統計その他の信頼できる資料により説明することも可能である。
    2.「将来、当該転換にかかる事業に比重を移すことを前提として、従来の事業を併せ行うこととしても差し支えない」とあるのは、当該協業組合の事業全体において新規事業の割合が将来増大していくとの見通しのもとに従来事業を継続しても差し支えないという趣旨であって、事業全体に新規事業が占める割合が半分を超える見通しであることまで求めるものではない。
    貴見のとおり。 
  • (6)協業組合における競業禁止・新規事業の展開等について
    豆腐製造業6社による全部協業の協業組合が、豆腐・油揚げの製造販売と食料品の仕入販売を協業対象事業として実施している。
    売上の増大に伴い、また、取引先からの要望もあり、豆腐・油揚げ以外に、納豆ともやしの製造販売の必要性が生じてきた。納豆は原材料が豆腐と同じ大豆であるため実施可能ではないかと考え、中小企業庁を介して農林水産省まで照会した結果、工程がまったく違うため関連事業には該当しない旨の回答を受けた。
    組合としての製造はあきらめ、食料品の仕入販売が協業対象事業であったため、組合員全員の出資による別会社を設立し、豆腐・もやしを製造させ、それを組合に納入、組合が取引先へ販売する体制を取った。組合所有の工場の一部をその会社に貸与し、月々賃貸料を徴していたところ、県から組合の事業として賃貸料を徴することはおかしいとの指摘があった。
    また、売上拡大策の一環として、組合工場とは遠隔地域において豆腐会社を設立、豆腐の製造を開始した。
    この件についても、組合とその会社の実事業が同じであることから競業禁止の規定に抵触するとの指摘があり、総会を開催して全員の競業禁止を解除することとしたが、経営戦略上同じような会社を設立して役員になることが競業禁止に抵触するのが疑問に思う。
    組合では、今後、新規事業の展開を真剣に検討している。また、消費の多様化に対応していくため、消費者を対象とした料理講習会等いろいろな企画を計画しているが、新規事業については、別会社で実施、事業実績があがるようになってから組合に加入させ、協業対象事業を逐次増加させていくことが現行法として可能な方法であろうが、1人の加入で直ちに協業対象事業になるか否か疑問が残る。
     ・競業禁止について
      経営戦略上の関連会社等の場合でも抵触するか。同業の関連会社を設立し役員になることは往々にしてあることと思う。
     ・別会社への施設貸与について
      組合事業として可能か。
     ・新規事業の展開について
      新規事業を実施する1人の加入で協業対象事業になり得るか。その場合、組合員全員で別会社を設立、実績をあげながら逐次協業対象事業を追加していくことも可能か。
     ・消費者を対象とした事業の実施について
      料理講習会等需要拡大を目的とした事業は、関連事業もしくは付帯事業に該当するか。
    1.商法においては、会社の取締役が自己又は第三者のために行う競業取引について競業避止義務を定めているが、他の会社の取締役となることは禁止しておらず、取締役は同業の営業を目的とする他の会社の取締役となることができる(この場合でも、取締役が同種の営業を目的とする他の会社の代表取締役になるときは、当然第三者のために競業取引をなす場合を生ずるから、競業避止義務が生じ、取締役会の承認を得なければならないと解されている。)。中団法においては、協業組合の役員のみでなく、組合員全員及び組合たる法人の役員が自ら競業事業を行うことを禁止し、また競業事業を行う会社の役員になることも禁止している。これは競業禁止義務が協業組合制度の本旨である「事業の統合」を担保するものであり、事業の統合の当然の帰結として、統合した事業については参加事業者が全て組合に依存すべきものであるからである。競業事業を自ら行うことばかりでなく、競業事業を行う会社の役員になることをも禁止したのは、それを容認することによって、別会社の設立などにより事業の統合という立法の目的が著しく減殺されてしまうことを避止するためである。
     貴照会のように、協業組合の組合員全員出資による関連会社を設立して、組合員あるいは組合員たる法人の役員がその関連会社の役員になる場合であっても、その会社が協業事業を行うことは事業の統合という立法の目的を減殺することになり、協業組合制度の主旨からして、競業禁止の規定に抵触するものと考える。
     なお、競業禁止の解除については、中小企業庁組織課長回答(平成3年6月13日付け)において、協業前に受けていた受注残の処理や特定組合員の特殊商品などの場合ばかりでなく、組合と組合員の行う事業が「同種の事業であっても、組合及び組合員の提供する製品やサービスについてその種類が異なるなど、双方の事業経営に実際上競合関係が生ずることなく、また競業禁止を解除することが組合及び組合員の事業経営の強化に資することになる場合等」においても可能であるとされているので参考にされたい。
    2.別会社への施設貸与について
    協業組合の行いうる事業は、協業対象事業と協業対象事業に関する事業及びこれらに付帯する事業に限られている。一般的に、豆腐・油揚げの製造販売を協業対象事業とする組合が行う施設貸与は、協業対象事業でないことはもちろんであるが、関連事業あるいは付帯事業にも該当しない。しかしながら、協業対象事業及び関連事業を遂行するために必要な範囲内において、貴照会のように、関連会社に組合施設の一部を貸与することは差し支えないと考える。
    3.新規事業の展開について
    協業組合の協業対象事業は「組合員又は組合員になろうとする者がその営む事業の部類に属する事業」を協業組合の事業として行うものであるから、協業対象事業を追加拡大しようとする場合、現在の組合員の中には追加しようとする事業を営んでいる者がいなくても、当該事業を営んでいる者を新規に加入させることによって、すなわち「組合員になろうとするものが営む事業を」統合するという形で追加拡大することができる。この場合、新規に加入する組合員の数は1人でも差し支えない。したがって、貴照会のように、組合が現在行っていない事業を行う別会社を組合員全員の出資により設立し、その会社を加入させることによって組合の協業対象事業を追加拡大していくことも制度上可能である。
     なお、中小企業庁指導部長通達(平成3年6月13日付け、3企庁第1326号)において、協業組合の事業転換の認可の弾力的な運用が図れるようになり、設例のようなケースは事業転換の1つとして可能であると考えるので参考にされたい。
    4.料理講習会等需要拡大を目的とした事業の実施について
    貴照会の豆腐・油揚げの製造販売を協業対象事業とする協業組合が行う料理講習会等需要拡大を目的とした事業は、付帯事業に該当すると考える。付帯事業は、本体となる事業が廃止されたときには、独立して行うことができないことに注意されたい。

議決権・選挙権・投票

  • (1)議決権・選挙権に関する定款記載方法について
    議決権、選挙権に出資割制を認める場合の定款の記載方法については、模範定款例に「組合員は、それぞれの出資持口数に何を加えた議決権及び選挙権を有する。」とあるが、加えるべき数は整数によらなければならないか。整数を加えることとすれば、議決権、選挙権については、出資口数割の議決権等の総数は平等割の議決権等の総数を超えることができないので、組合員の移動、出資口数の変更等によって、定款変更しなければならないケースが多くなる。
    協業組合の場合は、平等の議決権等のほかに、出資に比例して議決権等が認められ、出資比例議決権数が制限されているので、定款の記載について、質問のような整数による確定数を記載すると、組合員の移動や出資の増加等によって、この制限を超える事態も当然予想され、定款変更がその都度行われなければならないことになる。
    これについての定款規定は、議決権等を行使する際に各組合員が有している議決権等を算出できるものであればよく、必ずしも整数による確定数を記載する必要はないと考える。
    この場合に、定款の記載をどのようにすればよいかであるが、1つの参考を示すと、次のような内容でよろしいのではないかと考える。
    〔例〕
    第〇条 組合員は、それぞれの出資持口数に、各組合員に平等に与えられた議決権数を加えた数の議決権及び選挙権を有する。
    2 前項の各組合員に平等に与えられる議決権数は、出資総口数を組合員の総数で除して計算した数より大きく、その数に最も近い整数とする。
    (注)平等割の議決権(選挙権)数を、前項よりも多くする場合は、第2項を次のように記載する。
    2 前項の各組合員に平等に与えられる選挙権数又は議決権数は、出資総口数を組合員の総数で除し、その除して計算した数に何を加えた数とする。この場合において、小数点以下の端数がでたときは切り捨てるものとする。
    (注)加えるべき数は、平等割の議決権数等を何個にするかによって適宜記載する。
  • (2)1人1票制の場合の累積投票等について
    役員の選挙権を1組合員1票とする協業組合では、理事の選挙に累積投票を採用できないか。また、累積投票を監事の選挙に採用できないか。
    累積投票とは、協業組合で理事を2人以上選任するときに、各組合員に1選挙権につき選挙される理事の数と同様の選挙権(3人の理事を選出する選挙のときは、1選挙権につき3票)を与え、各組合員がその選挙権を1人に集中して投票しても、また数人に適宜に分散して投票することもその自由に任せ、その結果得票数の多いものから順次所定の員数までのものを当選者とする制度をいう。このように累積投票制は1人の組合員が複数の投票を行うことになるので、役員の選挙について1人1票をとる協業組合では累積投票制を採用することはできないと解されている。
    次に監事の選挙についても累積投票制を採用できないかとのご質問であるが、監事の選挙については累積投票を採用することはできない。累積投票は、理事(株式会社では取締役)の選挙についてのみ採用できる選挙の方法である。累積投票は少数派の組合員にもその有する選挙権数に比例して理事を選出する機会を与えるために採用された制度で、少数派の保護を目的としている。監事は、組合の会計に不正や誤りがあるかどうかを監督することを職務とする機関で、公正、中立でなければならない。少数派組合員の保護を目的とする累積投票は監事の選挙にはなじまない選挙方法であるわけである。

組織変更

  • (1)組織変更の際の役員任期について
    次のことについて、本県と〇〇地方法務局との間に疑義が生じており、教示願いたい。
    (本県の見解)
    事業協同組合から協業組合へ組織変更した場合の役員の任期は、中団法並びに同法において準用する中協法に特別の規定はないので「1年以内」という設立当時の任期の特例は適用されず定款に定める任期となると考える。
    (〇〇地方法務局の見解)
    中団法第98条の2第2項により、組織変更の場合の登記については中協法第97条第1項の規定が準用されるので、登記上は組織変更といえども一方の組合の解散及び他方の組合の設立として扱われる。
    したがって、役員の任期についても、組織変更の場合であっても、中協法第36条第2項の規定により1年以内としなければならない。
    事業協同組合から協業組合へ組織変更した場合における役員の任期については、貴見のとおり組合の新設ではなく、中団法第5条の23で準用する中協法第36条第2項の規定(役員の1年以内の改選)は適用されず、組織変更後1年以内の役員の改選は義務づけられないと考える。
  • (2)組織変更の際の役員改選について
    事業協同組合から協業組合に組織変更したときは役員の改選をしなければならないか。事業協同組合から商工組合に組織変更した場合には役員の改選をしなければならないことになっているか。
    貴見のとおり事業協同組合から商工組合への組織変更が行われた場合(商工組合から事業協同組合への組織変更が行われた場合も同じ)には、中団法第98条により登記をした日の翌日から起算して、90日以内に役員の全部を改選しなければならないことになっているが、事業協同組合から協業組合に組織変更したときは、役員の改選をする必要はない。ただ、役員の改選をする必要がないというのは法律上のことであって、組合運営という立場からすれば協業組合に組織変更した場合には多くの場合、組合の趣旨、目的やあり方がかなり大幅に変化することになるし、新しい組織による組合運営が始まるわけであるから、この際、役員の改選を行い心機一転するのも一方法と考えられる。
  • (3)組織変更の際の事業要件について
    事業協同組合から協業組合に組織変更が認められているが、組織変更の場合は、新規設立より協業対象事業の要件が緩やかと聞いている。これを具体的に説明されたい。
    協業組合への組織変更については、中団法第95条に規定されており中協法第9条の2第1項第1号の事業を行っている事業協同組合は、組織変更によって協業組合になることができることとなっている。また、この場合、事業協同組合が行っている上記第1号の事業は、主務大臣が定めるものに限って、協業組合の協業対象事業とみなされることとなっている。この主務大臣が定めるものについては、関係主務大臣連盟の通達(昭42・10・12)が出ており、前記第1号の事業のうち、協定等の調整事業だけが除外されている。
    したがって、価格協定などの調整事業を除いて、他の第1号事業のすべて、例えば、共同生産(加工)、共同販売、共同購買等組合員事業の主要部分の共同事業に限らず、共同保管、共同運送、あるいは事務代行、共同宣伝等の販路開拓事業などを行っていても、協業組合への組織変更が可能であり、それがそれぞれ協業対象事業とみなされることになる。
    しかし、調査事業を除いて、第1号事業であればいかなる事業を行っていても、組織変更が認められるかというと、協業組合になるためには、その事業が、技術の向上、品質の改善、原価の引き下げ、能率の増進等生産性の向上に寄与するものであることが必要とされているので、この要件に適合するものでなければならない。
    この点、新設の場合の要件と同じとも受けとれるが、例えば織物業者が現在自分たちが実施していない染色の事業を共同して行いたい場合に、協同組合ならば行うことができるが、新設である限り協業組合では実施できないことになる。しかし、既に協同組合で染色事業を行っていれば、染色事業が協業の対象事業とみなされ、協業組合になることによって染色事業の生産性向上が図られると認められれば、協業組合に組織変更ができるわけであるから、この点からは、新設の場合よりも組織変更による方が、協業組合になることができる要件が緩やかといえるであろう。
  • (4)組織変更の際の課税上の取扱いについて
    中団法に基づく協業組合については、中協法に基づく事業協同組合からの組織変更が認められている。
    これら組合に対する法人税の取扱いは、事業協同組合については協同組合等として、協業組合について普通法人として扱われている。
    ついては、事業協同組合が、事業年度途中において協業組合に組織変更した場合に、次の事項について課税上どのように取り扱われるか疑義があるので照会する。
    1.税率の適用
    2.事業協同組合であった期間に対応する事業分量配当に対する法人税法第61条の規定の適用
    事業協同組合が事業年度中途でその組織を協業組合に変更した場合には、組織変更の日を含む事業年度(以下「組織変更年度」という。)における法人税の課税上、その法人は、法人税法第2条第9号に規定する普通法人に該当することになる。
    したがって、組織変更年度においては法人税法第61条(協同組合等の事業分量配当等の損金算入)の規定の適用はないし、組織変更年度の所得に対する法人税率は普通法人の税率が適用される。

その他

  • (1)配当に対する税制上の取扱いについて
    協業組合は、出資配当のほか、どのような方法でも利益の分配ができると聞いているが、これに対して課税面ではどう扱われるか。   
    お尋ねのように、協業組合は、定款に規定すれば、いかなる方法の分配も行うことができる。なお、定款に定めなければ出資配当に限られることになるが、出資配当についても、事業協同組合等のように年1割以内という制限がなく、どのような額の配当もできる。
    したがって、協業前の各組合員の取扱実績に応ずる配当や、最低保障的に各組合員平等割の配当、あるいは協同組合の利用分量配当のように、組合との取引量に応ずる配当なども可能である。もちろん、1種類だけでなく、出資配当と平等割配当というように、各種の配当を組み合わせて配当することもできるわけである。
    これら分配に対する税の取扱いは、すべて配当所得として取り扱われることとなっている(所得税法施行令第62条)。
    したがって、配当所得とされる結果、協業組合がこれらの配当をした場合は、法人税について配当分に対する軽減税率が適用されることになる。また、これら配当を受けた組合員については、組合員が法人の場合は、一定のものについて受取配当の益金不算入の適用が受けられ、個人の場合は、配当控除、源泉分離課税の対象となるほか、事業税の対象から除外されることとなる。
    なお、協業組合が組合員に、これらの配当を交付する場合には、20%の源泉徴収をする必要がある。